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3人とトライアングルと

2020年6月24日。

後年振り返った時には「ああ、あの年!」と語られる事になるであろう、2020年。新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言が発令され、それが解除された約一カ月後に、ロールプレイングアイドル ラストクエスチョン(以下ラスクエ)の新シングル「トライアングル / ラストクエスチョン」が発売されました。

新譜リリースに際してのインタビュー記事が、こちらに掲載されています。

楽曲「ラストクエスチョン」は過去にもCD化された事があり、今回は現メンバーでの再録です。こちらはパーティー(ラスクエのファン)の中にも思い入れのある人が多い曲なので、誰か書くでしょうという事で、初音源化の「トライアングル」について少し。

「トライアングル」が最初に発表されたのは、2019年11月23日の月見ル君想フさんでのラスクエワンマン「ムーンサイド」でした。その年の5月に成功裡に終えたWOMBワンマン「JACK POT -Last bet-」。そこで約束した東阪ツアーの締めとなる東京公演であると同時に、御坂しのぐさんの加入で現体制になって丸2年の記念ライブとして催されたのが「ムーンサイド」です。色々な節目にあたるこのタイミングで、キラーチューンとなるべく投入された「トライアングル」は、実に7カ月かけて熟成されて音源化された事になります。(当初、5月13日発売予定だったものが延期された影響もありますが)

CD発売に際して、「トライアングル」の作詞作曲を手掛けたぼーかりおどP氏のコメントがこちらです。歌詞の内容は、メンバー3人のこれまで歩んだ道を表したものになっており、まさに主題歌と言えるものに仕上がっています。

印象的なシタールのイントロから始まるこの曲の雰囲気に合わせるかのように、ラスクエの衣装もオリエンタルな雰囲気のものに刷新されました。デザインはいつものように、メンバーの月見むぎさんの手によるものです。

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左から御坂しのぐさん(盗賊)、桃井美鈴さん(勇者)、月見むぎさん(魔道士)

満を持しての新シングル(前作Proceedから2年ぶり)収録のこの曲を聴いての感想を、以下ぽつぽつ書いていこうと思います。

楽曲について。
曲自体が発表された「ムーンサイド」の時は、以下のnoteのような事を考えてました。

メンバー3人の事を歌った歌詞が目を引きますが、中でもLIFE POINT (2018年11月発売のアルバム)を感じさせてくれるサビが個人的にはお気に入りです。私自身、元々LIFE POINT の帯にあった「それでも進み続ける」というコピーで、それまでラスクエ(というか桃井さんかも)が歩んできた道のりが脳裏に浮かび、しばらく声が出なくなったくちでして、あのアルバムの歌詞カード裏にあった「真っ直ぐ折れない心」「進み続ける心」「何度も立ち向かう心」を引っ張り出された時点で、もう白旗を揚げざるを得ないというか。ラスクエの「主題歌」という表現は、本当にぴったりだなと思ってます。
(個人的にはアニメの最終回で主人公達がラストバトルに入る時に流れる曲、というイメージです。で、一度ピンチになって、そこからゆらっと勇者が立ち上がってからは?-クエスチョン-が流れて、とか妄想がはかどります・・・)

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そして、従来のラスクエ楽曲と比べた際の明確な特徴として、ユニゾンパートが多いというのがあるかなと思います。というか、思ってました。
元来、ラスクエはユニゾンが極端に少ないグループです。3人がそれぞれに明確に色の異なる声質で、ユニゾンにした時に声が混ざりづらいというのもあるのだとは思いますが、本当にここぞという時にしかユニゾンを使わない印象です。そんなラスクエが、冒頭でもサビでも、何度も何度もユニゾンを使ってくる。ライブで聴いている時には珍しいなと思うだけだったのですが、音源化されて目から鱗がぼろぼろと!
冒頭とラスト以外は、ユニゾンではなくてメインボーカル+サブ2人という構成でメインを順番に回しているんですね。1番は桃井さん、2番は月見さん、その後に御坂さん。ステージ上でもそれぞれサビでセンターに出てくるのですが、音源ではセンターがずっとサビを歌っていて、残りの2人がサブで同じメロディを被せるという構図なのが明確に聴いてとれます。
あと、これはもしかしたらそうかな、という感じなのですが、ライブでのステージ上での立ち位置に合わせて音像上の位置を細かく変えているように思います。そしてラストの本来のユニゾンパートでも微妙に位置をずらした音像で声質の異なる3人が歌うので、それぞれの声を音で追うことが出来る。ただ3人が歌っているだけじゃない、細かく細かく作りこまれた音源なのが、聴きこむほどに見えてきて、このトラックに込められた作り手(特にエンジニアのジーコバさん)の想いを感じました。そして、それら全てを緻密に設計して一つの曲に落とし込んだおどP氏の手腕に感服するばかり。

そして歌ですが、こちらも3人それぞれに聴きどころ満載です。

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桃井さんは「サイン波?」と思うくらいに濁りのないピュアな声が持ち味なのですが、その彼女が声を歪ませて叫ぶ「何度だって立ち上がるから」で見せた強さの表現は、いくつも壁をぶち破ったような進化を感じました。あの声でこの表現が出来るなら、他の人にはそう簡単にはまねのできない世界を作り出せそうな気がします。

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一方、月見さんは元来、吠えるような強い声の持ち主で、シャウト要員のように見られがちでした。その彼女が、ミニアルバム777収録の save & load で開眼した聴き手を慈しむような柔らかな表現は、強い声をさらに際立たせる武器になっていて、「もう2度と独りになんかさせないからね」のフレーズをぐいぐいと迫ってくる奥行きのあるものに仕立ててくれています。

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元々、歌には定評のある御坂さんは「すごい財宝なんか無くたっていい」で御坂節の真骨頂を聴かせてくれます。(筆者は御坂さん推しなので、ここだけでご飯3杯いけます)
御坂さんの声の魅力は本当に沢山あるのですが、個人的に一番だと思っているのが、声が高音、中音、低音それぞれの成分をバランスよく含んでいて、かつ本人が意識的にその比率をコントロールすることで千変万化の声色を実現している所です。どちらかというと高音成分特化型の桃井さんと中低音に強い月見さんのどちらとも馴染む事の出来る声で、ボーカルラインの一体感を醸し出しています。
さらに歌う時に喉がきちんと開いていて、その声が真っ直ぐにこちらに届く。ご本人は「アイドルなのに口を大きく開きすぎ」的な事をおっしゃっていた事もありますが、しっかり口も喉も開いているからこそ、聴き手には表現の機微を感じ取りやすい歌声です。
「大きな壁に阻まれても」で一音目から中低音域をしっかり響かせた声をドンと前に打ち出してくる所は、地味ですがこうした御坂さんの声の魅力がすごくはっきり出ているので、是非そこにも注目して聴いて頂きたいです。私は最初に聴いた時に、ゾクゾクしました。マジで聴き惚れます。


そして、曲の話ではないですが、このノートのヘッダーにもしている新シングルのジャケットは、パーティの一人でもあるモモさんの手によるものです。3人の愛らしい絵に目が奪われがちですが、御坂さんと月見さんが桃井さんに背中を預けて3人が互いに手を繋いでいる構図は「伝説の剣なんかには切れない」ものを、目の前に表出させてくれています。
また独特のタッチの愛らしい絵は売り場でも目立つので、他のCDに埋もれることなく目に飛び込んでくるという優れものです。

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写真はタワーレコード新宿店さんの店頭


まとまりなくあれこれ書いて来ましたが、詰まるところ、この曲はライブで聴いて気に入ってはいたのですが、音源化されたものを聴いて、さらに心にずぶずぶと刺さりまくりました。現体制になって2年の間に3人が培ってきたものと、おどP氏とジーコバ氏による緻密な仕事のコラボレーションが、本当に宝物と言える一枚を産み出したと思います。素敵な音源を届けてくれたラスクエと制作陣に、心からの感謝を。


P.S.
シングル「トライアングル / ラストクエスチョン」が、7月6日付のオリコン週間ROCKシングルランキングで、15位にランクインしたという、嬉しい報せが届きました!!
前作777は、発売元ショップのインディーズチャートには入りましたが、今回はラストクエスチョン史上初の、メジャーレーベルを含むチャートへのランクインです。完全自主運営のアイドルによる快挙と言って良いと思います。


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