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噓日記 9/18 回転寿司

コロナ禍になって初めてだろうか、久々に回転寿司屋に足を運んでみたら寿司が一切回転していなかった。
アイデンティティを失った回転寿司業界は今何を思うのか、そう考えるとこの数年で世界は大きく変革を遂げている。
かつての回転寿司といえば皿に乗ったシャリ飯に魚の死骸を乗せた何かが無尽蔵に店内を回転し続けるという酷く非倫理的なものであったが、現在ではタッチパネルで注文し、注文したものだけが各客席に届けられるという効率的なものへと変化している。
また、注文を管理するシステムも以前は皿の枚数を人力で数えたり、席に備え付けられたカウンターに投入するシステムが用いられていたがそれも変わっていた。
もともとタッチパネルでのみ注文を受け付けるため、皿の枚数などで不正を働けない構造になり、カウントするという工程自体が省略可能になっていたのだ。
更に大きな変化といえば注文から提供されるまでのスピードの圧倒的な向上。
恐ろしく早くなっている。
今日私が訪れた店舗ではほとんど満席にも関わらず、タッチパネルで注文をした1分後には寿司が提供された。
思えばかつての回転寿司では、レーンを回る寿司を基本のラインに添えつつ、そこから不足分を注文するというシステムで運営されていた。
しかしこうして、レーンから寿司を排除することによって必要な分だけ寿司を作れば良くなったことで圧倒的なスピードによる提供が可能になったのだ。
そもそものシステムとしての話になるが、レーンが軸にあったこともありレーンで提供される寿司のバランス、廃棄のタイミング、絶対量など店員の管理する項目の多さはそのシステムの脆弱性とも言えただろう。
これが廃されたことにより、レーンのバランスを考慮する必要がなくなり、また廃棄もなくなり、寿司の量をコントロールする必要がなくなったのだ。
店員は寿司を握ることに集中できるのだ。
ただひたすらに握り、提供する。
それができるシステム作りから考えられるのは、コロナ禍とは企業の柔軟性を試す試金石とも言える出来事だったのではないだろうか。
柔軟な企業はその波に乗り、より効率的な運営によって客数をコントロールする。
その対応に遅れた企業が客数を落とし、業績を悪化させる。
資本による企業の体力が詳らかにされる事例でもあるが、細やかな気付きの蓄積がこの数年で明らかに差を分ける結果となっている。
しかし、今日の回転寿司、いやもう回転寿司とは言わないのか。
コロナ禍で閉店していなくてよかった。
閉店してるよりは開店してるほうがいい。
開店寿司ってことだね。

どりゃあ!