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vol.533「心理的安全性の高い職場をつくる最初の一歩」

職場の「心理的安全性」が重要視されてから
10年以上が経ちました。

きっかけは、グーグルが行った
プロジェクト・アリストテレスです。
これは、「生産性を高める組織」の
共通項をリサーチしたものです。

そして、その圧倒的な1位が
心理的安全性でした。
「「誰も自分を馬鹿にしない」と信じあえるチーム」は
生産性も高いという意味です。
https://www.ashita-team.com/jinji-online/organization/10813

このことに気づいた会社は
早速そのような職場づくりに乗り出します。

稲盛さんが若かった頃の京セラは、
この心理的安全性が高く、世界初の技術開発を目指して
日夜、かんかんがくがく若い社員もベテランも
議論していたと言います。

ところが、当時のメンバーがどんどん偉くなり、
管理職以上を占めるようになった今、
若い人が自由に自分の思ったことを
発言できなくなっているといいます。

そこに危機感を覚えた同社は、
断続的に心理的安全性を高める研修を実施しています。
そのような会社は大企業に多く、
弊社も幾多のオファーを頂戴しています。

ところが、先日トヨタグループで
またも不正があったことが発覚しました。

日経ビジネスの電子版では、
ガバナンスに詳しい危機管理システム研究学会理事の
樋口晴彦氏の言葉として次のように紹介しています。

「今回のような不正が行われるのは、
倫理観の欠如ではなく、上に報告できない
(報告してもどうにもならないと諦めている)
現場の事情が存在しているから」

これを読んで 私も確かにそうだ…と思いました。
自動車業界はトヨタグループに限らず
トップダウンが非常に強い業界です。

「**までにやれ」という指示命令で人を動かし、
「できません」と言えば
「なぜできないのか。できないのならそれを証明せよ」と
さらに負荷のかかる命令を下す。

こんなやり方を続けていたら、
生産性向上はどころか離職が止まらず、
企業の永続性は失われてしまうでしょう

それを防ぎ、グーグルの言う
心理的安全性の高い職場を創るには
どうしたらいいのでしょうか?

私は20年以上、こうした風土改革を
ずっとコンサルしてきました。
その方法の1つが、「感謝を伝え合う職場」を作ることです。

社員一人一人をよく観察し、
「〇〇してくれてありがとう!」と認め、それを伝えるのです。

また、他人のいいところを承認するだけでなく、
「自分は、こんな工夫をしてみました 。
お客さんに大変喜んでもらいました」と仲間に発表し、
拍手とフィードバックをもらう。
それを照れずにできる職場作りを手伝ってきました

これは、簡単にできるようでなかなか難しい取り組みです。
あなたの会社でもサンクスカードを取り入れようとして、
挫折してした経験があるかもしれません。
惜しいことですが、多くの職場で同様の現象が見られます。

なぜ感謝を伝え合う取り組みがうまくいかないのか。
克服しなければならない壁は以下の3つです。

第一は、当たり前のハードルが高いことです。
感謝が苦手な人に見られる特徴が
「こんなのやって当たり前じゃないか。
いちいち感謝するほどではない」ということです。

こういう人は良い結果が出た時は
「素晴らしい!ありがとう」と讃えます。
が、例えば会議室に定刻前に仲間が集合していたとしても
「定刻前に来るのは当たり前」としてそれを評価しません。

が、誰もが忙しい中、時間を割いて集まってくれるのです。
「忙しい中、定刻前に集まっていただきありがとうございます」と
言われた方が、集まった人は気持ちよく、
リラックスした気持ちで会議に参加できるでしょう。

当たり前のハードルを下げて、小さなことにも感謝する。
そういう習慣を身に着けたいものです。

第二は、良いことを見つける観察眼に乏しいことです。
あなたは、人の「悪いところ」が目に付いてしまう。
そんなことはないでしょうか?

実はこれは、人間の本能であり、仕方ないことなのです。
人は群れで暮らしています。
非常時の場合、群れを守らねばなりません。
それには、例えば足が悪くて歩けないなど
欠点のある人をカバーしないといけません。

そのために、日頃から人の欠点は、
無意識でも目に飛び込んでくるのです。

一方良い点は、そのような観察眼を磨かないと見えてきません。
だから、訓練して身に着けるしかないのです。

感謝しようと思って、部下や仲間を観察する。
そうすると日頃見えてなかったその人の行いが見えてきます。

特に職場には「誰の仕事でもない仕事」が多数あります。
役割分担で誰がやる仕事が決まっていない仕事です。
例えば、コピー用紙の補充はその代表例です。

が、必ずそれを、自分の役割であるかのように気にかけて
実践している人がいます。そのような人に気づいたら
「いつもコピー用紙を補充してくれてありがとう」と感謝できます。

この感謝ができたら、言われた方はもちろん、
言った方も気持ちよくなります。
相互信頼、相互尊重の礎ができます。

第三は、「照れくさくて感謝できない」という心理です。
「照れ」は、ビジネスマンとして
絶対に克服しなければならない感情のひとつです。
なぜなら、照れて良いことなど何一つないからです。

仮に職場の仲間に感謝したいことがあった場合、
それを人に伝えるメリットは何でしょうか…?

言われた方は「嬉しい、モチベーションが上がる、
自信が持てる、さらに頑張ろうと思う」…山ほどあります。
言った方にも「信頼される、好かれる、
相手の笑顔を見て自分も嬉しくなる」…こちらも山ほどあります。

では、感謝を伝えることのデメリットは
何があるでしょうか?
せいぜい、「言われた方が驚く」
「言うあなたが、こっぱずかしい」ぐらいでしょう。

それくらい、感謝を伝えるデメリットは存在しないのです。
それを「照れくさい」という一時の感情で
伝えないのは「もったいない」と言わざるを得ません。

感謝は思っているだけでは意味はありません。
口でも手紙でも構いせん。
相手に伝えてこそ、初めて価値があるのです。

あなたの職場は感謝の多い職場でしょうか?
サンクスカードのような手段がなくとも
伝え合うことができたら、それが理想的です。

是非、感謝の多い、心理的安全性の高い職場を
創ってください。
そして、言いたいことは言いたい人に直接伝える
風土を築いてくださいね。

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