あの頃(3)ハンドメイド
私はハンドメイドが好きだ
お菓子も作るし、パンも焼く
棚も作るし、帽子も作る
でも、売れるようなものは一つも作れない
デコレーションしたケーキではなく、パウンドケーキを焼く
型抜きクッキーではなく、スプーンでドカドカ置いたクッキーだ
ペンキなど塗らないが、ぴったり収まる棚を作る
文章同様、愛想がない
一番好きなのはパッチワークだ
といえば、美しい作品をイメージするかもしれない
パッチワークを知らないかたのために軽く説明すると、パッチワークというのは三角や四角の細かなピースの組み合わせによって多種多様な柄を作り出すものを指すことが多い
愛想のない私には無理である
というわけで、私は単に小さな布を四角く切って、繋ぎ合わせて1枚の布にする
クレイジーパッチワークといって、色んな形の布を好きなように繋ぎ合わせて1枚の布にするときもある
元になる小さな布は、思い出の品の切れ端だ
1番古いのは妹とお揃いで着た浴衣の生地だ
これは私の飴ちゃん入れの裏地の一部になっている
それから子どもたちの着た服
お気に入りのハンカチ
祖母が遺してくれた服
私だけに意味がある作品で、誰に見せることもない自己満足と思い出の塊だ
穴が開けば、新しい思い出が仲間入りしていく
これは、君がまだゲップも出来ない頃に着ていたズボンのポケット
これは、君がお気に入りだったTシャツ
これは、君が買ったばかりなのに穴を開けたズボン
子どもは洗脳だと笑う
記憶もない時代を覚えているみたいな気持ちになるらしい
良い思い出だけを集めてあるから、洗脳されときなさいと私は笑う
思い出したくなるときもあるかもと、部活のユニフォームを渡してくる子どもは大きくなってもかわいい
今も、いつかあの頃になる
今は未来に繋がっていく
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