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vol.545「新規ビジネスを成功に導く役員の”沈黙”」


愛知万博の思い出

開幕まであと1年を切った大阪万博。
その現状を嘆く報道をしばしば見かけます。
あなたは今、大阪万博にどんな感情を抱いていますか?

私は、何も心配していません。
そもそも、開幕前からワクワクドキドキ、日本中が盛り上がるなんてことは滅多にないからです。

愛知万博の時もそうでした。
開幕当初は閑古鳥が鳴いて、日帰り圏内に住んでいる私ですら、行く気ゼロでした。
ところが終わってみたら、私は計7回行きました。当時、小1だった息子は計11回も行っています。

日立館の仕掛け

なぜなら、突出して面白いパビリオンがあり、2度3度とリピートしたくなったからです。
特に日立館は、何度足を運んだかわかりません。

同館に行く前から館内、そして帰宅後まで、一連の流れを、当時の日記を元にここに再現してみます。

まず、愛知万博に出かける約1か月前に、 日立館のサイトから自分のパソコン上に 希少動物(アザラシ、イルカ、マイタイのいずれか)の 赤ちゃんを選んでダウンロードします。

私はマイタイをダウンロードしました。
パソコン上ではマイタイに餌をあげたり、 水質をキレイにしたりして飼育します。 そして、日立館に行く前日、 大きく育ったマイタイを海に放します。

翌日、実際に日立館を訪れます。 ここでは博士が私の実名を読んで お迎えしてくれます。 そして、海中の巨大スクリーン映像の部屋に移動。

特殊な今日のVRのようなゴーグルをつけると、 そこにはたくさんの魚たちが泳いでいるのが見えます。 その中に、突如自分が育て放したマイタイが登場します。

マイタイは私に手を振ってくれます。感動の再開です。 次は、そのマイタイと記念撮影。 係の人からマイタイの可愛いグッズをプレゼントされます。

こうして日立館を満喫した後、家に帰ります。 そして、パソコンを立ち上げて日立館のサイトを見ると… そこには会場でマイタイと撮った私たちの記念写真が 掲載されています。それを見て、家族中で喜ぶのです。

こんな体験ができる日立館は大人気で、 開門前に並ぶ→開門ダッシュ→日立館前に並ぶで 合計5時間も並びました。 それでもまた同じ経験がしたくて、 今度は別の動物を育てます。 私は、子供たちと一緒にアザラシも育てました。 そして、再び日立館に並んでしまうのです。

こんな仕掛けなら、誰だって行ってみたいと思うのではないでしょうか?
こういう魅力は、始まってみないとわからないし、サプライズだからこそオモシロいのです。

マスコミには万博開幕まで、静かに見守っていて欲しいものです。
ふたを開ければ、きっと今の時代に相応しいサプライズが登場することでしょう。

社内起業への投資

同じことは企業内の新規ビジネス開発にも言えます。
24年5月9日の日経新聞の一面に、「大和ハウス工業が社内企業制度を導入し400億円の投資枠を設定した」という記事が出ていました。

5万人のグループ全社員から新ビジネスを公募し、 社員間で事業性など企業の可否を審査するといいます。

明確な投資枠を設けることで 社員の起業への意識を高めるのが狙いです この取り組みでは、中堅を含む各事業部の社員と 外部のコンサルタントが企業の可否の審査に加わります。

その一方で、大和ハウスの経営陣は原則として 審査、プロセスの大半に関わりません。

私はそれを読んで、これはとてもいいことだなと思いました。

というのも、経営陣が加わると、絶対に 「新規事業特有のリスク」を指摘した意見が出るからです。

役員の立場からすれば、
「本当に成功するのか?その根拠は何だ?」
「こういう事態は想定したのか?」
「そんなことで差別化と言えるのか?」
「事業化に失敗して大金を流したらどうするんだ!」 と、指摘するのが仕事です。

全部、会社のために良かれと思って言っていることです。 しかし、これらの指摘は「上からの評価者目線」で これから進める新規事業案の是非を測るものさしとして 必ずしも適切とは言えません。

大切なのは「上から目線」ではなく「付け足し目線」

まさに、詳しい内容も知らないうちに 万博を危ぶむマスコミの人たちと同じ心理です。 この段階で必要なのは、 「もっとこうしてみたら面白いかも?!」という ユーザー感覚の「付け足し目線」です。

弊社がクライアントの新規事業立案の お手伝いをする時も、 このことにはとても注意を払います。

立案段階では、選抜された社員数名がプロジェクトチームを組みます。そして、プランの数出しに挑戦します。この間、経営者はノータッチで、メンバー同士でアイデアを絞り、磨いていきます。

最初から100点のプランを求めるから、ダメ出し発言・指摘のオンパレードで結果的に新しい事業の芽を摘んでしまうのです。
「60点なら上出来じゃないか。足りない点は、やりながら考えよう!」そうした大らかさが、人とプランを前に進めます。

人の可能性は無限大です。見るべきは、プランの完璧性ではなく、担当者の社会課題解決にかける情熱と、コラボ先とのチームワークなのです。

貴方の会社で今、新規ビジネスの立案を検討されているのなら、社員同士の力量と情熱を信じて、役員は沈黙しましょう。見守ることも大事な仕事です。より大らかな気持ちで、60点のプランを受け容れ、育てていきましょう!

実践に役立つ動画の解説

このメルマガを読んで、「自社でも取り組んでみたい」と思われた方は、以下のような疑問や質問に答えていますので、ぜひこちらの動画をご覧ください。

質問項目

  1. プロジェクトチームのメンバーを選ぶときのポイントはありますか?

  2. 投資額をあらかじめ明確にしておくことは重要ですか?

  3. もし役員が途中で口出しをするべきタイミングがあるとしたら、それはいつですか?


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#60点のプランを育てよう #大らかな経営者 #見守ることが大事 #マスコミに静観を願う #サプライズこそ面白い #盛り上がりは後からくる


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