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噓日記 1/25 雪遊び

連日の雪ということもあって、雪が降っても積もらないで有名な我が地方も珍しく朝から雪が積もっていた。
こんな日にやることといえばたった一つ。
雪遊びだろう。
あとは何もいらない。
起きてすぐに職場に当日欠勤の連絡を入れ、ついでに爆破予告もする。
もちろんどちらも匿名で行う。
俺が休むってちゃんと伝わってたらいいなぁ。
あと、会社爆発しねーかなぁ。
隕石降ってきて会社だけ爆発しねーかなぁ。
煩わしい社会との関わりをこれで断ち切ったところで雪遊びの準備だ。
倉庫から、通販で買った雪玉を簡単に作れるという変な器具とソリを取り出す。
どちらも四年くらい前に衝動買いしたはいいものの、雪が積もらねぇもんだから倉庫の肥やしとなっていたもの。
遂に日の目を見ることとなる。
まず変な器具の方から。
積もった雪をその器具で挟むと綺麗な雪玉ができるという触れ込みだ。
器具を使い、雪をギュッと挟んでみる。
本当だった。
まん丸な雪玉が簡単に作れた。
俺はそれで何度も雪玉を作っては近所の大嫌いなジジイの家に投げ込む。
ハンマーブロスみたいにコントロールより量重視で。
ジジイの家はあっという間に雪だらけ。
これでジジイも寒さで震えることだろう。
ざまぁみろ。
この町で俺に好かれないとこういうことが起きるのだ。
ジジイには来世で反省してほしい。
お次はソリだ。
ソリなんて大人は乗らない。
でも雪の前で大人は子どもに帰るのだ。
ちょっとした河川敷の坂を見つけて滑ってみる。
大人を乗せたソリはほとんど弾丸になる。
ソリと一体になった俺は弾のような速さで坂の下まで一直線に滑り降りる。
途中で音速を超えた。
四肢がバラバラになりそうな強い衝撃をその身で感じながら、音の壁を超えていく。
そして遂には光をも追い越す。
視界の端で捉えていた景色が情報として置き去りにされていく。
坂の下に降りた時、俺は酷い孤独感を覚えた。
あと普通にタイムスリップしてた。
元禄16年、1704年まで俺の体はタイムスリップしていたのだ。
俺はそこで町民たちに捕らえられ、軽い拷問を受けることになる。
額に入れ墨をノリで入れられ、筆で体を薄く撫でられ、見ぐるみを剥がされ。
軽い拷問だ。
正直、会社に行くくらいならと思うとこれぐらいの拷問には耐えられる。
会社に行かず拷問を受ける日、それが今日。
町民たちに辱められた俺はその足で江戸の街に火を放った。
火事と喧嘩は江戸の華って言うらしいじゃん。
俺にも華、見せてくれや。
これが後の水戸様火事。
あったけぇや。

どりゃあ!