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vol.534「採用力を高めたい会社は〇〇から始めよう」

株価が35年ぶりの高水準ですね。
トヨタ自動車は3月末の営業利益を
過去最高となる4兆9000億円と予想しています。
バブル時代を彷彿とさせますね。

35年前、私は麻布十番にある事務所に勤めていました。
最寄り駅は六本木で毎日利用していました。

当時、帰宅が終電になることもしばしばでした。
が、バブル真っ盛りの時代です。
その時間帯でも六本木は人が溢れていました。

が、今の六本木は当時とまるで雰囲気が違います。
相変わらず外国人は多いのですが、
決定的に違うのは、
スーツ姿のサラリーマンが少ないことです。

どうやら株価高騰の恩恵は、バブル当時と違い、
サラリーマンにまでは届いていないようです。

と、六本木を歩きながらそんなことを考えていると、
先日クライアントの社長にとても良いことを教えてもらいました。
それは『経営者の仕事』について、です。
社長は「経営者はサイクルを作るのが仕事だ」というのです。

『サイクル』と聞いてあなたは何を連想しますか?

例えば、自然の営み。これは大きな『サイクル』です。
雨が降る→川や海ができる→太陽に照らされて蒸発する
→雲ができる→雨が降る。

あるいは、
動物がCO2を排出する→植物が光合成をする
→O2が生まれる→それを動物が吸ってCO2を排出する

地球の生命の営みは、巨大なサイクルで回っています。

ビジネスにおいても同じです。
資金を調達する→投資をする→回収をする
→分配する→再投資する
このサイクルによって技術は進歩し、
暮らしは豊かにになっていきます。

リサイクルの仕組みも同じです。
材料を集める→モノを作る→モノを使う→
廃棄物を集める→再資源化する
このサイクルを回すことで永続性を生み出しています。

持続可能な経営を実現する鍵は、
まさに自社に必要なサイクルを創ることにあります。

では、昨今の課題である人材不足に対して、
企業はどのように対応したらいいのでしょうか?
サイクルをヒントに考えてみましょう。

経営者はよく「人が採用できない…」と嘆きます。
確かに募集してもしても、新卒はもちろん
中途採用もちっとも応募がない…

そのような会社が今取り組むべきことは、
採用の強化ではありません。
その前にすることがあります。
社員が辞めないようにする「定着」の強化です。

定着は、以前は経営の課題ではありませんでした。
私がコンサルタントになった30年前、先輩から
「求める人財像→育成→評価→処遇→求める人財像」の
サイクルをまわすことが人材育成の仕事だと教わりました。

ここでいう処遇とは、主に昇格・昇進を指します。
例えば評価が高くて課長に昇進したら、
次は、「課長の求める人財像」に適う仕事をする。
そうやって人は育っていく、というサイクルです。

が、今このサイクルでは、不十分です。
人手不足時代の最重要課題である
「採用」も「定着」もないからです。

では、どのようなサイクルが今日の理想なのでしょうか?
先日、中小企業大学校の育成部門の責任者と
そのことについて話をしました。
彼は、中小企業には以下のサイクルが
必要だと教えてくれました。

「定着→育成→評価→処遇→採用(→定着)」

具体的に解説します。
まず、今の若手社員が定着するように務めます。
そのために、先輩や上司が彼らの話を一生懸命に聴き、
共感し、彼らがポジティブになるフィードバックをします。

これを毎日行います。
話の内容は仕事のことでなくても構いません。
ゲームのことでも趣味のことでも何でもいいのです。
大事なのは話を聴く、ということです。

なぜなら、人は話を聴いてもらうだけで
自分はこの職場で受け入れられていると安心するからです。
安心すれば人は持っている力を惜しみなく発揮できます。
そして、それが認められればその組織を好きになります。

聴くことが難しければ、日報や週報を書いてもらいます。
その日報に先輩や上司が毎日フィードバックします。
そうした定期的なコミュニケーションをとることで
安心を作り出します。

次に育成します。仕事の基本を教え、覚えてもらいます。
あるレベルに達したら、今度は今覚えた仕事の基本を
人に教えられるレベルまで高めてもらいます。

ハードルは高いですが、
「来年はあなたに新人の教育係をやってもらいたい」と
伝えれば、使命感を持って学んでくれるでしょう。

このとき、仕事の基本だけでなく
人とコミュニケーションをとる3大スキル
(聴く、承認する、質問する)を身に着けていただきます。
すると、「自分に教えらえるかな?」という不安も消えて、
安心して取り組んでいただけるでしょう。

さらに、そのスキルアップを正当に評価します。
それが賞与の増額等に反映されれば、
どんどん主体性が出てきます。

そして、採用活動です。
今どきは、人事担当の面接だけでは採用できません。

就活生に対し、上記のように育った社員が先輩として
会社の魅力を社員目線で語ります。
またインターン生に対しても先輩として親切に指導します。

すると、「こんな先輩がいるならいいかも…」と思われて、
わが社を選んでくれます。
入社後は、その新人が定着するよう、
仕事の基本を教え、話を聴き、
日報や週報にフィードバックします。

こうすることで
「定着→育成→評価→処遇→採用(→定着)」
のサイクルが回ります。

35年前、株価高騰の後バブルが崩壊したのは、
サイクルが回っていなかったからです。
地味でもシンプルなサイクルを回すことが
永続性を生み出します。

あなたの会社の人材育成のサイクルはいかがでしょうか?
採用難を嘆く前に、まずは定着力を高めましょう。
そして、魅力的な先輩を育てていきましょう。


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