見出し画像

『ビバおじさん』第18話

      ◇◇◇

 僕の目尻に涙が浮かんでいることに気付いたマホちゃんが制服の袖で拭ってくれた。

「な、何?辛いことでもあった?」
「ううん、何でもないよ」
「そう?じゃあ、楽しいこと、しよっか!」

 マホちゃんの手が僕の太腿に当たり股間に移動しようとしていた。このままでは青春の1ページ、大人の階段をのぼる章が始まってしまう。しかし本当に好きになってもらう前にそういうことをするのは僕のルールに反する。

「枝遊び!」
「枝遊び?」
「うん、枝遊び!楽しいことって言ったら、枝遊びでしょ!」
「うーん?枝遊び、ね?前もやってたもんね?」
「そうそう!ほら、これ、マホちゃんの分。あ、飲み物は何が良い?"コルピス"と"正午の紅茶"と」
「正午ティーで」

 マホちゃんは枝を受け取ると器用に組み立ててゆく。やはりこの子、素質がある。感心しながらコップを2つ置き、正午の紅茶を注ぐ。

「前も思ったけど上手だね」
「ほんと?嬉しいな。でもビバさんのその......何て言うのか分からないけど......凄い組み立て方は真似できないんだよね」
「一応、一級建築士だから、ね!」
「えー!すご!いつか家建ててもらお!」
「うん!うん!ゲッシホームに是非!」

 気を良くした僕はマホちゃんに名刺を渡して、様々な木の枝の組み立て方を教えてあげた。しかしマホちゃんのマイホームか......もし、もし万が一だけど、一緒に暮らす人が僕だったりしたら、良いな。でもきっと、こんな良い子にはもっと相応しい人が......。







------------------------------------------

  
  読んでいただきありがとうございます。
   
   『ビバおじさん』は毎日連載中。
 
 これからも応援していただけると嬉しいです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?