#1 PPC は S1-M1の連携に関与する

少し古めの Review 論文ですが、面白そうだったので読みました。
PPC が情報の統合・選択 あるいは attention に関与していて、特に S1-M1 の連携がそれを示すよいモデルであるという Review 論文です。

Mohan, Kock, The Posterior Parietal Cortex as Integrative Hub for Whisker Sensorimotor Information, Neuroscience, 2018

https://doi.org/10.1016/j.neuroscience.2017.06.020


S1-M1 の統合に PPC が関わる

PPC は解剖学的なつながりから、cognitive や multisensory 特に sensorimotor な behavior に関与することが言われてきた。
皮質(視覚野、体性感覚野、聴覚野、運動野、PFC、RSC)の情報と、posterior thalamic nuclei の情報が統合されるのが、PPC であることが知られている。

ひげによる tactile exploration (触覚をもとに行う探索) では、皮膚感覚のために運動野と体性感覚野は統合される必要があって、実際そういった統合は S1 と M1 というレベルで起こっている。
しかし、S1 と M1 の統合は直接か、それとも PPC などを介しているか不明。

S1 と M1 のつながり

M1 は解剖学的にいくつかの subregions に分けられる。
medial agranular (AGm) は、出力(運動) にかかわり、AGm と AGl (lateral agranular) の境界にある TZ (transition zone) が体性感覚野からの入力を受けている。

S1 → M1 は主に M1 の TZ の vibrissal なところに入る (?)
S1 ↔︎ M1-TZ は相互に投射があって、M1 から見るとどっち向きも同じようなところに入る。(S1 のどこに入るかは言及なし)

投射は Layer specific で、M1-TZ の 2/3 層、5A 層に入る。
5B, 6層は S1 からの投射はほぼなく、脳幹の運動核や第VII神経(顔面神経)の運動核と繋がっていて、顔面からの sensory 情報をとってくる

5 層への電気刺激では、AGm のほうが sensory input region よりも、よくひげが動く。
しかしひげを刺激して反射で動かさせた時は、sensory input region のほうがよく活動している。(Smith, Alloway, Front. Neural Circuits, 2013)

PPC と S1, M1 のつながり

PPC → M1 は M1 の caudal AGm の 2/3, 5 層に入る。
M1, M2 → PPC は知られているが、cell-type や layer で分けた研究はない

S1 は barrel columns と septum columns に分けられる。
barrel は lemniscal pathway (皮膚 → DRG → … → S1) の一部で、視床の VPM から投射を受ける
septum は paralemniscal pathway (動きに関連した感覚) を成し、視床の POm から投射を受ける
(詳しくは、Ahissar, And motion changes it all, Nat. Neurosci., 2008 の Fig. 1 など)

S1 → M1/PPC は、S1 の barrel edge と septum からが多い。
barrel column からは S1 → PPC はあんまりない。

ここから、S1 → M1/PPC は paralemniscal pathway の一部で、 PPC が運動と感覚の統合のための hub になっているといえる。

PPC の機能

PPC は、attention, evidence accumulation, decision making などに必要な情報の総和を、前脳基底部から受け取る
また PPC は視床の lp, ld, p から投射受ける
→ これらのことから PPC に何か特定の機能を割り当てることはできない

PPC injury はさまざまな障害を引き起こす。
ex. 方向感覚、allocentric processing

PPC を opto で操作した知見によると、皮膚感覚や聴覚に対応した decision には関与しないが、visual decision は PPC disrupting で激しく障害される。
tactile decision でもより高度な情報を要求するものには PPC が関与する。

ここから考えられる仮説として、
S1 の情報とそれ以外の情報を結びつける学習において、PPC は学習初期に大きく関与するが、うまく attention が S1 に向くようになってからは PPC はタスクパフォーマンスに影響しない。

attention や外部刺激の表象を最大化する fronto-parietal network の一部として PPC ははたらいている。

PPC でわかっていないこと

PPC は S1, M1 連携だけでなくさまざまなことに関わっている。
筆者は PPC の future study として以下のようなものを挙げている。

  1. それぞれの behavior に対応する layer や cell-type などを明らかにする

  2. よくわかる behavior に対して、cell-type ごとの I/O を明らかにする

  3. PPC layer 全体に渡った受容野、somatotopy の解明

  4. PPC が最も行動に寄与するような tactile condition の探索

  5. sensorymotor processing やそれ以外の認知課題が、 PPC network の一部だけを誘起するか全体を誘起するか

筆者らは、齧歯類のひげを使った sensorymotor processing に関する課題は、PPC の microcircuit を明らかにする上で、十分単純でよいモデルであるとしている。


感想

PPC についてよく知らなかったので、読むのに苦労しましたが (3 時間くらいかかった)、おもしろかったです。
情報の統合を行っているタスクとして、Schmitt, Halassa, Nature, 2017 が思い浮かびましたが、あれは MD thalamus と PFC の連関でしたね。あのタスクでも PPC かかわるんでしょうか。
PPC にうまく介入してみたいですね。むずかしそうだけど

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