#3 Closed-loop の線条体インターニューロン刺激で grooming が減る

こんにちは。本日はこちらを紹介します。

Mondragón-González, Bruguière, Closed-loop recruitment of striatal interneurons prevents compulsive-like grooming behaviors, Nat. Neurosci., 2024 May 1
https://www.nature.com/articles/s41593-024-01633-3

概要

衝動的な行動は線条体の異常活動に由来し、PV+ interneurons (PVIs) による抑制が特に衝動的な行動を抑えるのに重要な役割を果たしている。
衝動的行動のモデルとして self-grooming を用い、それを引き起こしやすい Sapap3-KO マウスをモデル動物として、これに lateral orbitofrontal cortex (lOFC) から入力を受ける線条体の領域を opto で刺激すると、grooming が抑えられた。
さらに lOFC からの記録をもとに線条体への最適な刺激タイミングを算出し closed-loop を組むことで、刺激時間を減らすつつ同様の効果を得ることが可能になった。

背景

  • ヒトへの治療として obsessive–compulsive disorder (OCD) の患者に、線条体への DBS を行うと症状が改善することが知られている。

  • 通常時、皮質 → fast-spiking PVIs ⊣ striatal medium spiny neurons (MSN) というフィードフォワードの抑制が効いている

  • 衝動的行動から回復した患者やマウスの脳では medial striatal area での PVI の量が減少している

  • Closed-loop を使ってさらに詳細にどの PVI の寄与が大きいのか調べるのが本研究の目的

Fig. 1,2 Sapap3-KO mice で線条体を光刺激すると grooming が増える

Cre で線条体の PV+ Interneurons 特異的に ChR2 を発現させる。これは lateral OFC (lOFC) から投射を受けるようなもの。(Fig. 1a)
20Hz で刺激、task のなかで刺激を行うときと刺激しないときを 3 分ごとに繰り返す (Fig. 1c,d)
光刺激により、grooming をする回数が減る (e)、しかし一回の grooming の持続時間は変わらない (g)
光刺激でそれ以外のパラメータ (歩行運動やその他のリズム運動) は変化しない。(Fig. 2)

Fig. 3 lOFC の LFP のδ波成分が grooming の前に現れる

先ほどのマウスの lOFC に tetrode 電極をさして、LFP を計測
grooming が起こる 1 秒前の lOFC の LFP を見ると 1.5-4 Hz の成分が大きくなっている (Fig. 3a, e)

Fig. 4 OFC の LFP から grooming onset を予測する方法

tetrode を使った合計 32 本の電極から 20k で測定した LFP から予測を行う。各電極ごとに time window をずらしながら切り取った P 個のデータを M 種類のフィルターにかけて P x M の matrix をつくり、それを Neural Net に入れて予測を行う。
各電極ごとの予測結果の総和が閾値を超えていれば、Striatal PVI に光刺激を行う Closed-loop を作成する。

Fig. 5 Closed-loop 刺激により grooming を減らせる

上記の系で光刺激を行う。刺激は 5ms 20Hz 10mW を 4 秒間。
刺激なし (OFF)、ランダムなタイミングで刺激 (random)、Fig. 4 の方法で算出した良いタイミングでの Closed-loop 刺激 (CL) の 3 つの群を行う。
これらのタスクは同一個体で行って、3 min ごとに切り替える。

この結果、CL 群は random 群より有意に grooming が減る。

まとめ、感想

なにかを明らかにするというより、method 寄りの論文でした。
脳波からリアルタイムに onset を予測して Closed-loop で光刺激すると、目的の行動が防げるというのは面白いですね。
Discussion にもありましたが、この grooming という系だけでなく他のものにも応用できる可能性があるのも面白いです。

しかし Fig.4 でわざわざ 32 個の電極からとったデータを機械学習に入れて、onset を予測しているというのは、苦労を感じられます。
ただ単に delta power 取るだけなら、 LFP をとって band pass filter でいいと思いますが、そこでわざわざリアルタイム性の落ちるような機械学習を挟んでいるのは、従来の filter だけではうまくいかなかったゆえであると考えられます(あくまで憶測ですが)

そういう意味で、単純そうで意外と難しいことも、機械学習を使うとできてしまうかも… というのを示した一例として面白いと思いました。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?