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噓日記 2/4 法律施行日

「法律を作れるとしたらどんな法律を作る?」
そんな心理テストみたいな質問を親戚のガキからされた。
正直、浅学非才なこの俺が考え出せるような法律なんて偉大な先人の頭から既に飛び出して法整備されていることだろう。
俺はそこで口を噤んでしまった。
頭の中を渦巻く欲求と理性の折り合いがつかなかった。
だが、こうして日記を書いている時、少しずつ作りたい法律が見えてきた気がする。
夜は自分勝手な時間だ。
俺のための俺の時間。
俺のための法律を考えるには丁度いい時間。
もし俺が法律を作るなら、女の子は一旦俺を好きになるという法律を作りたい。
めちゃくちゃキモいよね。
こちとら死活問題なので法整備でガチガチに固めてからどうにかしようとしてるんだ。
人の法整備を笑うな。
ただ、一旦俺を好きになれば正直逃がさないという自信がある。
俺は釣った魚に餌をやるタイプ。
ガキの頃、夜店の金魚掬いで掬った金魚を10倍くらいの大きさに育て上げた男だ。
実績がある、そして覚悟がある。
魚と人間の違いについては一旦目を瞑ってほしい。
その実績から分かると思うが俺は庇護欲が強い。
その庇護欲から湧き出る感情なんだろうが、俺は誰かを幸せにしたいという欲求が恐らく人一倍強い。
誰かの幸せが即ち俺の幸せなのだ。
だからこそ人を幸せにするための振る舞いには一家言ある。
まず、俺は誰かを幸せにするために美味いものを食わせる。
三大欲求に直接的に訴えかける方が魂に響くのだ。
俺は地元の美味い食い物について、同世代の中では詳しい方だ。
同世代のバカ舌共はどうせ写真に撮った時オシャレだとか、旨みや香りが強いだとかを良い食べ物の基準にしているんだろうが俺はもう次元が違う。
人間が元来持っている舌の機能、そこで感じられる味の変化について、俺は人を感動させる手札があるのだ。
マカロンだ、シュークリームだぁ?
なめんじゃねーぞ、と。
こちとらもっとええもん知ってんぞ、と。
俺は俺の作った炒飯が一番美味いことを知っている。
他のものは全部不味いとさえ思っている。
俺のところに来たら、この美味い炒飯を毎日3食、365日食わせてやれる。
もうそれだけで十分だろ。
生娘シャブ漬け戦法だ。
俺の炒飯にはそれだけの魔力がある。
俺は自分で好きな法律が作れたら、女の子には一度俺の炒飯を食べさせる法律を作る。
美味いからさ。
マジで食ってみてよ。
俺、法律作れねーからさ。
一回でいい。
食ってみてくれ!
もう、女の子に好かれる武器がそれくらいしかねーんだ。

どりゃあ!