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噓日記 1/3 飲み会前

今日は昔馴染みの同級生たちとの飲み会がある。
だから、家を出る前の早いうちから日記を書いておく。
俺の日記の作法の一つがこれだ。
飲み会前には、振り返ることが大してなくても忘れないように日記を残すようにしている。
飲み会から早く帰れたとしても酔っ払って書く文章なんて読めたもんじゃないし、まともな文が書ける程度の酔い方で帰ってくる気もないから。
だからできる限り素面のうちに日記みたいな文章関連のタスクは消化しておくに限るのだ。
頭が冴えている状態じゃなければいい文章なんて書けない。
なんて文章を書いている今もワインを二本空けている。
この文章はいい文章ではない。
ワイン二本というと酒に弱い人間だったらぶっ倒れていてもおかしくない。
我が家の人間は遺伝のおかげか一般よりも少しだけ酒に強い。
酔うまでにかかる時間と金が段違いなので普通に迷惑している。
先祖の掛け合わせが奇跡的にまあまあ酒に強い一族を産んだのだ。
でも一杯で酔える方がコスパもタイパも抜群。
まあまあ強いだけの肝臓を抱えて俺は生きていく。
遺伝とは血の残した呪いのようなものだ。
うちは数代前に海外の血が入っている。
だからなのか、たまに青い目をした子どもが生まれたり、色素の薄い髪をした子どもが生まれることがある。
そしておしなべて皆がまあまあ酒に強いのだ。
あとは普通に日本人。
欲しいところに海外の血の作用がほとんど発揮されない。
男前に生まれるだとか、美女に生まれるだとか、全然そんなことない。
田吾作って名前で普通に日本で生きていける程度のルックスでしか生まれてこない。
いい感じの遺伝を期待して生きてきたのに。
俺はアレックスって感じの顔で生まれてきたからまだ許せる。
でも他の皆はほとんど肝臓が強いだけ、たまに目やら髪やらが先祖返りするだけの田吾作。
おい、めっちゃ生きづらい一族じゃん。
一族郎党みんな生きづらい。
俺も幼い頃には明るい髪色をいじられたりしたこともあった。
その度に喧嘩をしたし、痛い思いをすることもあった。
この一族に生まれたからと、血を恨んだこともあった。
まあ、俺は普通に染めてただけなんだけど。
ってことは、俺が生きづらいのは俺のせいじゃん。
親戚から柄が悪いと言われるのも、たまに職質に合うのも、全部全部俺のせいじゃん。
日記を残すとかどうでも良くなってきた。
暴れよう。
我が血をもって、力の限り暴れよう。
今夜の飲み会、俺は修羅となる。
以上が西郷隆盛最後の言葉と言われている。

どりゃあ!