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噓日記 1/29 格ゲー

最近、どうしようもなく格ゲーがしたい。
もともとそんなに得意な方ではないが、昨今の格ゲーブームを見ていると昔のようにレバーを握りたくなる。
今からでも遅くない、また殴り合いの日々に帰りたい、そう思うのだ。
現役バリバリでゲームセンターに通っていた当時の俺の連勝記録は8連勝が最高。
玄人格ゲーマーからすれば大した記録ではないだろうが、これは俺が800円分他人からぶんどったとも言い換えられる。
金のような生きていく上で必要なリソースを他人から奪う、そんな快楽は若い俺からするとたいそう刺激的だった。
格ゲーの良いところは、そんな「リソースとのバランス」が絡み合った男の張り合いだと思う。
練習してきても練習してないかのように振る舞い、負けても少し首を傾げるくらい、両替に行く時は隠れてコソコソと。
そんな意地の張り合いの場が俺たちにとっては格ゲーだった。
特に俺のように運動部に入らなかった学生は、元々持っている闘争心をぶつける先がないものだからそういったゲームセンターのような場でしか意地を張れなかったのだ。
当時は帰宅部の奴らを連れ伴って学校終わりに頻繁にゲームセンターに通っていたのを思い出す。
オタクっぽいやつらは音楽ゲームコーナーに置き去りに、ヤンチャなやつらは格ゲーコーナーに、といった具合に表に出ている闘争心でプレイするゲームが大別できたのが今思うと面白い。
俺も最初はゲームセンターに行っても小川直也のマッスルジャッジメントで背筋力と握力を計測するくらいしかやることがなかった。
だが、ある日友人に誘われて格ゲーに触れた瞬間、俺の脳みそは勝利の味に飢え始めた。
友人をこのゲームで完膚なきまでに叩き潰したい、そんな欲求が湧いたのだ。
練習を続けていくと、友人はどうにか倒せるようになってくる。
すると周囲の勝利に飢えた格ゲーマーたちが対面の筐体から乱入するようになってくる。
相手がコインを入れた瞬間に勝負は決する。
俺はそのチャリンという音を聞いた瞬間に、筐体をググッと前に押す。
対面のプレイヤーをそのまま壁際に追いやる。
ムチッだとか、プチッという小さな音が壁際から聞こえる。
潰す。
筐体でヒョロガリのオタクを潰す。
そこからがプレイスタート。
存命のオタクはどうにか勝とうと抗ってくるが、ピンチになったらまた筐体を壁にグイッと押しやってやると反撃の手が緩くなる。
それがチャンス。
俺の格ゲーマー人生で得た格ゲー必勝法の一つ。
そして8連勝で追い出され、出禁になった幻の技。

どりゃあ!