写生について1 平福百穂①
「写生」はスケッチの訳語として定着しているが、歴史的にみれば用法は多様で、中国から江戸時代、そして日本近代にいたるまでの変遷は非常に複雑。身近な隣人のふりをしていて、一向にその輪郭さえ掴めないような難解さがある。
明治から大正、昭和にかけて画家・歌人として活躍した平福百穂は、写生するならば「梅になりきってこい(=描写対象と同化/融合してこい)」といっている。「香りや魂(=内面的/主観的)」ばかりではダメで、「白い花びら紅いウテナ※(=客観的なかたち)」もあって、はじめて「梅