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手紙の魔法


小さな町に住む小学5年生のカズトは、学校が終わると毎日図書館に通うのが日課だった。図書館は古びた木造の建物で、町の人々からは長い間愛されてきた場所だった。

ある日、カズトは図書館の隅っこにある、誰も使っていないような古い机を見つけた。机の引き出しを開けると、そこには古びた便箋とペンが入っていた。好奇心が芽生えたカズトは、その便箋に「こんにちは、誰かがこれを見つけたら返事をください」と書いてみることにした。

次の日、カズトは同じ机に戻り、驚くべきことに返事が書かれていることに気づいた。「こんにちは、私はこの図書館の精霊です。あなたの手紙を楽しみにしています。」と。

カズトは驚きと興奮を胸に、新しい手紙を書いた。「図書館の精霊さん、あなたはどんな本が好きですか?」そして、その日からカズトと図書館の精霊との文通が始まった。

数週間が過ぎると、カズトは精霊からたくさんのことを学び、図書館で過ごす時間がますます楽しみになっていった。そして、ある日、精霊はこう書いた。「私の好きな本は、この図書館にある『冒険者たちの物語』です。でも、私はもうすぐ旅立つ時が来ました。」

その手紙を読んだカズトは、少し寂しくなったが、精霊が最後に伝えてくれた「これからもたくさんの本を読み、想像の世界を楽しんでください」という言葉に励まされた。

それから数年が経ち、カズトは図書館司書になり、今度は彼が子供たちに手紙を書くようになった。「こんにちは、この図書館には魔法があるよ」と。誰かがその手紙を見つけるたびに、かつての自分と精霊との交流を思い出しながら、ほっこりとした気持ちになるのだった。


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