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僕と私と旅ひとつ

私は旅に出た。

電車に揺られながら、何時間も遠くの地を目指した。あてのない旅だった。
ゴトンゴトンと揺れる中、私は何もすることがなく正面の窓の外を眺めていた。
変わるがわる景色は流れていく。
山も川も海も見た。それでも電車から下りることはしなかった。

「次はー蝶の池ー。蝶の池ー」

急にふと耳に入ってきた。これまで流れていたアナウンスは雑音のように聞き取れなかったのに、突然聞き取れた。

降りよう。
きっとここが私の旅の始まりかもしれない。そう思って、吊り棚の年季の入ったボストンバッグを手に取った。

出入口に近づいて、扉が開くのを待つ。
その間に見える景色はなんとも言えないものだった。
深い森の中をくぐり抜ける間、合間に青い蝶がゆらゆらと何匹もいるのが見えた。蝶だ。見たことの無い色をしてる。
今にも掴みたくなる心を抑えてそのまま外を見ていると、今度は深い森が開けて渓谷が現れた。

電車は渓谷を少しづつ下る。
その中央にある湖がキラキラと輝いて見えた。いいや違う。あれは、森の中で見た蝶がいくつも集まっている様子だ。
湖面が反射しているのに加え、蝶の独特の青が発光して、まるで次元を超えたかのような光景だった。

渓谷を下る。下る。下る。
たどり着いた先は崖だった。

「終着点ー蝶の池。蝶の池ー」

アナウンスが鳴り響く。
どうやらここが終点のようだ。
とても綺麗な場所に来れて、私は満足していた。

電車の扉が開き、一歩踏み出す。
たどり着いた駅は無人駅のようだった。
出入口の機会はなく、職員もいなかった。仕方なく箱に切符を入れて外へ出る。

出た先には、これまた見た事のない光景が広がっていた。

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