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超大物バンドがアニメーション制作者を搾取!?音楽ビデオコンテストへの批判が止まらないその理由は?

今回は久しぶりに、今年20周年を迎えたアニメーションの情報サイトCARTOON BREWからの要訳記事です。オリジナルはJamie Lang氏によって執筆され2024年1月23日に出版されました。(いつも通り、正確さについては原文を参照してください。) なおコンテストの正式なページはこちらになります。

ピンク・フロイドは、『ダーク・サイド・オブ・ザ・ムーン』リリース50周年記念のアニメーション制作のコンペティションを発表しました。しかしクリエイティブコミュニティからの反応は圧倒的に否定的なもので、ソーシャルメディア上では何百人もの人々がこのコンテストを搾取的だと批判しているのです。

イギリスの象徴的なロックバンドは先週、1973年のアルバムに収録されている10曲のいずれかのミュージックビデオを制作するよう「新世代のアニメーター」に呼びかけました。 同グループは、「バンドの初期からアニメーター(イアン・イーメス、ジェラルド・スカーフなど)とコラボレーションしてきた豊富な歴史があり、場合によっては、曲に付随するビジュアルが音楽そのものと同義になっている」と述べています。さらに、「これらの時代を超越した聴覚作品の新鮮な解釈を提示したい」と付け加えました。

一見しただけでは、なぜこのコンテストがそれほど不快なのかは明らかではないかもしれません。(中略)ピンク・フロイドのニック・メイソンとオーブリー・'ポー'・パウエル(ピンク・フロイドのクリエイティブ・ディレクター)ら「専門家パネル」達によって投票された最優秀作品に与えられる巨額の賞金 は100,000 ポンド(およそ2000万円)です。
しかし、グループの多くの楽曲の伝統を確立する上でアニメーションが果たした重要性を認めながら、コンテストの利用規約が参加者への敬意をまったく示していないのは奇妙なことです。
コンテストがスペックワーク(※)に基づいて構成されていることに加えて(これは芸術界では大きな禁物であることは誰もが知っています)、
広報向けの発表では、受賞しなかった作品も含め、すべての応募作品の権利がピンク・フロイド・ミュージック・リミテッドに永久に保有されるということが言及されていないのです。

訳注: スペックワークとは、デザイナーが仕事とそれに対する公平な報酬の両方が与えられる以前に、デザイナーが将来のクライアントに提出する、部分的または完成したあらゆる種類のクリエイティブな作品です。(原典)

コンテストの利用規約をミーム化したインスタグラムの投稿

コンテストの利用規約のポイント 第23条 と 第24条 は次のとおりです。
第23条 プロモーターが上記第 22 条に定める限定的な権利ライセンスを応募者に付与することを考慮し、お客様は、ビデオエントリーを提出する際に、
取消不能かつ独占的かつ完全な権利保証付きでプロモーターに譲渡することを同意し、承認するものとします。(後略)
第24条 上記第 23 条に定められた権利譲渡の一般性をいかなる意味でも制限することなく、プロモーターは、ピンク フロイドの YouTube チャンネル、Facebook、Twitter、Instagram、Snapchat を含む(これらに限定されないその他のソーシャル ネットワーク ページ)により 入賞者から提出されたビデオエントリーコンテンツを収益化し、使用する唯一の権利を有するものとします。

ピンク・フロイドが、(訳注: ボックス・セットを売って)数ポンドを獲得するチャンスのために、短編アニメーションの完全なサウンドトラックを書き、録音し、制作し、その曲の権利を永久に手渡すだろうかと不思議に思う人もいるだろう。 おそらくバンドは経済的に苦しいため、アーティストに作品代を支払う余裕がないのだろう。
結局のところ、50周年記念『ダークサイド・オブ・ザ・ムーン』ボックスセットの値段はたったの267.42ポンド(329.74ドル、1ドル150円換算で約4万9千円)だ。

訳注: 以下は元記事にあるソーシャルメデイアからの引用の要訳です。

「このソーシャルメディアを運営している人は報酬を得ています。 この愚かなアイデアを考えた人には報酬が支払われます。ピンク・フロイドは金をもらっている。なぜアニメーターや映画製作者を無料で働かせるのでしょうか? 露出(訳注: 応募作品が紹介されること)が増えることで家賃を払うことが出来るのでしょうか。」
引用元: X (旧ツイッター)

「これは完全に非倫理的です。 ピンク・フロイドは莫大な予算を持つ巨大なバンドですが無料のミュージックビデオを大量に入手できる「コンテスト」を行っています。彼らはアニメーションがいかに労働集約的であるかを理解していますか?」
引用元: X (旧ツイッター)

「私の好きなことの 1 つは、アニメーターとのインパクトのあるコラボレーションで知られる史上最も成功したバンドの 1 つが『コンテスト』を開始するときです。 『協力者』のために『検討してもらう』ために作品を提出してもらうのです。だったら、人を雇い、契約書を書き、公正かつ期日通りに支払うだけで良いのではないでしょうか?」
引用元: インスタグラム

(以上が翻訳になります。)
このようなコンテストの形態が話題に上るのは、もちろん初めてではありません。今回は非常によく知られているバンドが実施したコンテストであったことから、ネガティブな部分にも焦点が当たったということでしょう。なお先日発表された最優秀作品(以下のピンク・フロイドの公式ポスト)が、生成AIによって作られているという事実は、生成AIと著作権の議論が活発な現在、非常に象徴的なことだと言えそうです。



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