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前髪パッツン大五郎丸

略してパッツン丸。
彼女と最初に対面したのは約一年前。
最初、全く別の野良っぽい子猫を1匹見かけていたので捕まえて保護したいと思っていた。エサで釣ろうと考えカリカリを置いていると何と!もう1匹もう1匹と現れてトータル4匹!
それでもかわいそうに思い全員を保護する機会をうかがっていた。
ある日かすかな物音を聞き、風呂場のサッシを開け家の裏を覗くと、そこには例の子猫たちではない、ちょっと大きめの身体の真っ白なネコがいた。バチーッと目が合った。
身体は真っ白だけど顔はハチワレが途中でカットされたような、バカ殿のような、昔ブラジル代表サッカー選手にロナウドっていたけど、あんな感じの人の意表を突く髪型(模様)で思わず数秒見合ってしまった。あなた誰?!
子猫たちよりは大きいけれど、大人にはなりきれてない痩せてスラリとしたネコ。
そのうち子猫4匹と一緒にいる姿を何度か見て、ひょっとして若いお母さんネコなのかなと思っていた。
う〜ん、全部で5匹か〜…
子猫4匹とパッツン丸にカリカリをあげながら(もちろん近寄ったり出来ないくらい激しい野良)この子達全員を捕まえて避妊・去勢手術をするとなれば助成金の出ない我が市ではトータル20万円以上はかかるだろうな…それは痛いな…でも放っておけないしな…いろいろウジウジ考えていた。
それにどうやって捕まえよう?
ちょっと近寄っただけでシャーシャーキバをむいて威嚇するのだ。
全員同時に捕まえるなんてムリっぽい。
しかし、ある日を境に子猫4匹をパッタリ見かけなくなった。
そして久しぶりに見たパッツン丸の耳がサクラ耳(避妊手術済み)になっていたのだ。
勝手な解釈をすると、子猫たちはまとめて保護され、パッツン丸だけ避妊手術を受けて地域猫として放たれた?のかもしれない。
とは言え、依然として全く近寄れないほどの激しい野良なので根気よくエサやりを続けて「こいつは安全」とわかってもらうしかない。
カリカリを器に入れてさっさと消える毎日。
美味しそうな煮干しを手に持ってチラつかせると手をパーンとネコパンチされる。
爪で引っ掻かれて血が出た事もある。でも悪いのは私。
根気よく、根気よく、根気よく…
そうしてある日、私がいてもゴハンを食べるようになり、背中をポンポンさわれるようになった。
夫がタバコを吸いに玄関先に出ても、長男を見ても「あ、こいつら全員安全ぽい」と認識してくれるようになった。
毎朝玄関の外に来て遠慮がちに鳴いてゴハンをねだる。もう触り放題。
ずいぶんと大きくがっしりと太ってきて、初めの頃のスラリはどこにも無い。ウチだけゴハンをあげてもこんなに太らないだろうから、何軒かよそでももらっているのかもしれない。ケンカも強く、激しいバトルの声で外に出てみるといつもパッツン丸が優勢なのだ。

今では帰宅する私の車の音を聞いて、近道(ネコの道)を先回りして車庫で待つようにもなったパッツン丸だけど、今度は逆に、このネコは今さら一生を家の中では過ごせないかもと思う。
うちには歩くのもヨロヨロのばーさんネコがいる。今パッツン丸を家に入れるのはばーさんのストレスになると思うからやめておくとして、ばーさん亡き後パッツン丸を家に上げたとしても、彼女はどうにかして外に出たがるだろう。
ワクチンを打ってノミ取りの薬をつけても、外で何をしているかわからないのでは飼い主としての責任が持てないしな…。
でも冬の寒い朝、台風の日、いったいどこで過ごしているのかと思うと胸が痛む。
もしかしてだけど、本当にもしかしてだけど、
とっくにどこかの家のネコで、単におやつを貰いにうちに来てるだけ、という可能性もあり。
そんなわけで、今少し見守ってみたいと考え中。



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