見出し画像

わたらせ渓谷鉄道完乗と足尾散策

しばらく多忙で更新が滞っていましたが、ひと段落したのでぼちぼち書こうと思います。

鉄印を集めるのがここ最近の個人的ブームなのですが、関東圏では、まだわたらせ渓谷鉄道の鉄印だけを集めていなかったので、ふと思い立って平日休みのうちに出掛けることにしました。
また、単に乗り鉄するだけでは面白くないので、足尾銅山でも観光しに行くこともミッションとして設定しました。関東の小学校の社会科見学でよく行かれるそうですが、私は関西出身なので行ったことないですし、大人になってからこういう産業遺産を見に行くのもよかろうと思って目指すことにしました。

浅草 → 相老

朝の通勤ラッシュを抜けて東武の浅草駅までまずは向かいます。朝7時半頃の浅草駅は都心の割にはかなり閑散としている印象でした。
特急りょうもう3号で群馬県桐生市の相老駅を目指します。浅草駅発車時点では6号車は私一人だけでした。

隅田川橋梁から眺む東京スカイツリー

普段は新幹線か宇都宮線か高崎線ばかりなもので、東武伊勢崎線を利用して北関東方面へ出かけるのは実は初めてです。沿線は住宅地から徐々に田畑の広がる田園風景に変わり、群馬県側になると地方都市という感じの風景が広がってきます。
赤城駅まで行って、大間々駅まで徒歩で歩くという選択肢も実は考えたのですが、蒸し暑い中歩くのがなんだか気分的に乗らなかったのと、わたらせ渓谷線でできれば始発に近い方から乗って良さそうな席に座りたかった、相老駅の鉄印を見ておきたかった等の理由で、赤城まで行かず相老で降りることにしました。北千住や太田ぐらいまでは同じ車両に何人かいましたが、相老時点ではまた私一人になっていました。

相老駅でりょうもう号を見送る。普段東武には乗らないので気づかなかったが1800系リバイバルカラー車だった。
相老駅わたらせ渓谷鐡道こ線橋

相老駅は有人駅でして窓口で鉄印を販売しており、こちらで乗り換え待ちの間に購入しました。いろいろな種類を求めるには大間々駅に行くのがよさそうです。

駅周辺にはコンビニは無いですが、クスリのアオキ相生店が徒歩5分もかからない程度の距離にあり、時間があったのでそちらで飲み物と軽食を調達しました。
なお、地名は「相生」で駅名が「相老」になっていますが、「相生駅」とすると兵庫県の相生駅 (新幹線停車駅) と重複するので、共に老いるという考えから「相老」としたそうです。ソースは東武のページ。「相生」も「共に生きる」で同じ意味ですね。

相老 → 通洞

10:15 発の普通間藤行きに乗ります。休日ならトロッコわっしー号などが運行されていますが、何もない梅雨の平日なので1時間に1本程度運行される普通列車のみの運行です。その割にはシニアな年代のペアの方がかなり乗られてきて、ボックスシートの窓際はすべて埋まる程度の乗車率でした。
ワンマン運行ではありますが、途中の大間々駅からはアテンダントの方が乗務されてきました。無人駅から乗車した場合で乗車券を持っていない場合などの精算処理を行ってくれるそうです。さらに車内で沿線の観光パンフレットの配布や鉄道グッズの販売を行っていました。こういうのは休日の観光列車などでやるのはわかるんですが、平日の通常ダイヤの列車でも実施されてるそうです。
あまり心惹かれるグッズは無かったのですが、第三セクター鉄道事業者の懐事情がどこも厳しいのは承知ですし、折角なので「わ鐡のわっしーアクリルキーホルダー」(500円ぐらい) を購入しました。

途中の水沼駅に温泉施設が併設されているのですが、そこで半数の乗客が降車し、残り半数はそのまま足尾方面まで乗車し続けるようでした。

窓開けられます

神戸駅 (ごうどえき) には東武1720系電車「デラックスロマンスカー」を使用した列車レストラン「清流」が営業されています。Google Map での事前調査では月曜日は定休日という情報だったのですが、普通に月曜日は営業していました。観光パンフレットを見ると4月~11月は定休日なしの無休で、12月~3月が月曜日定休 (月曜が祝日の場合は翌日) だそうでした。折角なんで急遽途中下車してランチ食べていこうと考えましたが、列車の本数も多くないので今回は見送りました。
ちなみに水沼駅と神戸駅に限り、途中下車できるようです。それ以外の駅では乗車券は前途無効になります。

デラックスロマンスカーレストラン

神戸駅を過ぎると沢入駅まで5.2kmの長い草木トンネルを抜けることになります。このトンネルは草木ダムの建設に伴って新線として建設された経緯があり、設備としては比較的新しい方 (といっても1973年ですが) になります。旧線部分は一部遊歩道になっているようで、廃線マニアには良さそうな感じがします。なお、トンネル内はそこそこ速度を出すため、窓が開いていると冷たい風が強く吹くので要注意です。

沢入駅を過ぎると、足尾方面進行方向左側の渡良瀬川には白い御影石がゴロゴロする区間がしばらく続きます。紅葉の時期が最も美しいといわれるので混むでしょうが秋にもう一度訪れたいところです。

渡良瀬川
草木トンネルを抜けると川を渡る
通洞駅手前になると旧選鉱所が見えてくる

沢入駅、原向駅を過ぎると足尾中心部の最寄りの通洞駅に着きます。通洞駅の手前付近では古河工業の選鉱場跡が見えるようになりますが、立ち入り禁止だそうです。
足尾銅山観光の最寄り駅で飲食店などがあるのはこの駅周辺なのでここで降りることにします。3月~11月の間、日中は有人駅ですが乗車券の回収などはアテンダントさんが行います。乗客のほぼ全員がここで下車しました。

通洞駅

駅のパンフレットとGoogle Mapを見比べながら、足尾銅山方面へ行くことにします。駅を出て過ぎに右に曲がって住宅地を抜ける形で道なりに行けばOKでした。

足尾銅山観光

駅から5分ぐらい歩くと足尾銅山観光到着です。
足尾銅山といえば、足尾鉱毒事件と田中正造というキーワードが昔教科書で出てきたと思いますが、公害事件という負の歴史という先入観を持ちながらの初訪問です。銅山ということで銅が取れたんだなぁという具合で、繁栄していたという歴史の知識はあまり全く持たずにやってきました。
足尾銅山観光施設のゲート付近は閑散としており、そしてレトロ感漂う雰囲気がしました。キラキラしたテーマパークという雰囲気とはかけ離れており、おそらくUSJやディズニーランドのようなものを期待する若者向けではない感じがします。

足尾銅山観光入り口

入坑料830円を払ってチケットを購入してトロッコ乗り場に向かいます。勾配110パーミルのラックレール区間は残念ながら訪問日には乗れず、坑道入口手前の乗り場からの乗車となります。
平日なので私以外の客は他に一人だけでした。前の客を運んで戻ってくるまでしばらくトロッコを待ちます。

線路幅は914mm

次発のトロッコに乗車したのはたった二人だけで、前面展望席を確保しました。確保したというよりは係員のおじさんに誘導されるがままに乗っただけですが。黒部峡谷鉄道のトロッコの客車より少し狭いぐらいです。

前面展望席

乗車完了後はガタゴトとゆっくり坑道に入っていきます。徒歩でも大した距離ではないと思いますが、鉱山作業者が出勤するのにトロッコを使用していたのと同じような経験をしてもらうというアトラクションなんでしょうね。5分も経たないうちに坑道内の行き止まりに停車し、下車します。

坑道内

乗客を降ろした後はバックで引き返していきました。坑内はかなり涼しいですが水滴が落ちてくるのでカメラなどは要注意かと思います。

下車したところから引き返すトロッコ

トロッコを降ろされた場所から線路はまだ奥へと伸びていますが、その先は通行止めになっており柵がされております。個人的にインパクトが大きかったのは1200キロ以上もこの先に坑道が続いていることですね。もう使ってないでしょうし整備もされていない分崩落の危険性もあるでしょうが、もうちょっと先も見てみたいですね。多分同じような坑道が広がってるだけのかもしれませんが。
ちなみに足尾銅山は備前楯山を含む周辺の採鉱地域を指すようです。

坑道内の線路や照明がイイ感じだったのでしばらく写真を撮ったりしていましたが、次のグループが運ばれてきた辺りで順路に従って進むことにしました。
坑道内は、通路の横に時代ごとの鉱山労働者を模したそこそこリアル調な人形が展示されており、鉱山が開発されていた時代の様子を伝えているようでした。

飲んじゃダメな水
岩肌青色地帯

観光用の坑道には天井が水色っぽい部分がありますが、いわゆる緑青(ろくしょう)というものでして、銅が酸化することで生成される錆ですね。10円玉が錆びると青緑色になるのと同じ原理で生成されたはずです。高校の無機化学でもやったと思いますが、銅の化合物ってだいたい水色とかそういうイメージですよね。
坑道エリアを抜けると、展示ゾーンになります。博物館などによくあるビデオ放映やパネル、結晶物の展示、銅の精錬プロセスなどの勉強ができる、小学校の社会科見学向けのエリアになっています。

展示ゾーンを抜けると広場に戻ります。広場にも坑道掘削機の振動を感じられる体験エリアがあります。さらに、江戸時代の通貨として使用されていた銅銭、寛永通宝を作る様子を展示している鋳銭座を一通り見物しました。足尾で鋳造した寛永通宝のことを「足字銭」と呼ぶそうです。

先ほどトロッコで入っていった通洞坑をもう一度
鋳銭座。銭貨の発行所。

一通り見終えた後はランチにしました。
足尾銅山観光施設内にも一応レストハウス足尾ヒロⅡ世があるのですが、常連客で埋まっていて空きテーブルがなさそうだったのでスルーしました。

駅前で月曜日に開いていそうな店として植佐食堂を見つけたのでそこに入ることにしました。閑散とし過ぎていて入っていいのかわからない雰囲気で、いざ入ってみると他に誰も客はおらずという状況でした。とはいえ、私一人にも関わらずかなり親切に接していただきました。

植佐食堂

おススメはソースカツ丼ということで薦められるがままに注文してみました。小鉢の柴漬けが多い点が気になりました、美味しくいただきました。味噌汁が特に好みでした。アイスコーヒーのサービスもいただきました。足尾に来たらまた利用しようと思います。
ただ、店内は冷房が効いていなかったので汗はなかなか止まりませんでした。

名物のソースカツ丼

通洞 → 間藤

さて、食事が終わった頃には13時半過ぎになっていたのですが、間藤方面行の列車は12:59に出てしまっており、次は14:39で2時間以上の待ち時間が発生しました。桐生行きに乗って数駅戻るということも考えましたが、それも13:33には出てしまっていて次が15:17でした。
列車で移動するには少なくとも1時間半以上は駅で待たないといけない状況です。駅前もお土産屋や他に飲食店があるわけでもなく、ほかの観光施設はどこも月曜日は定休日なので行くところはありません。

…というわけで、間藤方面に向けて歩きます。とりあえずわたらせ渓谷線は全駅クリアしておきたいのと (駅メモやってるので)、日光まで抜けるのが一応今日の目標ですので。

線路沿いの道を歩けば、ほんの10分程度で隣の足尾駅に着きました。「足尾」の名前を冠していますが、日光市足尾町の実質的な中心駅は通洞駅です。

足尾駅
足尾駅ホーム
久留里線の幕で保存されているキハ30

足尾駅は駅前のトイレと、荷物整理のために駅舎内のベンチだけ借りました。
そのまま先の終点の間藤駅を目指して再び歩きます。足尾~間藤も大した距離ではないので15分もかからず到達できると思います。

栃木県道250号を跨ぐ歩道橋
歩道橋から線路。雨が降りそう。
名前がわからない松木川の水門

終点の間藤駅に徒歩で到達できました。この駅は無人駅ですが陶芸教室やレンタサイクルを併設しているようです。ただ、行ったときには営業していませんでした。

間藤駅駅舎

残念ながら、駅前には工場があるくらい特に何もありません。少し歩けば金沢屋という自販機が置かれているカフェのような施設があるようですが、それは後で知りました。
駅舎内には「時刻表2万キロ」の作者である宮脇俊三氏が国鉄全線完乗を達成したことを記念するポスターなどが貼られています。また、駅ノート用と筆記具を入れるプラボックスも置かれているのですが、残念ながら中身は空でした。
勿論許可を貰って駅ノートは置かれているのだと思いますが、それを盗む輩は一体どんな親の元でロクでもない人生を送ってきたのでしょうか。

間藤駅の駅ノートボックスは空でした

駅舎のなかのベンチでしばらく休憩していると、折り返しの列車がやってきました。数人の乗客が降りましたが、すぐ駅前に止まっているタクシーでどこかに行ってしまいました。

折り返しの桐生行きの列車

折り返しの桐生行きの列車には乗らず、この後は15:37発のJR日光駅行きの路線バスに乗ります。ICカードは使えず、後ろ乗り前降りの現金払いでした。

間藤駅前バス停

間藤 → 日光

国道122号を北上し、日足トンネルを抜けて日光市の中心部へ向かいます。神橋交差点が国道122号の終点で、雨が降ってきたにもかかわらず多くの外国人が傘も差さずに出歩いていました。

日光の神橋

東武日光駅前で乗客のほとんどが降車した後、バスは数百メートル先の終点のJR日光駅前に到着です。東武日光駅ではなくわざわざJR日光駅まで来た理由は、みどりの券売機に用事があったからです。

JRの日光駅

わざわざJRの駅まで来た理由は、都内へ帰るための特急列車の切符を東武の駅では発券できないためです。JRと東武鉄道には直通特急が運行されていますが、えきねっとで予約した切符は東武の駅では受け取れません。
前日に、えきねっとでスペーシア日光をえきねっとトクだ値で割引料金で購入していたのでみどりの券売機で受け取ります。

スペーシア日光4号

出発するまでそれほど時間があったわけではないですが、乗車前に駅前の「さかえや」さんで揚げゆばまんじゅうを購入しました。某鉄道系YouTuberのスーツさんが何度も絶賛してるところとして巷では有名ですね。

さかえや

日光 → 新宿

後はこれに乗って都内へ帰ります。現行の東武100系電車によるスペーシア号で、そろそろスペーシアXも登場するのであと数年で置き換えられる可能性が高いので乗るなら今のうちでしょう。しばらくのうちはスペーシアXのN100系電車のほうが乗るのが難しいかもしれませんが。

帰りのスペーシア日光4号の東武100系電車

平日なので空席は多いですが、車内の客層は外国人が半数といった感じです。リクライニングシートは1,100mmでかなり広く、フットレストも備えられており、普通車指定席ながら最近のJR車特急のグリーン車並みに豪華な設備です。少し古くなったとはいえ流石は東武の現行フラッグシップ特急といったところでしょうか。

下今市駅併設の下今市機関区にはSL大樹用のC11蒸気機関車が留置されておりました。一応通常の平日でも運行日はあるようですが、時間はもう夕方なので運行は終えていたかもしれません。

下今市機関区の蒸気機関車

東武日光線、栗橋駅のJR・東武連絡線を経由して宇都宮線を下り都心に帰ります。栗橋駅の連絡線の間には会社間の電気系統が異なるためデッドセクションが設けられており、一瞬空調が止まったような静寂があった気がしたもののウトウトしていて残念ながらはっきり覚えていません。
大宮を過ぎると湘南新宿ラインの経路で浦和、池袋、終点の新宿の順に停車します。途中の浦和などでは誤乗が多いのか、あるいは特急券も持たずに乗ってあわよくば検札を受けなければラッキーのつもりで乗ってくる客がいるのか、「特急券が必要です。お持ちでない方はご乗車できません」と何度も注意喚起をしていたような気がします。

荒川橋梁
JR新宿駅に停車中の東武100系電車

車内も混雑しておらずかなりゆったりとした乗車を楽しんで、終点の新宿に到着後は、帰宅ラッシュの時間帯の山手線に揉まれて帰宅しました。

日帰りの北関東ぐるり旅は以下の経路でそれなりに充実して楽しめました。東武線、わたらせ渓谷鉄道、JR線を使って足尾観光、日光観光、鉄印集めや乗り鉄旅の際の参考になれば幸いです。

全行程

おわり。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?