先輩

 あのとき先輩は、生きたいという願いと、命を他人事としてみたことへの怒りで立っていたのだと思う。憎しみではなく、怒りで。そしてきっと眩しがっていたのだ。あまりにも鮮烈で眩むような美しさ。女神様。彼女は先輩に怒りを向けられ、そしてその心を魅了した。命の痛みを決して知ることはない女神、手が届かないからこと見つめてしまう。先輩の瞼は今でも、世界が真っ白になってしまった今でも、あの光を焼き付けたままだ。
 


真っ白な世界で震える体をそれでも先輩のために、と奮い立たせる。先輩が気遣ってくれる、指示を与えてくれる、一緒に戦ってくれる、笑いかけてくれる。嬉しい。私はそれだけでどんなに怖くとも前を向いていられるの。ああ、でも先輩は眩んだまま。どんなに強大でも、幸福でも、あの眩しさには敵わない。先輩は彼女の鮮烈に憧れたままなの。


女神になりたい!

だけど私は女神にはなることはないのだ。だって私の体は軋んで、命は痛みを感じることができているのだから。

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