ファン・サポーターをミスリードするような言動はどうなんですかね?という話

Jリーグにはホームタウン活動というものがあります。

ホームタウン活動
地域に愛されるクラブとなるために、Jクラブはホームタウンの人々と心を通わせるためのさまざまな活動を実践しています。Jリーグでは、ホームタウン会議などを通じて、各クラブのホームタウン活動の共有や情報交換、各種調査などを行い、同活動を推進しています。

https://aboutj.jleague.jp/corporate/aboutj/hometown/

毎年、各クラブが行った活動は、Jリーグホームタウン活動調査として活動報告が公表されています。2019年版はこちら ( pdf )
ここで注目したいのが、調査概要

■ クラブによるルール解釈・報告精度の違いを調整できていないため、あくまで参考値としてご覧ください。
■ クラブにより、一部が異なるフォーマットで集計を実施しています。

https://www.jleague.jp/docs/aboutj/hometown/2019-hometown.pdf

これは、各クラブから報告された数字の内容がバラバラであることを示しています。
例えばAとBという2つのクラブが、50店舗が入る商店街で、同じ内容の活動を行い、ホームタウン活動に計上します。すると以下のようなことが発生します。
・Aクラブは商店街で活動を行ったとして、1件で計上
・Bクラブは商店街にある50店舗で活動を行ったとして、50件で計上

同じ活動内容でも、数字にすると大きな差が発生します。これはABどちらが良い悪いではなく、Jリーグ側がルールを厳密に運用出来ていないから起きてしまう事象です。だからこそ、調査概要にあくまで参考値としてご覧ください。という一文を入れています。

サッカーダイジェストのランキング発表

2019年のJリーグホームタウン活動調査がリリースされ、4月30日にサッカーダイジェスト (以下サカダイ) が以下の記事を出し、各クラブの活動回数を元にランキングをつけました。

Jリーグが参考値としている数字をランキング化することに何の意味があるのか?また、記事には参考値だということも記載していません。

ちなみに、4月28日にはゲキサカが似たような記事を出しています。これは湘南ベルマーレの公式リリース『【ご報告】「2019年度Jリーグホームタウン活動調査」について』に基づいて書かれた記事で、あくまでサカダイが独自に作り上げた記事とは毛色が違います。

サポーターの反応

サカダイの記事が出て、各クラブのサポーターが反応しだします。ツイッターで「2019年度Jリーグホームタウン活動数」で検索すると、たくさんの方がこの記事をリツイートし、サカダイが勝手に作り上げたランキングに基づいての様々な感情が乱れ飛びます。「誇らしい」「頑張った」「何やってるんだ」「こんなのものか?」「悲しい」「ここまで酷いとは」などなど。ちなみに、ゲキサカの記事ではここまでの反応が見られません。湘南にフォーカスを当てたこと、ランキングを記載していない為と思われます。

クラブの反応

では、各クラブはどういった反応をしたのか?湘南は先ほども触れたように4月28日にリリースを出しています。何をもって湘南が1位と言っているのか不明ですが、もしかしたら、4月22日にアルビレックス新潟がリリースした『【ご報告】「2019年度Jリーグホームタウン活動調査」について』 を見て、「では我々は1位か」となったかもしれません。さらに、サカダイは新潟・湘南のリリースを見てランキング記事を作成したのかもしれません。

それでは他のクラブはどうか?検索したところ、少し前の出来事ということもあってか、ほとんどヒットしません。FC東京がこちらのリリースを出していますが、FC東京自身の前年比の結果と活動の内容を簡単に伝える内容です。また、FC琉球はFacebookでJリーグのホームタウン活動報告レポートをリンクしているだけでした。

ほとんどのクラブがJリーグホームタウン活動調査の公表をニュースにしていないようです。念のため、サカダイ曰く上位5クラブのリリース (2020年4月分) を確認しましたが、3位のFC東京は上記のとおり。4位の川崎フロンターレ、5位の浦和レッズはこの件に触れているのを見つける事が出来ませんでした。

驚愕のツイート

サカダイの記事に様々なコメントがついたり、ツイッターでの各クラブサポーターの喜怒哀楽を見る中、ふと目についたツイートに驚愕しました。

アルビレックス新潟の社長、是永氏のツイートです。サカダイが勝手に作り上げたランキングを引用し2位と言っています。なぜか4月22日に自クラブから行われた公式リリース、ツイートを引用せずに、4月30日にヤフーニュースに掲載されているサカダイの記事を引用しています。ちなみにヤフコメにも、このランキングについて指摘している方がいます。

「2019年度Jリーグホームタウン活動数」55クラブのランキングを発表-あなたの地域のクラブは何位?(SOCCER-DIGEST-Web)のコメント一覧-Yahoo-ニュース

そしてもう一人。水戸ホーリーホックの小島氏です。ツイート当時は副社長であり、7月16日に代表取締役社長に就任されました。

小島氏も10位と言っています。ポジティブなコメントを添えていますが、そもそも一体何が10位なのでしょうか?

自分は「メディアが勝手に作ったランキングを発表してる」にも関わらず、サポーターの一部が騒いでいる程度にしか思っていませんでした。が、クラブの人間、しかも社長クラスが言及していることに困惑しました。何度も活動調査を見直しましたが、自分の解釈違いだとも思えない。実際、ヤフコメや掲示板でも、同じ指摘をしてる人が存在しています。また、関連しそうなツイートを探しましたが、この件に言及しているJクラブ関係者はほとんど見当たりませんでした。(どこかのスタッフを一人見たぐらい。)

既成事実の構築を垣間見る怖さ

一体何なんだろう?と思いながらも月日は流れ、モヤモヤが薄っすらと消えかかったころ、またしてもサカダイによる記事を見ました。
記事の中身は割愛しますが、要するにホームタウン活動で2位という結果を受けてのアルビレックス新潟に取材をしています。

もう1度振り返りますが、Jリーグはあくまで参考値だとしています。
50店舗が入る商店街で、同じ活動を行っても解釈が違えばこうなります。
・Aクラブは商店街で活動を行ったとして、1件で計上
・Bクラブは商店街には50店舗ある事から、50件で計上
また、「えっ?あの活動も件数に数えて良かったの?」という事も十分にあり得ます。これだけ振り幅の大きい数字を、ランキングには出来ません。

さらに言えば、なぜ取材対象が1位の湘南ではなく、新潟なのか?
湘南(2,535回) > 新潟(2,041回) > FC東京(1,995回)
新潟とFC東京の差は46、対して湘南と新潟では494の大差。この差を見ても、驚異的ホームタウン活動回数の湘南に取材すべきではないでしょうか?なぜサカダイが、追加取材まで行うのか?自分には、「作ってしまったランキングを正当なものにしてしまおう。」という意図にしか見えなくなりました。そしてその取材をしっかりと受けている新潟もまた然りです。

時系列で見る疑問と推測

時系列で見るとJリーグからホームタウン活動調査の報告が各クラブにあり、まずは新潟が自分たちは2位だというポジションをとった。
それに遅れるかたちで湘南が自分たちは1位だと発表。そしてそのリリースを元に、メディアが記事化した。という流れになります。
4月21日:Jリーグ・ホームタウン活動についての報告
4月22日:アルビレックス新潟 リリース新潟公式ツイート
4月28日:湘南ベルマーレ リリース 、 ゲキサカ記事
4月30日:サカダイ記事湘南マスコット公式ツイート、是永氏、小島氏ツイート

この一連の流れの中で以下の2点に疑問を感じます。
1. そもそもの発端として新潟は、なにをもって2位としているのか?
2. 他のクラブがほとんど言及していないのはなぜか?

それぞれに対する自分なりの考えは以下の通りです。
1について。
新潟は、単純に数字を拾い、2番目に多いから2位とリリースした。なぜか?『55クラブの中で2番目に高い位置にいる』とすることで、クラブのブランド強化、サポーターの顧客ロイヤルティの向上を狙った。
そうでなければ、『単純な勘違い』となります。参考値でしかない数を、『勘違い』で他クラブと比較し、順位をつけ、あげく社長がツイートで2位だと言う。それはそれで運営自体に問題があるのではないでしょうか?

2について。
そもそも評価しにくい数字なので、伝えにくい。言及するのであれば、FC東京のように自身との前年比しか出来ない。しかし、これもやっていないクラブが多い。おそらく『活動1件という数字』の定義が難しく、前年比ですらオフィシャルとしては言及しにくいのではないか?と思います。

サポーターからの理不尽なバッシング

各クラブのサポーターの反応を見ていて、これは良くないなと感じたのが、『愛するクラブが地域に貢献していないと見えてしまう』ことで起きる、
クラブへの怒りと悲しみ。そしてバッシングです。

ランキング化することで、上位クラブのサポーターは誇らしい気持ちになるでしょう。また、ボランティアなどに参加している方も、クラブと共にさらに地域貢献に励もうとするでしょう。それは結果として、クラブのブランド強化、サポーターの顧客ロイヤルティの向上につながります。
一方で、下位クラブのサポーターに生まれるのは、クラブへの怒りや失望というネガティブな感情です。
普段からクラブ運営を肯定的に見ている人、否定的に見ている人など、サポーターには様々な人がいます。今回の件で生まれた一部のサポーターのネガティブな感情は、いつか何かのきっかけで爆発するかもしれません。下位クラブは、まったくいわれのない記事によって、一部のサポーターからイエローカードをもらっている状態なのです。

湘南ベルマーレの2535回と柏レイソルの36回という数字を見れば、柏は異常に少なく見えます。しかし同時に湘南の2535回という数字も、異常なほど多いとも言える数字です。真偽がどうではなく、良いも悪いもありません。Jリーグがルールを厳密に運用出来ていないから起きてしまう事象です。だからこそ参考値でしかないのです。比較できないはずの数字なのです。

誠実であって欲しいクラブ運営

今現在に至るまで、この件が話題になることはありません。調査概要の一部にあるように、とにかく評価しづらい数字に尽きるからだと思います。また、このコロナ禍において、通常とは違うスケジュールの中でJリーグの開催が進む今、わざわざ取り立てて話題にする必要もないのです。

とはいえこの件、自分はJリーグホームタウン活動調査をランキング化したサカダイに元凶があると考えていますが、それを強力に補足してしまうクラブ。特に新潟、水戸の姿勢に、また別の悪さを感じます。

それは、自クラブのサポーターに対し、嘘をついているのでは?ミスリードを狙っているのでは?ということ。さらに他のクラブに飛び火している事態を招いていることです。
自分たちに都合よくしたいがあまり、その言動は、嘘を纏っていないか?誠実なのか?どうとでも取れるような、紛らわしい表現をしていないか?

沢山のファンやサポーターの想いを抱えるスポーツクラブだからこそ、その運営には誠実さを失って欲しくないと強く思います。







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