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噓日記 1/27 行きたい場所

行きたい場所。
俺にとっては特別な場所。
それがミシガン州。
ミシガン州に何があるのかはマジで何にも知らない。
名前の響きが面白いから好きなだけ。
ちっちゃいお菓子みたいな名前が良い。
仁丹みたいなお菓子。
紫色の仁丹、味紫丸。
背中が160°くらい曲がってるババアがカバンに入れてるお菓子。
紫蘇みたいな味がする。
聞いたことない栃木の有限会社が作ってる。
有限会社ハリソウ製菓。
ネットで調べたら親族が十五年前くらいに作ってくれたんだろうなぁっていう背景が薄緑のホームページが出てくる。
保護されてない通信。
社長の顔写真が載ってるけど多分写真をスキャンしてアップしてる。
創業1968年。
今の社長で二代目で甥っ子と二人で経営。
商品ラインナップは四種類、味紫丸、そばぼうろ、練り梅、杏ジャム。
一番売れてるのは杏ジャム。
地元のスーパーによく卸してる。
あと、介護施設と近隣の幼稚園にも卸してる。
社長が趣味でやってる水彩画がパッケージイラストに使われてる。
パッケージは近くの知り合い印刷屋の伝手で作ってる。
杏ジャムは小瓶タイプと小袋タイプの二種類。
小瓶タイプは家庭向け、小袋タイプは施設向け。
最初は小瓶タイプしかなかったけど、介護施設の代表と社長の仲が良くて頼まれたから作ってる。
そばぼうろは社長の奥さんが京都出身だったから作り始めた。
人気はあまりないが奥さんが一番好きだった商品なので今でもラインナップからは無くならない。
奥さんは2012年に亡くなっている。
毎日、仏壇に一枚のそばぼうろを供えてから、社長の一日が始まる。
練り梅は社長の娘さんが子どもの頃、梅が大好きだったことから喜ばせるために考案。
チューブタイプで、娘さんはいつもそれを口に咥えて喜んでた。
そんな娘さんも現在三十八歳。
県を跨いで埼玉県に暮らしている。
夫と九歳の娘と四歳の娘の四人で暮らす。
月に一度は社長の家に帰って少しだけ身の回りの世話をしてやる。
社長は元来マメな人なので掃除も行き届いているが、庭の手入れだけは雑なので家族みんなでその日は雑草を刈る。
孫二人は社長をジイと呼ぶ。
孫が好きなのはチョコレート。
娘は虫歯が心配なのであまり甘いものを食べさせたくないが、旦那が甘いのでちょくちょく仕事帰りに買って来ては二人に与えている。
そんな孫を喜ばせるために社長が考案し、商品化したのが味紫丸。
脈絡がなく味紫丸。
紫蘇味。
紫色。
真顔。
めっちゃ怖い。
俺はミシガンと聞くとここまでエピソードが思い浮かぶ。

どりゃあ!