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VOGUE BUSINESS 「フォートナイトで発信するバレンシアガ: 高級ブランドにとって意味するもの」

Japanese translation of "Balenciaga launches on Fortnite: What it means for luxury" BY LUCY MAGUIRE 20 SEPTEMBER 2021 https://www.voguebusiness.com/technology/balenciaga-launches-on-fortnite-what-it-means-for-luxury

ルーシー・マグワイア (Lucy Maguire, 執筆協力 Maghan McDowell)
バレンシアガとEpic Gamesの提携は、(ゲーム)「フォートナイト」における世界で初めての高級ファッションのコラボレーションである。Demna Gvasalia およびビデオ・ゲーム開発に関わるキー・パーソン達に、ヴァーチャルにおけるバレンシアガの世界を構築することについて話を伺った。
(※ 翻訳の正確さについては上記のオリジナル記事を参照してください。)

熱い眼差しを互いに送り続けている高級ブランドとゲームの世界の関係がさらに一歩深いものとなる出来事があった。バレンシアガはEpic Gamesのフォートナイトと提携関係を結んだ最初の高級ブランドとなった。

今日ではファッションもその世界の中に入ろうとしている。バレンシアガは4つのプレーヤーが購入できるバーチャル・アウトフィット(「スキン」と呼ばれる)、さらには他のアクセサリや武器、ゲーム内の目的地「バレンシアガ」(極めつけはバレンシアガの店舗)をデザインした。このイベントは9月20日から1週間続く。IRLエレメントと呼ばれる、バレンシアガとフォートナイトの帽子、Tシャーツそれからフーディがバレンシアガの店舗と、オンライン・ショップである Balenciaga.com で販売される。

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コラボレーションには、バレンシアガの店舗と、オンライン・ショップである Balenciaga.com で販売される現実の世界での製品がある。(画像: BALENCIAGA提供)

ゲームの世界においてバレンシアガは、高級ブランドの開拓者であることを証明している。バレンシアガのアート・ディレクターである Demna Gvasalia は「我々とEpic Games の提携関係は、実際にはフォートナイトから始まったわけではないのです。2021年の秋のコレクションをデビューさせる目的で作成した最初のビデオ・ゲーム『アフターワールド』は(Epic Gamesが知的所有権を持つ3Dデザインのテクノロジーである)アンリアル・エンジンを使って制作しました。」

新しいメタバースによるマーケティング

デジタルと物理的な現実世界の両方にまたがるような広報活動を利用して、複数のブランドがリーチしたいのはジェネレーションZから2.7ビリオンの世界中のゲーマー達である。ルイ・ヴィトンは2019年にゲーム "League of Legends" とパートナーを組んでヴァーチャルと物理的なクロージングにおいて提携する一方で、グッチも5月にロブロックスをパートナーにしている。

音楽とスポーツの間で数多くの注目されたコラボレーションの後に、バレンシアガとフォートナイトのコラボレーションは行われた。2020年トラビス・スコットがフォートナイト内でコンサートを行い、同時に4500万人が視聴した。他にはアメリカのNFL(国際アメリカン・フットボール・リーグ)やNBA(国際バスケットボール協会)とディズニー傘下のマーベルのコラボレーションがある。

提携関係をリードしているEmily Levyは、高級ブランドのパートナーとしてEpicは重要視されることがあるという言う。これまでのメタバースにおける仕事の数々から、バレンシアガはこのファンションの最初のコラボレーションにEpicが最適であると判断したわけだ。

バレンシアガの知的所有権であるゲーム「アフターワールド」は2020年の12月にローンチした。本物そっくりなアウトフィットによりディストピアなバレンシアガの世界を構築するために、ボリューム・キャプチャと3Dのバーチャル空間のデザインを利用した。「そこから私達はアンリアル・エンジンとフォートナイトのコミュニティの創造性によって、インスピレーションを受けてきました」とGvasaliaは述べる。「そこからバレンシアガの独自のルックスをフォートナイトと、物理世界におけるフォートナイトのクロージング製品を我々の店舗で展開するのは、我々にとってはごく自然のことでした。」

フォートナイトとゲーム内の通貨(スキンやアクセサリ、eモートと呼ばれるアクション)V-Bucksの売上により、Epic Gamesの売上は2020年に5.1ビリオン・ドルにもお読んだ。バレンシアガのスキンは1000 V-Bucksで売られており、どのプレーヤーにも購入出来る値段として、およそ8ドルに相当する。

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フォートナイトのプレーヤーはバレンシアガのヒーローのアクセサリーとして、斧とグライダーを制作し直してアイテムになった。(画像: EPIC GAMES提供)

2020年4月には、注目のフォートナイトのプレーヤー、Lachlanがゲーム内でのフォートナイトのファッション・ショーをステージ上で展開した。プレーヤーはそこで自身のスキンを披露することが出来るようになっていた。ビデオはYouTubeで1100万回視聴されている。Levyは、この出来事がフォートナイトのエコ・システム内でファッションを展開するための前段階となったと語る。

クリエイティブ・モードの成長

フォートナイトがそもそも有名になったのは、「バトル・ローヤル」と呼ばれるプレイヤー達が1対100で戦えるゲーム・モードである。しかし、過去4年間でユーザの裾野が飛躍的に拡大したとLevyは言う。現在では50%のプレイヤー達がフォートナイトのクリエイティブ・モードで時間を過ごしているという。このモードは様々なヴァーチャル空間での経験と、彼ら自身が作り上げたヴァーチャル空間を探求できる。「私達のコミュニティには実に様々な人々がいます。ですから、ファッションに興味を持つ人も居ることは知っています。」とLevyは語る。

今のところ、ブランドはフォートナイトでブランドが単独でアイテムを売ることは出来ない。Epic Gamesの製品と消費者へのコミュニケーションのディレクターである Alan Cooper によると、(販売ではなく)ゲーム内のファッションに関する活動はマーケットへ(ブランドのことを)知ってもらうことが目的であり、通常ではターゲットにするのが難しい「若く、熱狂的で、デジタルに生まれつき親しんでいる」オーディエンスに向けてのものである、という。

バレンシアガにとって、このプロジェクトが表しているもの。それはメタバースへの取り組みが、マーケティングのための単発的なイベントではなく、彼らのビジネスにとって戦略的な柱の一つとなりつつあることである。Epic Gamesにとっては、このコラボレーションはアンリアル・エンジンを広めることが出来るという利点がある。エンジンはEpicのリアルタイム用の3Dデザインを開発するためのソフトウェアであり、その用途は建築、映画、ファッションに至るまでゲームを超えている。アンリアルとその競合となるエンジンであるユニティ(Unity Technologies社)は、そのユーザに3Dのヴァーチャル空間をリアルタイムで表現することができ、比較的最近になってデザイン界に激震を与えてつつある。現在、アンリアルとユニティの才能ある開発者を探す競争が始まっている、と未来とメタバースの専門家である Cathy Hackl は言う。テクノロジーの進化が速すぎて、大学はそれに追いついていないのだ、と。

Cooperは「アンリアル・エンジンの出来る範囲を示すことが我々にとって重要なのです」と言う。バレンシアガのコラボレーションを3Dの看板にして、ニューヨークや東京といった主要都市に広告する。看板はアンリアルを用いて画像として出力することにより、フォートナイトを知らない人の興味も惹いてバズを生み出す。

ファッション・ブランドはアンリアルを用いることにより、彼らのコレクションに基づいた基本となるデジタル・アセットを作り出し、現実の世界で使用したり、別の形でデジタルのエクスペリエンスを提供したり出来るかもしれない。Cooperは言う。「プロダクション、デザイン、プロトタイプからマーケティングまで、共有できるアセットを作り出すパイプラインを確立する可能性があるのです。あなたの洋服でも自動車でも何でも、フォートナイトのようなプラットフォームで利用したり、3Dの看板をつくったり、さらにはそれらすべての合間合間に位置するような用途について、システム化することも出来るでしょうね。」

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The Balenciaga virtual store is based on the brand's existing bricks-and-mortar locations. (画像: EPIC GAMES提供)

ブランドにとってまた別の機会として、フォートナイトのコミュニティが衣装を作成する、あるいはバーチャル空間で(ファッションを)活性化させるようなクリエイティブを助ける事ができる、とCooperは言う。「非常に大規模で重要なブランドが、Epicと提携するにあたって、実はトラビス・スコットやアリアナ・グランデのレベルで巨大な(ヴァーチャル)空間をつくる必要はないことを理解しています。彼らはフォートナイトのコミュニティの中に既に存在するクリエイター達と作業することが出来ます。ブランドはクリエイターに制作を委託することができます。我々はそのために何か出来ないか、彼らを見守ることも出来るでしょう。」

今後より多くのコラボレーションはあり得るものの、Epicがそれについて暴露することはなかった。「まだ始まったばかりですから、カルチャーをゲーム内に持ち込むことが何を意味するか、その境界線を押し広げているところです。」

Cooperはバレンシアガのコラボレーションが高級ファッションの業界内に、より多くの興味を呼び起こすことを願っている。「コラボレーションのうちいくつかは、コンセプトを証明するという観点からでも重要だと思います。業界にインスピレーションを与えて我々にここで出来ることを示したいのです。」(翻訳ここまで)

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