見出し画像

絵本紹介③「はっぱくんとなかまたち」

この絵本紹介シリーズでは、VIVITA BOOKS 2020でつくられた絵本10作品がどのようにして作られたのをご紹介していきます。
3作品目は世界観の設定がおもしろい「はっぱくんとなかまたち」。子ども作家のえいきと大学生編集者のすずかわさんは、いったいどのような旅を経て絵本をつくっていったのでしょう?
-----------------------------------------------------------

こんにちは。VIVITABOOKSえほんプロジェクトに参加した大学生編集者のすずかわです。

スクリーンショット 2020-11-27 13.52.17

2019年11月から始まり、半年以上かけて子ども作家のえいきくんと一緒に絵本「はっぱくんとなかまたち」を作り上げてきました。ここでは、その活動を振り返っていきます。ちょっと大人びている子ども作家と悩みがちな大学生編集者の絵本完成までの道のりにお付き合いください!

子ども作家えいきくんとの出会い

スクリーンショット 2020-11-27 13.52.26

今回のプロジェクトで一緒に絵本を作ってくれることになったえいきくん(当時小学5年生)と初めて会ったのはキャラクターワークショップの時でした。

スクリーンショット 2020-11-27 13.52.38


▲えいきくんの描く魚たちにひとめぼれ!

話を聞くと、魚たちはみんな仲良しで、草食。みんな、はっぱくんのはっぱを少し分けてもらっている。魚の数え方は1魚(うお)…などなど、面白い設定がいっぱいでてくる…
これはすごい!
ぜひとも、えいきくんと絵本を作りたい。そう思いペアを組むことを決めました。

スクリーンショット 2020-11-27 13.52.54

▲ペア発表会に参加できないため、えいきくんに送ったワークシート

アイディアがありすぎても大変?苦難の台割づくり

早速絵本作りが開始!まずは絵本の土台となる台割づくりからスタートです。
考えてくれたキャラクターからどんな物語にしていこうか考えていきます。私が事前に考えた「はっぱくんのせかい」というはっぱくんが主人公になる設定を気に入ってくれたようで、優しい世界観にしていこうかと話し合っていました。しかし、えいきくんからひと言。
「盛り上がりが足りないと思うんだよね」
なるほど、さすが毎晩ハリーポッターを読んでいるだけある…。
続けて話を聞いてみると、仲間を集めて敵を倒すという展開がいいんじゃないか?と。
そこから、はっぱくんとカツオくんが魚たちを仲間にしてカツオくんの弟であるカッちゃんを探しに行くというドキドキのストーリー展開に。

スクリーンショット 2020-11-27 13.53.00

▲まだ書き途中の台割…描きたい場面から進めていきました

台割をかきながら、どのキャラをどうやって登場させようか?優しい世界は残したいからカジキを倒す表現はやんわり表現したいな、などなど二人が絵本でやりたいこと書きたいことをすり合わせながら私が台割をかき、えいきくんにチェックしてもらうという作業を二か月以上繰り返していました。
子ども作家と大学生編集者ではなく、大学生作家と子ども編集者かな?と思うほど、えいきくんの指摘は的確で鋭く、堂々としていました (笑) 。
えいきくんが考えていた設定がとても面白く、そして話していくうちにどんどんアイディアが出てきて、どれが一番書きたいか、厳選していくのがすごく大変だったことを覚えています。(絵本で吹き出しみたいにセリフを入れたらおもしろいよね、この絵本の舞台は房総半島にしよう、などなど。)

リモートで入稿データづくり

なんとか台割がまとまり、次は原稿づくり(入稿データづくり)が始まります。
実はえいきくんはillustratorが得意!illustratorでデータをつくり、レザーカッターという機械を使って自分でアクリルキーホルダーを作れるほどの腕前で、絵本作りでもそのスキルを活かすことに。
キャラクターの作画はえいきくん、背景は私という役割分担で入稿データはすべてillustratorで作成しました。紙にシャーペンで描いたキャラクターをアプリで読み取り、データ化していきます。それをillustratorで微調整していく…シンプルに見えてすごく手間がかかっているキャラクターたちなんです。

スクリーンショット 2020-11-27 13.53.07

▲どれかが表紙に使われています…分かりますか?

3月半ば、原稿づくりも徐々に進んでいた頃、感染症対策でいつもはVIVISTOPで行っている活動をzoom上で行うこととなりました。
直接やり取りができないので、リアルタイムで作業するということはあまりできず、それぞれの時間の中で進めていきました最初はやりにくくなってしまうかな、と心配していたのですが逆に打合せ時間が限られていたため集中することができたと思います。何事も経験!慣れてしまえばこちらのものです。
締め切りが近づいて、「あ、あのキャラクターが足りない!」「ここの背景はもっとこうしてほしい…」お互いが意見を言い合いながら忙しく作業をした締め切り前は一生忘れられない思い出になりました。
えいきくんは時間がない中でもキャラクターの表情や線にはすごくこだわりを持って意見を出してくれて、「線がつながっているのはおかしいかも」、「ここのキャラクターに目がないよ!」などなど、私が編集しながら見落としていた部分を細かく見てくれました。
個人的に背景でこだわった部分は色。優しい世界を表現したかったので海の色を淡い水色で少し色味を抑え、キャラクターの色もそれに合わせていきました。目立たせたい部分には必ず黄色をいれたり…二人のこだわりがたくさん詰まっています (笑) 。

ドキドキ色校からワクワク完成まで

怒涛の入稿データづくり、修正を終えて第一回目の色校が到着しました。

スクリーンショット 2020-11-27 13.53.13

この日は感染症が少し落ち着き、久しぶりにVIVISTOPで色校確認会をすることができました。(久しぶりに会ったえいきくんは背が伸びていてびっくり!)
出来上がったものを見たときはすごくうれしかったのですが、誤植がないかなど不安でドキドキもしていました。
ふたりとも見返しの完成度に興奮。見返しに印刷したデータの色は白と黒バージョンで印刷してもらい、どっちもいいね、紙質がいいな、などと盛り上がりました。そしてこの日はえいきくんの誕生日!えいきくんは買ってもらったカメラを片手にパシャパシャ。最高の誕生日だ!


ついに…

確認会を終えた後、細かい修正をし二回目の色校確認を経て遂に絵本が手元に届きました…!

スクリーンショット 2020-11-27 13.53.18


何回も何十回も見ているものなのに、ちゃんと本として手に持ってみるとすごくうれしくてページをめくりながら感激してしまいました。えいきくんも絵本確認会で嬉しそうにこれまであったことや苦労したことなどを話してくれて、本当にここまでやってこれてよかったなあ、とまたも感激。

最初は本当に絵本を作り上げることができるかな、とすごく不安でした。打合せ中も集中力が続かないこともままあり、やり方が悪いかな、どうしたら飽きないようにやれるだろうかといろいろ考えていたり…。しかし、えいきくんは提案したことにはしっかりと意見をぶつけてくれるし、やってほしいといったこともちゃんとやってくれます。自分だけで悩むのではなくて二人で話し合うということが重要なのだと学ぶことができました。

えいきくんもこのプロジェクトに参加して「絵を描くことも見ることも好きになった。」と自分なりに学んだことや発見したことがあったようでそれを聞いた瞬間に涙が…(グッとこらえましたが)

まだまだ続編も書きたい、小説も書きたい、グッズも作りたい!など二人とも夢はいっぱいあるのですが、ひとまず今回の絵本プロジェクトは紆余曲折ありつつこれで終了…。

ここまで読んでくださりありがとうございました。
少しでも絵本制作の裏側を知ってもらい、興味を持っていただけたら幸いです。

【ふたりの旅路】

スクリーンショット 2020-11-27 13.57.44

スクリーンショット 2020-11-27 13.57.50

スクリーンショット 2020-11-27 13.58.01

スクリーンショット 2020-11-27 13.58.13

スクリーンショット 2020-11-27 13.58.25

スクリーンショット 2020-11-27 13.58.36

スクリーンショット 2020-11-27 13.58.42

スクリーンショット 2020-11-27 13.58.49

スクリーンショット 2020-11-27 13.58.55

スクリーンショット 2020-11-27 13.59.01


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?