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『ビバおじさん』第3話


      ◇◇◇

 8時10分。清水さんの淹れてくれたコーヒーを片手に、今日も仕事開始だ。

 渡された設計図を元にミニチュア模型を作る。これが、僕の仕事。誇りを持って、丁寧に取り組む。

      ◇◇◇

 11時03分。模型を仕上げていると毛先を遊ばせた憎たらしい男がこちらに近付いて来る。毎日1時間くらい遅刻して出社するの、社内でなぜか許されてる雰囲気だけど、僕は許していないぞ。

「ビバさん、おはよっす」
「あぁ、山田くん。もうおはようの時間じゃ......これ、頼まれてた家の模型」
「おー、良い感じっすね。間違えて風呂場にダム作ってませんよねー?」
「ははは......」

 彼は同期の山田。同期とは言っても彼は新卒で僕は中途だから、ちょっと年下。チャラくて苦手だけど要領が良くて、羨ましい。でも嫌い。

「あ、これあげます。おにぎり3個」
「良いの?」
「定例会議用だったんですけど。お偉方はサンドウィッチの気分だったみたいで」
「そう。でもお弁当あるし」
「ビバさんなら食べられますって!どぞ!」
「じゃ、じゃあ、ありがたく」

 ビニール袋を丸めてゴミ箱に捨てる山田。袋におにぎりしか入っていないのならビニール袋ごと寄越すべきだ。何も、おにぎりを素手で渡さなくたって。

 というかおにぎり3つ、って。僕が炭水化物を与えれば喜ぶデブか何かに見えているのか。昼食は自分で作った弁当があるって言ったのに......。






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