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第七回こむら川小説大賞結果発表 大賞はぴのこさんの「めんくいさまの御饌」に決定1

 令和6年7月31日から令和6年8月17日にかけて開催されました第七回こむら川小説大賞は、選考の結果、大賞・金賞一本、銀賞を二本、各闇の評議員の五億点賞が以下のように決定しましたので報告いたします。

大賞 ぴのこめんくいさまの御饌

受賞者コメント
 
この度は大賞という身に余る賞をいただき、感謝の念に堪えません。  『めんくいさまの御饌』は私が好きな要素を詰め込んだ作品でしたので、こうして評価していただけて幸いです。どこか愛嬌があり、それでいて人類とは絶対に相容れない怪異が好き!人間社会には気軽に崩壊してもらいたい!!という思いからこの作品を書き上げました。主人公・秦野夕一も好きなタイプの人間像ですね。私は鮮烈な光のような存在に脳を焼かれて何もかもを捧げてしまうような人間が大好きです。
 ただ、私がラーメンが大好きということもあり、フォロワーからの反応は「麺食い様かと思った」「いつラーメンが出てくるのかドキドキした」というものが多かったですね。混乱させて申し訳なかったです。すみませんラーメンは一切出てきません。
 実を言うと、ほんの2か月前までは私は短編を書くことが苦手でした。書こうとしても600字程度しか書けず、自分の才能の乏しさに苦悩する日々を送っていました。
 今こうして大賞をいただける作品が書けるまでに成長することができたのは、とあるフォロワーの方のおかげです。6月末頃、その方をモデルにした小説を書いたところ、「面白くてすごい」と評価していただけました。それがモチベーションになり、1か月ほど短編を書き続けたところ、7月末には飛躍的に文章力を上げることができました。
 トドオカ( @todooka)さん。この場をお借りして感謝申し上げます。
 最後に、主宰のこむらさきさん、闇の評議員の方々、読者の方々、企画に携わった全ての方々に感謝いたします。


準備中:イラスト田中かなたさん予定

大賞を受賞したぴのこさんには、田中かなたさんによる表紙風ファンアートが進呈されます。

◆金賞

黒本聖南埋まらぬ牙

◆銀賞

朽尾明核太陽はカンヴァスの中に輝く

◆銀賞

南雲 皋高野咲良は亡くなりましたか?

◆五億点賞

謎の有袋類賞

根占 桐守(鹿山)『光の中で灯を点ける

謎の果実猫賞

ごもじもじ/呉文子『人魚と神様

謎の女子高生賞

クニシマ『私はあなたが好き、あなたも私が好き

 というわけで、素人創作草野球大会、第七回こむら川小説大賞を制したのはぴのこさんの「めんくいさまの御饌」でした。
 おめでとうございます。
 以下、闇の評議会三名による、全参加作品への講評と大賞選考過程のログです。

FAのご紹介

みおさん作 空の色/こむらさき

あいこさん作 尊敬ごっこ/草森ゆき

ぶいさん作 悪役令嬢とツギハギの魔王/秋乃晃

みおさん作 海の底に愛はなく/南雲 皋

MACKさん作 裸電球/がらなが

みおさん作 人魚の光/晴田墨也

本庄照さん作 残月/藍崎藍

MACKさん作 やがて光になる者/灰崎千尋

エビの抜け殻さん作 ガラクタの灯台/秋犬

MACKさん作 ワンダフル・デイ/野村絽麻子

みおさん作 ねぇ、遊ぼっか。/沈丁花

黒井咲夜さん作 ハルと、フユと。/ハルと、フユと。

あいこさん作 光る☆小早川さん/まさかミケ猫

エビの抜け殻さん作 高野咲良は亡くなりましたか?/南雲 皋

不可逆性FIGさん作 感光/灰崎千尋

みおさん作 スポットライト/大塚

rezさん作 緋星の君/月餠

ぶいさん作 そのゴリラは光っていた/豚肉まぢか

myzさん 光と共に、誰も彼もが/秋坂ゆえ

みなさんたくさんのFAありがとうございました!!!

◆全作品講

謎の有袋類:
 みなさんこんにちは。伝統と格式の本物川小説大賞のオマージュ企画。こむら川小説大賞です。
 第七回は期間がいつもの半分くらいになったのですが投稿ペースがほぼ倍でしたね。
 参加者191名の内、初参加の方が99名、二作書いた方が47名、最終日の駆け込みが58作、合計238作のエントリーでした。
 川系列の伝統に従って、大賞選考のための闇の評議員を一新しまして、今回は謎の果実猫さんと、謎の女子高生さんに協力していただきました。
 今回の議長も前回と引き続き主催である謎の有袋類が行います。よろしくお願いします。

謎の果実猫:
はーい!謎の果実猫です。238作のエントリー!たくさん来ましたね~!最後までよろしくお願いしまーす!

謎の女子高生:
謎の女子高生です! ものすごい量の作品の熱気に圧倒されておりました! よろしくおねがいします!

謎の有袋類
 こむら川大賞でも、本物川小説大賞と同じくそれぞれ独自に講評をつけた三人の評議員の合議で大賞を決定し、その過程もすべて公開します。
 
 以下から、エントリー作品への講評です。

1:尊敬ごっこ/草森ゆき

謎の有袋類:
 第七回こむら川小説大賞一番槍は草森ゆきさんの手に渡りました!おめでとうございます!
 カクヨムネクストで義兄ものの連載を始めるこむら川育ちの草さんの作品なのですが、早い! うまい! スルスル読める地獄!
 今でもあなたは私の光……と唐突にLemonの歌詞が思い浮かんできました。
 なんでも出来る寒野さん、職場の「光」であるというお題回収は、一番槍から捻った解釈ですごくよかったです。
 尊敬ごっこがどういうことなのかも、じわじわと明かされていくのですが「寒野さんの特別である自分」がそうではなかったのと、自分が寒野さんの立場とほぼ同じになり、新入社員が次の主人公になるという構造が本当に上手い。これをこの短時間で書いたのがちょっとした恐怖でもあります。
 良くも悪くもするするするっと読めてしまうので、少しだけ引っかかりというか強烈なキャラがいると更に読み応えがあったかもしれないです。引き抜こうとしていた会社の人が怒鳴り込んできたり、マジでヤバい!を更に書き込んでもよかったのかもしれない……とは言うものの、講評で何か言わなきゃなと捻り出したことなので、このままでも十分素晴らしい作品だと思います。
 構成もしっかりしていて、一回転させた結末もカチッと決まっていてすごく良い作品でした。3000字台のショートとしての完成度が高くお手本のような作品です。
 これからのご活躍もとても楽しみにしています!こむら川にたくさん錦を飾ってください!

謎の果実猫:
 恐ろしく仕事のできる寒野さんという社員と寒野さんに憧れる主人公のお話。仕事ができて気が利いて営業先からも引き抜きの声がかけられるほど。しかし寒野さんはなぜかネガティブ。
 主人公はどうにか寒野さんの負担を減らそうと頑張りますが、ある日パッタリと寒野さんは来なくなってしまいます。主人公は寒野さんの代わりに頑張るうちに寒野さんの気持ちがわかってしまいました。どうしようもない絶望感がいいですね。
 そのネガティブさがとても好みなのですが、ネガティブさが強めで光要素がちょっと薄いかな?
 誰も助けてくれない、助けを求めた寒野さんにもぱっと手を離されて絶望し、その後後輩ができたときの主人公のやるせなさや安堵ははかりしれません。
とてもおもしろかったです。

謎の女子高生:
 ひどい職場のすごい社員、その憧れが反転していく物語。まるで呪いのように連鎖的な構造がおもしろい。無限ループってこわくね? 犠牲の積み重ねと繰り返しで回る世界はグロテスクであり、しかしどこか身に覚えのある肌触りをしていたように思います。
 とてつもない速度で上げられた一番槍のためか、若干筆の粗さを感じるところはありますが、しかしこの作品がお題を上げられた直後にでてきたところに草森先生の凄みを感じます。
「光」の解題もよく、光を追う者が光に追いついたら光にさせられている、光は光にしか追いつけないという構図が面白かったです。

2:この手の中の光/惣山沙樹

謎の有袋類:
 こむら川では初めましてです! 参加ありがとうございます!
 光るちんぽの話!最初のしんみりしたシングルマザーで兄弟二人のつつましい話から一転、弟のちんちんが光る!出すと光らなくなる!兄弟物のBLということでいいんでしょうか。
 チンコが光ってからのテンポがものすごくよかったです。もうチンコが光るなら仕方ない。お兄ちゃんも焦るよそれは。
 いきなり急加速する物語は好みが分かれるところだと思うのですが、個人的な好みだと最初から「この話はチンコが光ります」みたいな顔をしていてくれた方が親切なのかなと思いました。
 作品は玄関を整えておくのも大切なので「アホな話をします!」だったり「マジメな話をします!」と玄関に書いてあげると親切だと思います。
 でもこのギャップも良いと思うので、あとはどの読者をターゲットにしたいのかを考えて玄関の飾り付けを選んでいきましょう。
 最後のお父さんからの遺伝だと判明するシーンもよかったです。刺激によって変わるってやっぱりゲーミングPCみたいにレインボーに輝きながらの発射とかもあるのかな……。
 わはは! と笑って読めるお題回収もばっちりの良い短編でした。小説を書き慣れてそうな作者さんなのでこれからもどんどん色々書いていってくれるとうれしいです。

謎の果実猫:
 父を亡くした兄弟と光るちんぽの話。とても簡潔でわかりやすく面白かったです。兄弟で留守番していたら弟のちんぽが光る!不安になっていたら母から語られる真実なんと父からの遺伝だったという話。
 一つだけ気になる点があるとしたら、冒頭の父を亡くしたくだりで、「父は俺が六歳、弟の蓮がゼロ歳の時に交通事故に遭って死んだ。」のところ、句読点の位置によっては蓮が死んだように見えなくもないかな?
 なぜ光るのか詳しくは語られませんが、キャッチーさわかりやすさで好きです。笑いました。
 光るちんぽを嫌いな人がいるのでしょうか?おもしろかったです。

謎の女子高生:
 兄弟ブロマンス。兄弟愛とちんちんが光る作品。ちんちんが光るのは素直に嬉しいので、二作目でちんちんを光らせてくれてありがとうございます。ちんちんが光る弟のちんちんをなんとかしてあげようとする兄の優しさが眩い。
 ある種の性的な解決を見る話ですが、家族愛故ということで嫌な味にならず、爽やかに読めました。ちんちんを光らせることが目的だったと思うので、ちんぴかはあくまで突発的な事件として描かれていますが、ちんちんが光ることへの苦悩をプラス表現できていると、ちんピカ文学としても体を成すかも知れません。ブロマンスとしても楽しく読め、少し苦難を持つ家庭環境も朗らかに描かれており、気持ちがよかったです。

3:大食い美少年『三大欲求のジョー』/佳原雪

謎の有袋類:
 前回は世界観が素敵で神秘的な作品とかなり個性的で尖った作品を描いてくれた雪様の参加です!ありがとうございます。
 今回はフードバトルもの!お題回収は光るように美しい馬蹄錠なぎさことジョーでしょうか。いいですね、美しい男……そして黒髪長髪寡黙な男性がコンビ! とても良い!
 コミックのような台詞回しや、ラーメン屋の雰囲気もすごくよかったです。リンリンのファンが実況をする流れもすごく好きでした。
 全体を通して熱い上に僕は軽薄で美しい男が好きなのでジョーのキャラクターもすごく好きでした。三大欲求のジョーの下り、とても良い。
>男同士でSEXするとき、体はなるだけ空になっていた方が良い。そして、今日はその日であった。たとえ食欲がなくても、グロック・リンリンとSEXをするためなら、馬蹄錠なぎさは三倍食べる。
 全体を通してここの部分だけちょっとわかりにくいかもしれないので、情報を噛み砕いてあげた方が親切かもしれないなと思いました。
 リンリンとSEXするために三倍食べたあたりの根拠を作中に入れてあげると、すっきりと読めるように思えます。
 3000字台にギュッと詰められた世界観、美しい男、バトル、そしてセクシーな感じが面白い作品でした。雪様の作品は結構しっとりとしたイメージだったのですが、こういう作品も書けるのだなと新しい発見を出来ました。
 これからも色々と作品を書いたり挑戦をして言ってくれるとうれしいです。

謎の果実猫:
 ラーメン屋で美少年が大食いで勝負するお話。ラーメン屋で喧嘩を売られた大食いチャンプのジョーとその連れグロッグ。ツーマンセルで挑んだ試合でグロッグの分もかっさらって食べるジョー。その理由とは…性欲由来の切実な理由からだった。「馬蹄錠なぎさは鳴らないベルであるところの男が、どんな声を上げるかを知っている」のくだりとても好きです。
 髪型のくだりで「短くしていると食べるときに邪魔なんだよ」というのだけわかりにくいかも?
 この作品を短い時間で書き上げたと思うと驚きます。とても勢いがある作品でした。夜の街に消えていくところもおもしろかったです。

謎の女子高生:
 大食い勝負が当たり前になった町にきたフードファイターのコンビが、行きずりのラーメン大食い対決をする話。勢いがとても良く、フードファイトをベースにした独自の世界観がおもしろい。キャラクター造形などに作者のこだわりが見えるのも良いポイント。ただ掌編としては設定が多く、一部の設定が物語にうまく噛んでこないところが気になりました。
 しかしながらキャラクターや設定を積むことで独自の世界が広がっていくところがこの小説の良いところだと思います。魅力あるキャラクターの活躍はもっと読んでみたいと思わされました。

4:空の色/こむらさき

謎の有袋類:
 褐色肌じゃなくて真っ黒なベタ塗りの肌っていいよね。

謎の果実猫:
 大好物です。生贄の子と夜の愛し仔とのお話。夜の愛し仔というのは吸血鬼のような存在なのでしょうか?幼い頃から共に暮らして親しんできた生贄の子と主人公はお互いの違いを感じながらもお互いに惹かれ合っていました。
 恋人になった二人は二人とも助かる道を模索します。健気ですね。主人公の両親が主人公に肉切り包丁を渡してさあ殺しなさいというところ、とても好みでした。
 欲を言えば主人公の両親たちがどうなったのか知りたかったです。
 とてもおもしろかったです。とても好きです。これから二人が幸せになれますように。

謎の女子高生:
 主催こむらさきさんの作品。人外の少年とイケニエの少女の、恋と愛の物語。表現の端々から感じられる、少年少女たちの瑞々しさが心地よい。あの境遇で二人ともよく真っ直ぐに育って本当に良かったと思います。ハイネには守るものがあり、ノアルは守ることを知り、それが最後の善性に辿り着くという構成が良い読み心地でした。 
 最後の展開で少し場面移動が分かりにくく感じたところもありますが、キャラクターのビジュアルも良く、小説ながらに美しい景色や色彩が感じられ、見目麗しい作品でした。

5:何故に蛍は光るのか/292ki

謎の有袋類:
 最終日常連の292kiさんが一番槍レースに参戦!参加ありがとうございます!
 チンコが光る話の次はケツが光る話!
 ゲーミングケツ!感情も言いたいこともケツの光に載せるパワフルな世界を軽快な口調の文体で展開していく作品でした。
 タイトルにある蛍の文脈の回収が超ロマンティック! 結末とエピローグ的な語りもめっちゃよかったー!
 どういう目的で話されているか分かった方が楽しく読める気がするので、最初の数行で誰が語り手なのか分かった方がスッと話に入っていけるのかなと思いました。
 みんなとは違うコミュニケーション方法しか取れない孤独な子と変わり者のコミュニケーションすごくよかったです。短い文字数にギュッと圧縮されたキュンの様子と仲良くなっていく様子がめちゃくちゃよかったー!
 蛍光灯ちゃんのケツがピンクに輝くのも文脈が乗っててロマンティックでキュンな風景に見えるのがすごくいいですよね。旧式コミュニケーションもまたその世界で流行るといいなと思いました。
 進捗エンジンは十分! 最終日常連からも脱却おめでとうございます! まだまだたくさんお話を書いてくれたらうれしいです。

謎の果実猫:
 感動しました。初めは出オチ感があるなと思っていたのですが、お話が展開しだしたらしっかりしたラブストーリーでした。とてもおもしろかったです。
 人類が尻に電球を埋め込んで尻を光らせるのが当たり前になった中、旧時代のコミュニケーションで恋を育むお話。
 欲を言えば、もう少し早い段階でお話を動かしてもいいかもしれません。蛍光ちゃんがとてもかわいらしいです。豆電くんが蛍光ちゃんとのコミュニケーションのために一生懸命になって旧式コミュニケーションを覚えようとするところとても良かったです。
 4話目のタイトルの「輝け」が好きです。とても盛り上がりました。おもしろかったです。

謎の女子高生:
 人類がケツを光らせてコミュニケーションを取るようになった未来の話。ケツピカコミュニケーションが出来ないどころか感情を持てない少女と、それに恋をした語り部の主人公の饒舌さが面白い。言葉を使うことを勉強した主人公の捲し立てるような語りは、ある種の照れ隠しみたいな趣もあり、微笑ましく感じました。
 語り部の饒舌さがこの作品の魅力ですが、同時に少し読みにくくなってるのが惜しいとも思います。早口のような文章なので、もう少し緩急があると読みやすくなるように思います。
 一見トンチキな設定ですが、コミュニケーションの芯を打って考えさせられるSF的な感覚がとても好きでした。言葉を光に見立てるところも美しいと思います。

6:その煌めきを孤独と呼ぶなら/蛙田アメコ

謎の有袋類:
 山奥育ちの俺のゆるり異世界生活~もふもふと最強たちに可愛がられて、二度目の人生満喫中~!の作者、アメコさんが初参加してくださいました!ありがとうございます!
 光るちんぽが二本目です。光るならうんこよりもちんぽなんでしょうか。
 どこか冴えない人生の主人公が三十路になり、些細なきっかけで自死を決意するのですが、安価スレで決められた社会的な死を実行しようとしたらちんぽが眩く輝き出すというお話でした。
 死のうと思ったという思い語り口なのですが、玄関ともいえるキャッチコピーで股間が光ることはわかっているので親切な設計だなと思いました。こいつの股間が光るのか……と読み進めていくと、ちょっと悲しい人生について語られ、そして腐れ縁とも言えそうな女友達で童貞を捨てる……春谷めちゃいいやつーー! ヘイトコントロールがめちゃくちゃにうまいのは流石の筆力ですね。こういう鬱屈としたやつの一人称というのは胃もたれしやすいことが多いのですが、スルスル読めたました。すごい。
 これは完全に好みの問題なのと、敢えて言うならで捻り出したことなのですがせっかくの活躍シーンなので股間を光らせて停電で活躍した部分はモノローグじゃなくてリアルタイム描写でもよかったかも?
 でも些細な思い出として、春谷さんの娘の描いてくれた似顔絵と飾るにはモノローグの方が活きるのと字数的な問題で難しそうなのもわかるので小説って難しいネ!ってなりますね。
 話の規模感、物語の入口の丁寧さ、そして登場人物のヘイトコントロールと全部巧みでちんこが光る話でもちょっとしんみりして良い話に着地するのが本当にすごい!めちゃくちゃに面白かったです。
 まさかアメコさんがちんちんを光らせると思わなかった。貴重な短編だ……。今後のご活躍も期待しています!

謎の果実猫:
 後味がほっこりするいいお話~!何一ついいことがなく童貞のまま30歳を迎えた主人公は死にたくなって掲示板を頼り…いざというところでちんぽがまばゆい光を放って困惑するお話。
 ちんぽが光りだしてからの主人公の人生が好転して本当によかったです。春谷さんとの関係が主人公の支えになったのかな。春谷さんのキャラクターがとても好きですね。
 とてもおもしろかったです。光るちんぽを嫌いな人がいるのでしょうか。確かな筆致と豊かな表現力を感じさせられました。

謎の女子高生:
 ちんぽが光って人生が少しだけ良くなった男の話。最高でした。人生を無茶苦茶にしようとしたが、股間が光るという経験によって少しだけ自分の人生や他人の人生についてを見つめることができたという構図が非常に美しい。もし股間が光っていることを隠している人がいれば、この物語が救済になるでしょう。
 ちんぽの発光を本当に人類はすっと受け入れられるのかという点は、物語においてややリアリティに欠けるところではあると思うのですが、この作品が見せる光にとっては些事なのかな、とも思います。
 トンチキに振れていきそうな設定ではありつつも、地に足のついた人の関わりが描かれており、非常に読み良い物語でした。大好きです。

7:今でもあなたはワタシの光/狐

謎の有袋類:
 逆贔屓の星!狐さんの作品です。
 タイトルで暗黒剣を奮ったな! と思ったけど、暗黒剣では無かった。
 クローンによる代替わりと、延命のお話でした。
 スタートダッシュがキレイに決まっていたのですが、
>親父は息を吐きながら仏壇まで歩を進め、位牌を45度回転させる。轟音と共に仏壇が畳の下に沈み込み、地下室に続く階段が顕わになった
 あたりで盛り上がりが最高潮で、そこからは主人公が研究をしてそのまま延命をするという流れになるので盛り上がりが薄いかな? とちょっと尻すぼみな印象かもしれない。
 尖った思想を書くならもっと尖ってしまってもいいかな? と思いました。狐さんなら出来る!
 狐さんの作品の良さはドライながらも湿度がある作風と関係性だと思うので先代と今の関係性の掘り下げをもっとしてもよかったかもしれない。
 ラストのタバコの下り、個人的にはかなり好きで、わざわざ実年齢二十歳になるまで待った主人公の生真面目さとか大人の哀愁、先代への追悼的な文脈が乗っていてめちゃくちゃよかったです。こういう文脈の乗せ方が狐さんの強み!
 こむら川にしては厳しめの講評になっているのですが、狐さんに掛ける期待が大きいので……。こうやって自主企画を使って色々なことにチャレンジするのはとても良いこと! 狐さんはもっとできる! 自分はこんなもんだと決めつけずにこれからも色々とチャレンジしていきましょう!

謎の果実猫:
 タイトルが最後に生きてくる形のやつ~大好き~!仏壇に飾られた母親の遺影がフリー素材と気づいた主人公は父を問い詰めると自分たちはクローンだと明かされて…というお話。
 冒頭から急展開して驚きました。仏壇から轟音がして階段が出てきたところで声を出して笑いました。これはおもしろかったですね。このお話を短い時間で考えて出してきたのはさすがとしか言いようがないです。
 欲を言えば14年の月日の中で父とのエピソードがもう少しあったらよかったかな?と思いました。
 クローンであることの葛藤や反抗、14年の月日を地下室で過ごしたこと。とてもおもしろかったです。

謎の女子高生:
 自分自身のクローンを代替わりしながら作りつづける男のSF小説。ある種の「宿命」として、自分が成し遂げられることの選択として、掘った穴を埋めるように自らのクローンを作りつづけるという設定が面白い。同じクローンと言えども生き方がそれぞれ違う点から、考え方に少しずつ差が生まれることが、物語の軸を作っていると感じます。「光」というテーマに対してはやや解答が弱いように感じますが、SFとして非常に面白いです。
「俺と親父は別人だ」という結論に至るということは、親父自身も何か先代からそういう思想のタネのようなものを植えられていたんじゃないかと感じました。さらに世界を広げ、もう少し規模の大きいSFとしての完成も期待できる作品だったと思います。

8:愛した女を埋めに行く/海野しぃる

謎の有袋類:
 第五回ぶりの参加!翻訳などで活躍中のしぃるくんが参加してくれました!ありがとうございます!
 会話劇を中心にして話が進んでいく死体埋めBL。BLか?
 元々漫才コンビを組んでいた二人が、漫才から離れてそれぞれの道を歩んでいる中で、殺人をしてしまい、二人で死体を埋めに行くというお話でした。
 間男と旦那が女を埋めに行く話なのですが、この女性がなんでそんなに好かれていたのか伝わりにくいので、もう少し女性の魅力などを描くとすんなり設定が飲み込めるのかも?
 男同士の関係性やバックストーリー、死体を目の前にして罪悪感で揺らいだり、叶わぬ夢を語り出す共犯関係や錯乱した人間の思考の描き方がすごくよかったです。
 この男性同士の未来がどうなるのか気になる作品でした。地獄まで付き合って貰うぜ!
 今後も色々試行錯誤しながらがんばってくれるとうれしいです。

謎の果実猫:
 お笑いコンビの相方であり友達でもある主人公たちは痴情のもつれで女性を殺してしまい一緒に山に埋めに行くことになります。二人が女性を埋める間のお話。
 女性を中心に話が進んでいるようでその女性はもう死んでいるので、二人の男がああだったこうだったとお笑いコンビらしく掛け合いが続くのが面白いですね。ただ掛け合いが長く続くことで間延びした印象を受けました。もう少し短くまとめてもいいのかもしれません。
「月の無い夜(略)血とふん尿のこびりついた包丁」のくだり、とても好きな描写でした。おもしろかったです。

謎の女子高生:
 妻の死体を埋めに行く夫と、かつて漫才コンビを組んでいたその友人の話。いわゆる死体埋めブロマンス的な小説。「死体埋め」という共謀行為によりあぶり出されていく二人の関係が切なく、苦しい。妻を殺されたはずの夫が、しかしそれを理由にして再びコンビ結成の外堀を埋めていくような作りが構成としても面白かったです。
 あえて描写を淡泊に抑えられているのかなと思うのですが、少し時間経過や場面転換が分かりづらいように感じました。会話によるやりとりが魅力の作品ですが、シーンによる移動が少ないので、もう少しカメラワークを意識した描写が増えると、ぐっと質感が良くなりそうだと感じます。
 共犯関係になった二人の顛末、行き先の見えないこれからの二人を思うと心のどこかがざわざわとする、良いブロマンスでした。 

9:口裂け女vs.〇〇〇〇〇〇〇〇〇/サトウ・レン

謎の有袋類:
 前回初参加!今回で二度目ましてのサトウレンさんです。参加ありがとうございます。
 口裂け女に追いかけられている主人公が逃げながら色々と思い出すお話。一応人間の主人公が実はターボババアの弟子だったというの途中で仄めかしがあったのもあってすごい気持ちよい情報開示でした。良い裏切り方!
 テンポ良くひたすら走って行くのですが、口裂け女から逃げるというワンセンテンスで6000字を書くのは胆力がすごい。
 メタネタも
>いや、真面目な奴はそもそもこんなタイトルの小説を開かないだろ。
 絶対に闇の評議員が読む作品でこの弄りは多分「開くが!?」となるので難しい!メタネタの使い所って難しいですよね!となりました。
 これは小説と明かされることでせっかくのリアルタイム描写の良さが薄れてしまうので、この下りがない方がすっきりしていいのかもしれないなと思います。
 全体を通して、ひたすら口裂け女が追いかけてくるのですが、走馬燈のように思い出される父親との思い出や師匠の言いつけ、勢い良く死ぬ通行人とエンタメとサービス精神に溢れた面白い作品でした。
 ハラハラさせたいのか、それとも淡々と読ませたいのか方向性を決めて書けば作品がギュッとしまって一回りも二回りも魅力を活かせる作品になると思います。
 進捗力や作品の描写力、エンタメ精神はバッチリなので読者に与える印象を意識しながらどんどん作品を書いていって欲しいなと思います。

謎の果実猫:
 口裂け女に追いかけられながら半生を回想する話。口裂け女に追いかけられながら超人じみた脚力と持久力でいい勝負を繰り広げつつ同時に半生を振り返る呑気さも感じさせられるお話。
 走っている最中に口裂け女が付かず離れずの距離感で追いかけているところ、存在感が薄いように思いました。それが味なのかもしれませんが間延びしていると取れるかもしれません。
 終盤で出てきた師匠がまさかのターボばばあで笑いました。それからなるほどなと納得がいきました。納得の速さです。
 何回も笑いました。とてもおもしろかったです。

謎の女子高生:
 口裂け女に行き会った少年が日本各地をまたにかけて逃げる逃走劇。定番都市伝説である口裂け女から逃げていく様子が疾走感があり気持ちよく読めました。少年が「ターボばばあ」の弟子であることが逃走の軸になっており、怪異同士が出会うことでの展開としてとても好きでした。
 話としては「ターボばばあの弟子」であることが物語のサプライズ要素ではありますが、もう少しタネ明かしを早めにして、ターボばばあの弟子ならではの逃げ方の展開などがあると、より没入感が増したのではないかと思います。
 怪異コラボ小説として非常に面白く、また少年の在りし日の思い出をなぞる物語として、ホラージャンルながら爽やかな読み味の作品だったと思います。

10:大邪について/筆開紙閉

謎の有袋類:
 前回初参加。二度目ましての方です。参加ありがとうございます。
 もったいないので長編にしましょう!!!!!これをベースにしたら10万字越えそう。
 剣鬼グラースと旅巫女スカーレッドの関係性もすごくよかったです。イサカさんも死んでいないような仄めかしがあったので気になる!
 ハイファンタジーの世界観で筆開紙閉さんが楽しく作品を書いたのかなと思います。
 ただ、初めてこの作品を読んだ時に登場人物が短編にしては多くて「誰が誰だっけ」となってしまうので重要ではない登場人物の固有名詞を意識して出さないなど読者に与える情報をコントロールすると短編としてキュッと締まった印象になるのかなと思います。
 作品全体を通して剣鬼グラースのストイックな性格と壮絶な生立ち、そしてスピードワゴンは気になっている転生前の価値観の提示や、旅巫女スカーレッドの人外じみた思考やちょっと緩いノリなど魅力的な部分は多かったのでこちらの作品を下地にして中長編を書いてもいいんじゃないかなと思います。
 文章の方はかなり読みやすくなっていたので、これからもどんどんお話を書いて素敵な世界を紡いでいって欲しいなと思いました。

謎の果実猫:
 大邪を倒す旅をする騎士たちの話。
 主人公はスカーレッドだったのでしょうか?それとも複数主人公だったのかな?
 大邪や騎士たちそれぞれに人生がありお話の中で紐解かれていくのはおもしろかったです。スカーレッドと太陽神のくだりは個人的に盛り上がりましたね。
 長編向きの題材だったのかな?短編としては目が滑るところもあったように思います。
 異世界から召喚されたグラースとスカーレッドのコンビで別の話も読みたくなりました。ちょいちょい挟み込まれた井戸田はなんだったのか…謎が深まります。こだわりのある単語選びや世界観はとてもよかったです。おもしろかったです。

謎の女子高生:
「大邪」と呼ばれるドラゴンを狩る、本格的なファンタジー小説。封印を解かれた大邪を屠るために様々な勢力が活躍し、短いながらも群像劇的な組み立てが面白い。最初「スピードワゴン井戸田」の文字が出たときは何事?と思いましたが、少しずつ設定が明るみになると意味が効いてきて、特殊ながらも面白いギミックだったと思います。
 中~長編的な規模の展望を見越しているのか、やや設定過多であるようにも感じましたが、設定自体の面白さもあり、全体を通してみれば物語にとって邪魔になる要素ではなく、その点も読みやすかったかと思います。
 世界観の期待が広がるファンタジー作品として、さらなる展望があれば、是非読んでみたいと思わされる作品でした。

11:森バトル/そして白

謎の有袋類:
 はじめましての方です。参加ありがとうございます。
 妖精学を学ぶ主人公が妖精の国へ行くというお話。妖精の国の幻想的な描写や、人間と姿も価値観も違う妖精達の描写がとても良かったです。
 とても良い物語だったのですが、テンポ良く話が進み、どんどんと固有名詞や人物名が出てくるので、登場人物の名前と今誰が話しているのかを把握するのが難しかったです。
 短編で登場人物が多いと、初めて読んだときに誰が誰だかわからないまま話が進みがちなので一万字以下の短編の場合、登場人物は最大でも四人くらいがちょうどいいかもしれないです。
 せっかく様々な能力や強みのあるキャラクター立ちなので大きな字数の舞台で、もっと掘り下げてじっくり読者にキャラクターを紹介してあげると親切かなと思います。
 作者はこの世界のことを知っていますが、読者にとってはこの世界や物語は初めて触れるものです。丁寧に説明してあげると情報量の差が埋まりにくいと思います。
 物語全体を通して、妖精の女王と何かあったらしいポーター教授、案内人のリーニンクとホーディンの関係性など魅力的なキャラクターが多く、話タイトルのREポートも、人間の再来と掛けてあって好きです。
 こちらを雛形にして長編小説にしてもいいんじゃないかなと思いました。これからも作品をどんどん作っていって欲しいなと思います。

謎の果実猫:
 妖精学のフィールドワークに出かける話。
 教授の運転で妖精たちの生息地へ入った主人公、そこで様々なものたちとの出会います。主人公の前へ次々に目まぐるしく飛び込んでくる妖精たち、その描写に楽しませてもらいました。とてもおもしろかったです。
 多彩なキャラクターたちはいきいきしていて豊かな表現力を感じました。描写がとても好きでした。色の描写が特に好みでした。教授と女王の関係も気になりますね。娘さんは女王との娘さんなのかな。
 とてもおもしろかったです!

謎の女子高生:
「妖精学」を学ぶ主人公が、大学教授と妖精のいる森へフィールドワークへ向かい、妖精の世界での出来事に行き会う幻想小説。どこか宙を掴むような、妖精の世界らしいふわふわとした読み味が面白い。作者の表現したい世界がありありと描かれていると感じました。
 短いセンテンスで展開を並べ立てていたので、作中で何が起きているのか、少し視点を追いかけるのが大変でした。起こっている状況を描写するだけでなく、状況を説明するともっと読みやすくなるかと思います。
 幻想小説の読み味として面白く、妖精学という世界のある現代についても、想像の広がる作品でした。

12:すみちゃんに見えた光/尾八原ジュージ

謎の有袋類:
 すみちゃん……!!!!!!めちゃよかった……。
 連載ジャンキー!みんなこわい話が大すきも絶賛発売中のジュージさんが参加してくれました。参加ありがとうございます。
 目が見えないすみちゃんが見る光……それは魂のようなものだったという作品でした。最初は疎まれていたすみちゃんが、死んだお婆さんも似たようなことが出来たということを皮切りに大切にされ、家も豊かになっていくのですが……。
 いいぞすみちゃん! やったれーーー!!! と僕はすみちゃんを応援していました。サラッと友達である朝子ちゃんを脅しているのも好き。
 個人的な欲をいうと、光を取ったり出来るみたいなことを前半に仄めかしで入れてもいいのかな? と思いました。
 講評だから無理矢理捻り出したというだけで、このままでも十分におもしろく、後半で「ヒュッ」となるような要素の詰め方がうまい短編でした。
 短く怖い、そしておぞましさもある夏に読みたい素敵なホラー!
 これからも母校としてジュージさんの活躍を楽しみにしています! レッツ進捗!

謎の果実猫:
 鳥肌が立ちました。
 タイトル通りすみちゃんに見えた光のお話。主人公朝子の父方の伯母の連れ子のすみちゃんは目は見えないが光が見える。それは死の影がつきまとうものばかりだった。その力は遺伝で以前は祖母がそうだったという…。
 すみちゃんと朝子のほんの少ないやり取りの中ですみちゃんが近く死んでしまうことを朝子は知ります。その言葉通りすみちゃんとその家族は酷い結末を迎えました。とても切なくつらく、そして怖いお話です。とてもおもしろかったです。

謎の女子高生:
「光」が見えるようになった盲目の少女の話。怪談、ホラーに分類される物語ですが、少女の境遇や顛末が切なくしんみりとしてしまう、切ない読み味の作品でした。死が見えると知った上で取るすみちゃんの行動も、ホラーとして非常に恐ろしく感じます。
 朝子の視点で物語が進むため、二人の関係を見ると、彼女の行動がやや淡泊に見えるところが多少気になりました。欲を言えばもう少し二人の関わりの深さを見たかったようにも思います。
 光を「死」として見るという解題に、思わず呻らされる素晴らしいホラー掌編でした。

13:愛しているなら/姫路 りしゅう

謎の有袋類:
 前回はNTR小説とコミカルな密室系小説を書いてくれたサイコバニープリンセスこと、りしゅうさんの参加です。ありがとうございます。
 今作は乳首当てゲーム! 男同士のカップルがAVの企画に出演する作品です。細かいことはどうでもいい!愛の証明のために乳首を当てるんだ! 賞金は10万円!と清々しい設定でパワフルに振り回す感じが軽快で面白かったです。
 回想と現在が入り組んでいて、◆で時系列を区切ってくれるのが親切なのですが小技を使わずになんとかしてくれると小説ポイントが更にあがったかもしれないと思いました。
 全体的に軽いテンポを保ちつつも恋人同士の葛藤、他人の悩みを本質的に理解出来ないからこその解決策と乳首が光るおもしろ設定だけで終わらせずに恋人や人間関係に踏み込んだ内容になっている部分もめちゃくちゃ好きです。
>真面目な話の時にそんなワード置くのやめないか
 ここで笑っちゃったw
 こういう「ふふっ」と笑ってしまうポイントを自然に織り交ぜられるのは圧倒的な強みだと思うので、強みを活かしつつ、これからもどんどん作品を書いていってくれると嬉しいです。

謎の果実猫:
 愛しているなら恋人の乳首がわかるはず乳首あてゲーム!をする話と思ったら光る乳首を持つ恋人による試し行動だったという話。
 光る乳首を持つリクとその恋人ヒデ。ヒデが回想と現在を繰り返しながら自問自答し真実にたどり着くのにはパズルのピースがハマったときのような爽快感がありますね。それぞれの違いをわかったうえで相手を思いやる気持ちがいちばん大事なんですね…。いい話だ。とてもおもしろかったです。乳首は光っているのでもちろんお題回収は満点です。

謎の女子高生:
 乳首発光枠。賞金の掛かった乳首当てゲームに参加する男性カップルのお話。乳首が発光しているので少しネタ的な物語かと思いきや、非常に良いBL小説でした。またゲーム小説としての「攻略」の読み応えもあり、ゲーム小説を得意とするりしゅうさんの手腕が否応なく発揮されており、大変面白かったです。
 欲を言えば、乳首当てゲームは状況証拠のみ、主人公の想像で展開するに至っているため、ゲーム自体をもう少しロジカルにしても面白いのではないかとも思います。
 恋人の発光乳首を当てることになるならこの小説を読めばいい、そう思えるほど正確な発光乳首描写は、発光乳首SFの金字塔とも呼べるでしょう。

14:そのゴリラは光っていた/豚肉まぢか

謎の有袋類:
 Twitterではお世話になっています!こむら川には初参加!ありがとうございます!
 光るゴリラのタロウさん、光っているのではなく自分にだけ光って見えていることを確認するやけに冷静な主人公がめちゃくちゃに好きです。
 そして、しっかりとタロウさん呼びをしているのがダメだったwズルすぎるw天丼もうまくて、毎回西ローランドのという地名はない……と正気に戻るのが好きです。
 こういうテンポ良く読めて「わはは」と笑える話めちゃくちゃにいいですね。もうこれは完成された形……素晴らしいゴリラ小説です。ゴリラがうんこを投げても良いのでは? みたいなことを思ったけれどそれはそれでゴリラよりもうんこが目立つ可能性があり、うんこを投げない光るゴリラの塩梅がベストシャイニングゴリラなのかもしれない。
 最後、うさぎが光って見えたのもめちゃくちゃによかったです。明日は病院に行こうね、パパ。
 これをきっかけにカクヨムで色々書いてみて欲しいなと思いました!レッツ創作!

謎の果実猫:
 家族サービスのため動物園に行った主人公の前でゴリラが光るお話。光るゴリラ!いいですね~!簡潔!ゲーミングゴリラ!わかりやすさ!とてもいいですね!疲れた心にグッと来ます。
 光るゴリラを目の前に心の中で葛藤もとい暴走する主人公がおもしろいですね。
 主人公があれやこれやと考えていても当のゴリラは意に関さず餌が欲しかっただけで空腹が満たされたあとは光らなくなるのもおもしろかったです。この世界では空腹の度に動物が光りだすのかな? 知覚できる人間とそうでない人間がいるのでしょうか? 娘が知覚できていないところを見ると今までの人生で出会っていないのも納得できるかも? そのあたりが不思議でした。とてもおもしろかったです。

謎の女子高生:
 娘と行った動物園のゴリラが光っていた話。ゴリラが光ってること自体が面白いのですが、光るゴリラを見て色んなことを思いあぐねるパパの思考が輪をかけて面白い。話の展開は本当にゴリラが光ってるだけなのに、光るゴリラについて力説され畳みかけてくるような思考が読んでいて愉快でした。最後のオチも好きです。
 何故ゴリラが光っていたのか、主人公なりの「答え」が出ていると、オチへの布石にもなったでしょうか。
 光るゴリラを見た主人公の独白から、ゴリラが光るのをやめたときの空虚さまでよく表現されており、発光ゴリラ発見の追体験的な文章運びが素晴らしかったと思います。

15:いずれ浜辺に打ち上げられて/惣山沙樹

謎の有袋類:
 ちんぽが光る弟のお話を書いてくれた惣山沙樹さんの二作目です。
 多分、こちらが本来の作風なのでしょう! 重ための設定と兄弟愛的なBLが好きだなと言うのが伝わってきました。
 父親に一方的に嬲られていた兄がとうとう弟に手を出したことをきっかけに、父親を殺してしまうと言うある種のハッピーエンドに向かうのかと思いきや、兄が今度は豹変するという結末は刺さる人にはめちゃくちゃに刺さるのだろうなと思います。
 僕はBLをあまり嗜まないこともあり、兄の豹変がかなり唐突だったかな? と思うので、ジャンル外の人をスコープに入れる場合はもう少し兄が弟をそういう目で見ているだとか豹変する違和感などを作中に入れておくと親切かもしれません。
 同好の士へ届け! するのなら、そこら辺は余計なノイズになるのかもしれないので、作者さんの好み次第だと思います。
 これからも地獄は続くエンドは好きな方も多いと思いますし、作者の方が多分楽しく描いたのだろうなと言うことがわかる素敵な作品でした。

謎の果実猫:
 泣きました。兄弟が父によって支配され抵抗して絶望の中これからは自由になれると思ったのもつかの間新たな支配者に取って代わられるお話。
 海へ行く車の中で兄弟は何を思っていたんだろう。
 未来も夢も希望もなかった弟が希望を見出したのもつかの間、たった二人の兄弟で、守ってくれていたはずの兄がそう変わってしまって弟に手を出すようになるのはとても悲しい結末ですね。虐待の連鎖的でもあります。とても興味深い内容のお話でした。切なく辛く悲しいお話でした。

謎の女子高生:
 父親から性的な虐待を受ける兄と、その兄に守られてる弟の話。穢れと憎悪にまみれた家族の物語で、非常に胸が苦しくなりました。父親からの性的な虐待から弟を守るために自らを犠牲にしていた兄も、最後には……という展開が、負の連鎖として描かれていて息苦しくも切ない。父親の気持ち悪さや、その血の繋がった兄弟の先行きの暗さなど、小さな光を探すような物語が非常に印象に残りました。
 兄の弟への感情の結末があまりに辛く、或いは弟自身もそこに救いを見るような描写があれば、気持ちの上では救われたでしょうか。
 見通しの立たないある種の逃避を描くBL作品として、非常に素晴らしかったと思います。

16:光る☆小早川さん/まさかミケ猫

謎の有袋類:
 はじめましての方です。未来人は魔法世界を楽しく魔改造するが発売中!まさかミケ猫さん、参加ありがとうございます。
 感情で体が光る女の子と、友人である主人公のお話。
 もうめっちゃキュンーーーーー!よかったーーーー!青春だーーーーーー!
 こういうキュンが大好きなのでめちゃくちゃによかったです。お友だちから初めて行こうという青春を送りたい秋穂ちゃん、感情丸出しなのになんで?という疑問の解決がすごく気持ちよい……。
 めちゃくちゃによかったのですが、字数がまだまだ余裕があるので盛り上がりが大きいエピソードが一つ入っていると更にキュンが出来たかなと思います。
 でも、キスするのか? ってところで抱きしめて心臓の音を聞かせる月島くんーーーーーー!イケメンーーーーー!めっちゃよかったーーーー!
 キュンのオーバードーズでした。僕も光る体質だったらキュンの気持ちでパステルピンクに光っているかもしれない。
 すごくよかったです。体が光るという設定でここまで正統派のキュンがくるとは思わなかった……。素晴らしい裏切り方。
 参加してくださってありがとうございました!

謎の果実猫:
 感情が昂ると体が発光する特異体質の持ち主と恋のお話。とてもよかったです!めっちゃ光る!とても楽しく読めました。
 光るせいで感情が丸わかりになってしまう小早川さんがとても可愛らしいですね!主人公に対していい感情を持っているのが見て取れて可愛らしいです。
 キャラクター性がとてもわかりやすく楽しく好きです。主人公と小早川さんが仲良くなるきっかけの、自分のことを打ち明けて小早川さんと打ち解け合うシーンもとてもいいですね!パワフルで可愛らしく素敵なお話でした。

謎の女子高生:
 感情の起伏によって身体が発光する女子と、クラスメイトのボーイミーツガール青春小説。感情によって身体の発光色が代わり気持ちが周りに筒抜けになるせいで、周りと上手く付き合えない少女と、主人公が少しずつ距離を近づけていく様子が瑞々しく描かれている。一方の感情が筒抜けになることの恥じらいや、それを受け入れてもらえることへのヒロインの素直さが非常に可愛らしい。
 ヒロインの感情による発光という設定とそれにまつわる描写が、「外から見た人」という視点を抜けられてないように思うので、ヒロインにしか分からない発光表現や隠している体質の癖などがあると、より「当人問題」として設定の面白さが深まるかもしれません。
 ティーンズ向けの青春物語として非常に甘酸っぱく、この夏にふさわしい清涼感のある話だったと思います。

17:夜と朝の終わりが来るまで/ぶいさん

謎の有袋類:
 じんわりとしたホラーや人外が得意なぶいさんが参加してくれました。参加ありがとうございます。
 サイバーパンクだーーー! と思いきや吸血鬼もの! 始祖とその眷属! めちゃくちゃに好き!
 始祖の朝と、出来損ないの褐色吸血鬼の夜ちゃん。二人の組み合わせがめちゃくちゃに愛おしい。素直じゃない朝さん、すごくよかったです。
 どこらへんが出来損ないなのかもう少し掘り下げてあるとさらに夜ちゃんの焦りだとかちょっとした劣等感があってよかったかなと思います。
 この設定と関係性めちゃくちゃに良いのでじっくりとエピソードを膨らませて中長編にも出来そうなのがいいですね。
 夜ちゃんの強気なのもすごくよかったー!
 最後の「夜と朝の終わりが来るまで」で終わるタイトル回収も、生きるのに飽きてないっぽいことがわかった朝も最高ーーー!
 これからもどんどん色々と書いて欲しいなと思います。体力を付けて中長編チャレンジ……してみましょう!

謎の果実猫:
 早く出せてよかった。

謎の女子高生:
 吸血鬼の眷属の少女と、その始祖の話。謎の果実猫、ぶいちさんの作品。吸血鬼の二人のキャラクターがとても可愛らしく、二人の日常が平和的に描かれていて温かい気持ちになる。未来的な世界観ながらも、そこに住まう「亜人」たちの生活の有り様が描かれ、良い世界観に入り込める作品でした。58℃の気温って現在記録されてる世界最高気温に近いそうですね。人もヤバイ暑さ。
 世界観、キャラクター共に魅力的な本作ですが、それ故に「夜」と「朝」の二人の世界で物語が閉じてしまっているのがもったいないと感じました。端役でも他のキャラクターを足すなどすると、視点も増えてより世界観に深みが増すかも知れません。
 非常に愛らしい作品で、SF的な世界と幻想の世界の交わりが大変よかったです。

18:光の中で灯を点ける/根占 桐守(鹿山)

謎の有袋類:
 人を狂わせる光、黒髪長髪イケメン(決めつけ)、関西弁、ハッピーエンド……五億点です。狂ってしまう。
 はじめましての方です。ルール・ブルー 異形の祓い屋と魔を喰う殺し屋の作者である根占桐守(鹿山)さん、参加ありがとうございます。
 めちゃくちゃによかったーーーーー!最高!
 どうしよう狂ってしまいます。僕、関西弁の黒髪長髪イケメンが死ぬほど好きなのでこれはどうしたことかと思いました。
 弟への劣等感、執着、狂ってしまった両親と圧倒的な光である弟……でも弟の光は兄貴だった……展開も構成も関係性もめちゃくちゃによかったです。
 良すぎて僕がちょっと平静を保てそうにないですね。
 ずっとお兄ちゃんの本名なんだろうなって思っていたのですが、最後に明かされるそれもめちゃくちゃによかったです。これは本当に講評というか個人的な要望なのですが、ホナカって名前で活動していた理由なんかが作中で書いてあると僕が個人的にうれしいなと思いました。
 マジでめちゃくちゃによかったです。あと「敬語取るだけで、好青年風からえらい男臭くなるもんやな」ここが本当にそう。
 参加ありがとうございました。関西弁の黒髪長髪イケメンは最高。

謎の果実猫:
 すごくおもしろかったです!
 眩しい光のような弟アカリを持つ兄の話。アカリの兄である主人公はアカリの眩しさに耐えられず逃げてしまいますが家を出てからもいつも目で追っていました。十年後のある夏の日、アカリが主人公を訪ねてやってきます。窮地に陥り自死をも考えたアカリは兄の歌に救われました。兄のやさしさに助けられていたとアカリが指折り数えてありがとうを言うシーン、主人公が覚悟を決めてアカリを励ますシーンとてもよかったです!一方通行じゃなかったとわかるところ胸熱です!「世界中のどこに居ても、互いが光って見えてしょうがない、「兄弟」でしかないのだと。」とても好きです。

謎の女子高生:
 様々な才能を持って生まれた弟と、そこから逃げるように離れた兄が再会する話。人を惹きつけるほど才覚に恵まれた弟が生まれたことで起こる家庭内の不和と、そこから逃げ出した兄が、「音楽」を切っ掛けにして再会して心を通わせていく様が胸を打つ。才能を持つ眩しい人を光として描くが、誰が誰にとっての光であるかは、結局それぞれの目で見たものである、という物語だと読みました。
 作中で主人公本人は自らを才能のある人の対義として凡人だと評していますが、音楽で食い扶持が稼げる人はちょっとした人でもあるように思います。その点を加味すると、リアリティのラインとしてはやや出来過ぎな話に感じる面もありました。
 二人が再会したときの距離感の描写や、パンイチで対話するところがとても好きでした。兄弟愛、いいものですね。

19:ザ・ロードムービー/大澤めぐみ

謎の有袋類:
 我らが王、大澤めぐみさんの参戦!ありがとうございます!
 ある日砂塵に包まれた世界でひたすら生きていくことになる二人の物語……。
 どういう理屈で人は納得するのか、理屈とはなんなのか……という問いが何度もされるのが印象的でした。
 刹那的で銃をぶっ放すキチガイと、善良で少し警戒心が足りなかった車を修理できる男……二人はよくわからない理屈で不死に近い状態になっているのが判明する後半もすごくよかったです。
 個人的な好みなのですが「俺」がケガをしてすぐに治った気がするけど気のせいだなって流すなどすると「本当のところは。どういう理屈で納得するかってだけ」が更に光るのかもしれないなと思いました。
 この先もブライアンと「俺」はぶつかりながら進み続けるのでしょうか。
 たよりないヘッドライトの光と闇の先にあると信じている光の対比が印象的な作品でした。ブライアンがめちゃくちゃに好きです。

謎の果実猫:
 とても読みやすいです。世界が砂塵に包まれた中、銃を突きつけられたも同然の主人公がどこともわからぬ場所で車を走らせているお話。
 砂塵の正体は無限の自己増殖を繰り返すナノボットで、主人公の体は主人公も知らぬ間にナノボットによってどうやっても死ににくい体に変えられてしまっていました。こういうのすごく好きです! やるせなく切ない! 冒頭の光と粒子の説明も納得するための理屈につながってくるんですね。冒頭の理屈の説明のところは私にはちょっと難しくて少し目が滑るかな? と思うのでもう少し短くしてもいいのかも? でもそうすると納得するための理屈が生きてこないし難しいですね。
 男たちが車に乗って同じシーンを繰り返すだけのように思うのにこんなに読みやすくストレスがないのはさすがです。
 確かな筆致と豊かな表現力を感じさせられました。とてもおもしろかったです!

謎の女子高生:
 ナノマシンで汚染された世界で当てもなく車を走らせるロードムービー。人殺しも厭わない男と、元自動車整備士の男の旅路が描かれる。
 当たり前だった世界では現れなかっただろう非常識な男を隣に置いた車中の緊張感が伝わってきて、こちらも非常にドキドキさせられました。
 ブライアンは埒外な思想なのか、あるいはある種の人間不信なのか、自分たちの常識にはない理で動いてそうなのに、それでも「光」を求めるようにどこかへ向かっているのがとても印象的です。
 目的が無いところがこの物語の肝ではあるのですが、主人公、ブライアンのどちらにも目的らしい目的が無かったので、物語の進行の動機がやや浮ついているように感じるところもありましたが、作品全体を通してザラザラとした質感が心地よく、肌触りの良いロードムービー小説でした。

20:読んだら捨ててくれ/紫陽_凛

謎の有袋類:
 初参加!転生したらポンコツメイドと呼ばれていましたの作者である紫陽 凛さんです。参加ありがとうございます。 
 タイトルの通り、手紙の形式で途中までは進んでいき、震災で全てを奪われて変わってしまった部分からは一人称記述の小説として記述されている作品です。
 時系列が入り乱れている部分なのですが、どういう狙いなのか僕には判断がつかなかったです。すみません。読者と作者の間には圧倒的な情報差があるので、この順番にしている理由はこれ! と親切すぎるくらいに書いてしまった方が親切なのかもしれないなと思いました。
 実際にあった災害を基にした作品ということでコメントするのもかなり難しいのですが、何か届いたり響いたりするといいなと思いました。

謎の果実猫:
 誰かへの手紙を読んでいる主人公が手紙と共に回想していくお話。主人公が出せなかった手紙と、主人公は現在から過去へ戻っていきます。転校した美雨ちゃんが行方知れずになってしまったこと、万智ちゃんを震災で失ったあとも主人公は現実を生き続けています。いつもと違う不思議な夢を見たこと、手紙を燃やしたことで自分の中で区切りができたのでしょうか?そうだったらいいなと思います。
 各話と各話の繋がりが薄いように思うので、読者が混乱するかもしれません。わかってから読むとなるほどとなるのですが、はじめはわからないのでもっとわかりやすく繋げてあげてもいいのかな?
 2004の万智ちゃん美雨ちゃん主人公の初々しさが可愛らしかったです。わかってからがなおおもしろいです。読み返したくなる魅力的な作品でした。とても興味深い内容でおもしろかったです。

謎の女子高生:
 タロット占いをフックに、手紙を遡るように読み進めていく三人の少年少女の物語。恋人を震災で亡くし、それとは別に思春期の気持ちに決別を告げるために長い時間をかけることになった青年の吐露が悲しく、胸を打つ。この世の全てが運命だとしても、それを運命と決めつけるのも、運命でないと一蹴できるのも、生きているその人だけなのだと感じました。天使の梯子のモチーフも印象深かったです。
 一点、組み立ての都合から、美海のキャラクターが少し掴みにくかったように思います。
 構成としても逆位置・正位置のギミックがよく効いており、現代から遡り、2004年から点対称で再び現代へ戻ってくる作りがとても美しく、また「読んだら捨ててくれ」というタイトルの効きも、大変好みでした。

21:光源/惟風

謎の有袋類:
 ハラハラだったり、ほのぼのだったりと作風の幅が広い惟風さん!参加ありがとうございます。
 今回はハラハラの雰囲気だ! どうなんだ……と緊張感のあるシーンから語られる主人公の半生がすごくよかったです。
 運が良く、そして人間関係にも恵まれているけれど主人公の中に渦巻く劣等感……。きっと恋人も長く付き合わなければその内心には気付けなかったのでしょう。
 振られた腹いせ……に似た感情で、明里に殺意を抱く主人子が、最後より強い光源である「太陽」くんに救われるのがすごくよかったです。
 太陽くんと今も信仰があることを中盤あたりで入れてくれるともう少し気持ちが良い情報開示になったかもしれないなと思いました。
 なんとか道を踏み外さないで済んだことを「運が良い」と表現する主人公の性根がふらふらと光源に群がっていくに合っていてタイトル回収もバッチリ!
 これからも楽しく創作を続けて欲しいなと思いました。

謎の果実猫:
 人を殺しに来た男が運良く思い直して帰っていく話。主人公は夜中とあるマンションの一室の前にいました。手間取り明滅する灯りの中で半生を振り返りながら…。鍵を取り出す動作をたっぷり一話分使い、それでいてハラハラ感が続いているのがすごいと思いました! ただそれは同時に展開がないとも取れるので難しいところですね。
 運良く思い直して帰っていくシーンは主人公には救いであったでしょうが、山橋太陽に乗り換える主人公の行いが実に勝手でヘイトが溜まるのでそこの消化がなんらかあったらよかったのかもしれません。感情の描写が明滅する灯りと連動しているのがおもしろいですね!映像的といいますか、映画のワンシーンを見ているようでした。とてもおもしろかったです!

謎の女子高生:
 卑屈に生きてきた男が人生の一大決心として元カノを殺そうと計画する話。決心の揺らぎと切れかけの蛍光灯のモチーフが連動し、身勝手な男の思考の独白に、言い知れない緊迫感をもたらしている。
 自分では何も決められない、周りの人間に助けられてきたという自覚が、あるいは最後に本人への救いになっているという構造が巧みに感じます。
 山橋の存在は目立つように描かれているが、主人公との接点というところで、オチへの繋がりに少し唐突さを感じるので、もう少し過去の接点を強める描写があると、山橋の光をより強く感じられるようになるかも知れません。
 独白の小説は卑屈さが強調され読みにくさや不快感が出てしまいがちですが、本作は一歩踏み出せない主人公の独白も、どこかスッと受け入れられる読み味で、楽しませていただきました。

22:光を、もう一度/ぴのこ

謎の有袋類:
 はじめましての方です!参加ありがとうございます!
 兄貴!圧倒的主人公にとっての光!こういう関係性めちゃくちゃに好きなのと関西弁でガラの悪い兄貴がめちゃくちゃにツボでした。
 運命の出会いめいた兄貴との出会い、そして順調に悪い道を進んでいき、そして兄貴から仕事を任せられる流れがすごくよかったです。そこからの兄貴の裏切りに動揺する流れが美しい。
 最初と最後で二度、ニュースの記事風の記述があるのですが、少しだけ意図が伝わりにくいのとエモで終わった部分がスンッと落ち着いてしまうので、エモで終わった方がいいかも? と思いました。 ここは好みの問題なので他の評議員の意見や周りの感想を見て自分が行きたい方向性を目指していきましょう!
 講評なので、無理矢理一点こうした方がいいかも! を書いただけで、作品の完成度はかなり高いです。 
 ドラッグの効果の導入から、主人公がドラッグを過剰摂取する構成も綺麗で読んでいて気持ちよかったです。
 これからもコンスタントに作品を書いて、中長編にチャレンジしてみて欲しいです。

謎の果実猫:
 極道の麻薬密売人と麻薬を作る無免許の医者の話。まずお話がとてもうまいです!とても読みやすかったです。
 心酔する兄貴のため成果を出すまで9年の月日をかけて新しい薬をついに作り出した主人公。喜びもつかの間、兄貴の裏切りにも近い言葉によって主人公は深く絶望し兄貴を撃ち殺してしまいます。
 主人公は深い絶望の中作り出した薬を摂取して幸せだった記憶を呼び覚まそうとします。とても切なくつらく悲しい結末ですね。
 倫理観を捨てた人間がしっかりと痛い目にあっているところがいいですね!とてもおもしろかったです!

謎の女子高生:
 俺と兄貴の10年間。危険ドラッグの密売と製造を行っていた二人の男の出会いとその顛末を描いた作品。アンダーグラウンドを舞台にしたブロマンス作品で、密売ビジネスから足抜けしようとする兄貴を殺してしまう弟分の気持ちが切ない。
 一見、兄貴が身勝手で全部押し付けて立ち去ろうとしてるのかなという風にも読めたのですが、よくよく考えると足抜けしたい理由もちゃんと説明してくれていますし、これ本当の善意も込みで弟分に事業を譲ろうとしてるのかな、だとしたらままならないな……と感じました。
 無免許医の設定については、物語のプロットや展開故の設定だと思うので、大きくはありませんが少々リアリティを欠く部分でしょうか。他部分がしっかりリアリティをもって描写されていたので、その点が少しだけ気になりました。
 しかしながら総じて現実的な読み味は心地よく、導入と幕引きに新聞記事の引用を持ってくるところも、知らない世界の知らない話の裏で起こっていたことを垣間見れたようで、好きでした。

23:百個の怪談を話すと出る怪異がいる一方で、百首の魔改造百人一首を詠むと成仏する怪異がいるらしい/黒川しらす

謎の有袋類:
 はじめましての方です。参加ありがとうございます。
 百人一首や和歌に詳しくないので的外れな感想だったらすみません。
 魔改造百人一首という多分オリジナルの百人一首を文字った和歌を百歌読むと成仏するという幽霊の少女との淡い恋を描いた作品でした。
 下限ギリギリの字数で仕上げているのは、魔改造百人一首にかなり色々と情報が圧縮されているのもあるのでしょうか?
 祖母の代から居続ける幽霊ちゃんが、主人公の手に寄って成仏出来る悲恋ものとも言えるお話を楽しく読むことが出来ました。
 百人一首や和歌が好きな人に向けて書く場合、このままでもいいと思うのですが、より多くの人に作品を届けたい場合は和歌に込められた意味を本文内で解説してあげると親切な作品になるのかなと思いました。
 幽霊ちゃんを通して、主人公が友人を作っていく様子など前向きな結末はすごくよかったです。
 「彼女は間違いなく面倒な悪霊だった。死ぬまで私の心に取り憑いていたのだから」この一文で締めるのがすごく綺麗で好きでした。忘れられない恋、いいですよね。
 これからも好きな題材を楽しく書いてどんどん作品を作っていって欲しいなと思います。

謎の果実猫:
 魔改造百人一首を詠むと成仏する怪異とひと夏の恋のお話。
 魔改造百人一首!百人一首や和歌に疎くてもおもしろかったです。懐かしいですね百人一首。息を呑むほど美しい幽霊との出会い、胸が高鳴ります!
 魔改造百人一首に惑わされましたがしっかりした恋のお話でした。私は和歌に詳しくないのでもし和歌のあとに現代語訳などがあったら詰まらずに読めたかな? と思いました。主人公と幽霊の関係性がとてもよかったです!
 主人公の心に残った幽霊の残り香が切ないですね。とても楽しく読めました。

謎の女子高生:
 百合小説! ありがとうございます。魔改造百人一首を詠んで欲しい少女の幽霊と、魔改造百人一首を詠む少女の一夏の出会いと別れを描く百合小説。
 魔改造百人一首という言葉自体、かなり印象に残るいわゆるパワーワードですが、一種の本歌取り的な創作は現代の人に寄り添い、あるいは作中のように人と人とを取り持つのに丁度良いと感じました。
 百人一首に収録された短歌を魔改造して詠み、それに対して魔改造しない句を返すというのは、ある意味では隔絶のような返歌であり、現代に生きる人に詠まれた魔改造百人一首が此岸であれば、すでに詠み人の亡くなっている百人一首は彼岸から詠まれているのだと突きつけられるようで、二人の関係の終わりを思わせる良いメタファーのように思います。
 二人の関係は魔改造百人一首によるものでしたが、作中の関係を見るにそれ以外でも様々な交流があったろうと想像します。かなり古くから存在したであろう悪霊の少女が、いかにして存在しえたのか。そこが想像できるエピソードがあると、さらにキャラクターが魅力的になるかも知れません。
 総じて、開催時期に読みたくなる、良い清涼感の作品でした。ふとしたときに自分も、魔改造百人一首を詠んでみたいような気がしました。

24:黙秘/川谷パルテノン

謎の有袋類:
 前回は酔っ払いのカオスな様相を書いて参加してくれたパルテノンさんです。参加ありがとうございます。
 今回は同級生を刺してしまった女の子を中心としたお話でした。
 どう見ても犯人であるまどかは黙秘を続け、被害者である光穂優は最終的に死んでしまうお話なのですが、刑事が真相を覆うとすると光穂優の取り巻きである少女二人も光穂優に狂わされていたり、まどかに片想いをしてるらしい男の子が暗躍していたりと複雑な事情が絡んでいた……という内容は面白かったです。
 まどかがとうとう黙秘を貫くのを辞め、真相がわかるのか! と思ったのですが、真相も、まどかが家庭科室に入れるように手引きをした犯人も明確にはされずに終わる作品でした。
 ミステリーが好きな人に向けて書く場合は、こういった挑戦状のような作品も好まれると思うのですが、よりマスに向けて書く場合、ちょっと親切すぎるかな? これはもうほぼ言ってるじゃん! くらいまで読者の思考を誘導してあげた方がエンタメ度は高まるかも知れません。
 個人的には生徒の味方である先生が生徒の保護者と昔不倫していて誰かに現場を押さえられていたサラッと開示ところが好き。
 ミステリーに疎いのと、僕の頭がよろしくないので、何回か読んでも真相に辿り着けなかったのでよければどこかで真相についてお話してくれたらいいな……と思います。
 パルテノンさんは作風も広く、文体の使い分けが得意なイメージです。これからも色々と作品を書いて欲しいなと思いました。

謎の果実猫:
 少女が同級生を刺したあと黙秘している話。物語は刑事視点で進んでいきます。
 第一発見者や関係者に聴取を行っていく中で不審な点が浮上していきますが、はっきりとは明かされません。お話が複雑に絡み合っていて読み解くのが難しいためそこが少しだけストレスになるかな? と思いました。
 キャラクターたちはとてもよかったです!個人的に五十鈴千江さんが好きです。それから弓削さんはかっこいいキャラクターでしたね。登場人物たちみんなに味わいがありそこが物語を引き締めてくれていると思いました。とてもおもしろかったです。

謎の女子高生:
 一人の少女が包丁で刺された事件を巡る、少年少女たちの証言と記録。優という名の少女を光のように見る周りの証言が、ともすれば嘘のように辻褄が合っていく様が面白い。
 事件当事者を調査する刑事の視点から整合していく話が、ある意味では仕組まれたようで、謎を残したように終わるのも優の神秘性を高めており、設定やプロットの合致がすごいと感じました。
 事件の証言をきいて回る小説であるため、全体の質感がやや淡白なきらいはありますが、ある意味ではその「客観性」こそが読み手にとっても作中の当事者であると感じさせる要素になっているかも知れません。
 いろんな感情が錯綜する群像小説として大変面白く読ませていただきました。
 あとほのかにクソデカ感情の百合を感じており、それも大変美味しゅうございました。ありがとうございます。

25:たびんちゅぬふぃかり/白里りこ

謎の有袋類:
 前回は巨大な戦女神のお話で参加してくれた白里りこさんです。参加ありがとうございます。
 爆発ハッピーエンド! 暗いガマの中で惰性で生きてきた女の子が最後に光を放ち、家族の元へ旅立つお話でした。
 最後の爽快感がすごい。みんな吹き飛ばそうぜ!
 このお話からすれば未来に生きている僕たちからすれば、どうなるのかはわかるので愚かな選択だと思う可能性もあるのですが、ニライカナイへ行った方がアドだと思うのはわかる! 家族みんなで幸せにすごせているといいね! と思いました。
 これは作者であるりこさんが、このお話をどう読ませたかったかにもよるのですが暗いお話にするとしても、ハッピーエンドの爽快感を出すにしても悲壮な部分はもっと悲壮に書いてしまってもいいのかなと思いました。
 良くも悪くもあっさりと読めてしまう部分があるので、せっかくですしメリハリをガンガン効かせて暗い部分は思いっきり暗くしたり不快な部分を目立たせると作品にさらなる奥行きが出来て、他の作品との差別化も出来るかもしれないなと思いました。
 僕はこういう幸せな死に向かって一直線みたいな結末が好きなので非常に楽しく読むことが出来ました! 爆発ハッピーエンドはとても良い。みんなニライカナイで幸せになろう。
 これからも色々なチャレンジをして楽しく創作を続けてください!

謎の果実猫:
 鳥肌が立ちました。とてもお話がうまいと思います。私は歴史に疎いのでもし違ったら申し訳ないのですが第二次世界大戦末期のお話なのかな? 終戦の近い時期の沖縄戦のお話。表現力がとても素晴らしいと思います。
 匂いや音を感じるような現実感のある描写でした。主人公が淡々としすぎているような気もしますがそこは辛い境遇のせいでしょうか。
 客観的に見ればつらく悲しい結末ですが、主人公にとってはどうだったのでしょう。考えさせられます。その余地も心地よいのかもしれません。最後のシーンは鳥肌が立ちました。感動しました。とても興味深い内容のお話でした。

謎の女子高生:
 戦時下の沖縄で敵兵から逃れるために天然の防空壕へ逃げ込んだ人々の、最後に見た光の話。戦争の悲劇を描く作品として、非常に読んでいて苦しかったです。市井の人々の極限状態の様子の描写は端的ながら生々しく、死を達観していく主人公の思考に引っ張られそうになるほどでした。
 悲劇を悲劇としてありのまま描いた作品であるので、これ以上足し引きできないものではあります。もしこの作品の世界を広げていくとすれば、同じガマにいた人々の別視点を描くなどするのも良いと思いました。
 テーマ「光」の解題としても凄まじく、自決の手榴弾の破裂を希望の光として描く点も、解答に凄みがあると感じます。

26:アンステーブル/黒月水羽

謎の有袋類:
 はじめましての方です。参加ありがとうございます。
 アンステーブルって不安定って意味なんだ! と読み終わったあとに調べて見て、素敵なタイトルだなと思いました。
 子供の頃は性別がまだ無くて、思春期と共に自分でなりたい性別を選ぶという世界のお話でした。名前の通り周りを照らす光のようなヒカリと、そのヒカリに好かれているユウを中心とした恋のお話。
 設定も面白く、ユウとヒカリの関係性、さらに姫香と大晴というサブキャラクターたちも魅力的でおもしろかったです。
 個人的に気になっていたことなのですが、同性愛や両性愛がどういう存在なのかまで書いてくれるともっとすんなり素敵な設定が飲み込めたなーと思います。こういう世界観なので同性同士で恋愛をする価値観はないって書いてしまってもいいかも?
 実は性別はこの先も変わる可能性があること、ユウが悩んで男になったこと、それでもヒカリとの関係性や二人の気持ちは変わらないことなど甘酸っぱい恋愛を伴う気持ちがすごく素敵な読み口でした。
 これからもどんどん好きなものを作品にして、楽しく創作を続けて欲しいなと思います。

謎の果実猫:
 性別のない思春期の子供が性別を決めるまでのお話。まず発想がいいですね! 無性別の現代人が成長過程で性別を決めるという設定はとても好きです。ユウが悩むシーンはとても真に迫っていてよいのですが、同時に長く感じてしまうところでもあって展開がないとも取れるのでもう少し展開させられたらよかったかもしれません。
 キャラクターがいいですね。登場人物たちがいきいきしていて楽しく読めました。特に個人的には姫香さんが好きです。感情をあらわにしているキャラクターが私は大好きです。とてもおもしろかったです!

謎の女子高生:
 性別を選択できる世界で、男になった幼なじみの隣に立つ者としてどういう性別を選択するか悩む少年の話。性別を選択できる世界を描くSF的な作品として、登場人物の感性や思考のリアル感が面白い。
 男女を選ぶようになれば、今のように性別を無視するように進む世界とは違い、むしろ性別を意識していくだろうという感覚も非常に新鮮でした。
 一点、「後で性別を変えられる」という設定については、登場人物たちの悩みに対して、少し都合が良すぎる回答のように感じられます。これについては「同性愛」がこの世界でどう扱われるのかや「現代医療同様の性転換」などを絡めていくのも良かったのではと思いました
 全体を通して、自分が同じ世界にいたらどういう選択をするだろう、と思わせられるような、手元にある悩みの描き方が良かったです。

27:僕の第二宇宙速度/吹井賢(ふくいけん)

謎の有袋類:
 ソーシャルワーカー・二ノ瀬丞の報告書の作者さんでもあり、前回はコミカルなミステリーを書いて曽田さんを煽るために参戦してくれた吹井賢さんが再び遊びに来てくれました!参加ありがとうございます。
 光の創作と影の創作の対比! 男同士のクソデカ感情だー! よくTwitterでも定期的に流れてくる「何者かになりたい」にも通じるものがある気がします。
 僕はまともに賞に応募したり、賞のために何か書くぞーーーという経験がマジでないので、作中の主人公みたいなアツい気持ちも切実なものもないのですが、きっと何か夢のある人にとって前へ進むだとか、折れそうになった心を奮い立たせるような希望だとかエネルギーになってくれるといいなと思いました。
 字数にまだ余裕があるので、もう少し柊木野くんへの執着というか恋慕の面を強くしても美味しくなるのかなと思いました。
 でも、今のままでもクソデカ感情は十分にあるので、とてもおもしろく読ませていただきました。恋慕でも憧れでも焦燥感でも憎しみでも同性に対する感情はデカければデカい程良いですからね!
 今回も参加してくださってありがとうございました!
 男同士って書いていたけど、「僕」は女性ですと吹井先生から教えていただきました……💦読み取れなくてすみません……!

謎の果実猫:
 友達を追いかけて自分も小説を書く話。夢を笑っていたのに触発されて小説を書き始めた主人公。夢を笑ったりくさしてしまうというのは私にも覚えのある感情です。だからこそ主人公が友達を追いかけて追いかけて距離を縮められないけれどもがむしゃらに頑張って走り続けているようなところに好感を持ちました。
 主人公にとって友達の存在は眩しく光のような存在だったのでしょうか。
 夢を光に例えているところ、最後のシーンはとても素敵で感動的でした。言葉選びがとても好みで表現が素敵です。わかった上で冒頭詩を読むとなおよかったです。とても素敵なお話でした。

謎の女子高生:
 作家になった友人の背中を見て小説家を目指す主人公の藻掻く様を描いた物語。光というテーマに「夢」で打ち返す、非常にストレートで詩情豊かな小説だと感じました。
 第二宇宙速度といえば、地球を脱出するのに必要な速度だと言われています。衛星軌道を越えて、地球の離れていくための速度。宇宙を脱する第六宇宙速度が光速である約30万キロ毎秒ですので、第二宇宙速度では到底、光に追いつけないということになります。作中の心理描写にもある通り、宇宙の光の行き着く先を夢見て地球を脱する、ある種の人類の「夢」とを重ねたその比喩は、いつ叶うとも知れないそれを、それでも、と突き進むようで、情熱的でした。
 詩情豊かな表現故に、物語の展開自体の起伏は抑えられていたように思うので、叶うとも叶わない分からない夢の着地点は、もう少し詳しく読んでみたいように思いました。
 小説を書いている者であれば、どこか心の片隅にあるような心情を描いており、必ずしも共感できずとも、他人事のように思えない、訴えかけてくるような作品でした。  

28:蓮華泥中在水/@Pz5

謎の有袋類:
 Pzさんです!参加ありがとうございます!いつも締切りが早くなっている中、めちゃくちゃ序盤に参加して下さいました!
 わからなかった! めちゃくちゃに難しい。多分、仏教的な何か……。
 漢文がわからないので豈我の時点でわからなくなり、とりあえずなんか蓮の種だけを求める人が愚かで何かを言いたいのか? となりました。
 多分、教養がある方にむけてのものなので、マスに向けて発する場合、チューニングが必要です。限られた人に届けば良い場合、このままでもいいと思います!がんばれPzさん!文字数に余裕もあるので、翻訳? とか解説を本文中に載せたり、ルビで現代語訳をするといいのかもしれないなと思いました。

謎の果実猫:
 仏教の何らかの教えのお話でしょうか? 読み解くのにつまずいてスムーズに話が入ってきません。
 一般の人間にもわかるようにわかりやすく現代語訳などを書いてほしかったなと思いました。特定の知識があったらおそらく楽しめるものだと思うので知識がある皆さんは楽しんでください。申し訳ありませんが私は読むのを諦めました。漢字だけをかいつまんで読んでみようと試みましたが、全く読めない漢字が出てきてしまい検索しても意味がわからなかったのでお手上げでした。すみません。

謎の女子高生:
 あらかじめお伝えしておくと、こちらの無教養故に読み違えていたらすみません。蓮華の花の芽吹くまでの思考を世界の有り様に照らしながら描いた作品だと読みました。正直古語・古文は不得手なので正確に読めてはいないと思うので、すみません、魂で読んでおります。
 六道輪廻/三諦とサブタイトルにもあるように、蓮の花に転生した、あるいは蓮の花の繰り返しの転生によって、芽吹いた場所でしか咲けない自らという花を咲かすことに納得を得て、ある種の真理に近づいていく様が、緻密に描写されていたと思います。
 花の視点という難しい切り口を古語を用いて表現する点は、難解ながらも神秘性が高く、非常に広い世界を感じることができました。
 一方、やはり古語であるが故のとっつきづらさは否めず、作品で表現したい世界にとってはベストでも、読者の納得を得るという点に於いてはトレードオフが強いと思います。もしあえて平易な文章でこの作品世界を表現することができたとすれば、それは一種の解脱とも言えるのではないでしょうか。
 こういった作品は類型を見ないため、Pzさんの世界を垣間見れて、非常に刺激を受ける作品だったと思います。魂が間違えてたらすみません。

29:ひかりあれ/つるよしの

謎の有袋類:
 前々回振りの参加かな? 再びのご参加ありがとうございます! 全作は男同士のクソデカ感情を書いてくれたつるよしのさんですが、今回は女性同士のお話を書いてくれました。
 キリスト教をベースにした教えの新興宗教っぽいところの熱心な信者である梢さんと主人公のお話。お金に余裕がないので家族としても子供を外食へ連れて行ってくれたりする梢さんは邪険に出来ないという絶妙な悪ではないけど善くもないあたりの匙加減がすごくよかったです。
 ちょっとした加虐心と、大人チョロいぜと思っている若さ故の素行の描き方もすごく好きでした。
 旧約聖書からの引用だったと後から気が付いたという独白のシーンがめちゃくちゃに好き。
 字数にかなり余裕があるので、もう少し梢さんと別れてからのエピソードを足すと過去と今の比較が引き立って物語に更に奥行きが生まれるのかもしれないなと思いました。
 このままでも十分おもしろい作品で、梢さんが逮捕されたことに対する絶妙な後味の悪さ、憐憫の感情、おそらく水商売をしてるであろう主人公の現在と色々と考えさせる余韻のある素敵な物語でした。
 しっとりとした雰囲気の文章で、湿度の高い感情や罪悪感を描くのがうまい作者さんだと思っています。このまま好きをたくさん作品にして、創作をたくさん楽しんでくれたらうれしいなと思います。

謎の果実猫:
 おもしろかったです!新興宗教の信者である梢さんと日々の話。新興宗教という誰もが一度は勧誘されたことのあるだろう身近な題材で展開していくお話が非常に興味深いです。私も訪問勧誘で玄関先でパンフレットを渡されたことがあるのを思い出しました。
 共働きでお金に余裕のなかった主人公の家では梢さんに頼るほかなく快く思わないものの黙認していたこと、そういう曖昧な関係難しいですよね。善悪だけで判断するには難しい事情があって実際助かっていた部分もあって黙認に至っているわけですから。その難しい関係が梢さんとの日々を作っていたと思うと感慨深いものがあります。
 欲を言えば、梢さんが逮捕されてからの梢さんのいない主人公のエピソードがあったら対比になってよかったかもしれません。
 ご馳走のために受け答えを頑張る「とはいえ、これに私はたいした苦労を必要としなかった。(略)大人が喜ぶかを完璧に学んでいたから。」のところとても好きです。子供特有の大人への浅はかな、こうすれば喜ぶんだろう的な気持ちが現れていて最高に良いですね。柔らかい落ち着いた雰囲気の文章でとても好きです!

謎の女子高生:
 新興宗教の伝道師の女性と、隣人の少女との関係を描く物語。子供を唆す悪女にもなりきれず、とは言え懐いた子供を冷酷に切り捨てることもできない女性の顛末と、強かに育った主人公との奇妙な絆が、どこか切なく感じさせる。
 梢さんにとっては、香織ちゃんはある種の「弱者」でありその救済という意味もあったはずが、梢さん自身が自らを弱者だと気付くことが出来なかった故に、香織ちゃんの強かさにも気付かず、献金ノルマのための横領にも手を染めたその構図が、悲劇的で良かったです
 主人公のキャラクターが終ぞ子供的で、成長がない点がこの作品の良さでもあり、少し気になるところでもありました。読み手のわがままかも知れませんが、もう少し二人の関係自体に救いがあっても良かったかな、と思います。
「光あれ」という旧約聖書の一節をフックにした落とし方は美しく、切なく、それでも光があるからこそ少し救いを感じるような、情感のある小説でした。

30:ひかりのはやさで/煙 亜月

謎の有袋類:
 はじめましての方です。参加ありがとうございます。
 新幹線のひかりで逢瀬を重ねる学生恋愛をするヒカリちゃんとマコトさんのお話。
 マコト……名前からして何をするのかと思ったけれど、よかった。ハッピーエンドでめちゃくちゃによかったです。
 モノローグ調で良くも悪くもするする読めてしまうのと、誰の視点だろう……というのがノイズになってしまうので、ヒカリかマコトの一人称視点でリアルタイム描写をすると読んでいる人の感情を大きく動かしやすいのかなと思いました。
 水着の違いにすぐ気が付くマコトさんも好きでした。あと、名前の読み方の通り、マコトさんを照らす光になろうと思ったという決意でのお題回収すごくよかったです。
 ホームを見てみた感じ、短編が得意な作者さんだと思うのですが進捗力や文章力はとても高いと思うので中長編にもチャレンジして見るといいのではないでしょうか!
 これからも楽しく創作を続けて欲しいなと思います。

謎の果実猫:
 遠距離恋愛しながらも無理やり逢瀬を繰り返してその合間に勉強して受験するちょっと忙しい話。紆余曲折あってゴールインを果たした二人の最後のシーンはとても微笑ましいですね。
 単語選びが少し難しくわかりにくいところがあったように感じました。これは私の知識の問題でもあるのですが、スムーズに咀嚼しやすいようにわかりやすい言葉に変えるのも手だと思います。
 マコトさんとヒカリさんのLINEのやり取りが好きです!いいですね~!微笑ましいですね~!海でのエピソードでヒカリさんがマコトさんから水着を褒められたことを後々思い出して大切な思い出にしているところ、とても好きです!素敵な恋のお話でした。

謎の女子高生:
 友人の兄に恋をした少女の話。東京~岡山間を結ぶ新幹線「ひかり」が、二人の恋路を結ぶ物語。マコトとヒカリの遠距離でのやりとりや、その恋の顛末を微笑ましく読むことができました。最後の結婚式のスピーチの終わるのも、明るい未来の話として気持ちよかったです。
 基本的にはすっと進められる読み味ですが、視点の移動や主語の省略によって、いくらか展開が分かりにくいところがあるように感じました。主人公が主人公自身を第三者視点で物語るという手法も、物語の組み立てに対して少しちぐはぐになっているように思います。
 総じて、楽しく、誰も不幸にならない幸せな話で気持ちよい物語でした。ヒカリの人物設計も、とても好きです。

31:イマジナリーフレンド/八軒

謎の有袋類: 
 はじめましての方です。参加ありがとうございます。
 幼い日に見た謎の光る球、それは自分を見守ってくれるイマジナリーフレンドのようなものだと思ったというお話でした。
 家庭環境があまり良くなかった主人公の心を照らす温かな光だったのだろうなと思います。
 思うがままつらつらと書いてみたという印象なので、推敲を重ねて何を目立たせたいのか、読んだ人にどう感じて貰いたいかを意識して内容を整えると、グッと物語の強さや印象が強くなると思います。
 読みやすい文章で、ドライな文体ながら温かさのある描写が素敵な作品でした。
 これからも色々な作品を書いて欲しいなと思います。

謎の果実猫:
 辛く苦しい幼少期の日々に現れた光の玉の正体とは…というお話。あの日見た光の玉は何だったのか明かされませんが、主人公はイマジナリーフレンドだったのだろうと納得して話が終わります。
 事実か空想かは主人公にとっては大した問題ではなく光を見た体験は幼少期の支えになっていただろうことは言うまでもありません。主人公にとってとてもいい思い出だったでしょう。神秘的とも言える体験を軸に持ってきたのはとてもいい発想だと思います。光の正体がわかってもわからなくても印象深く残ります。
 欲を言えば、大人になってからも光の玉を思い返すエピソードを増やしたり光の玉と出会うシーンを入れて幼少期との対比を作ってみてもよかったかもしれません。
幼少期つらかった子供という設定は大好きです。大人になった今主人公が幸せであったらいいなと思います。とてもおもしろかったです。

謎の女子高生:
 子供のころにみた謎の光を思い出す、回顧的な私小説。息苦しい子供の頃の生活の描写が生々しく、寒さがこちらに伝わってくるような描写が美しい。
 かつて真夜中にみた謎の光を、3Dソフトの画面に幻視して、過去を追憶する。その何とも知れないものを「イマジナリーフレンド」と結論づけたところが面白かったです。
 特に過不足ない物語ではありますが、現在に戻る所はやや唐突さがあるので、冒頭から回顧を印象づける描写をいれるのもありかも知れません。
 主人公がかつて何を思っていたのか、そしていまどう生きているのか、そしてどのようにして今の生活を送っているのか、短いながらも想像の広がる小説でした。

32:人魚と神様/ごもじもじ/呉文子

謎の有袋類:
 幻想生物フェスタ開催中!ごもじもじさんの参加です。ありがとうございます。
 チェレンコフ光だ!!!人魚、どうなるんだろう……。上に行ったとき、人間達は生き残っているのか……余韻や考える空白がとても美しい作品でした。
 色々な深海魚たちが出てくるのもとても良い……。鯨の死骸がゆっくりと骨になるところなどで人魚の生きる時間の長さを感じられてとてもよかったです。
 意図したモノだと思うのですが、神様と人間についてだけかなりぼかされているのですが、もう少し詳しく描写してしまってもいいかも? と思いました。読者と作者の情報量はかなり違うのでぼかしたり、仄めかし程度に伝えたいことでも「ちょっと書きすぎかな?」くらい書いた方がちょうど良いことになったりすると思うので感想や他の方の講評などを見て好みで調整出来ると更に最強の短編になると思います。
 人魚の宗教観、そして大きな生き物や賢い生き物たちの語る人間たち、神様という言葉に込められた意味や残酷さ、人魚を照らす青い光の幻想的な風景など、海のようにひんやり感を覚える素敵な幻想小説でした。

謎の果実猫:
 永遠の命を持つ人魚のお話。やさしい絵本のような語り口で語られる少しダークなお話です。
 海の底で気ままに暮らす人魚さんがとても可愛らしいですね。人魚が人間を人間としてではなくあくまでも人魚視点からものを見ているところが好きです。人魚の物差しで見ている世界はこうなんですね!
 人間の足を太い棒と言ったり、骨で遊ぶ姿は無邪気そのものです。青く輝く円柱は核爆弾かそれに類するものなのかな? もしそうだったら人間はまだ地上にいるのでしょうか。
 神様にお礼を言いにいった人魚は水面で何を目にしたのでしょうか。それを思うととても切ないですね。
 冒頭にも少しありましたが、欲を言えば他の人魚とのエピソードがもう少し見たかったです。
 人魚のお話を書いてくださってありがとうございます!とてもおもしろかったです!とても素敵なお話でした!

謎の女子高生:
 永遠の命を持つ人魚が、深海の底で人間や神様に思いを馳せるお話。たくさんの深海生物と共に描かれる海底の様子がとても良い。人魚は伝え聞いていた自らの呪いと、それを解決してくれるかもしれないという神を思う。そして人間こそが神になれると思い込む。人間との関わりは「伝え聞いたこと」しかなく、その無知の憧れのようなものが、ついには人魚を海上へと導いていく。
 深海をうまく表現した静かな小説のため場面の変化が少ないので、もう少し主人公が能動的に動くキャラクターにすれば、最後の行動にも繋がり全体にも動きを出せるので、ありかもしれません。
 海中に居ながらにして、地上の様子が想像できるように描かれる展開、描写が素晴らしかったです。

33:見えず知らぬ光/山本アヒコ

謎の有袋類:
 人外やファンタジーが得意だと勝手に思っています。アヒコさんの参加です。ありがとうございます。
 口長って言い方と身体的な特徴で狼とか犬だーーーってわかるの本当にワザマエ! という感じですごくよかったです。
 主人公達の種族も暗闇の中でじわじわと輪郭が浮かび上がるように特徴がわかっていくのがすごくすき。蛇とか爬虫類に近い生き物なのかな? 鼻輪という蔑称の種族もすごく良い……。犬系だから口長といるとかだったりするのかな。
 めちゃくちゃに良い作品なのですが、欲を言うなら「俺たちの冒険はここからだ」エンドに近い読み口になっているので、主人公達が成長をするか何かを成し遂げるところまで描いてくれると短編小説としての威力があがるのかなと思いました。
 世界観と設定の重厚さ、言葉選びの巧みさ、そしてトーとスルバの関係性と短編で終わらせずに中長編としてこのまま書いてもおもしろそうだと思います。
 文章力も発想力も十分だと思うので、長いお話にチャレンジして見るのはどうでしょうか!
 これからも作品を楽しみにしています。

謎の果実猫:
 地下世界を旅する二人の子供たちの話。鼻輪の種族に村を追われて逃げ出した二人は地下世界を冒険しています。光を感じる目が退化した代わりに第三の目が発達して熱を感じ取れるようになったというのもとても好きです。登場人物たちの外見的特徴が想像しやすい描写は読者としてもとても助かります。
 欲を言えば、物足りなさが残るのでどこかへ到達するまでを描いてもよかったかもしれません。もっと続きが読みたい気持ちがありました。
 ファンタジー最高!世界観が素晴らしいです! 確かな筆致と豊かな表現力を感じさせられました。とても楽しく読めました。すごくおもしろかったです。

謎の女子高生:
 光の無い地下の世界で生きる二人の少年の逃避行を描く小説。人類が地下世界で暮らすようになって久しく、熱だけを感知できる「第三の目」を持つように進化した世界で、地上世界の「星」の光に思いを馳せる話。暗闇の世界で生きるせいで目が退化したり、敵対勢力がいたりと過酷な世界観が読んでいて面白い。
 物語としては、逃避行の一部を切り取った形でしょうか。世界観を堪能するという意味ではこのままでも十分に楽しめる作品ですが、世界観がしっかりしているので、結末として何かに決着を付けるような組み立てにしても面白く読めそうだと感じました。
 息が詰まるような世界でも、なんとか前を向いて二人で生き延びる主人公たちの直向きさや、それを下支えしただろう「星」の話など、世界観のしっかりした良質なファンタジー作品でした。

34:「面白い女」で「オタクに優しいギャル」だった友人Eについての備忘録/翠雪

謎の有袋類:
 はじめましての方です。参加ありがとうございます。
 思い出の中のオタクに優しいギャルちゃんのお話でした。
「今月は処女」についてなのですが「今週は処女」とかもありますよねがはは! クラブとか夜遊び組の常套句なのでとても懐かしくなりました。
 良いお友だちと素敵な思い出だな……と思える自由な作品で読んでいて楽しかったです。
 どちらかというとEちゃんへの届かない手紙という側面もありそうなお話なのですが、知らない人も読むことを考えるとEちゃんよりは仮名の方が感情移入をしやすいのかなとも思いました。
 楽しかった思い出をあえてそのままにして、思い出の中のEちゃんという光を大切にしていきたいという繊細な思いが込められた素敵な作品でした。
 これからも色々と書いていってどんどん作品を作っていって欲しいなと思います!

謎の果実猫:
 エッセイですか~!ご参加ありがとうございます!
 面白い女Eさんについてのお話。Eさんとの思い出を詳しく描写しているところからEさんがどんな女性であったのかなんとなくわかります。いますよねそういう方。「今月は処女だから」というの、言いえて妙です。金言を始め、彼女は思い出の中で今もありありと輝いているのでしょうか。
 物語に読者を入り込みやすくするためにEさんやKさんというお名前を仮の名前に変えるのも一つの手かもしれません。
 素敵な思い出ですね。お裾分けしてくださってありがとうございます!とてもおもしろかったです。今後の作品も楽しみです。

謎の女子高生:
 大学時代のギャルの友人を回顧するエッセイ作品。筆者の友人であったギャルEの人となりが良く、周りに愛されていただろうことが窺いしれる。数々の名言やエピソードも面白く、筆者との関係についても良い関係だったのだろうと思わされます。
 エッセイとしては過去の回顧ではありますが、何をきっかけにこれを書くに至ったのか、現在のことは分からないとありますが、現在の自分とどう繋がっている話なのかなど、その辺りをもう少し掘り下げてみても面白いんじゃないかと思います。
 オタクに優しいギャルはいないと言われていますが、実際にオタクに優しいギャルはいるのだと教えてくれる良いエッセイだったと思います。

35:人魚の光/晴田墨也

謎の有袋類:
 第五回の時に陽炎で参加してくれた晴田墨也さんです。参加ありがとうございます。
 長髪のヘラヘラしたつかみ所のない男と世話好きの男ーーーーーーーー!!!最高ーーーー!光が灯台の光みたいってのもロマンティック!好き!
 世話好きというわけでもないのかもしれないのですが、瀬良に対してだけそういう風になるなら余計に最高。
 一つだけ何かを敢えて言うのだとしたら、ハラハラ感は薄目でまだ文字上限があるのでちょっと一つトラブル的なことを入れるとメリハリがキュッとついてお話が盛り上がるんじゃないかなとも思いました。
 ですが、このままでも十分に最高のお話です。
 置いて行かれてしまった瀬良のどこか自暴自棄な感じが徐々に和らいでいくのもめちゃくちゃによかったです。へらへらして辛い過去のある男、とても良いですね。
 最後にさみしがり屋って言われてるのもめちゃくちゃに良いです。とても良い作品でした。
 魚を捌くのがうまいのも、おじいちゃん子なのもめちゃくちゃに良い……。よかったーーーー!人魚と言われる位なので顔もきっと綺麗なのでしょう。よかった。

謎の果実猫:
 海に入って呼ばれるのを待っている男と海から引き揚げる男の話。
 瀬良さんが立野さんを灯台の光に例えるところがすごく好きです。家族が水難事故で亡くなってしまって置いていかれたから海で呼ばれるのを待っているところが切なくて悲しくて胸がキュッとなります。あれだけ海に呼ばれたいと荒れた海に入り続けていた瀬良さんが「きみがよんでくれれば、それでいいな、もう」と言うシーン、もう最ッ高に良いですね~~~~!!!!胸があったかくなりました。
 このままでも最高なのですが、欲を言えばもう少しなんらかの危険や事件を起こしても良いかもしれません。
 瀬良さんも立野さんもキャラクター性がとても好きです。胸があったかくなる素敵なお話でした。とってもいいお話です!!!

謎の女子高生:
 荒れた海でも構わず入る人魚と渾名される男と、そんな男を海から引き上げた男たちのブロマンス小説。海に呼ばれ、連れて行かれたいとどこかで願う人魚が、陸からの呼び声に従い、そこに灯りを見たという構図が美しい。夏やサーフィンなど、眩い印象のモチーフを持ちながら、しかしどこか曇天を帯びた情景の浮かぶ、シックな読み味がとても好きです。
 掌編でありますので二人の交流をもう少し読みたい気持ちになりましたが、完成した作品としては湿っぽくなりすぎず、良い塩梅だったと感じます。
 二人の男の間にしか分からない大きな感情と、希望の残るその終わり方は、台風一過の晴れ間のようで、大変爽やかな感覚を抱きました。

36:少なくともこれを読む画面からはブルーライトが出ている/しいなず

謎の有袋類:
 はじめましての方です。参加ありがとうございます。
 小さな頃から今までの環境の変化を綴っているお話でした。
 エッセイということで、多分大きな盛り上がり的なことは不要だとは思うのですが小説大賞なので小説としての評価をすると、何か盛り上がりのあるエピソードがあると嬉しいなと思います。
 読み物としてはおもしろく、スマホが学生時代からある世代の話としてもとてもおもしろかったですし、TRPGって本当に若い人に流行っているんだ……という発見もあり、とてもおもしろく読むことが出来ました。
 確かに、小さい頃って日焼け止めの感覚とかハンドクリームの違和感が苦手だったりしますよね。我が子も嫌いなので「あるある」と思いながら読むことが出来ました。
 カクヨムには初めての投稿ということで、エッセイでも私小説でも、TRPGのシナリオ的なものでもいいのでこれからたくさん書いて楽しく創作をして欲しいなと思います!

謎の果実猫:
 めちゃめちゃジェネレーションギャップを感じてしまいました。小学生低学年からネットが使えるのはもうデジタルネイティブと言っても良いのではないでしょうか…? 作者の方の生育環境の変化をエッセイにまとめたお話。自然光と人工光、どちらも半々くらいがいいのではないでしょうか? なんの根拠もありませんが…。
 感覚過敏があると気に入るものに出会うまで難しいですよね。なんだか大変でしたね。おつかれさまです。
 作者の方も言っている通りエッセイは初めてでオチも何も用意せずとありますが、山場はなにかしらあったほうがよかったかもしれませんね。
 今後の作品も楽しみにしています。初めてのエッセイに挑戦したこととても素敵です。素敵なお話ありがとうございました。

謎の女子高生:
 自然光と人工光に関しての作者の考えを書き連ねたエッセイ作品。自然光を浴びるのを避けるようになった現代の人に、光との付き合い方を振り返ってみて欲しいという作者の思いが綴られており、日光の話から始まり筆者の日焼け止めの使い方や、スクリーンタイムの占有などについてが垣間見れる。
 私自身は太陽光が好きではないのでブルーライト最高勢なのですが、確かに何事もバランスだよな、と少し考えさせられました。
 一点、エッセイを勉強せずに書いたという点や、エッセイに落とし所をつけないところも全然問題ないとは思うのですが、それを作中で言及してしまうのは、作品として読んだ人に対し誠実ではないように感じます。
 しかしこれが作者の初のエッセイということだと思いますが、文章そのものの読みやすさや言葉の運び方など、良いエッセイ作品だったと思います。

37:第103回 日本ちんぽ競技選手権大会男子総合個人決勝/豚肉まぢか

謎の有袋類:
 まんこビームは反則だろ!www光るゴリラのまぢかさんが二作目を書いてくれました。
 三本目の光るちんぽなのですが、すごい。これを正気に戻る前に3000字書ききったことにまず拍手ですね。
 ちんぽはなんぼ光っても良い。ついでにまんこも出てきた。男女平等やね。
 正気に戻ったら多分書けなくなるのでどういうことなのか詰めるのもどうかと思うのですが、女子選手のちんぽは一体何なのか、何故射精が出来たのかまで説明を出来ていればパーフェクトおちんちん小説だったと思います。パーフェクトおちんちん小説ってなんだ。
 わはは! と笑って読めるナイス作品でした。こういうのでいいんだよこういうので!
 音楽もやっているマルチな才能があるまぢかさん、これを期に小説もコンスタントに書いて欲しいなと思います。

謎の果実猫:
 やったー!光るちんぽだー!光るちんぽ大好きー!しっかりしたちんぽの応酬でした。ちんぽバトルの話。103回もやっている歴史と伝統ある大会だ。ツッコミが追いつかない!選手の名前がそれぞれいい感じで笑いました。バトル描写がとにかくお上手で盛り上がります。勢いがあっていいですね。
 初めての女子参戦!じゃないんだよと思いましたが、そこは名は体を表すということでふたなりだったのかな?と思いました。そこの説明をもう少しわかりやすくしてもよかったのかもしれません。精通でまた笑いました。初めてだったのかよ!初めてでうまく行ってよかったね!
 勢いがあり大変面白かったです!今後の作品も楽しみにしています!

謎の女子高生:
 ちんちん発光枠。男子総合なのにふたなり女子が出場するのはありなんですか先生、どうなんですか。ありじゃよ。ありですね、ありがとうございます。架空の競技「チンバト」を題に取った実況小説。男子競技に史上初のふたなり女子が出場し、優勝を掻っ攫う様がスポ根として心地よい。素直に精通です。
 チンバトは最初レスリングやフェンシングがベースなのかなと思っていたのですが、AI研究などもあることから、結構タクティカルな面の強い競技なんですね。ベッド上のチェスとか呼ばれてそう。
 惜しむらくはちんちんの発光は勝ち筋に対してベーシックなテクニック、定石化しているところでしょうか。光のテーマに対してちんちんが光るのであれば、ちんちんの発光による逆転劇も読んでみたいと思いました。
 架空の競技でありながら白熱した試合運びを想起させる、読み応えの高い、手に汗握るスポ根小説でした。

38:感光/灰崎千尋

謎の有袋類:
 前回は砂漠を冒険するファンタジーと死別ブロマンス的な作品を書いてくれた灰崎さんです。今は食事系エッセイも連載中!参加ありがとうございます。
 良い百合!星空にそばかすを例えるのめちゃくちゃによかった……。
 屋上で上履きを揃えていたという言い回しもとてもよかった……。青春時代の繊細で鮮烈な感性が瑞々しいまま描かれている良い作品でした。
 写真の現像のシーンもすごくよかったのですが「ひとみもアイも、目だよねってこと」ですごくテンションが上がりました。光を見るのは目ですしね。
 モノローグ調なので、良くも悪くも落ち着いた描写になっているのでリアルタイム描写にしてみるともう少し臨場感が出るのかも知れません。
 この落ち着いた読み口のままでも十分魅力的な物語です。こういう忘れられない人を懐かしむ的な読み口を深夜に読むというのはとても良いことなので。 
 毎回言っているかも知れないのですが、中長編にチャレンジして見る日を楽しみにお待ちしています!エッセイも楽しみ。
 これからも色々書いていってください!

謎の果実猫:
 光になりたい彼女と彼女を撮り続ける話。屋上で脱いだ上履きを丁寧に揃えていたということはひとみさんは飛び降りようとしていたのかな?それを亜衣さんは意図せず止めたのでしょうか?
 暗室のシーンが好きです!お互いに名前を呼び合いどちらも同じ意味の言葉だと笑い合い、暗室から走り去る一瞬前の手を重ねたあのひどく親密で思春期といった感じがとても好きです。
 落ち着いた雰囲気でよいのですが、落ち着きすぎているというかハラハラ感が薄めなのでもう少しハラハラ感があったらよかったかもしれません。
 落ち着いた雰囲気の文章でとても素敵な百合でした。今後の作品も楽しみにしています!とてもおもしろかったです。

謎の女子高生:
 百合じゃあないっすか……! ありがとうございます。学校の屋上で出会った二人の少女が、フィルムカメラを通じて繋がりを持つ物語。「光になりたい」と繰り返される祈りのような言葉がとても印象深い。カメラというのは光を残す機構であり、しかしその実、人間の目に映る物も全てが光であるため、物体である私たちは既に光であるとも言えます。この物語が指す「光」という言葉には、それが屈折して見え方が変わるように、あるいはカメラのレンズが複雑に像を結ぶように、見方によってその姿を変える多面的な意味を持っていると感じました。
 あるいは名前さえ知らなかった二人の一時が光に満ちていたとして、瞳を持ったが故に目が眩んでしまったとしたら、それがタイトルにもある通りの「感光」なのだろう、と思えます。
 悲しくも美しく、儚く光る百合小説でした。最高です。ありがとうございました。

39:ガラクタの灯台/秋犬

謎の有袋類:
 はじめましての方です。参加ありがとうございます。
 エリヤとレヴィの友情物語! 元々仲が良くなかった二人の距離が少し縮まるラストがめちゃくちゃによかったですね。
 1万字以内で異世界ファンタジー的な世界を雰囲気たっぷりに描いてくれた作品でした。
 停電の夜の子供たちが過去の遺産である古びた灯台を使って光を灯すという発想もロマンがあってとっても良い!
 まだ少し文字上限まで余裕もあるので、懐中電灯的なものや携帯デバイスがない理由や文化レベルの明示、大人たちが何故灯台に光を灯すことを思いつかないのかという理論武装を入れると物語の世界に更に説得力や奥行きが出来て読み応えがますかも知れません。
 正反対の二人の少年が仲良くなると言う王道ストーリー、灯台というモチーフと停電する不夜城という舞台設定、今にも潰れそうな博物館の息子が古いものを使って少しだけ街を照らすというささやかな善行をするという組み合わせが噛合っていてとてもおもしろい作品でした。
 これからもたくさん好きなものを書いていって欲しいなと思います。

謎の果実猫:
 大規模な停電に立ち向かうべく少年たちが灯台に向かうお話。大変おもしろかったです。普段は仲良くしていない子供たちが有事の際に機転を利かせ手を取り合って協力して一つの物事に取り組む話は胸熱ですね!
 子供たちが思いつくアイデアになぜ大人たちは灯台に目を向けないのか、その理由などがあったらよかったかもしれません。
 元気で人気者のエリヤと勉強ができて博識のレヴィのキャラクター性がとてもいいですね。これからの二人の活躍に思いを馳せる余地もあってとてもいいと思いました。とてもおもしろかったです!今後の作品にも期待です。

謎の女子高生:
 街の停電のために既に使われてない灯台を灯すべく奮闘する二人の少年の物語。普段から成績を競い合う級長との少年と学年主席の少年が、一つの目的に心を通わせて結託する様子がとてもまぶしい。児童文学的な趣で、読む人を選ばない明快な物語は読んでいてとても気持ちの良いものでした。光というお題に対しても分かりやすい解答で、素晴らしかったと思います。
 架空の都市での出来事であるので、世界観や文明・文化レベルのつかみ所がやや遅いところがあったようにも見えました。大きな問題にはならないところですが、例えばキャラクターの登場時や台詞に電気がある世界を思わせるようなワンセンテンスを挟むと、世界観を掴むとっかかりになりやすいのではと思います。
 スッと喉越しの良い物語で、読んだ後に気持ちよさの残る良い作品でした。

40:リノの一生/鷹野ツミ

謎の有袋類:
 はじめましての方です。参加ありがとうございます。
 リノという犬が、恋の道具にされて一生を終える話でした。
 犬が酷い目に遭う話で、自己中心的な人間と犬の献身的な様子の対比が面白い作品でした。
 かなりサクッとお話が終わる印象があり、犬に感情移入する前にお話が終わってしまうので、犬に感情移入が出来るようにもう少し飼い主に対しての気持ちを書き込んだり、エピソードを増やしていくと最後の犬が実は道具であり、飼い主はリノのことを好きでも何でも無かったという結末を更に活かせるように思います。
 発想と構成の骨子はとても良いお話で、主人公のカスさも自己中心的な様子も読んでいて面白い作品でした。
 胸糞悪い話を書きたいときに手加減は無用! 読む人を最悪な気分にさせてなんぼなのでもっともっと尖って描いてしまっていいと思います。
 これからもどんどん創作をして好きなお話をたくさん書いて行って欲しいです!

謎の果実猫:
 犬が理不尽な目に遭う話。犬視点で語られる理不尽な胸糞小説。お話自体が短めに終わってしまうので、犬に感情移入させたいならもう少し引き伸ばして日常パートや犬かわいいシーンを多めにしても良いのかも? かわいい犬はみんな大好きですからね。かわいい犬がひどい目に遭うとかわいそう! という気持ちになりやすいです。主人公の身勝手さももっと容赦なく書いても良いかも。
 胸糞小説でオチでスカッとさせる必要もないのであれば容赦なく盛り上げていきましょう! 以前の作品でも犬視点で犬が痛めつけられる作品がありましたのでこういった趣向が好きな方だと思いますので、いっそ好きを突き詰めていくのが良いのではないでしょうか。今後の作品にも期待しています。ご参加ありがとうございました。

謎の女子高生:
 異常な飼い主に買われた犬の物語。また、その飼い主がお近づきになりたい女性との百合小説でもある……と思いきや、この作品での百合の関係性は犬のリノからの感情であるように思います。ありがとうございます。飼い主の陽花ちゃんの言動が不穏で、目を細めながら読んでおりました。わんこ……。
 やはり甲斐甲斐しく飼い主を慕うペットの視点というのが、この作品の良さでもあり、目を背けたくなるポイントでしょうか。何かうまいこと緩和出来る方法がないかなと考えましたが……すみません、全然思い付きません。作品の良さでもあるので、無理に変えるところでもないですね。
 飼い犬を自分の恋愛の道具としてしか見ていない陽花ちゃんと、そこに壁を感じつつも飼い犬としての敬愛を持つリノの視点で進む物語が、読んでいて心がぎゅっとなる思いでした。

41:暗室/煙 亜月

謎の有袋類:
 ひかりのはやさでの作者さんの二作目です。
 雰囲気がガラッと変わってかなり大人の雰囲気な作品でした。
 これはもう僕が完全に悪いのですが、生徒に手を出すアラサー女、ピルを飲んでるからゴムを付けなくてもいいよという発言、相手を選ぶ理由がちんちんの大きさという点で「あーーー! これは! もう絶対にヤバい女だ! ここから人コワホラーがはじまるぜーーー」と変な期待をしてしまってずっとハラハラいつ本性を現わすのかを待って読んでいました。そんなことなかった。ごめんねなっちゃん。
 でもがっつり和彫りのタトゥーが入っているので、不安なまま終わりを迎えたのですが、これは作者の中でのなっちゃん像がどういうものなのか純粋に気になります。
 一人称と三人称が混ざり合っているのでちょっと混乱をする部分があるので、一度作品を書き上げた後に推敲をして視点を固定するといいかもしれません。三人称視点でカメラが登場人物の中に入り込む手法もあるし、煙さんはそちらの方が得意だと思うので意識して描いてみると更に読みやすくなるのではないでしょうか。
 僕の勘違いで大人と若者の恋をハラハラしながら読んだのですが、とても色気と湿度のある楽しい作品でした。
 コウくんは、果たして幸せになれるのでしょうか……恋の結末が気になります。

謎の果実猫:
 副担任とラブホでえっちする話。背中に和彫りが入っていて過去には誰かたちのおもちゃになったこともあるというなっちゃん。キャラクター性が複雑で気になります。どんな経緯で教員になったんだろう。どんな経緯でコウくんとそういう関係になったんだろうと疑問は尽きません。不思議な魅力があるキャラクターですね。コウくんもコウくんで初々しさが残り可愛らしいですね。
 一人称だったり三人称だったりするところがあるのが気になりました。統一したほうが良いかもしれません。意図的だったらすみません。
 しっとりしたオトナな雰囲気のお話でドキドキしちゃいました。とてもおもしろかったです。とても楽しく読めました。

謎の女子高生:
 教師と生徒の初めての夜を描く恋愛小説。これ笑っていいのかな? 少し笑ってしまいました。もちろん作中の内容を見ればそういうことなので笑えたことではないのかも知れないのですが、さすがに落差がイカツく、思わず吹き出してしまいました。男子高校生と女教師という関係なので女性がリード側で、あくまでも自分の裸を見せたくない女性とのやりとりが終始焦れったく、どこか愛おしい。
 ただ焦れったさを読むに、最後に女性の隠し事を見つけるまでの距離としては若干冗長か。エピソード的には現状でも十全ではありますが、会話劇で仄めかされるバックグラウンドのエピソードに、最後のオチを想起させる布石を置いて読者の腹落ちを狙うのも面白いかも知れません。
 灯りに照らされた背中模様も、二人の恋模様も、どうかこのままお幸せにと言いたくなる、清々しい作品でした。

42:偽造聖剣ゼクスカリバー/鍵崎佐吉

謎の有袋類:
 はじめましての方です。参加ありがとうございます。
 聖剣は光るもの! クロノトリガーでもグランドリオンは光って崖を断ち切っていましたし、Fateシリーズのエクスカリバーも光るしビームも出る! そういう発想はファンタジーの世界にもあった! 剣が光らないと威厳がないと思った勇者がアレコレと頼む様子はとてもおもしろかったです。
 錬金術師の子だけもう少し報われてもよかったのかな……と思うのですが、これは好みの問題だと思うのであまり気にしなくていいかも。
 剣が光っただけでなく、本当の聖剣に嫉妬した勇者の仲間ニエの策略だったこと、最後に本物の聖剣が勇者に応えたこと、今度こそ幸せに主の隣に入れそうな聖剣と1万字以内の物語とは思えないカタルシスがあって非常に面白かったです。
 ホームを覗いてみたところ、短編が多い作者さんだとは思うのですが、発想力や構成力、進捗力は十分だと思うので中長編にチャレンジして賞などにチャレンジしてもよさそう!
 これからも楽しく創作をして頂けたらいいなと思います。

謎の果実猫:
 魔王と打ち倒したあとの勇者が光る聖剣を手に入れるために奮闘するお話と思いきや…。聖剣は光ってなんぼ! 光らなくちゃ聖剣じゃない! 光り輝く聖剣がほしい! ということで勇者に頼まれ聖剣作りに奮闘する鍛冶屋フリッツと錬金術師レイナ。本物の聖剣に意思がありニエの策略によって封印されたシーン、また勇者の子孫によって封印が解かれるシーンは胸熱でした。
 邪王が倒され平和が戻ったあとの穏やかなシーンで聖剣が余生をのんびり過ごしているような雰囲気が大変よかったです。
 今度こそ穏やかに聖剣は勇者とともに過ごせると良いですね。とてもおもしろかったです。

謎の女子高生:
 自らの威光のために聖剣を光らせたい勇者と、光らない聖剣を巡る物語。確かにね、聖剣って光って描かれますもんね。聖剣自身に意思があり、勇者への慕情、勇者から必要とされなくなったことを自覚してしまう物悲しさなど、表現手段を持たないが故の悲哀がなんともいたたまれない。最後は勇者の曾孫と共に再び聖剣としての役割を果たせたというのは、救いでもあり、因果でもあったように感じます。
 様々な登場人物の視点を行き来し、リレーのように繋がる手法は巡り合わせの物語として面白くありましたが、全てのエピソードを詰め込んだ感があり、勇者や関わった人々の顛末もバトンを渡した後はすっと立ち消えになるのが、スッキリとはしつつも、もう少し読んでみたいという欲に駆られました。
 あの世界において、意思疎通の手段を持たない聖剣自身の物語は、誰も知らないという点が非常に好みなポイントです。大変面白かったです。

43:最後の文化祭、青い春。/@ HEYYOU52

謎の有袋類:
 なんと! はじめての小説! HEYさん参加ありがとうございます! それなりに長い相互の人がはじめての小説を書いてくれるのも、自主企画に参加してくれるのもうれしいー!
 作品は青春バンドもの! 初めての小説なのでもちろん粗はあったりするのですが、文化祭前だけどモチベが落ちている様子や、徐々にテンションが上がっていく様子、憧れの先輩への恋心、トラブルでトリを飾ることになった時の緊張感と見事に描けていて読んでいて楽しかったです。
 ライブの時の楽しさとか、盛り上がっているあの感じとか「1曲目が終わり拍手と歓声が止むとギターのチューニングの音が聞こえる。アンプからではない生の弦の音。」の部分がめちゃくちゃに好きでした。
 あと、明確には書かれてないのですが、多分アレンくんは主人公ちゃんのこと好きだよね? アレンがんばれ!
 憧れの先輩の格好良さも見事に書かれていて余裕のある先輩と、仲良しの気が合うアレンとで恋に悩んで欲しい……。
 とっても楽しく作品を読むことが出来ました。また次も何か書いてくれたらうれしいです!

謎の果実猫:
 おお…!初めての小説なのですね!うれしいですね~! 挑戦してくれてありがとうございます!
 軽音部での青春のお話。登場人物が比較的多く、アレンくんとれんくんのように似た名前も登場するのでほんの少し混乱もするのですが、非常に臨場感がありドキドキハラハラ感もあり盛り上がりもあり楽しく読めました。
 地の文で一字下げしているところとしていないところがあるのが気になりました。カクヨムには一字下げツールもあるので導入すると読者が読みやすくなるかもしれません。
 初めての小説でこんなにもご自分の中にあるものを表現ないし描写できることはとても素晴らしいと思います。キラキラした青春で懐かしくもあり微笑ましくも感じました。とても楽しく読めました。ご参加ありがとうございました。

謎の女子高生:
 高校最後の文化祭のステージでの発表にむけてひた走るガールズバンドの青春小説。こちらが熱に当てられそうなほどに眩しく、情熱的で、ストレートな物語だったと思います。彼女たちが前を向き、地に足をつけて走るように生きている様子は、見ているだけで元気が貰えそうな気がしました。それからアレンのキャラクターが好きでしたね。なんというかこう、報われなさそうな恋をしてるイケてる男子、好きなんですよね。
 一点、物語にまつわることではありませんが、段落下げなどの書式を小説全体で揃えると画面的な読みやすさが増すと思いますので、意識してみると良いかと思います。
 少女漫画的なラブコメ展開も王道で、奇を衒わない爽やかさが心に響く物語でした。

44:深海の花は月を抱く/悠井すみれ

謎の有袋類:
 あやかし遊郭の居候の作者さんでもあり、魂のシスター、すみれさんの作品です。
 めっちゃよかったです!提灯鮟鱇の人魚と夢鮫の人魚の百合だーーー!
 僕はおっぱいに噛みつく雄の鮟鱇になりたいですと思ってたけど、ちぎられてしまった……。
 アレだけ誇っていた雄をちぎって夢鮫の人魚を独り占めしたいという鮟鱇ちゃんの感情が美味しい……。雄の鮟鱇たちも小さいとは言え人魚なのか、それとも実際の鮟鱇に近いのかも知りたかった気がしますが、二人の世界を邪魔してしまうかもしれない。
 深海の美しさ、そして人魚たちの美しさと、野生生物の残酷さ、その中で生まれた異種族の情愛と交流がめちゃくちゃによかったです。
 これで3000字台なのもすごい。情報圧縮が相変わらず上手すぎる。
 タイトルも夢鮫の目! って気付いたとき楽しかったです。目を丸呑みしたのとてもえっちでよかった……。
 むちむち下半身でおっぱいが大きな提灯鮟鱇の人魚ちゃんもめちゃくちゃに刺さりました。ありがとうございます。

謎の果実猫
 すごくよかった~~~!!! 人魚のお話を書いてくださってありがとうございます!!! 提灯鮟鱇の人魚と夢鮫の人魚のお話。確かな筆致と豊かな表現力によって映像が浮かび上がるかのような素敵な体験をさせてもらいました!
 本物の月を知らない鮟鱇の人魚が夢鮫の人魚の目を月と表すところとても好きです! それから最後のシーンはとても感動的でした。「これはすべて、わたしのものだ。」のところで鳥肌が立って盛り上がりは最高潮! 「深海の花は月を抱く」のタイトルが生きてくるの大好き。1話のタイトルは夢鮫の目を表しているのでしょうか?最高に素敵なお話を読ませていただいてありがとうございます!
 とてもおもしろかったです!人魚大好き~~~!!!

謎の女子高生:
 深海に住む人魚たちの邂逅と別離を描く幻想物語。深海魚をモチーフにした人魚たちの生き方がありありと描かれており、美しく、面白い。深海生物は私個人としても非常に好きなので、そのビジュアルや生体を模した物語の運びは、なるほどと得心しながら拝見しました。素晴らしかったです。暗い海の底にある僅かな光が二人を繋ぐというのが美しくもあり、物悲しくもあります。
 総じて素晴らしい作品ですが、深海生物に馴染みがない人には雰囲気だけしか伝わらない部分ももしかしたらあるのかな?と感じました。ただ些事が伝わらなくても十分以上に読者に魅力が届く作品ですので、これは深海好きの行きすぎたお節介かも知れません。
 ビジュアル、構成、言葉運び、テーマへの解答など、どれを取っても大変素晴らしい作品でした。ありがとうございます。

45:その修羅場、光に満ちて/阿炎快空

謎の有袋類:
 はじめましての方です。参加ありがとうございます。
 めちゃくちゃに心が清らかな女の子と、浮気をしている彼氏のコメディ的なお話でした。
 コントのような舞台のお話で、この二人のやりとりがいわゆる「普通」からズレているのがおもしろかったです。
 まだ少し遠慮のようなものが残っている気がするので、こういう不条理且つ常識をずらす系のコメディは思いっきりタガを外して好き放題やってしまっていいと思います。
 まだまだタガは外せるはず! あと「ここは笑い所ですよ」というのを思いっきりアピールした方が通じる人が増えるかも?
 だだだだーっとおもしろいことが並んでいると「ここはどういうつもりで書いてるんだろう」と読んでいる方も不安になったりするので……。
 最後のオチで見た目もめちゃくちゃにこの皆ことが判明するのが悲劇要素且つオチになっていておもしろかったです。
 参加ありがとうございました! これからも楽しく創作をしてくれるとうれしいです。

謎の果実猫:
 光り輝く恋人と今まさに修羅場の男女の話。おもしろい世界観のお話です。外見的要素と内面的要素がそっくり入れ替わった状況でお話は進んでいきます。それがほんの少し混乱もするのですが発想がとてもおもしろいです。
「一回や二回、トラックから身を挺して命を救ってやったぐらいで恋人面してんじゃねえよ」で笑ってしまいました。すごいことしてる~~~!!! この世界観では大したことではないらしいのがおもしろいですね。
 世界観としておもしろいのはおもしろいのですが、やはり混乱するところがあるので読者にわかりやすく説明する部分がもう少しあってもよかったかもしれません。
 もし光っていなかったら、もし光がそれほどでなかったら違った結末があったのでしょうかと考えてしまいます。包丁を手に取る前後から光が失われつつあるのも状況としてふさわしくとてもいいと思いました。悲しい事件でしたね。とてもおもしろかったです。

謎の女子高生:
 心の清らかさが身体の発光として出現する体質のせいで、数多の男性からある種のイコンのように扱われている女性と、その性欲の話。その聖正のせいで男性から性の対象として見られてこなかった女性の鬱憤が、遂に悪い形で爆発してしまう様がコミカルに描かれる。
「私の身体だけが目的なんでしょう!」という常套句へのカウンターとして「私の心だけが目的なんでしょう」とヒロインに言わせたところは、むしろ浮気や不倫の「本質的に横たわっている問題」の顕在化として機能しており、面白いと思いました。普通は浮気相手の方が肉体目的だったりしますからね。不貞は真に心を食い潰す振る舞いです。
 これは多分、真奈美が「浮気相手」だったら解決するんでしょうかね、分かんないですけど。ただ心が清らかなのでそうはならないというのが悲しいところ。
 光のせいで誰も姿を目視できないところや、最後に一瞬だけ発光しなくなるところなど、設定の使い方が上手く、面白く読ませていただきました。

46:悪役令嬢とツギハギの魔王/秋乃晃

謎の有袋類:
 前回はドラゴンのお話と、兄弟のお話で参加してくれた秋乃晃さんです。参加ありがとうございます。
 悪役令嬢もので、正ヒロインに現代人が憑依した形のテンプレものといった感じでしょうか。元々はゲームの世界へ来た現代人主人公が無双をしようとするけど失敗する形式のお話、めちゃくちゃに好きです。
 キャラクターも豊富ですし、テンプレートを利用した情報圧縮もありかなりの情報が物語に詰め込まれているのですが、物語を咀嚼する前にどんどん情報を詰め込まれてしまって内容を追うので精一杯になってしまうかも?
 せっかくの魅力的な魔王様もすぐに見せ場が終わってしまうので、魔王と出会ってお城に行くまででじっくり1万字くらい使っても良いかもしれないなと思いました。
 魅力的なキャラクターやテンプレートを使う力はあると思うので、より魅力的なエピソードを用意してキャラクターを好きになって貰うことを意識すると更に晃さんの作る作品が輝くと思います。
 魔王様の性格も見た目も多分僕は好きだと思うので、もっとかっこいいエピソードとか見たかったな!
 たくさん長編も短編も書いている晃さん、これからもモリモリ頑張って欲しいなと思います!

謎の果実猫:
 ファンタジー! 悪役令嬢! 主人公の双子の妹は異世界から既知転生してきた身勝手な女だった !策略によって窮地に立たされた主人公エディスは自ら魔族と手を取る方向へ! というお話。大好きです! こういうジャンル! 悪役令嬢ものも大好きですし、異世界転生してきた世界を既知ゆえの身勝手な振る舞いの人間に邪魔をされる展開もあるあるだな~! と思って読みました。
 主人公に付き従うメイドのドロシーが実は魔族だったシーン、好きです! なるほど! 忠誠心だけではなく離れられない事情があったんですねと納得感がありました。角を丁寧に削ぎ落としてヤスリがけってところが魔族的に屈辱だったりはしなかったのでしょうか? それよりもエディスの母への忠誠心が勝ったのでしょうか…なんて考える余地があってまたいいですね~!
 主人公が簡単に魔族側に寝返ってしまうのが気になります。もう少し人間の敵になることへの葛藤や元からそういう性格だったなどのわかりやすい理由があったほうが良いかもしれません。
 魔王様がかっこいいですね~! キャラクターがみんなそれぞれに魅力的で素敵です!とても楽しく読めました。おもしろかったです!1万文字ぴったりなのがまたすごい!

謎の女子高生:
 魔族と人間が対立する世界で、転生者である妹が姉を追放する物語。追放された姉が魔族側の魔王に娶られ、ある種の復讐を果たすまでのお話。急に人の変わったように見える、おそらく「転生者」の妹リンダの言動に則り、作中がゲームの中だとしたら、そりゃ仕様を理解せずに無理矢理ルートを変えて進行すれば、バグるのも然もありなんといった様相。これを書いているとき、ちょうどRTA Japanが開催されていました。
 世界設定が非常に豪華で、キャラクター一人をとっても非常に生き生きとしており、物語世界の豊かさを感じられたのが良かったです。
 一方、必要な設定の提示であっても、短編での描写としてはやや冗長気味に感じられるところがあるように思います。作品も上限一万字きっかりであることから削った結果なのだろうと思いますが、いっそ短編では説明を「書かない」ことを意識したり、説明自体が必要の無い世界観を書いてみるのも、新たな地平が広がって良いかも知れません。ただ短いながらも濃い世界を楽しめるのが本作の良さなので、痛し痒しというところ。
 世界設定の緻密さ、物語の密度ともに、非常に楽しめるのがエンタメ小説でした。

47:犠牲の坩堝/魚崎 依知子

謎の有袋類:
 夫恋殺 つまごいごろしの作者さんであり、去年は夫恋殺のスピンオフで参加してくれた魚崎さんが今年も参加してくれました。参加ありがとうございます。
 胡散臭い黒髪長髪無精髭の男ーーーーーー!新葉さん最高ーーーー!いい人のフリをしている胡散臭い男は最高です!ありがとうございます。
 湿度と色気のある文章が本当にめちゃくちゃに良いですね。怪異もおぞましくも色気と悲壮さがあってめちゃくちゃに好きでした。めっちゃよかったー!
 ちょっと新葉さんが良すぎて……よかったです。
 和田山さんの狙いだけもう少し字数があった方が良いかもしれないのですが、本筋ではないことなのでこのくらいでもいいのかもしれない。ホラーって種明かしとか仄めかしをどの程度入れるのか難しいですよね。
 めちゃくちゃによかったです。魚崎さんの作品は大体いい人が出てきたら警戒をする癖がついていたのですが、新葉さんはともかく和田山さんはダークホースでよかったです。
 主人公の少女の呪いも悲惨でめちゃくちゃに良いホラーでした。光……光は強い影から生まれますからね!最高!

謎の果実猫:
 見えない壺のある話。確かな筆致と豊かな表現力で繰り広げられる圧倒的ホラー!危なげなく安心感のある文章に頼もしささえ感じました。ホラー大好き!和田山さん優しい!と思ったらなにやら怪しげな雰囲気の男とつながっていて…?新葉さんがやけに千春ちゃんに優しいのはどうしてなんだと思ったら策略の一環で自らの復讐につながっているという…しっかり考えられていますね~!
 欲を言えば、和田山さんが新葉さんとどういう経緯でつながってそういう関係になったのかなどがあったら読みたかったです。
 千春ちゃんの一族に染み付いた特大の呪いも悲惨で救いようがなく悲しい結末しかなくホラーとして本当によくできているなと思います。怪異の姿や成り立ちもとてもおそろしくてよかったです。とてもおもしろかったです!

謎の女子高生:
 呪われた壺を巡るホラー小説。一族に伝わる呪物を引き継いだ少女の周りで起こる変死事件と、それを解決するまでのお話。呪いにまつわる本格的なホラー小説で、とても読み応えがありました。この作品において主人公の少女はある種の被害者でしかない状況ですが、生まれついての加害性がその呪いの本質的なところにあるという組み立てがとても面白かったです。
 テーマ「光」に対する解題としては、少し弱かったでしょうか。話の内容も含めてとても闇寄りな物語であると感じました。
 しかしながら最後から最後まで無駄の無い、非常によく練られた完成度の高い小説で、大変楽しませていただきました。

48:げんし/サトウ・レン

謎の有袋類:
 サトウレンさんの二作目です。
 信頼出来ない語り部のお話でした。
 信頼出来ない語り部のお話なので、どこまでが真実なのかもわからないのですが、一応地方アイドルのストーカーで、指名手配をされてる人が復讐にあった感じのお話なんでしょうか?
 作者の情報量と読者の情報量というのはかなり違うので「もうこれは8割答えじゃない?」くらいまで説明しちゃってもいいかもです。
 露悪や気持ち悪い描写がめちゃくちゃによかったです。もっと羽目を外しておもいっきりやってもいいかも!
 今のままでも十分に最悪な主人公なのですが、多分、サトウレンさんならもっと出来るはず読者を気持ちよくしたくても、最悪な気分にさせたくても全力でおもいっきりやっっちゃいましょう! 
 意外性のあるオチ! みたいな作風が好きな作者さんだと思うのでこういう全講評企画などを足がかりにしてどんどん色々と実験していって欲しいなと思います。

謎の果実猫:
 監禁されている男の話。真っ白な窓も何も無い部屋で監禁されている男はなぜこうなったのか回想しています。こうなる前、こうなるもっと前のことまでを。話が進む中、無名アイドルのストーカーだったと判明した主人公ですが、記憶が混濁しているのか答えの出ないまま行ったり来たりして要領を得ません。
 このあたり、読者にはとにかくわかりやすく説明してしまっても良いかもしれません。作者がわかっていることでも思ったより読者はわからないことが多いです。
 主人公を監禁した主である女がやってきて種明かしをしますが主人公は頑なに信じませんでした。このシーンはとてもいいですね!自分を客観的に見られず、自分を信じているという風でとても好きです。どうしようもなく足掻くしかないといった状況大変好みです!せっかくなのでもっと勢いつけて容赦なく暴れても良いかも!
 とても楽しく読めました。おもしろかったです!

謎の女子高生:
 ある女に監禁された男の話。極めて当たり前に生きているはずの男の妄執や幻覚が次第に詳らかになっていくサイコホラー作品。どこからどこまでが現実で、どこからどこまでが男の見た妄想だったのか、様々な物の境界がどんどん曖昧になっていく感覚が面白い。男はついに光さえも幻覚して……という運びも好きでした。
 男の行動が自分の目線で執拗に書かれていることから、最初の方はやや読みにくいと感じるところもありましたが、読み進めればそれも納得できる組み立てで、非常にトリッキーだっと思います。
 いわゆる背筋が凍るような話では無く、嫌な感覚がぞわぞわと上がってくるような作品で、大変良かったです。

49:『ひかり』に乗って/mafork(真安 一)

謎の有袋類:
 外れスキル『目覚まし』、実は封印解除の能力でしたの作者さんである真安 一さんです。参加ありがとうございます。
 間違えてのぞみではなく、ひかりのチケットを取ってしまったアラサーの主人公が半生を振り返るお話でした。
 これは僕が無知なことが大きいのですが、主人公の目的地がどこか触れてくれると、道程をもっと安心して楽しめたのかもしれないなと思います。新幹線によく乗っている人だと分かるのかもしれないのですが……。
 目的地は、のぞみもひかりも泊まる博多あたりでしょうか?
 偶然、旧友に会うところが好きです。一瞬だけ「何か事故に遭って走馬燈を見ているとかかな」とハラハラした部分もあるのですが、深読みをしすぎただけですごくロマンティックに終わってよかったです。
 流石に恋人は乗ってこなくて、見知らぬおじいちゃんという物語のコントロール力がすごく好きです。もしかして……と思う甘い気持ちがすごく切ない。
 ピリオドを打ったはずの恋を後悔するところも好きなのですが「『ひかり』なんて一番速そうな名前なのに」でお父さんの言葉を最後に思い出すのが前向きな気持ちになれるとても綺麗な最後ですごくよかったです。

謎の果実猫:
 新幹線ひかりに乗って昔を懐かしむ話。私は新幹線や地理に疎いものでピンとこなかったのですが、ひかりは他の新幹線に比べるとゆっくりめなんですかね。うっかり手配ミスしてひかりに乗ってしまった主人公。浜名湖と言ったらウナギパイ!鞄の中で絶対バラバラに砕けちゃいますよね~。
 浜名湖で昔を懐かしみ、名古屋で昔なじみの友達に出会い、京都では…と思ったところで見知らぬおじいさんが来てそううまくは行かなくて逆に安心しました。走馬灯では?となったシーンで一瞬サスペンス感があったのですが走馬灯じゃなくてよかったですね。
 お父さんとの思い出の言葉を思い出した主人公のシーン、とっても良いですね~!前向きになって頑張れると良いですね。 
 読者も一緒に短い間旅をしているような素敵なお話でした。

謎の女子高生:
 新幹線『ひかり』に乗った女性が、様々な思い出を振り返るお話。ひかりの停車駅が多いことを組み込んだプロットの組み立てというアイデアがおもしろい。引っ越しを繰り返していた主人公には各駅の土地に思い出がある……という作りは、しんみりとした読み味だったと思います。
 話の筋としては、少しアイデアに引っ張られていたところがあるのかな?とも感じました。各土地でのエピソードや、物語に動きを付けようとした展開が、アイデアありきで肉付けしたような印象を感じます。半生のエピソードがそれぞれ独立的なので、転がるような連続性を加えてみるとアイデアとプロットの結合感が増すかも知れません。
 総じて、波瀾万丈では無い、けれども本人にとっては大切な思い出を振り返るという組み立ては優しい読み味で、読む人を温かくさせる良い作品だったと思います。

50:青白い光の先/marin

謎の有袋類:
 はじめましての方です。参加ありがとうございます。
 腐れ縁的な二人が、音楽を作るお話でした。
 黒髪長髪イケメンの二人のお話。よかったです。
 欲を言うならなのですが、見た目がもう少し早めに出ていると個人的に更に助かりました。良いですね。パーマを掛けている黒髪長髪イケメンと多分ストレートの伸ばしっぱなしの黒髪長髪イケメン。音楽をする黒髪長髪イケメンで更に二翻乗る感じがあります。
 お話も青春を追えたけどまだまだ青く、未来に希望を持ちつつも現実も見えてきて、それでも前へ進んでいこうかなみたいな温度感で心地よかったです。ここで人気大爆発大成功だぜ! にならない話運びがストレートで個人的にめちゃくちゃに好きです。
 楽しく活動を出来て、目標もあって、やりたいことが見えているというのはとても素晴らしいですね。
 スマホと文字とSNSで繋がる絆、今の時代的なおもしろい作品でした。
 まだホームには二作しかない作者さんなのですが、今後も色々と作品を書いていって欲しいなと思います。

謎の果実猫:
 腐れ縁の友達同士でラップ動画を作る話。ネタツイが万バズするシーンいいですね~!バズったので宣伝します!で曲を貼ったんですね。曲が伸びてよかったですね~!それで一躍有名に!とまではならないのがなんだか現実的でよかったです。それでも十分すごい結果です。
 ただ、見た目の設定が登場するのがだいぶあとからなので最初の方にすると想像がしやすくて楽しいかもしれません。
 「白いワンピースに麦わら帽子(略)全くもって最悪で最高なことに。」の良さといったらないですね。とても好きです。最後のシーンもとても良かったです!「まぁなんかエモいしいいか。」でぐっと引き締まった感じがしました。主人公たちは楽しく毎日を過ごしていてやりたいことがあって…と羨ましい限りです。この作者さんは言葉選びがとてもうまいですね。今後の作品も楽しみです。

謎の女子高生:
 二人の男性がラップミュージックを作る話。元々作曲趣味のあった男に、友人からトラックメイクの依頼がくるところから始まる物語。世界を変えるつもりも、めちゃくちゃ有名になるつもりもない、ただ作るために作るという創作の原風景のようなお話が触れていて心地よい。我々もかくあれかし。
 今からめちゃくちゃなことを言うのでめちゃくちゃなことを言ってるなと思って聞いて欲しいのですが、折角ヒップホップミュージックを作るという話なので、文章のグルーヴ感がもっと高まると良いなと感じます。一文一文が非常に綺麗に感じたので、今作であれば少し崩すような文体でも良い読み味が生まれたのでは?と少し思いました。
 物語としては、少しだけ遅れてきた、あるはずのなかったモラトリアムの延長を体感しているようで、読んでいて気持ちのいい作品でした。

51:めんくいさまの御饌/ぴのこ

謎の有袋類:
 光をもう一度を描いてくれたぴのこさんの二作目です。
 めんくいさま、面喰いと見せかけて目ん喰い様のオチがビシッと決まってかっこよかったです。
 それはそれとして、めんくいさまはめんくいでもある。異類婚礼譚的な要素もあるのがめちゃくちゃにいいですね。
 めんくいさまの初恋の男は、なぜ村に残ってくれと言ったのかがすごく気になりました。本当に独占欲的なものなのか、それとも違う意図があったのか仄めかし程度でもどこかで知れると個人的にすごくすっきりするなと思いました。
 文体にすごく雰囲気があるのと、怪異としても怖い。そして被害に遭った人数がものすごく多いまさに災害のような神様、めちゃくちゃに好きでした。
 そして夕一さんは美しい男……とても良い。美しい男が怪異や神様に心を囚われているのはとても良いモノです。
 ホームにあるのは短編ばかりなのですが、是非中長編にもチャレンジして見て欲しいです。力は十分あると思うので! 今後も小説を書くことは続けて欲しいなと思います。

謎の果実猫:
 めちゃめちゃおもしろかった~~~~!!!!めんくいさまと呼ばれる怪異とそれを村から連れ出した男の話。村の男を生贄のように婿を選んでいるところから面食いさまかと思いきや目ん喰いさまだったのがいいですね~!「人の目が大好きで、人の目を喰らう(略)眼球の中を、なにかが食い荒らす音がした。」という最後のシーンもゾッとして終わって最高に良かったです!
「あの人」はどうしてめんくいさまを村に残したがったのか、気になりますね。そのあたりもう少し詳しく読みたかったです。村の人間が神と崇めているからというならそうなのかもしれませんが、「あの人」だけの理由が知りたかったです。死んだあとも自分のそばにいてほしかったのかな?
 安定感と雰囲気のある文章でとても楽しく読めました。今後の作品も楽しみにしています!とてもおもしろかったです!

謎の女子高生:
 野に放たれた神が起こす未曾有の大事件を描いたサスペンスホラー。「めんくいさま」と呼ばれる神様がある村から出て行き、日本中の「ある物」を食い潰そうとする話。めんくいさまを村から放ったとされる男の取り調べから語られる話は、じわじわとした怖さがあり、とても良かったです。
 文章、プロット共に完成度も高く、この作品の良さを損なうものではありませんが、「いつそれを奪われるか分からない」という恐怖心がもう少し早い段階、中盤で発生すると、より怖さが増して素敵だったかなとも思います。中編ぐらいのプロットでももっと怖くできそうです。
 非常に絶望感の強い、素晴らしい作品でした。あと、関係ありませんがめんくいさまはなんかえっちで良いですね。癖でした。ありがとうございます。

52:段々上り/そして白

謎の有袋類:
 森バトルの作者さんの二作目です。
 異世界ファンタジーのお話でした。こちらはダンジョンを冒険する一人と一匹の物語。最後に剣が目覚め、姿も変わった主人公はこの後どうなるのか気になるラストでした。
 これは森バトルの時にも書いたかもしれないのですが、作者と読者には圧倒的な情報量の差があります。
 作者は全てが頭に入っていたり、既にこの世界に詳しいので名詞を出せばすんなり飲み込めるのですが、この物語に初めて触れる人はそうではありません。
 せっかく作り上げた設定を読者に紹介する気持ちで書くと新雪なのかなと思います。
 固有語には漢字宛て、それにルビを振ることで情報が伝えやすくなるのかなと思いました。
 ダンジョンで出会う不思議な生物たち、通訳もこなせるタポネ、コミュニケーション方法の違うソフィールなどなど魅力的な世界観のお話でした。
 これからも楽しく色々な世界の物語を紡いで欲しいなと思います。

謎の果実猫:
 ダンジョンを進む二人の話。
 ノードやイーフなどわからない言葉が多かったです。ファンタジーに詳しいとわかったりするんでしょうか? セッケルの名前が出てくるのが遅かったので主人公の名前は先に出したほうが混乱しなくていいかも? 作者と読者では情報に差があり読者はわからないことが多いので説明しすぎなくらいがいいかもしれません。
 他種族と通訳ができるタポネや八本角のスフィールなど魅力的なキャラクターがいるのにもったいないです! せっかくですから設定集を紹介する勢いでキャラクター紹介するくらいが良いと思います。小さく丸っこいエイトリットのことも知りたかった~! ジスフィーとのバトル描写もとてもうまいです! スフィールとの通訳を介した会話は緊張感がありよかったです。今後の作品も楽しみです。

謎の女子高生:
 ローグライクダンジョン的な探索冒険譚。一人と一匹によるダンジョン探索の様子が描かれている。世界観やキャラクターが魅力的で、筆の乗ったアクションシーンは読み応えがありました。
 一方、正直に申し上げると、本作は「何が起きているかすぐに読み解けない」という状態になることがしばしばありました。読者への情報開示について、あまり親切では無いと感じる部分が多かった印象です。専門用語しかり、キャラクターの見た目しかり、状況しかり、いわゆる地の文では「目に見えてる情報」をそのまま書くのではなく、「読者に知らせるべき情報」を整理して書くことを意識すると良いと思います。作者一作目の「森バトル」ではそれがある種の味にもなっていたかも知れませんが、今作ではおそらく作者がやりたいことと合致していないのではないか?と感じました。
 世界観、キャラクター、アクションシーンなど魅力の多い作品でした。これからも是非素敵な作品を紡いでいって欲しいと思います。

53:弟を看取る/沈丁花

謎の有袋類:
 初参加の沈丁花さんです。参加ありがとうございます。
 こちらは幻想生物を飼育して一生を見守ったお話でした。闘病と介護のディティールがかなり細かいのですが、ここらへんは作者さんも実際に近いことをしたことがあるのでしょうか?
 モデルになってる動物はフェレットちゃんだとわかるのですが、額の宝石と長い耳のカーバンクル要素が素敵で良かったです。
 フェレット感がめちゃくちゃに強いので最後はフェレットとして読んでしまったので、もう少しカーバンクル的な要素を強めると更に作品が良くなると思います。
 こういう作品はちょっと暗くなりがちなのですが、暗くなりすぎないでほどよく前向きになれる作者の方の匙加減がすごく良いのと、動物との付き合い方がすごくいいですね。僕は去年亡くなったねずみのことを思い出してめちゃくちゃ泣きながら読みました。
>抜けたヒゲが部屋で見つかる。その度に嬉しい。まだねえちゃんを喜ばせてくれる。
 ここが良すぎるーーーーー! 、ホーイチ、かわいい。死後の世界なんて僕は信じていないのですが、それでも死んだペットたちはどこかで幸せに暮らしていて欲しい。本当にめちゃくちゃにいい作品でした。ありがとうございます。

謎の果実猫:
 フェッチと暮らして看取るまでの話。フェッチが可愛い~~~!!! フェレットモチーフでしょうか? 可愛いですね。額の宝石がキラキラ輝いてきっと可愛いのでしょうね~。
 フェレット感が強く幻想生物感が弱めなのが気になりました。欲を言えば、額の宝石に関わるエピソードも読みたかったです。
 動物との関わり方が親しみ深く、私も小動物を飼っているのですがわかるところが多く楽しく読めました。看取るお話は暗くなりがちですが暗くならず前向きで終わるところがよかったです。飼い主さんのうつ病がフェッチとの暮らしによって少なからずよくなっていくところもよいですね。素敵なお話でした。

謎の女子高生:
 幻想生物「フェッチ」を飼う女性が、彼の最後を看取るまでの話。幻想生物のペットエッセイのような趣の作品で、非常にリアリティがあり面白い。泣いちゃいました。フェッチの可愛さもさることながら、その生態まで考慮された内容は非常にSF的で、素晴らしかったと思います。
 フェッチを飼う話と、主人公自身の話が絡み合う構成だったと思いますが、主人公のその後に詳しく触れることがなかった点は、あってもいいかな?と少しだけ思いました。
 非常に心に刺さる作品で、ファンタジーながらもリアリティの高い、生き物を飼う人の全てに届いて欲しいと思える、良い作品だったと思います。

54:海の底、愛はなく/南雲 皋

謎の有袋類:
 はじめましての方です。参加ありがとうございます。
 人魚の世話を任された奴隷のお話。
 人魚の肉を食べたあとに、人魚の言葉がわかるようになっていたのが好きです。人魚には雌型しかいないとのことと、害獣使いされているのでギャナイが人魚として共に幸せに生きるというわけではないのがなんとなくわかるのがとてもよかったです。
 良くも悪くもスルスルと物語が進んでいくので、一度大きめのトラブルがあると更に盛り上がるのかなと思いました。
 講評だからあえて一つあげるならば……という感じで、このままでも十分に面白く魅力的な作品だと思います。
 人魚の声の変化、肉の描写、そして序盤に置いてある伏線が後から活きる構成の美味さと完成度の高い作品でした。
人魚がめちゃくちゃにえっちなのもすごくよかったです。
奴隷と人魚の逃避行なのですが、飼い主や支配者が変わっただけとも言える結末も好きです。本人の自覚がハッピーならハッピーエンド!話タイトルが最後に効いてくる構成も本当に美しいですね。
 参加ありがとうございました! これからも色々な創作に励んでくれるとうれしいです。

謎の果実猫:
 人魚の世話をする奴隷の話。
 超音波のような聞き取れない声だったはずの人魚の言葉が人魚の血肉を飲んだあと途端にわかるようになるシーン、とても良かったです。掃除から襲われるシーンはてっきり噛み殺されるだとかそういう意味での襲われただと思っていたらそっちの意味だったのでびっくりしました。えっちですね。
 終わりまでトラブルらしいトラブルもなく進んでしまうので、事件を起こしてもいいかもしれません。
 肉塊も元は奴隷の誰かだったりするのでしょうか? 外へ逃げ出しても外での人魚の扱いは良いものと思えないのでこれからもトラブルは続きそうですが、本人たちの認識が幸せならハッピーエンドなのかな? 世界観や設定が魅力的でキャラクターも味があってとても良いお話でした。

謎の女子高生:
 人魚の世話係を任された奴隷の少年と人魚の異種交姦譚。読み書きもできない少年奴隷が精通後に人魚とまぐわり、子を為す話。人魚の肉を食べると不老不死になるという伝承から発展させた、ダークな雰囲気のファンタジーSFで、大変面白かったです。「海の底、愛はなく」というタイトルから、人魚が自らの肉を与える行動の意味を考え、複雑な感情を抱きました。それはそれとして、全体を通してギャナイが状況に絶望していないのも好感が持てるポイントでした。𓆟
 読者のわがままとしては、二人の行く末が少し気になるところはあるでしょうか。しかし物語の終わり方としては非常にきれいだったので、これ以上望むものではないかなと思います。
 奴隷施設での話であり、暗く湿り気をおびながらも、美しい物語。崖から海へ飛び込むラストシーンも大変好きでした。

55:眼球考察/まらはる

謎の有袋類:
 前回に続いて二度目の参加!前回はニチ朝的な魔法少女作品を書いて銀賞を獲得したまらはるさんです。参加ありがとうございます。
 目の移植をした主人公の目に何か焼き付いているというので正体を探りに行くお話。お医者さんのキャラがとても良い。
>※細かくウソとホントが混じってる話となっています
 特に狙いがなく、注意書きのつもりなら話タイトルにするよりも作品概要欄に書いた方が読み心地を損ねなかったかも?  何か作中に話タイトル回収要素があるのだとしたら読み取れなくてすみません。「ここがタイトル回収ポイントです!」と目立たせてくれるくらいでちょうど良いかも?
 作中の主人公の目は移植したモノで、移植した元の持ち主が見ていた者を探しに行く下りがとても良く、オーロラだったけれど実物ではなく持ち主が描いていた絵画だったというのがすごく美しくて好きです。
「何故、絵にするのか」という答えも添えてあるのがとても親切……。
 主人公がこれからも美しい物を見ていこうと思う前向きな結論も、読んだ後すごくよかったです。
 まだ遠慮とかビビリみたいなものがあると思うのですが、小説は創作でなんぼ! ガンガンそれっぽい嘘を吐いたり、遠慮や「これくらいかな?」なんてものを吹き飛ばしてやりたいことを思いっきりやっていきましょう! これからもどんどん色々なモノを書いていって欲しいと思います。

謎の果実猫:
 眼球移植をしてから目に違和感を抱える男の話。病院で検査をしてもらうと眼球に何かが焼き付いていると言われる。ホラー的展開かと思いきや…ロマンティックな展開で心が潤いました。
 ドナーに関係することではないかと当たりをつけた医師と患者は遠い地アイルランドまで! それほどにまで知りたかった理由をもう少し詳しく読みたかったなと思いました。流されるままにアイルランドまで行くには行動力がありすぎるかも?
 1話のタイトルの「※細かくウソとホントが混じってる話となっています」ですが、言葉通りの注意書きであればここに置くよりはキャプションや文末等に置いたほうが物語に入り込みやすいかもしれません。
 オーロラではなかったとわかり医師がショックでがっくりしているシーンはかわいいですね。オーロラではなく絵だとわかったシーンは感動的でした。パズルのピースがハマったような気持ちよさがありました。とても興味深い内容のお話でした。おもしろかったです!

謎の女子高生:
 眼球移植を受けた男性が目に焼き付いている像の正体を掴むためにドナーの故郷へ足を運ぶ話。そこで見た物は予想していた像とは違ったが、人とのつながりによってその正体に気付くことができるという物語。ちょっと変わった旅行ものとして、面白いお話でした。角膜ではなく眼球の移植に成功したというニュースがあったのは去年だったでしょうか。もし何か焼き付くとしたら網膜とかになるのかなと思いますので、今後眼球移植が積極的に行われるようになれば、主人公のように誰かの像を見てしまうような症例も出るのかもしれないと思うと、少し奇妙な感じがしますね。
 冒頭、嘘と本当が混じった話だと但し書きがありますが、創作の小説は基本的に全部そうではないかな?と思いました。何かトリック的なものがあるのかと期待しましたが、特にそう言った趣の作品ではなかったように思うので、少し気になるところではありました。(私が何にも気付いてないだけだったらすみません!)
 眼球移植を通して何かを残すこと、何かを伝えることを描く物語は柔らかい読み味で、大変面白かったです。目医者の先生も好きなキャラクターでした。

56:ジェイルシップ/楽々園ナタリー・ポートピア

謎の有袋類:
 前回はうんこの小説で参加してくれたナタリーさんです。参加ありがとうございます。
 囚人を運ぶ船を襲う光が苦手なクリーチャー、目覚めさせられた軍曹はハッカーと共に脱出する……! という映画にもありそうなお話。
 かなり後半が駆け足になっている印象です。せっかくの見せ場ですし、字数上限にも余裕があるのでクライマックスである影の獣を倒して主人公が脱出するシーンは贅沢に字数を割いて描写すると読んでいる方も盛り上がれると思います。
 型落ちの船と軍曹、脳を吸って相手の知能を吸収するクリーチャー、可愛らしくもちょっと憎らしいハッカーと登場人物や設定がおもしろく、話もポップでおもしろかったです。
 文章を書く体力にのびしろがまだまだある! これからもたくさん書いて体力をつけていきましょう!

謎の果実猫:
 宇宙の囚人船でクリーチャーから逃げながら脱出をはかる話。
 こういうクリーチャーパニックもの大好きなんですよ! 脳をすする黒い影の化け物に光で対抗しながら脱出艇に向かう姿はハラハラドキドキして大変よかったですね~!!! 
 後半が駆け足になってしまっているのでせっかくの盛り上がりですし思い切ってどーん!と字数を割いてやってしまってもよかったかも?
 退役軍人のカレン元軍曹、軍から払い下げられたメインコンピューター、ハッカーのミッフィー、脳をすする黒い影の化け物と登場人物はそう多くはないですが、魅力的なキャラクターによって読後の満足感があります! 映画を見ているようでした。とてもおもしろかったです! 今後の作品も楽しみです!

謎の女子高生:
 囚人を流刑地まで送る宇宙船がエイリアンに侵入されるなか、脱出のために奔走する二人の生存者の話。囚人ハッカーと警護官二人の脱出バディもの。絶望的な状況で叩き起こされてから、終始緊迫感のある展開で非常に楽しめました。あとカレンとミッフィーの即席バディがいいですね。ミッフィーが天才ハッカーなのに子分キャラなのもね、本当にいい。大好物です。ありがとうございます。
 掌編なので少し展開がぎゅっとしていたのが少し勿体なかったでしょうか。とても良い作品だったので、あと2~3シーケンス足しても、むしろ足せば足すだけ面白くなりそうなポテンシャルを感じます。
 設定やキャラクター、また侵入エイリアンの行動目的も良く、非常に良いSFスリラーでした。重ねてありがとうございます。

57:『マイヒメ・ドールラブ』のデートプラン/佳原雪

謎の有袋類:
 雪様の二作目です。
 めっっっっっちゃ良いーーー! ちょっと高慢な自我男と無口気味な男の組み合わせはどれだけ食べてもいいですからね。
 設定もめちゃくちゃによかったのですが、リカルド(リチャード)とマイヒメ、セクサドールもある世界での「千円札」がすごい浮いていたので電子マネーとか旧式の物理紙幣みたいな言い方でもよかったのかな? と思いました。
 ただ、物語の完成度やキャラクターの魅力的さからすれば些末なこと! 講評なので触れただけのことなので、重大なミスというほどのことではないと思います。
 今を望むリカルド、自分を解放してくれる唯一の光明だと言うマイヒメ、めっっちゃよかったーー! 性交渉はサイバーパンク的な環境になっても複雑で難しいモノである……。
 こういう少し軽くてセクシーな情景を書くのが得意だと勝手に思っているのですが、これからも好きをたくさん詰めた世界を生み出して欲しいなと思います。
 黒髪長髪イケメンはなんぼ食べても良いし、そのパートナーはどんな相手でもそれぞれのうまさがある。最高。

謎の果実猫:
 すごくよかったです! ドールの外見に高慢な自我を持つ男と秘書の話。
 マイヒメが可愛らしかったです! 公営セクサロイド店がある世界というのがいいですね~! 観覧車に乗りながらデートの採点をするシーンとても好きです。と言うか全てのシーンが可愛らしく魅力的で素敵なデートでした。ツンツンした女児と成人男性の組み合わせ可愛らしすぎる~!
 成人男性だったマイヒメがなぜセクサロイドのマイヒメとなったのか読みたかったです。
 昼の部と一転して夜の部では大人な雰囲気でお話が進んでいきます。商品価値がなくなれば店の備品でなくなれば店から出ることができる。マイヒメは自分を解放してくれることをリカルドに求めますが、リカルドは現状を壊したくない。うまくいかないもどかしさが切ないですね。とてもおもしろかったです!

謎の女子高生:
 肉体を失って幼女型のセクサロイドの身体を持つ店主の男と、それを唯一外へ持ち出す権利を持つ店員の男との、ちょっと特殊なBL小説。公営のセクサロイド販売店という設定なので、セクサロイドを間借りしてる身として、店主はあまり自由の利かない状態ということなんですかね? そう読みました。
 自由を得るためには自分を傷物にしてもらう必要がある、ということから、唯一の希望である男性店員に情事を請うが、相手に幼女趣味がないために不発に終わってしまうというのが、なんともやるせない話だと感じました。
 彼らには男同士での愛情のようなものはあるが、それが肉体のせいで結びつかないという、ともすれば現代でも普通に発生しうる問題を表すSFとしても読め、興味深く、面白かったです。

58:もっと光を!(あるいは一つの個性について)/吉野茉莉

謎の有袋類:
 藤元杏はご機嫌ななめ、トクシュー!-特殊債権回収室-の作者である吉野茉莉さんの参加です。参加ありがとうございます。
 キャストと呼ばれる大体人間の労働力のためのロボットのお話でした。
 じわじわと主人公がどんな存在なのか明かされていく様子がとてもおもしろかったです。
 人間になるために必要なものが不安と憎悪なのがとても好みだと思いました。
 理解出来ているのか不安なのですが、ここはロボットの実験場でミドリは出戻りのフリをしているということでよかったのでしょうか?
 アカリたち第九世代の実験だからヨシダも仕込みというか、実験の一つだったのか、実際に少子高齢化の設備で働きつつ実験を行っているのかどっちだろう……となったので、そこの説明がもう少しあると僕のように察しの悪い読者にも親切なのかなと思います。
 強い怒りや自我のあるアカリ、同期を嫌がる気持ちや、それでも便利な脳、機能を使ってしまうことについての葛藤のようなものなど読んでいておもしろかったです。
 新しい世代になるにつれて、どう変わっていくのか余白のあるラストもすごくよかったです。
 参加ありがとうございました。

謎の果実猫:
 キャストと呼ばれるロボットたちの話。初めはキャストってなんだろう?と思いながら読んでいたのですが、読み進めるにつれてキャストがどういった存在か、アカリがどういった存在か少しずつ明かされていくのがおもしろかったです。髪と目の色は世代によって違ったりするのかな? アカリは同期を嫌がる自我や悩みを持っていてキャストにしては人間味が強いようでした。
 この場所はキャストの実験場だったのでしょうか? ヨシダやミドリの思惑が気になります。これについてもう少し知りたかったです。
 世代がどんどん新しくなったらアカリのように誤作動を起こすことも少なくなるのかな? この世界の人間はキャストを人間にしたいのかロボットのままにしておきたいのかどっちなんでしょうね? 不思議なお話でした。人間のような姿や思考を持つロボットの話は大好きで、とても面白かったです!

謎の女子高生:
 労働力確保のための人造人間「キャスト」が生み出されるようになった世界で、人間と人造人間の境界を思案する人造人間自身の話。人造人間に人格や思考が与えられているところに、作中世界の一種のグロテスクさが感じられてとても良い。キャストたちが働く施設も、実際はある種の実験施設で……というエンドも、倫理の終わってる世界で非常に好きでした。
 次第に設定が詳らかになることで、それまでに描かれていた不明瞭なことが腹落ちしていく面白さが魅力的でしたが、短編としては最初に置いていく謎が少し多かったかな?と感じるところも僅かにありました。
 とはいえ人間との微妙な差異の描き方や、社会の表現など、うまく練られ、首尾良く作用している作品だったと思います。素晴らしい小説でした。

59:残月/藍﨑藍

謎の有袋類:
 前回は探偵と殺し屋のお話で参加してくれた藍﨑藍さんです。参加ありがとうございます。
 破滅的な思考の親といざこざのある主人公である結月と、恋人が欲しくない親戚の男陽太の奇妙な二人暮らしのお話でした。
 これは僕が無知なのと平米にあまりピンときていないのが悪いのですが「1DK30平米」が印象的に使われている中、これは主人公が大して広くない部屋に憧れていたのか、それとも陽太もそれなりに良い部屋に住んでいるという認識なのか作中でどう使いたいのか最後までわかりませんでした。
 知識の無い人にもなんとなくわかるように、キーワードに使いたい単語などは作中で登場人物がどう捕えているのかを書きすぎかなと書くくらいでちょうど良くなるのかも知れません。
 鬱屈とした前半から普通に縛られた男である陽太にも悩みがあり、それを普通に少し憧れていた結月が背中を押して規範から解放してあげる様子がすごくよかったです。
 赤木がすごく嫌なやつで、その他の女も嫌なやつで母親もヤバそうなやつな中、陽太の良いやつさが輝いているのもすごくよかったです。
 二人の奇妙な同居生活がこれからもしばらく続くことが決まるラストが爽やかなのもすごく良い。タバコみたいな小道具の使い方もめちゃくちゃ素敵でした!
 内容も結末もかなりわかりやすい作品で、全体的に読者に親切な作品でした。これからもどんどん創作を楽しんでいってくれたらいいなと思います。

謎の果実猫:
 普通とは? まともとは? 心に息苦しさを抱える二人のお話。
 とてもよかったです~! 最悪な親に、バイト先のヤバい赤木先輩、一夜限りの相手など鬱々とした登場人物たちの中で、陽汰の存在がひときわ輝いて見えました。陽太いい人~! そんな陽太にも自分は普通ではないと悩みがあって…。結月が陽太の悩みを解放するような活躍を見せたあのシーン、かっこいいですね~! スカッとしました~!
 1平米って半畳くらいでしたっけ? 30平米って15畳ちょっとくらい? 確かに一人暮らしでは広いかもですねえ。平米にピンときてなくてググってしまいました。すみません~!
 情景描写が素晴らしく湿度や雰囲気のある文章が大変よかったです。合コンで赤木たちから離れたあとは少し晴れやかなカラッとした雰囲気になってそれもよかったです。最後の煙草のシーンの夜明けの描写もとても好きです。とても楽しく読めました。

謎の女子高生:
 家出した少女と、それを匿う従兄弟の同棲生活の話。普通に、まともにという言葉が繰り返され、自分の生き方や歩き方を考える若者たちの青春小説。素晴らしい作品だったと思います。ままならないと思う心はほとんど多くの人にあって、大多数の枠組みの中で自分の異質さを受け入れがたく思う心情が詳らかに表現されており、非常に良かったです。「結月ならやれるんじゃないかって思って部屋に呼んだんだ」という、文面からだけは想像しえない陽太の心情を表す台詞が、とても好きでした。
 陽太と結月の関係性について、もう少しだけ布石を置けると良かったかな?と僅かに感じましたが、一万字というレンジの短編として、これ以上はないくらいの完成度だと思います。テーマの解題としても、どこかで終始光を探しているような二人の描写が良かったです。

60:光で照らす/竹氏

謎の有袋類:
 はじめましての方です。参加ありがとうございます。
 何か気配があるけれど、正体がわからないのでずっと気になるというお話でした。
 ずっと正体がわからない気持ち悪さや、ぞわぞわする感じが良く描かれていておもしろく読むことが出来ました。
 僕はめちゃくちゃに察し悪い人間なので、オチがちょっとわかっていなくてすみません。健斗先輩は存在しなかった的なオチでいいのでしょうか?
 なにかで解説してくれると僕がすっきりするので助かります……。
 ホラーは特に説明しすぎても怖くないですし、説明しなさすぎてもわからないので塩梅が難しいですよね。
 健斗先輩の姿をしたものが近寄ってくる場面などはとても気持ち悪くて好きでした。
 こういった全講評企画などを利用して、試行錯誤をして最強の塩梅を手に入れましょう!
 カクヨムにもたくさんホラーを投稿して欲しいなと思います。

謎の果実猫:
 カクヨムには1作品しかありませんが普段はnoteなどで投稿してらっしゃる方なのかな? とてもお話がうまいですね。ホラーは大好きなので助かります!
 謎の気配に怯える話。気持ち悪くて嫌悪感があってすごく怖かったです。前半の気配や物音に怯える描写は日常生活でもあるあるですよね。一度気になったらその後も気になってしまうということは往々にしてあります。
 怪異の正体は健斗先輩の生霊のようなものだったのでしょうか? ホラーなので種明かしをどこまでするのかは難しいところかとは思いますが…。
 後半の怪異の正体が見えてからもとても怖かったです。見えてからもこんなに怖いことってあるんだ。見えないほうがいいものもあるとはそのとおりですね。とてもおもしろかったです!

謎の女子高生:
 謎の気配に怯え、それを明るみにしようとする女性の話。じわじわとした怖さが気持ちいい、良いホラー小説でした。毎晩感じていた気配の正体が実は……という内容。健斗先輩の「あれ、コンビニ寄らなくていいの?」という台詞が怖くて好きでした。正体が分かったあとも嫌な怖さが続いて良かったです。
 幽霊の正体自体は先輩の生き霊的な物だったんですかね? でもその当たりの正体が不明な感じも、怖さの一助になっているのかも知れません。
 最初から最後までひりひりとした怖さの続く、涼感の良いホラー作品だったと思います。

61:236兆5000億キロメートル旅行/はに丸

謎の有袋類:
 はじめましての方です。参加ありがとうございます。
 星に恋をした少年が、愛を伝えるお話。
 主人公の一生を神の視点から見守るような距離感のお話でした。語りかける口調が優しくてとても良いのですが、どういう視点からの話かな? と少し気になってしまったので一人称視点か、主人公の背中に張り付いた完全な三人称にすると物語への没入感が深まったり、感情が書きやすいのかなと思いました。
 ベガに恋をしたという熱烈さ、そして子供の頃から想い続けてきた恋を成就させるために天文学者になる主人公、非人道的な実験の為に自らの肉体を捨てる主人公……すごく良いお話でした。
 読み終わったあとで236兆5000億キロメートル旅行というタイトルが、ベガまでの距離だとわかるのもすごく良い構成だなと思います。
 文体が特徴的な作者さんなので、カチッと物語と文体がハマるととても強そうだと思います。
 これからも色々はお話を書いてどんどん強くなって欲しいなと思いました。

謎の果実猫:
 星に心を奪われた少年の話。
 すごくよかったです!!! 最後まで読むとタイトルの意味がわかる作り大好き!
 主人公の少年時代のベガにお礼を言うシーン、めちゃめちゃ可愛らしくてよかったです! 素直で可愛い!
 優しい語り口で進むお話で、誰視点だったのかが気になります。
 夢を叶え天文学者になってからも少年の心を失わずにいた老人は非人道的な実験に手を染めます。それは調査は建前で、本当の目的はベガに直接愛を伝えるためでしたというのが最後にわかるのが最高です!!! 
 最後のシーンはとても感動的で「ベガ、きれいだ。ようやく直接言えた。初恋の君よ!」のセリフを見て感極まって泣いてしまいました。本当にいいお話でした。今後の作品も楽しみです。

謎の女子高生:
 美しく輝く星に恋をした少年が、生涯を賭けてその美しさを直接伝えるために旅立つ話。星の光に恋をした少年が、人類にとっては途方もない時間と距離を超え、超長期間の宇宙飛行の末にその想いを成就させる、雄大であり、しかしその実、私たちの手の平の上にあるような物語。自分も似たような雰囲気の作品を書くことがあり、大変好きなSF小説でした。真っ直ぐ真っ直ぐ、光のように進んでいく物語がとても美しい。
 少年時代から一介の天文学者になるまでの飛躍が、少し突飛な印象はあったでしょうか。少年と老人が同一人物であることを認識するのに一瞬戸惑ったので、「75年前の光をまだ覚えてる」みたいに、何か一文足すだけでも分かりやすくなるかも知れません。
一人の男と美しい星を繋ぐラブレターのようなSFで、大変素敵な作品でした。ありがとうございます。

62:アンドロイドは海辺で夢を見る/かける

謎の有袋類:
 はじめましての方です。参加ありがとうございます。
 アンドロイドと最後の小旅行をするお話でした。
 プラグを抜くというところからミスリードをさせていて、実は博士が人間でしたという叙述トリックが綺麗に決まっていておもしろく読めました。
 後ほどツイートで見かけたのですが、ブロマンスとのことでしたが、作中ではそれがわからなかったのでもし隠す意図がないのならはじめに性別を明かしておくといいかも? と思いました。 
 静かな時間の中、非効率的な方法で海を見に行こうとするアンドロイドと、それに渋々付き合う博士の旅路は、帰りの余韻なども含めて雰囲気がすごくよくて好きです。
 博士はまた電車で海辺まで来て、眠っているアンドロイドに逢いに来るんだろうなと感じさせるラストがすごくよかったです。
 参加ありがとうございました。

謎の果実猫:
 寿命の近いアンドロイドの話。
 前半を読んでいる時はてっきり黒髪の方がアンドロイドだと思いこんでました。後半に金髪の子がアンドロイドなの!?と、驚きました。お話がうまいですね~。
 作中では二人の性別がわからなかったのが気になります。博士は女性的にも見えました。
 非効率的なアンドロイドを動かすこと、合理的でないことを楽しむことを人間的に楽しんでいて、海に行くまでの過程や風景描写も美しく楽しげでよかったです。
 海で稼働停止したアンドロイドのために、博士はまた海に通うんだろうな、あの道のりを一人で通ってくるんだろうなというのを思うと切ないですね。
 とてもよかったです。

謎の女子高生:
 既に必要とされなくなったアンドロイドと、それを作った男との最後のひととき。恒常的に高温化した地球で人類が「外」での生活を捨てた世界で、海が見に行きたいという軽い調子の男と、それに付き合わされる頭の固そうな男二人のブロマンス。読み心地の爽やかな退廃的世界のSFでした。故障すれば直すことはかなわない機械との絆がとても切ない。
 電車やアンドロイドが最後に動きを止めるところなど、わずかにですが(本当にわずかにですが)、情景や描くシーンありきで設定が用意されていると感じてしまったのは、ちょっとこちらの嫌な読み方だったかも知れません。
 人類が地球上でまともに過ごすことを諦めているという世界は、わりとありそうでいて珍しいタイプのディストピア表現だったので、そのあたりの世界観も好きなポイントでした。

63:義堂崇照と云う男。/宮塚恵一

謎の有袋類:
 前回は一緒に夏を乗り越えました。宮塚さんの参加です。ありがとうございます。
 義堂崇照という男を多角的な面から語ったお話……なのですが情報が……情報が多い……。1万字でするにはかなり窮屈で、モノローグ調でダダダダダーーーと色々な人と色々な団体が出てくるので一度で理解するのはかなり難しい気がします。
 何度も読んだのですが、ちょっとちゃんと読めた自信が無いかも。
 崇照と斗真の関係性や、友香の気持ち、友香と崇照のそれなりにプラトニックな関係性、兄である景久への崇照からの気持ち……などなどなど盛りだくさんだったり一話の超英傑クソカッケエなどのルビ芸などもよかったところがあるだけに、勿体ないなという気持ちになりました。
 こちらの話をリアルタイム描写しながら十万字くらいにリメイクしてみるのがいい気がします!がんばれ宮塚さん!
 毎回、字数に対して物語や舞台が大きめでRTAになったり詰めがちな印象があるので長文が得意な作者さんなんだとは思います。
 1万字でちょうどいい規模を掴んでみよう&レッツ長編執筆!これからも応援しています!がんばってください!

謎の果実猫:
 義堂崇照という男の話。
 ルビ芸!!!超英傑クソかっけえ好き。
 情報量が多すぎてちょっと咀嚼しきれないところがあるというのが正直な感想です。ヤクザものに慣れていればスッと飲み込めるのかもしれません。似た名前が多いのも混乱したので不親切のかもしれないです。長編向きの題材のような気もするので長編に改編してもいいかもしれませんね。
 斗真から尊敬されていることや、友香との心の交流、景久との思い出や、父から見た姿など崇照という男についてとにかく情報量が多く、書きたいことがたくさんあったのだろうなあとひしひしと感じられます。お話はおもしろかったのでもったいないと思いました。今後の作品に期待しています。

謎の女子高生:
 ある種の「必要悪」として世に臨むことで己の正義を全うした男の生き様を描く小説。エピソードごとの直接的な連続性を持たないという複雑な構成ながら、読み進めれば崇照という男の人間性、行動動機と目的の輪郭が浮かび上がり、一つの物語を為していく組み立てが素晴らしく、見事。全ての絵を重ねて初めて一つの絵になるかのような、レイヤー構造的小説でした。物語としても、現代の暴力団・半グレ組織の有り様を利用しながら、反証的に正義を遂げていく様が面白かったです。
 通常ならこの規模の話は短編で収めるのが難しいものだと思いますが、先に述べたレイヤー構造で奥行きを出しつつ、それを一人の男の正義にフォーカスすることで背負わせてまとめているのも、非常に上手いやり方だと感じました。
 テーマ「光」への解答としては、少し変化球的ではあるでしょうか。ある意味「影」もテーマになりうるような題材の取り方だったようにも思います。また複雑な構成や設定から読者の読解力への期待が高いようにも感じるので、読む人を選ぶ小説かも知れません。
 総じて技巧に溢れ、物語・キャラクターともに素晴らしい小説でした。小説としての満足度が非常に高く、読み進めるのが楽しかったです。

64:君の光になれたなら/吹井賢(ふくいけん)

謎の有袋類:
 僕の第二宇宙速度を書いてくれた吹井賢さんの二作目です。
 ロービジョンの幼馴染みとの百合! いいですね百合!
 二人のお決まりのルーチンと、それの終焉……そしてお互いの気持ちをぶつけ合うターン! めちゃくちゃによかったーー!
 一つだけ些細な部分なのですが冒頭で「未来の母」とあったので一瞬だけ人名だとわからなくて「あれ? 幼馴染みで未来(時間的な意味)の母?」と混乱して読み直していました。こういうときの表記、難しいですよね。
 優越感を感じていた自分を恥じる希と、それでもいいと言ってくれる未来の答え、めちゃくちゃによかったです。
 そして冒頭の詩を読み直してめっちゃいいーーってなる……。
 物語の構成も、冒頭のやりとりをリフレインするけどしつこくならないワザマエがすごい。すごく読みやすくてエモかったです。
 お互いにとって道しるべであり、光なのだろうな……と感じさせる作品でした。おもしろかったーー!

謎の果実猫:
 視覚障害者の親友を持つ女の子の話。
 些細なことなのですが、未来のお母さんで未来(人名)なのか未来(時間)なのかちょっとだけ混乱しました。
 幼馴染の未来は視覚障害者、朝の誘導がお決まりのルーチンだった希。中学を卒業して高校に上がった途端、何年も続いたお決まりの流れは唐突に打ち切られてしまいショックを受けた希は…。
 中学卒業を機に希の重荷になりたくないと自分からやめると言いだした未来でしたが言葉が足りずに希とすれ違っていたようでした。思春期ですね~! すれ違いも可愛い~! 希を心配して希の部屋に乗り込んできた未来が「―――私は、アンタのことが大好きなんだよ!!」と言うシーン、良すぎましたね~~~!!! 二人して泣いてわだかまりが消えてよかったですね。
 わかった上で冒頭詩を読むとなお良いですね。おもしろかったです。

謎の女子高生:
 視覚障害者の幼なじみを介助することの多かった少女の話。ロービジョンの幼なじみから高校進学後は介助不要と告げられることで、主人公は自分のこれまでの「当たり前」は優越感や自己陶酔のためだったと自己嫌悪に陥るも、幼なじみに発破をかけられることでお互いの関係を改めて確かめ合う物語。主人公、めっちゃいい子なんだろうなあと思いました。青春小説としても非常に温かい気持ちにさせられます。
 これは好みの問題ではありますが、話として最後は幼なじみが主人公の元に来てくれる「行動」を示すような展開でしたので、この行動に対して、主人公たちがどう変化したのかを「行動」で示すシーンを挟むと、エピローグ的に展開への解答となるため、腹落ち感が増すかなと思いました。
 吹井賢さんの一作目の投稿である「僕の第二宇宙速度」同様、非常に詩情に溢れた小説で、言葉の綺麗さを感じられる作品でした。

65:カルドラナ神殿の悲劇/かける

謎の有袋類:
 アンドロイドは海辺で夢を見るの作者さんの二作目です。
 ラドルアンーーーー!めちゃよかった!!!無能だと思っていたし裏切るのか? と思ったけど最高の忠君だったーーーーー!
 光の聖女がよくあるダメ聖女なのかと思ったけれど、本当に高潔だったパターンは本当に良いですね。それでもふわふわしていて愛らしい聖女……。祈りの時間も本当に大変なんだろうな……と後から思えるとても良い構成……。
 かけるさんは叙述トリックが好きなのかなと思いました。おもしろかったのですが、ギミックありきのためにディアンナの感情や動きが不自然になりがちなので、もう少し仄めかしていてもよかったかもしれないなと思いました。後半でディアンナがああいう態度だった理由は明かされるのですが、もう少しデレたり、なんらかの感情が盛り込まれていると更に自然且つ、グルンとしたときにより気持ちよく読者を裏切れる結果に繋がるかもしれません。
 とはいえ、講評なのであえていっただけで、このままでも作品の完成度はとても高いと思います。ラドルアン、本当にとても好き。めちゃくちゃにおもしろかったのでこれからもがんばって色々な作品を書いて欲しいなと思います。

謎の果実猫:
 カルドラナ神殿の聖女の話。
 わ~~~~!!!! 聖女もの!!! 聖女もの大好き!!!
 聖女様好き! ラドルアンも好き! 魅力的なキャラクターたち!
 一見頭お花畑でダメな聖女と思わせておいて、いざとなったらきちんと聖女らしい立派な行いをして散ったというのが最高に良いですね。切なく悲しい結末ではあるのですがとてもよかったです。ラドルアンと騎士たちが聖女の命令を守って共に散ったのがとても切なく辛く悲しいですね。立派で高潔で…。
 叙述トリックのためにディアンナの気持ちがちょっと不自然かもしれません。どのくらいほのめかすかというのも加減が難しいですよね。
 お話がうまく完成度も高いのでこのまま好きを突き詰めていってください。
 とてもおもしろかったです! 今後の作品も楽しみです!

謎の女子高生:
「最悪」の光の聖女と、その侍女の話。頭がお花畑で男を魅了して放蕩三昧に見えた聖女は、正しく聖女だったという物語。非常に悲しく、けれどとても好きな物語でした。聖女と侍女の関係も大好きです。全然関係ないんですが、オウディール公爵のバカ高い貢ぎ物も、実はデレデレの振りをしつつ聖女の公共事業に共感した結果、どこかを欺くための隠れた資金提供だったりしたのかなと、勝手に妄想して公爵の株が上がったりしました。
 あんまり悲しい結末だったので、平和な時のエピソードをもう少し読んでみたいなと感じます。いやでも……そしたらやっぱ結末の悲劇を知ってるからもっとダメージ受けちゃうのかな……でもな……読みたいな……。
 頭ほわほわな感じでいつつも、きちんとやることやってる、けして腹黒とかではないキャラクターが好きすぎるということでございました。そこにお堅いタイプのひとが振り回されてるのもね、癖です。ありがとうございます。
 かけるさんは一作目はブロマンス、二作目はロマンシスで参加してくださったんですね。どちらも素敵で、大好きな作品でした。

66:忘れさせた光/蠱毒 暦

謎の有袋類:
 はじめましての方です。参加ありがとうございます。
 多分、作者さんの好きを山盛りに詰め込んだ作品なのだと思います。楽しんで描いているのかなと思う部分があり、おもしろく読むことが出来ました。
 目が見えない少女と、不良の兄の組み合わせや、不良の兄が自分の目を譲るところなどすごくよかったです。
 勢いもめちゃくちゃに良いとか、ナンパギャングの存在など個人的にはすごい好きです。こういう作品がWEB小説の醍醐味!
 文章力にはまだまだ伸びしろがあるので、一度書き上げた作品を推敲してもいいかもしれません。
 まだまだ書けば書くだけ強くなれそうな作者さんです。これからもたくさん好きな要素を詰め込んだ作品を書いてどんどん強くなりましょう!

謎の果実猫:
 不良だった兄が目の見えない義理の妹のために奮闘する話。
 妹の視点から始まって、不良の兄に視点が移り兄の物語がドーンとあって、また妹の視点で終わるのですが、ちょっと混乱するところがあるので視点は一つに定めるか順番を変えるなどしたほうがいいかもしれません。
 義理の妹のために不良だった兄が奮闘するというお話はとてもいいと思います。創作なので細かいところは現実と違ってもフィクションで押し通してもいいと思いますし、勢いで突き通しても全然構わないでしょう。紫紺の目はお兄さんからのプレゼントだったんですね。とても感動的です!
 これからも作者さんの好きなものをたくさん書いて好きをなものを突き詰めていってください。応援しています!

謎の女子高生:
 盲目の義妹の目を治すために奔走する不良の兄の話。突然出来た義妹のために奮闘する兄の行動が面白い。書きたいものを全部書くぞ!という作者のパッションが良く伝わってくる作品でした。「不良の王」という通り名、不良らしくて好きです。ナンパギャングなんかもワードセンスがいいですね。
 技巧的な面で言うと、シーンの繋ぎや視点の移動が少々粗削りに感じました。冒頭と最後は視点も違いますし、エピローグ・プロローグなどで章分けするのもありかなと思います。
 全体として作者の筆のノリを感じられる、勢いの良い作品でした。まだまだこれから伸びていく方だと思いますので、どんどん作品を書いて欲しいと思います。

67:太陽はカンヴァスの中に輝く/朽尾明核

謎の有袋類:
 はじめましての方です。参加ありがとうございます。
 初老の吸血鬼! メイドちゃん! そして天才画家! バトルシーンもありのめちゃくちゃに良いお話でした。人間を無闇に殺さない系の血を吸うと若返る吸血鬼! とても良いですね……。無表情気味のメイドであるミナもすごくよかったです。
 魅力的なキャラクター立ちと、主人公が天才だと言われる理由、そして絵を描くために必要なことを追い求める課程がすごくよかったです。
 結末は「じゃ、じゃあレッドグレイヴ伯爵、死んじゃわない?」と序盤からハラハラしていたので、レッドグレイヴ伯爵が絵の力をどこまで信じているのかとか、画家も殺してしまう可能性については気付きそうなので「もし滅されたらどうします?」みたいなノイズを減らすことも考えるとお話への没入感があがるのかなと思いました。
 ですが、これは僕が吸血鬼ものが好きで、お約束を知っているから気付いてしまうだけの可能性もあるので他の評議員や他の方の反応などを見てどうするのか選んで好みの強さになっていきましょう!
 レッドグレイヴ伯爵の血を吸うと若返る設定はかなり王道の設定だと思うのですが、そこに画家である主人公の絵に依頼人の心を込めるという設定がマッチしていてとてもよかったです。
 今後の主人公とミナの申し開きからもまた物語が始まりそうで素敵なラストでした。
 参加ありがとうございました。吸血鬼ものが好きなのですごく楽しく読めました!

謎の果実猫:
 吸血鬼伯爵のために太陽の絵を描く話。
 とてもおもしろかったです。吸血鬼もの最高~~~!!!
 カンヴァス・キャンバスの表記揺れが気になりました。どちらかに統一するとよかったかもしれません。わざとだったらすみません。
 天才画家の手によって描かれたものは見るものに錯覚を起こさせるという設定はすごく良いですね~!!! 人間だった頃に見たきりの太陽をもう一度見たい、せめて絵の中でもう一度と望む伯爵の想いを考えると切ないですね。
 これは私の勝手な推測ですが伯爵は太陽の絵を見て錯覚を起こしてしまってもよかったのでしょうね。そうでなければ聡明な伯爵が天才画家の前評判を聞いた上で太陽の絵を描いてもらおうとする意味がわかりません。もしそうなってもいいという覚悟があったんじゃないでしょうか。
 メイドのミナもよかったし、なんといっても伯爵が美しくかっこよかったです!!! バトル描写もよかったです!!! 
 もしも続きがあったら読みたいほどです。今後の作品も楽しみです。

謎の女子高生:
 太陽の光をもう一度見るために、天才画家の元へ訪れた吸血鬼の話。光を見ることの出来ない吸血鬼が、「本物」のような絵を描く画家に太陽の絵を依頼する。画家は絵を描く際に依頼者のことを深く知り、やがて絵を完成させて…というストーリー。見事な作品、それに尽きるかと思います。導入からもうずっと面白い。今回のテーマ「光」の回答として、完璧以上の答えになっているのではないでしょうか。儚く、美しい、ヴァンパイアの物語。
 気になるところですが、吸血鬼も画家も、「絵による死をどこまで想像していたのか」という点はもう少し踏み込んで書いてもよかったような気はします。
 構成、表現力ともに高いレベルでまとまっており、作品の完成度が非常に高く、素晴らしい作品でした。吸血鬼と画家の二人の関係の描き方も好きでした。

68:ワンダフル・デイ/野村絽麻子

謎の有袋類:
 前回はセイレーンのお弁当とクラッシュで参加してくれました絽麻子さんです。参加ありがとうございます。
 結婚式場も兼ねている少しレトロなレストランのお話でした。
 職場で元カノの結婚式に携わることになり、司会の人の悪ふざけによって危うく迷惑を掛けそうになったけれど、おめでとうが言えてよかったねと思いました。
 照明や音響がインカムを使って結婚式をする規模の会場というと数百名が入るクラスの規模なのかな? と思ったのですが、多分レストランの規模的にはそんなに大きくないような気がしたので少しだけ気になりました。
 これは僕が過去に婚礼音響と照明をホテルでしていたからなので、多分他の人は気にしない部分かもしれないので気にしなくてもいいかも……。
 最後に、春永さんと少しいい感じになるラストがすごく好きです。
 誘惑に負けずに元カノにおめでとうを言えた主人公、そんな主人公に助け船を出した春永さんの組み合わせはすごい安定感がある……。
 とっても温かい気持ちになれる作品でした。
 短編はばっちり書けると思うので、そろそろ中長編などにチャレンジして見るのはどうでしょうか!

謎の果実猫:
 レストラン・ヤドリギでウェディングスタッフとして働く話。
 よかったです~!!! 私は音響や照明やウェディングに全く詳しくないのでそうなんだ~と雰囲気を楽しませていただきました!!! こういったことに詳しい方が読むとまた違った感想が出るのでしょうか? それも楽しみですね。
 元カノがやってきてそれを職場のみんなに知られて本番中にサプライズされた時にハラハラしましたが、そんな中おめでとうを言うシーンは感動的でしたね。でも矢敷さんちょっと好きです。誰しもいい声の男には弱いものです。
 春永さんが暗闇の中で助けてくれようとしていたことを知った主人公。春永さんと次の恋が始まるのでしょうか? だったらいいですね。
「気持ち良く伸びた背筋。シニョンにした髪。その間から見える頬が、ほんのりと桃色に染まっているのを認めて何だか意外に思いながらも、それはとても眩しいものに感じて。」かわいい! この最後のシーンの春永さんがとても可愛いです!
 とてもおもしろかったです。 今後の作品も楽しみです!

謎の女子高生:
 レストラン・ウェディングの照明スタッフが、偶然にも元カノのウェディングに行き会う話。たまたま自分の働くレストランウエディングの会場にくる新婦がどうやら元カノらしいと気づいた男が、MCのいたずらで式中に挨拶をさせられることになり……というお話。全編にわたり、とても優しい雰囲気のドラマ作品でした。
 作品の起伏という意味で、少し波乱がありそうな設定ではありますが、やや大人しかったところはあるでしょうか。主人公と元カノの関係を元に、もうひと展開あってもより面白くなりそうです。
 しかし作品として非常にさわやかな読み心地で、安心感があります。文章から伝わる空気感などがとても好きでした。

69:流星ちゃんはきらめかない/月見 夕

謎の有袋類:
 はじめましての方です。参加ありがとうございます。
 学園もの×こっくりさん×魔法少女もの! 好きをたくさん詰め込んだ贅沢作品という感じでおもしろかったです。
 魔法少女が木の枝を使って植物にちなんだ魔法を使うのもすっごく好きでした。
 結末も自分で言いたいことを言いに行く! という前向きなラストですごくよかったです。
 折れた桜の枝が重要なアイテムになるのですが「思い入れが強い」か「超レアか」が強い魔法を使えるという条件があるので、せっかくならもっと桜に思い入れがあるようにすると、映えシーンが更に映えて見せ場がかっこよくキマるのかなと思いました。
 魔法少女と機関銃の組み合わせなどもすごくユニークで、作者の方が色々と楽しく考えながら描いたのだろうなと伝わってきて、読んでいてこちらまで楽しくなりました。
 このまま好きなものをたくさん詰め込んだ創作を続けていって欲しいです!

謎の果実猫:
 魔法少女がこっくりさんと戦う話。
 すごくおもしろかった~~~~!!!! 冒頭の教室から大きな目が覗いてるところからこれはおもしろいぞってなりました! そのとおり! おもしろかった! 
 語尾が特徴的な魔法少女と蛾になってしまった女の子のコンビで、魔法少女が植物の枝を使ってそれにちなんだ魔法を使うところがかっこよかったです!
 冒頭で折れていた桜の枝が活躍するわけですが、桜の枝に思い入れ等あるといいかもしれません。丁度あったから使ったというのではちょっと理由として弱いかも?
 魔法少女の使い魔のスライムがこっくりさんを飲み込んで大きくなってしまったというのがよかったですね。魔法少女が全く関係ないこっくりさんとどう戦うのか気になっていました。お話を作るのがうまいですね~。
 好きなことを詰め込んで書いたものだと思いますので、これからも好きなことを詰め込んで突き詰めて楽しんで書いてください。応援しています! 

謎の女子高生:
「こっくりさん」の生贄にされ蛾になった少女が、魔法少女とともにこっくりさん退治をする話。流星ちゃん……いや、流星さん……! 流星ちゃんが男前すぎて思わず子分の性質が出てしまいました。設定にも話の広がりを感じる、世界観の完成度が高い作品だったと思います。こっくりさんVS魔法少女という構図もいいですね。
 短編としての完成度も高かったと思いますが、設定のレンジは中〜長編向けのようにも感じます。もし長尺への試金石的なイメージであれば、流星さんのバックグラウンドなどの掘り下げももっと読んでみたいと思います。
 バトル描写や設定など、トータルとして非常に豪華な読み味の作品だったと思います。大変面白かったです。

70:二度と開けない/衣純糖度

謎の有袋類:
 前回は空へ指をと、金星で硫酸が降る夜を書いてくれた作者さんです。参加ありがとうございます。
 めちゃくちゃに良かった! 観光名所にも成っている洞窟の中にある仏像を見に行くお話でした。
 仏像の描写も良かったですし、地元の男性が話す口調もすごく雰囲気があってよかったです。
 これは些細なことなのですが、観光名所になっているのに、不穏な噂がないというのも不自然ではあるので、前半で不穏な噂もあるみたいな仄めかしがあると後半の種明かしターンでもっと気持ちがよくなるかもしれません。
 このままでも十分に怖くて不気味で神秘的な話なので、他の人の感想や評議員の講評を見て好きなアドバイスを選んで最強の短編を作るための踏み台にしてくれると嬉しいです。
 これからもどんどん色々な話を書いて行ってくれるといいなと思います。

謎の果実猫:
 鍾乳洞で遺体が発見された謎を追う話。
 おもしろかったです。タイトルの二度と開けないというのは瞼のことでしょうか? 瞼の裏に亡くなった家族が現れてしまったらもう開くことができないということでしょうか? 切ないですね。
 鍾乳洞の中や仏像の描写が緻密で美しく映像的にわかりやすく想像がしやすかったです。確かな筆致と豊かな表現力を感じさせられます。とても好みの文章でした。
 5人の遺体が出る前、地元の男性の話では林田さんとその前にも犠牲者がいたような話だったのに不気味な噂が立っていないのは不自然なような気がしました。以前から事故が多いということで片付けられていて、噂も迷信だと切り捨てられていたならわからなくもないので些細なことなのですが…。
 新月の日に仏像が月の光で光り輝くというのはとても神秘的でよかったです。主人公はその条件を試すのでしょうか? 次の犠牲者になるのでしょうか? 怖い終わり方でとてもよかったです。
 今後の作品も楽しみにしています!

謎の女子高生:
 鍾乳洞で起こった事故似ついて調べる男が、その事故の真相を知る男と出会う話。悲劇が悲劇を生む、連鎖的で悲しい物語。ある条件において「死んだ人に会える」という鍾乳洞で何が起きたのかをつまびらかにしながら、しかし男にはある秘密があり…というお話。暗く悲しく、娘を亡くした男性か語る鍾乳洞の真相はとてもやりきれなさを感じます。
 作品全体の良さに関わることではありませんが、探偵を名乗る男は実際は関係者なのだろう、というのは序盤からなんとなく察することができてしまうので、その辺りはもう少し隠せると面白いでしょうか。
 全体を通してとても恐ろしくも切ない、良い読み味のホラーSFでした。

71:空中ブランコのベル/@ marucho

謎の有袋類:
 はじめましての方です。参加ありがとうございます。
 ミステリアスで魅力的なサーカスの花形、ベルとカメラマンのお話でした。
 最初の取材のあとからベルと親しい仲になったカメラマンとベルの関係性が好きでした。団長ともそういう関係だったのがミステリアスさに拍車を掛けていて好きです。
 最後に工夫を凝らすけれど結局シルエットしか撮れずに、謎の実業家と結婚をして姿を消したベルをずっと覚えているカメラマンのラストも好きです。
 ベルのミステリアスさが減ってしまうかもしれないので、好みの問題も大きいとは思うのですが、実業家の存在が唐突すぎた気がするので、前半で存在を仄めかす程度に書いてくれているとより納得がいって気持ちが良いラストになるのかもしれないなと思いました。
 カメラには捉えられないけれど、一人の心を捕らえてずっと離さないでいるベルの魅力と、光の使い方が面白い作品でした。
 カクヨムにはまだ作品が少ないのですが、これからもカクヨムで色々な話を書いてくれるとうれしいです。

謎の果実猫:
 空中ブランコのベルを写真に撮る話。
 よかったです。写真に映らないサーカスの花形・空中ブランコのベルを撮影しようとチャレンジするお話。自慢話ばかりの団長さんもキャラクターが立っていておもしろかったです。空中ブランコのベルはミステリアスで妖艶で不思議な魅力のあるキャラクターでしたね。彼女が写真に映らないのはただすばしっこいからだけではないでしょう。不思議ですね。彼女が男たちを手玉に取った上で手のひらでコロコロ転がしていたのはおもしろかったです。
 若き実業家との結婚を発表というのが少々唐突なように思えたので、前半にほのめかしなどあったほうがよかったかもしれません。
 シナモンの煙草を思い出のアイテムにしていることや自分だけがベルのことを覚えているというラストがとてもよかったです。誰もが新しい花形に夢中になっても自分だけは忘れられない。しっとりしていいラストだと思いました。おもしろかったです!

謎の女子高生:
 何故か写真に収めることのできない空中ブランコの曲芸師をどうにか写真に収めようと奮闘する男の話。ミステリアスなベルのキャラクターが可愛らしく、周りの男が振り回されていく様が滑稽でありつつも愛おしい。
 なぜ写真に写らないのかという種明かしがあるタイプの作品だと思って読んでしまったので、後からタグを見て「超能力」とあり、それは作中でうまく明示した方が良かったかなと感じました。
 とは言え作品全体を通して読めば、ベルというキャラクターとそれを取り巻き、奔走する男性達の姿が愛おしい、少し不思議で良い物語でした。

72:日月奇譚/柚木呂高

謎の有袋類:
 第五回の時に参加してくれた柚木呂高さんです。参加ありがとうございます。
 シギズムンドーーーー! めちゃくちゃによかったーーー!
 太陽の光を照射する瞳……サングラスを掛けるのではやっぱりダメなのかな? と思ったのでサングラスでもダメな理由があると更によかったかもしれないです。
 でももうそんなことは些末なこと! シギズムンドーーーかわいい! かっこいい! 琢磨くんも最高ーーーー!
>「吸血鬼は容姿が美しくなければ話にならない、美を餌に人々から血を吸うのだから、琢磨にはできんよ」
 ここがもう可愛すぎる……。めちゃくちゃによかったです!
 これが5000文字台なことにも驚きですね。キレイにまとまっていて緩急もあり、説明不足もほとんど無いのがすごい。
 本当にめちゃくちゃによかったです。ズルい大人だからこそ守れるモノがあるという結末もよかったです。これからの二人に幸がありますように。
 あと細かいのですが、にんにくは平気なタイプの吸血鬼、すごく好きです。

謎の果実猫:
 吸血鬼の友達の話。
 めちゃめちゃよかった~~~~!!!! カオマンガイ食べてる吸血鬼、新鮮すぎる!!! ちょっとくらいのにんにくなら平気なんだ!!! いいね!!! 
 陽光蓄射障、サングラスじゃダメだったのかな? サングラスが選択肢にも出てこなかったのが不思議でした。
 素直じゃないシギズムンドが可愛かったです! 琢磨と末永く仲良くしてくれ~~~!!! ズルい大人だから守れるものがあるというのが大変よかったです。
 「(略)粋がるなよ、汚くても生きていける方法があれば僕らは一緒に居られるんだ」ここすごい好きです! 琢磨かっこいい~! 
 6000文字内で短くまとまっていて日常パートもありトラブルもありと盛りだくさんだったのでうまくできているなと思いました。
 とてもおもしろかったです!!!

謎の女子高生:
 目から太陽光を照射するようになってしまった男と、太陽を避けて生きる吸血鬼のブロマンス。目から日中にため込んだ太陽の光が出てしまうから吸血鬼とまともに顔を合わせられなくなるという設定が面白い。目からビームというやつですね。何十年も生きているのに、いつまでも若い青年のようで高潔なシギズムンドのキャラクターが好きでした。二人の関係を月と太陽に見立てた表現も良いです。
 全編にわたって描写の密度感が高く、読み応えがあります。ただそれが少し文章にもたついた印象を与えているところがあるかも知れません。シーンごとに緩急をつけて、読み味をコントロールしてみるのもありだと思います。
 太陽と月のモチーフの使い方や、感情表現の緻密さなど、深く読み込むほど味わい深い、良い作品だったと思います。

73:執筆の光/まさかミケ猫

謎の有袋類:
 光る☆小早川さんを書いてくれたミケ猫さんの二作目です。
 無限ループって怖くね? そんなお話でした。こむり川から始まり……こむろまで行くか? という謎のドキドキ感、そして最後に最初に戻るループ!
 おもしろかったー!
 あんなものやこんなものまで光るしで笑ってしまったwあんなものやこんなものまで光るインターネットの奇祭です。よろしくお願いします。
 メタネタとか創作ネタを扱うのって難しいと思っているのですがサクッと読めるし奇祭に参加する人は「ふふふ」となれるめちゃくちゃに良い作品でした。
 おもしろくて気楽に読める作品、WEB小説の醍醐味でもありますよね。
 執筆の光……それはあんなものやこんなものなのかもしれない。
 企画を楽しんでいただけているみたいで、そういう面でもすごくうれしいです!

謎の果実猫:
 小説の中で(略)小説を書く話。
 おもしろかったけど脳が混乱する~~~!!! 最終的に冒頭に戻ってくるのがめちゃめちゃ面白かったです!!! あわせ鏡というかマトリョーシカというかそんな感じの状況! 脳が混乱するよ~~~!!! 無限ループだ!!!
 カキコちゃん好きです! 黒歴史ポエム! 誰しも覚えがありますよね~! こむら川をモジった小説大賞がぽこぽこ出てきて笑ってしまいました。
 「あんなものやこんなものまで光るし」「プロアマ入り混じった奇祭」そうですね~! ビカビカ光らせていきましょう! 
 企画を楽しんでいただいているようで何よりです! 実際のこむら川の状況に沿ったいわゆるメタネタ?も存分にあって、楽しく読ませてもらいました。おもしろかったです! 

謎の女子高生:
 小説を書く人の小説を書く人の小説を書く人の話(あらすじから引用)。めちゃくちゃ大好きです。これは悪い意味ではなく捉えて欲しいのですが、ある意味出オチ的な話でこれから何が発生するか分かるのに、読んで思わず笑ってしまう作品でした。ループ構造を取った作品で、エンドレスに作品が繰り返されるのも良いギミックです。
 それぞれの「小説を書く人」がこむ○川小説大賞のテーマ「光」について考えていくのも面白いポイントですが、テーマをテーマで打ち返してるという意味では、少し回答が弱いところでしょうか。ただメタ構造を取る作品としては最適解だとも思います。
 三者三様、それぞれが小説を書く人を主人公に作品を書き、それぞれの人格がそれぞれの人格を生み出すような読み心地が大好きでした。良い小説だったと思います。

74:そのあだ名、下品につき/ぬ

謎の有袋類:
 金玉の人だ! 金玉の人だ! 第五回ぶりですね。参加ありがとうございます。
 金玉の小説でした。
>お前らはさ、金玉と本気で向き合った事ってある?
 ここらへんから始まる本格的な金玉ラッシュに耐えられなかった。何度金玉っていうんだよ!!!!
 前回の小説もそうだったんですけど、本当に金玉の使い方がうまいというか、笑える単語の連打が上手でいいなと思います。
 金玉が光るんだなと思ったけど違ったのも良い裏切りで大好きです。佐伯さんと玉木くん、両想いになる道はあるのでしょうか?
 金玉と共にずっとある玉木くんに幸があって欲しい。素敵な金玉小説でした。ぬさんに金玉の王の称号を与えたいです。

謎の果実猫:
 あだ名について向き合う話。
 言葉を色として認識できる織島くんが何気にすごいです! なんという嘘発見器的キャラクター! サラッと出てきていいキャラじゃなくて笑いました。
 邑崎くんについては嘘がつけない設定の説明が作品内にもあったほうがいいかな?と思いました。
 玉木くんの母方の旧姓が福里というのがよかったです。金玉に愛されていますね。他人にはわからない悩みと長年向き合い覚悟を持って現状を受け入れている玉木くんはすごいですね、尊敬さえしてしまいます。 
 佐伯さんが玉木くんと同じ小学校からの長い付き合いというところやおせっかいというところが今回のこの騒動につながるんですね~。いいですね~。佐伯さん可愛いですね。
 とてもおもしろかったです。二年ぶりに小説を書いたという作者さんですがめちゃめちゃ笑わせてもらいました。これからも好きなように楽しく作品を書いていってください。応援しています!

謎の女子高生:
 下品なあだ名が広まらないようにするのがいいかどうか、そのあだ名を持つ本人から話を聞き出す物語。名前が「玉木」で、顔も金玉に似ていることから「タマキン」とあだ名で呼ばれている男子高校生が、これまでの半生でいかにして「金玉」と向き合ってきたかを語る、金玉人生回顧録。玉木の人生観が非常に好きでした。それから「金玉みたいな顔」という表現が小説的でありこの作品の非常にポイントとなる部分で、これをどう想像するかが完全に読者に委ねられているところに、この小説の妙味があるような気がします。
「嘘の言葉が赤く光って見える」という大事な設定が、もっと大事なあれに引っ張られすぎてサブ的要素になっているのが惜しいところでしょうか。玉木の人生観やエピソードが強過ぎるせいで設定が噛めない状態になっていたなと感じます。
 トータルで見て、ギャグとシリアスの絶妙な塩梅がシリアスな笑いを生む、とても良い金玉青春小説でした。

75:ういんか/押田桧凪

謎の有袋類:
 前回は不思議なカニの話で参加してくれた押田桧凪さんです。参加ありがとうございます。
 気難しいおじいちゃんと、主人公が一緒に走る話でした。
 今よりも技術が発達した世界で、小さい頃からお爺ちゃんっこだった主人公と、目の病気が原因で運転が出来なくなったお爺ちゃんを再びドライブに誘う話はほっこりとする良いお話でした。
>体の一部が運転を担うことが一般的になり
 ここがちょっと具体的にどんなことなのかわかりにくかった上に、おそらく物語のかなり重要な部分を占めるので「書きすぎかな?」というくらいに書いてもいいかもしれません。
 おじいちゃんがウインカーになっているというシュールな状況と、テクノロジーが人間の可能性を拡張していくというSF的におそらく王道であろうテーマはすごくおもしろかったです。
 書けば書くだけどんどん力が伸びる作者さんだと思います。
 これからも作品をたくさん書いてくれるとうれしいです。

謎の果実猫:
 祖父と一緒に車を運転する近未来の話。
 私は車の運転に疎いので雰囲気で読んでしまいましたが、車の運転に詳しい人なら違った読み方ができるのかな? 体の一部が運転を担うことができるというのがちょっとよくわからなかったので、説明しすぎなくらいがいいのかもしれません。
 車を自分で運転できなくなってしまった祖父のために運転助手に任命する主人公。祖父がウィンカーやライトを操作してくれる車で、共同作業のように一緒に運転するのは主人公にとっては楽しかったり頼もしかったりしたのでしょうか。
 ほっこりしてあったかい気持ちになるお話でした。テクノロジーが人間の可能性を広げるような近未来のお話はおもしろいですね。
 これからもたくさん書いて作品を作っていってください。

謎の女子高生:
 車を運転できなくなった祖父と、病床の祖父にもう一度車の運転をして欲しいと願う孫の話。車の運転の一部を外部の助手に任せることが可能になっている世界で、運転免許を取った孫が、かつてお世話になった祖父に運転助手をしてもらう小説。非常に優しい世界を描いた、心安らぐような小説でした。
 「他社の身体の一部をリモートで車の運転に使えるようにする仕組み」というものは現在はまだ実用化されていないと思うのですが、確かに完全自動運転が実現するまでは、「運転免許を返納すると移動手段を失う」高齢者にも必要になってくるような技術かもしれないなと感じます。そういう意味でも、SF的な設定の良く効いた小説だったと思います。実用性と必要性についてはあまり言及されていなかったので、ここはもう少し触れてもよかったかも知れません。
 あまり関係のない話で恐縮ですが、私も福岡出身・在住なので作中舞台は非常に親近感がありました。マリノアシティ、閉館しちゃいましたね。観覧車もなくなると聞いています。寂しいですね。

76:はなびし/押田桧凪

謎の有袋類:
 ういんかの押田桧凪さんです。連続エントリーですね。
 こちらは花火師のお話でした。火花と火薬の匂いが好きな主人公が目指したのは花火師だったけれど、光を担当する側にはなれなかった主人公。それでも耳の悪い妹のために花火大会で仕事をする……というほっこりとする素敵なお話でした。
 こちらもういんかと近い指摘になってしまうのですが、割とコアな部分の設定である花火師の音担当がどういう担当なのか具体的に書かれていないのですが、音楽に合わせてプログラミングをする系のお仕事でよかったのでしょうか? 大切な部分なのでしっかりと書いてあげると何も知らない人にとっても親切かもしれません。
 妹との回想シーンで謝ることが多い妹を思い出すシーンや、妹の耳の不調がストレスかもしれないと示唆される部分が好きです。妹のためにがんばるお兄ちゃんを活かす助走はとても大切……。
 結末の「『大きかった!』とメッセージには一言、添えられていた。それがサイズなのか音のことなのか、迫力、光なのかは分からない」という部分もすごく好きです。
 情報量をコントロールしながらガンガン色々な作品を書いていきましょう!

謎の果実猫:
 花火師になって妹のために奮闘する話。
 スターターのピストルの焦げ付く匂いから花火師につながっていくのはおもしろいきっかけですね。花火を見ている観客を眺めるのが好きな青年は花火師を目指します。めでたく花火師になることができた青年でしたが、配属された先は思っていた花形部門ではなく地味な音物部門でした。
 花火に詳しくないのでわからないのですが、音物というのは花火の破裂音のことですかね? それとも花火を打ち上げている時に流す音楽などのことでしょうか? このあたり詳しい説明が欲しかったです。
 妹の不調からお祭りに行くくだりまで主人公が兄として妹のために頑張っている姿がかっこよくてよかったです。「『大きかった!』とメッセージには一言、添えられていた。(略)花火を見る人の喜びがそのまま俺の喜びになる。」のところとても好きです。
 どちらの作品も3000文字ぴったりに仕上げているのがこだわりを感じてすごいなと思いました。参加ありがとうございました!

謎の女子高生:
 
花火師の男が、難聴になってしまった妹に花火を見せる話。花火師になり、音の鳴る打ち上げ花火を作る部門に入った主人公が、その音の必要性に疑問を抱いていたが、ある日妹が突発性難聴になったことを聞かされ、その音が聞こえるかは分からないと思いつつも、妹に届けたいという思いを持って花火大会の打ち上げを担当する話。人が花火を見ている姿が好きだという、主人公の気持ちがよく伝わってくる作品でした。
 作品テーマとして花火は「光」に関するものですが、フォーカスは「音」に当たっているようなところもあり、少しブレている印象がありました。難しいところですが、「音と光」をまとめ上げるような組み立てがあるとより作品のテーマが強固に感じられるかも知れません。

花火師の仕事などの描写が細かく、ある種の「お仕事」ものとしての読み応えもあり、楽しく読める作品でした。

77:6ミリ/紫陽_凛

謎の有袋類:
 読んだら捨ててくれを書いてくれた紫陽_凛さんの二作目です。
 うわーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー! メンがヘラってる主人公だーーーーーーー! 洋くん! 早く別れましょう!!!!!!!!!!!!!
 と思わず取り乱してしまう作品でした。 うわあ! 自己肯定感が低い女の子がマトリョーシカになって自分をセルフネグレクトすることを自覚するお話。ここで自分を大切にするっていいなーと思うのかと思ったらそんなことは思わず、彼氏である洋くんによちよちしてもらって終わりました。ミリちゃんに自分を好きになれる日は来るのか?? 現実だと絶対に来ないのですが、これは物語の中なので、好きになれる日が来るのかもしれない。
 良くも悪くもめちゃくちゃに嫌な女の嫌な質感がすごい! うわーーー! って思いながら読みました。うわーーーー!
 これがうわーーーーと思わせたい作品なら大成功ですし、そうではない場合はヘイトコントロールをもう少し調整するといいのかもしれません。
 とにかく嫌でめんどくさい女が優しい彼氏に愛されるというおもしろい作品でした。他の人の講評が楽しみです。僕はこういう女に同族嫌悪的なアレルギーがあるからきっと正しく見れていないので……。
 参加ありがとうございました! 良いヤバ女小説でした。

謎の果実猫:
 自分を嫌っていたら感情が爆発してしまう話。
 中から出てきた6人のミリちゃんは心象風景だったのかな? マトリョーシカよろしく中からどんどん出てきた時はちょっとグロくてダークで笑ってしまいました。だけどその後に6番目のミリちゃんをかわいそうに思ってみんなでケアし合うシーンは大変よかったです。なんだか涙腺が刺激されてうるっと来てしまいました。セルフネグレクトを自覚してケアするのはいいことですからね。自己肯定感が低い主人公が自分を好きになれる日は来るのでしょうか? 
 彼氏の洋くんに対してミリちゃんが当たりがきついまま終わるので嫌な女を書きたかったらそれでいいのですが、そうでないならそのあたりをケアするとよかったかもしれませんね。
 現実だったら洋くんはミリちゃんといち早く別れたほうがいいのですが、これはフィクションなので丸く収まる未来も待っているのかもしれません。洋くんの未来に幸があることを祈っています。おもしろかったです。

謎の女子高生:
 
自分が嫌いなミリちゃんの話。まるでマトリョーシカを開くように嫌いな自分の層を暴いていく心象を描く、純文学作品。マトリョーシカが開く度に嫌いだったかつての自分が姿を現すが、それが自分を大切にしていない結果だと聞かされる。結果的に「大事にしていない自分」を目の前で見せつけられたことから、少しだけ自分を大事にする行動を取る、という物語。ままならなさと、息苦しさがよく表現された作品だったと思います。好きな読み味でした。
 心象なのか現実なのか判然としないところが良さでもありましたが、カレシが帰ってきてからの描写の断絶感が少し気になるところでした。心象なのか現実なのかを断定させる必要はないと思いますが、「自分を大切にする」という気持ちの萌芽がこの作品の肝になるかなと思いましたので、そこは地続きにしてもいいのかな、と少し感じました。
 自分を嫌いになるということは、好きになりたい自分がいるということの反証でもあるのだろうと、読んでいて感じるお話でした。カレシが本当に良い奴で良かった。

78:ユア・マイ・シャイン/春峯蒼

謎の有袋類:
 はじめましての方です。参加ありがとうございます。
 高校でクラスの居心地が良くない女の子と優秀な女の子の百合! 正反対に見えた二人に実は共通点があったというのはとても良いですね。
 沖縄に行こう! まだ死なないでおこう! でお話は終わるのですが、個人的には沖縄に行った後の彼女たちまで読みたかったかな? と思います。短編小説だと大きなイベントを一つこなして登場人物にそれなりに大きな変化があるとメリハリが大きくなるのかなと思いました。
 ささやかないじめとまでは言わないけれど、自分がおちょくられる側だったと実感した主人公が学校に行きにくくなるまでの描写がとても好きです。この十代特有の繊細な感じ……良いですね。
 天文学部の光ちゃんとの関係性もすごくよかったです。
 カクヨムにはまだ一作しかない作者さんなのですが、自主企画をきっかけにたくさんお話を書いてくれたらうれしいなと思います。

謎の果実猫:
 似た者同士の友達の話。
 思春期ですね~~~~!!! 思春期の百合だ~~~!!! 
 クラスに居場所のない灯と優秀な光は部室で星について語り合います。語り合ううちに光が自分の家庭環境について打ち明けてくれて…。
 南十字星を見に沖縄まで行こうかというところでお話が終わるのですが、文字数に余裕があるので沖縄まで行った話を書いてもよかったかもしれません。
 お互いの存在が光だと言い合うシーン、とても良かったです! 思春期ゆえの勢いや感情のままにぶつけ合うようなコミュニケーション大好きです!
 これからも好きなものをたくさん書いていってください! 応援しています!

謎の女子高生:
 天文学同好会の二人の少女が、生きることの苦しさを分かち合う話。教室や家庭に不和を抱え、お互いに逃げ場のない二人が、授業をサボって天文学同好会の部室でお互いを光のようだと確認し、僅かな希望を見出すという物語。学校でお互いに信じられる物が少ない中、お互いが少し前を向くための希望になっているという構造は、細い糸のように儚く不安定ながらも、固結びされて離れない、共同体的な関係をよく表していたように感じます。ロマンシス的な読み味もいいですね。
 天文学に絡めた光の話については、僅かにですが強引さを感じるところだったでしょうか。光が届く時間だけではなく、明るさなどと絡めた話など別角度の視点も入ると、より複雑な比喩が効いてくるかも知れません。
 最後に旅行の約束をする下りが好きでした。少し先の約束の話ができる友人がいるというのは、もしそれが叶わないことだったとしても、彼女たちにとっては「生きていていい」と言われているのと同義なのだと思います。良い小説でした。

79:ラーメン荒波/野村絽麻子

謎の有袋類:
 ワンダフル・デイを描いてくれた野村さんの二作目です。
 ラーメン荒波というこじんまりとしたラーメン屋の常連が宇宙人だったお話。
 クラゲっぽい姿の足がたくさんあるかなり王道な見た目をした宇宙人達の様子が可愛らしいお話でした。
 これは好みの問題かもしれないのですが、トンチキ系の話なら途中で宇宙人の話を明かすよりは早めに宇宙人ですと言ってくれた方が楽しいかも? と思いました。
 玄関で「こういう話ですよ!」としてくれると親切度が高いのかな? と。
 荒波の店主が材料の問題で閉店するかも! からのやっぱり閉店しましたは残念だったのですが、常連だった宇宙人達が奮起して屋台でのれんわけしてもらい、宇宙のいたるところでラーメン屋をするラストが可愛らしくてよかったです。
 カツオのために海に行ったときにクラゲを見て同族っぽいと思う細かい描写も好きw
 参加ありがとうございました! やはりレッツ中長編チャレンジをしてみましょう!

謎の果実猫:
 とあるラーメン屋の話。
 この作者さんはお食事の描写がとっても美味しそうですね~~~!!! 読んでいておなかがすいてきました~~~!!! 途中でわたしたちの外見が出てきておやおや?となりました。なんと宇宙人が常連客のラーメン屋さんのお話だったのですね。 
 わたしたちの外見を明かすのはもっと早くてもいいかもしれません。読者を驚かせたかったなら難しいところですが…。
 カツオを探して海に出たわたしたちがおそらくクラゲを見て「途中、わたしたちによく似たゼリー状の頭と複数の足を持つ不可思議な生命体をお見かけしもしたが、今はそれどころではない。」とちょっと気を取られているところが好きでした。地球外生命体にのれん分けして屋台を譲ったおやっさんのシーンは胸熱でしたね。
 とても良かったです。ラーメンが食べたくなりました。

謎の女子高生:
 うまいラーメンを守りたい常連客たちの話。スープの仕込みに使っていた魚介が地球環境の変化で使えなくなりそうだと知り、それをどうにかしようと行動を起こす常連客と店主の交流の物語。う~ん叙述トリック。足が1ダースある常連客たちの奮闘ぶりが読んでいて面白い。中~後半にかけての勢いもよく、とても楽しく読めました。ラーメンに取り付かれると知的生命体は往々にして狂うのかも知れません。我々は情報を食っている。
 人情コメディラーメンSFで、テーマ「光」については少々後回しにされた印象でしょうか。しかしながらラーメンも美味しそうでしたし、宇宙人たちも可愛いし、まあ、いいか! 面白かったです!
 宇宙ラーメン屋台のオチも大変好きでした。荒波のラーメン、一度は食べてみたいですね。

80:臨界エゴイド/狐

謎の有袋類:
 アキ(仮名)から解放されろ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
 というわけで今でもあなたはワタシの光を書いてくれた狐さんの作品です。
 これはもうマジで何も知らない状態で講評が出来ない。ずっと狐さんの初恋の相手がチラついてくる。アキ(仮名)をベースに作られているぞこのヒロインは! 人を振り回しがちな所、思わせがちなところ、ちょっと主人公を困らせて楽しむところなどなど! これがアキ成分だ!!!! 普段はTwitterを参照しないのですが薄めたつもりというのを見てマジでびっくりしたのでビックリしちゃった!
 自意識が見えるアイディアとか、途中でいきなり主人公にも自意識が見え出すいわゆる「ゴリラ」の使い方はめっちゃいいなと思ったし、構成も綺麗だったと思います。もっとロケットスタートしちゃってもよかったかも。
 ちゃんと講評したかったけどアキがチラついてダメでした!!!!!他の人の感想や講評が楽しみです。
 アイディア、ゴリラ、構成はめっちゃ良くて多分作品としても良い作品なのだと思います。アキ! 狐さんから去れ!!!!!!!!!!!!!

謎の果実猫:
 思春期のとある二人の話。
 いいですね~~~!!! 思春期ゆえの感情の爆発!!! 最後のシーンのイロハさんの感情や想いをぶつけるようなところ、大盛りあがりで大好きですね!!! 
 途中からワタルくんにも自意識の形が見えだしたのは手を繋いだからだったのでしょうか? そのあたりの説明が欲しかったかもしれません。
 自意識が形をとって見えるという発想はおもしろいと思います。それも一つの形ではなく形が変わるところがおもしろかったです。イロハさんはちょっと相手を振り回すところやちょっとオタクでワタルくんをリードしてくれる頼もしい女の子なのでしょうね。 ただ、流されるままに付き合うことになったイロハさんとワタルくんですが、ワタルくんの未来がどうなるかちょっとだけ心配です。これはフィクションなので丸く収まる可能性もありますが、現実だったらと思うと…、なんてね。
 脱アキとのことでしたが、かなりアキでした。
 とてもおもしろかったです。好きを突き詰めてこれからもたくさん書いて楽しく創作を続けていってください。

謎の女子高生:
 自意識の話ですね。自意識が肥大しまくってる少年と、人の自意識が形となって見える少女のラブコメ。傷心デートに誘われた少年の自意識はデート中、悪魔の実験装置である「デーモン・コア」の形となって現れてしまい……という作品。デーモンコアはプルトニウムのコアを近づけたり遠ざけたりして核融合の臨界点を見るという実験装置で、臨界事故が発生しやすく、臨界突破して核融合したら青白い光を放つと言われているのですが、それを自意識の肥大の直喩として持ってくるトリッキーさが面白い。
 それはそれとしてデート前に他人の自意識が見えるって明かされるの嫌すぎるかも!って思いました。嫌やろそんな……デート相手から……「自意識鎧じゃん」って言われたらよ……。でもそこで折れないところにホムホムの好かれの根っこがあるような気もしますね。
 お互いの気持ちが通じ合ったあとの最後の会話は、少し質感が薄らとしているでしょうか。あれだけの話のあとの会話としては、少し描写の物足りなさを感じるところでした。
 私は今作をラブコメとして読みましたが、全編通して純情的な様子が描かれており、大変面白かったです。ありがとうございます。

81:Traveling/獅子吼れお

謎の有袋類:
 大谷翔平ポケカの人です。Q eND Aの作者さんでもある獅子吼れおさん、参加ありがとうございます。
 暗黒剣では無く、今回は男同士の友情的なお話でした。
 文章がうまいーーーーー! いいなー!
 振られた友達を慰める男は健康にも良いとされています。
 これ、どうなんだろう? ナツは男の人なのですか? もう心が汚れているのでそういう風にしか見えなかったのですが、女の人なのかな。
 どちらにも取れるように書いたのならこれはこれで成功だと思うのですが、そうじゃないなら性別を書いた方がよかったかも?
 それくらいしか言うことがないくらいよかったです。
>人生、そんなもんだよ。どんなイベントも、誰と過ごした時間も、後から振り返ったら、なんだかんだ、楽しかったなと思える光景の、意味を失った光の点の一つでしかないわけだ
 この一文がマジでよかったです。獅子吼れおさん、こういうことをサラッと入れるのがマジでうまいなと思いました。
 Q eND Aが代表作入りおめでとうございますーーー!でも、大谷ポケカ暗黒剣の輝きも永遠でありますように!!! コミカライズも楽しみにしています。

謎の果実猫:
 旅行帰りの飛行機での話。
 旅行帰りのちょっと疲れて眠くなってるあの時間、いかにも旅行帰りという感じでいいですよね~。そんな中での小声でのおしゃべりは雰囲気もあって楽しそうです。仲の良い友達同士での他愛のないおしゃべりほど楽しいものはないですからね。
 ただ楽しいおしゃべりのまま終わってしまうのが少し物足りないかもしれません。文字数も短かったのでなにかトラブルがあってもよかったかも?と思いました。
 「いや、俺だって7:3ぐらいでイケると思ってたんだよ、これはマジの話」「どっちが7?」「フラれるが7」のところ大好きです。こういう空気感大好き! イルカのくだりも好きです。よく濡れたナスなどに例えられますよね、イルカ。
 「人生、そんなもんだよ。(略)意味を失った光の点の一つでしかないわけだ」のところも好きです。おしゃべりの中で語られる話題一つ一つが面白く楽しそうでとてもよかったです。とてもおもしろかったです。

謎の女子高生:
 大学最後のサークル合宿で振られた男とそれを慰める友人の男の話。旅の終わり、帰路につく飛行機の中での会話劇。男性二人の距離感の描き方が絶妙で、とても良かったです。吉田のただならぬ感情を思わせる描写と、男性の友人同士の距離感として接する室内の返答と、それを受け止める吉田と、うわーー!って大声を出しそうになりました。吉田…! でもなんか吉田も吉田で役得なところはしっかり享受してそうなとこも好きです。
 起伏がなくドライで、すっきりとしているところがこの作品の読みやすさで好きな所でしたが、そこに何かひとつ忘れられない「アク」のような展開や台詞を差し込むと、グッと解像感が引き締まるのでは、と思いました。
 光の解釈として、飛行機の窓から見る光に「ゾッとする」「それは意味が失われるからじゃないか」と会話するところも良かったです。モラトリアムの終わり、おそらくこの後も「変わらない」二人の関係が小さな光にならなければと、少し祈るような心地の作品でした。

82:『   』/宮塚恵一

謎の有袋類:
 義堂崇照と云う男を書いてくれた宮塚さんの二作目です。
 謎の光の束にある病気が蔓延した世界で旅をする二人のお話。大量の敵に立ち向かう主人公の姿で終わりました。
 義堂崇照と云う男でも多分似たようなことを書いたかもしれないのですが、字数の規模と物語の規模があっていないように思います。
 多分、ジュンの旅路はここまでなのですが一山乗り越えたりトラブルを乗り越えて何かの決着がついたり、主人公たちが変化する様子が見れたらなーと思いました。
 設定のおもしろさや、ジュンとミカの関係性は魅力的なので「こ、ここで終わりか」となっちゃった!
 長編の脳と短編の脳は多分違うので、短編、特に短い1万字の規模を把握するとかなり強くなると思います。
 文章力や進捗力には問題無い宮塚さん! 短編も長編も得意になって最強になってくれるとうれしいです。

謎の果実猫:
 謎の現象によって人が光の束になって消えていく話。
 すごくよかったです…!!! 序盤に主人公の目の前で中国人のウォンさんが光の束になるところ怖くて鳥肌が立っちゃいました…!!! 終末系パニックものですね~~~!!! 大好きです!!! 
 ミカとマサノリとジュンの関係性と年齢をもう少し早めに出しておいたほうがいいかもしれません。そのほうが想像がしやすくて助かります。
 ノマド集団がヒャッハーして来てからはハラハラドキドキして大変よかったです! ミカに希望を託して主人公はノマド集団と一人激しい戦闘の中ラストへ…。
 大変おもしろくはあるのですが、同時に物足りなさも感じます。書きたいことが多くて窮屈になっていたり長編か中編向きの題材だったのかもしれませんね。
 これからもたくさん書いて短編と長編と両方とも書けるようになってください!応援しています!

謎の女子高生:
 人が光の束になって消えてしまうようになった世界で、その現象を治す可能性がある論文をある研究施設へ届けようとする男女の終末旅行記。聖書の携挙を題にとった世界の終末を描く設定が面白い。その原因については作中では明かされませんが、人が突然消える世界になった状況でのパニックや、10年の時間経過後の世界の状況はサバイバルものとして非常に読み応えがありました。手堅い面白さを確実な実力で書いてくるところに、宮塚さんの地力の高さを感じます。
 非常に手堅くまとまってる一方、作品への驚きという面では少々こぢんまりとしていると感じるところはありました。人間の話として描かれた作品ですので、展開自体は面白いのですが、この世界観と設定であればもう少し物語の飛躍を見たいところではあります。
 とは言え作品のレベルが高く、最初から最後まで面白く読める良いSF作品でした。

83:夜に探す/秋犬

謎の有袋類:
 ガラクタの灯台を書いてくれた秋犬さんの二作目です。
 電灯の明かりのようなものとお話しする少年のお話。電灯が可愛くてめちゃくちゃにいいですね。途中で「こ、こいつは人殺しかなんかで人を殺した後うろうろしていたパターンか?」と怪しんでいたのですが、そうではなくてよかった。
 少しもの悲しいラストだったのですが、この日に出会った明かりが彼の心を照らしてくれたらいいなと思います。
 これは好みの問題だと思うのですが、主人公の年齢は最初の方に言うと想像がしやすくて親切なのかと思いました。なんとなく中年男性を想像してたので驚いたので、読者を少しびっくりさせたいとかなら今のままでもいいのかもしれない。
 どこか心が温かくなるけれど、少し切なくなるおもしろいお話でした。電灯の光、恩返ししたりしにこないかな……。
 おもしろかったです! 作風の幅が広いのもすごい。これからもたくさんお話を書いていきましょう!

謎の果実猫:
 謎の光と交信する話。
 公園で一人謎の光と交信する主人公、迷子らしい光を連れてお家を探してやります。公園を出て住宅街へ、繁華街を超えて街の外れへ…ようやく光のお家を見つけてやり別れを告げて自分も帰ります。
 主人公の年齢や家庭環境がわかるのが後半になってからなので、前半からわかるといいかもしれません。私はくたびれたサラリーマンかなと思って読んでいたので意外に若くてびっくりしました。意外性をもたせたいならそのままでもいいのかも。
 謎の光とのやり取りはちょっとシュールでそれでいて絵本のように可愛らしいです。主人公はとても優しく親切でもありますね。ラストはちょっと切ない気持ちになる不思議なお話でした。とてもよかったです。
 これからもたくさん好きなものを書いていってください。

謎の女子高生:
 迷子になった「街灯の光」の本体を探す、男と光の真夜中の散歩。本来は意思表示をできないはずの「光」との会話劇が温かくおかしい。家に帰りたくないという主人公が最後、光の境遇を少しうらやむところは切なくもありした。夜を行く二人での散歩の雰囲気も好きでした。
 主人公が一方的に迷子の光を羨んだり自分の境遇を重ねたりするのは、光とコミュニケーションが取れるという設定を使い切れてないようで、少し勿体なく感じました。明確な答えでなくとも、「光の迷子の原因」みたいなものが可能性として提示できれば、主人公の何かを救うようなオチに導くこともできそうです。
 しかし非常に雰囲気の良い作品で、そういった物が無くても味わいの良い物語だったと思います。

84:桃色に光るタワーマンション/広河長綺

謎の有袋類:
 はじめましての方です。参加ありがとうございます。
 サイバーパンク的な世界観×吸血鬼! 主人公はテロ集団の一味だったのがおもしろかったです。
 読者と作者で対決をしたら、作者が圧倒的に有利なのが小説だと思うのですが、読者をびっくりさせるのって多分楽しいですよね。でも、実はいきなりびっくりさせようとするよりも気持ちよく読者を裏切る方がよかったという経験になりがちだと思っています。
 主人公は自分でもこう思い込んでいた! と種明かしするにしても、ところどころでテロ組織の一員であるという仄めかしがあると、種明かしの時に読んでいて気持ちよくなって作品としてキュッと一本線が通るんじゃないかなと思いました。
 タワマンとスラムの差、実質人身売買の仕組み、吸血鬼を防ぐための桃色に光る照明と面白い要素が山盛りで、開幕から「こういう作品です」と作品を読むテンションもわかりやすくてすごくおもしろかったです。
 より楽しく読者を裏切れるように、こういった全講評企画などを踏み台にしてどんどん強くなっていって欲しいなと思います。

謎の果実猫:
 吸血鬼に怯える世界のお話。
 防鬼光という太陽光を再現する文明の利器! いいですね~!!! 吸血鬼から身を守ることが一般的になっている世界の道具、気になります。アンダーグラウンドかつサイバーパンクな雰囲気がいいですね~! 
 テロ組織の一員だったことや本当の目的が金銭ではなかったことなどが明かされますが、それらの伏線やほのめかしなどを前半部分のところどころに配置しておくと種明かし後のすっきり感が増すと思います。どのくらい隠しておきたいかのさじ加減は難しいですね。
 後半で現れる種明かしをしてくれる吸血鬼の美少女がいい味出してますね~! かっこいいです~! 「死にぞこなった私は、戸惑った心を落ち着けようと、窓を開けて夜空を眺めることにした。」ここ好きです。私もハラハラドキドキしてました。とてもおもしろかったです。

謎の女子高生:
 タワーマンションに住む者が上級国民である世界で、電力会社の社員の暗殺を企てる貧民の女の話。タワマンエンタメ文芸小説。一見トンチキな設定の中にある、格差社会を描こうという試みが面白い。カリカチュアされた富裕層と貧民層の対比などの風刺めいた内容が、テロやレジスタンス的な組織を誕生させているという構図も社会派小説らしく楽しかったです。
 吸血鬼の雰囲気が少し俗っぽく、ほとんどタワマンを桃色に光らせるというアイデアのために存在しているのは少し惜しいでしょうか。設定上は必要な存在ですが、プロット上で持て余しているように感じました。
 非常に読み応えがあり、このまま長編にしても面白くなりそうなポテンシャルを持った小説だと思います。面白かったです。

85:フィクションの逃避/@ styuina

謎の有袋類:
 前回は夏のマジックで参加してくれたstyuinaさんです。参加ありがとうございます。
 今回は謎のおじさんと、おじさんの話を聞くのが好きな子供のお話でした。
 おじさんがどこからどこまでが本当の話かわからない信用できない語り手なのですが、自由になりたかったけど何をしたいのかわからないあたりは真っぽいのが好きです。
 誰が何を話しているのかわかり、何を言いたいのかもわかるようになっていてどんどん力を伸ばしていてすごいなと思いました。
 これからもお話を書いて、強くなってくれるとうれしいです。着実に力はついていると思います! がんばろう!

謎の果実猫:
 公園にいた謎のおじさんとの話。
 何もわからなすぎる、謎のおじさんの話でした。たぶんホラ吹きの気の良いおじさんだったのでしょうが信頼できない語り手過ぎて得られるものが少なかったですね。自由になっても何をしたらいいのかわからなかったくだりは変にリアルでよかったです。いや、でもいますよねこういうおじさん…。何してるのかわからないけどいつも公園にいる気のいいおじさん。ちいさい子供には人気ありそう。
 会話文が多く続くものの、誰が誰なのか混乱することがないのは書き分けがうまいですね。
 好きなものを書いて楽しく力をつけていってください。応援しています。

謎の女子高生:
 おっさんの昔話を聞く少女の話。おっさんの嘘か本当か分からない武勇伝を興味津々に聞く子供が微笑ましく、またおっさんにはどこか哀愁があり、なんとなく子供の頃を思い出すような作品でした。軽い読み味も素敵だったと思います。「おっさんの昔話」が小説になっているのではなく、おっさんから話を聞いている様子だけを描写して小説にしているのがポイントでしょうか。そのためおっさんと子供の交流自体を描く話になっており、思い出のエッセイのような読み味です。
 一方、会話劇としては同じことの繰り返しになっており、この物語の読み方が少々分かりにくくなってることは否めないかなと感じます。シーンをもう少し整理すると、より伝わりやすくなりそうです。
 いなくなったおっさんに思いを馳せる話で、語り手にとって大切な昔話を聞いているような、温かみのある小説だったと思います。

86:海月は虚を舞う/若草八雲

謎の有袋類:
 はじめましての方です。参加ありがとうございます。
 会えなくなった同級生に会いにいった男の子の話……なのですが実はそれは海月と呼ばれるものが土地に焼き付けた記憶だった……というお話でした。
 アオハルものかと思いきや! でもアオハルはアオハルっぽくてよかったです。三児の父ということは主人公の旦那さんとかになっているってことでいいのでしょうか? 旦那さんになってても、子供の近況を知れる程度に親しい仲でもどっちでも良い関係性でめちゃくちゃいいなって思いました。
 多分、作者さんの中では繋がっているのでしょうが「時代錯誤」とか「悪趣味」と何故ちーくんが「彼女」に言ったのかがわからないのでそこが細くしてあると親切かもしれません。
 記憶が土地に焼き付くこと、謎の海月、そして土地に取り込まれてしまう人間がいることなどアイディアがすごく魅力的で面白い話でした。記憶なだけで、本人は生きているというのが明かされたときも「確かに! 記憶って書いてあったもんね」とすっきりするのですごく良い伏線の入れ方だなと思いました。
 カクヨムに置いてある作品はまだ少ない作者さんなのですが、これからたくさんカクヨムに話を書いて欲しいなと思います。

謎の果実猫:
 記憶が焼き付いた街の話。
 最初のメッセージのやり取りで女の子と男の子にズレのような違和感があってそれが伏線だったのでしょうが、それが実はずれているのは男の子のほうだと明かされる展開…海月の発光によって焼き付いた記憶の一部だった男の子はその土地で発光前の24時間を繰り返し続けていたんですね。焼き付いた記憶の男の子は亡くなっているわけじゃなくてよかった~! 不思議な現象ですね。
 少し難しいお話なので、説明しすぎなくらい説明してもいいかもしれません。
 現実と地続きのようでいてちょっと不思議な世界のお話。「想い出は彼らのものじゃない。だから全部取り返すんです」ここ好きです。決意を胸にしてかっこいいですね。とてもおもしろかったです。
 これからも好きなものをたくさん書いて楽しく創作をしていってください。

謎の女子高生:
 災害により「記憶が焼き付いた」町の記録を取る女性と、仲の良かった男の子の記憶の話。ある町に訪れた「海月」が土地に記録を焼き付け、焼き付けられた記憶はそれまでの24時間をループするという、不可思議な現象を描くSF小説。その日の記憶を辿り見つける仕事という、変わった職業もの小説としても読める作品で、記憶自身が一種の自我を持ってその日を繰り返しているという設定も面白く、非常に興味深く読ませていただきました。
 設定やプロットが少々難解で、掴むのに少し時間がかかるところはありましたが、構成など非常に凝った作品で、1万字のレンジとしては非常に贅沢な作品であると感じました。
「私」のキャラクターや銀塩カメラの設定なども非常に好みで、空気感の良い素晴らしい作品でした。

87:火星の天体観測/ものういうつろ

謎の有袋類:
 告白する前から諦めている恋のお話でした。
 近未来的な世界で、学校に忍び込むところから始まり、回想シーンのように妃華莉と仲良くなる課程が描かれていてよかったです。初恋は叶わないもの……。切ないけど前向きなラストでよかったです。
 地球の話だと思っていたら火星だったのところは、もし驚かせたい場合はもう少し「驚くところですよ!」というアピールをしてもよさそうかなと思いました。唐突に出てきて唐突に種明かしをするよりは、冒頭でも「火星が地球に近付いてくる」と言わせてみたり、違和感を散りばめておくと気持ちの良いどんでん返しに繋がるのかも知れません。
 ここは地球ではないですよ! という発想や、世界観、近未来だけれどどこかアナログなところが残っている世界に妃華莉というキャラクター、サブキャラクターの恋多き男である殉至くん、そして帰郷という地球に帰る言い回しなど素敵な要素がたくさん詰まっている作品でした。僕は殉至君が好きでした。
 どんでん返し、本当に難しいですし、ダメというわけではなく読者を気持ちよく裏切ると更によくなるかもしれないというだけなのでたくさん試したりこういう全講評企画を利用してたくさん試行錯誤を重ねて好きなアドバイスなり指摘を受け取ってくれたらなと思います。
 発想はめちゃくちゃに好きですし、そういうことかー! にはちゃんとなったのでどんでん返しには成功はしてると思います。
 これからもたくさん色々な話を書いて欲しいなと思います。

謎の果実猫:
 恋人にならず友達になった話。
 火星に住んでいると明かされるのが遅かったのでもっと早くてもいいかもしれません。読者を驚かせるのが目的だったらもっと前半にほのめかしや伏線をしておいてからのほうが読後感がスッキリすると思います。さらっと明かされてしまっていたのでそこが気になりました。
 近未来のお話かと思いきや、もっと未来のお話でなんと火星に住んでいた主人公たち。帰郷は火星から地球へ戻ることを言うようで、それもすべての層の人間たちが行えることではなく…というのが格差を感じてリアルでよかったです。キャラクターの名前の漢字が独特でおもしろいですね。父親の恋人の話で相談してほしかったんだというところも子供としてのリアルな心情の吐露という感じでよかったです。
 とてもおもしろかったです。発想がとてもよかったです!

謎の女子高生:
 学校に忍び込んで天体観測をしようと企てる少年少女の話。短い期間での「帰郷」が決まっている転校生の少女との、一夏の思い出の物語。思春期の初恋を描く青春SF小説で、非常に爽やかな読み心地の作品でした。天体観測の切っ掛けが「火星の接近」であることが明かされて以降、実は物語は火星での話だったという叙述トリックの種明かしも面白いところでした。
 設定については、プロットや書きたいシーンのために少し無理をしているところがあるようにお見受けします。また叙述トリックのためにあまり細かく設定を明かせず、伏線が張れない状況だったのでは?とも感じました。サプライズ自体は面白い要素ですが、なぜこのサプライズを行ったのか、という点は読者に開示不足で、恐らく「簡単には会えず、連絡もできない状況になる」ということをどこかで仄めかす必要があったと思います。
 しかし一本の小説として見れば、離ればなれになる少年少女の短く大切な一時の青春を描く物語として、非常に面白く読ませていただきました。

88:光彩を求めて/はな

謎の有袋類:
 はじめましての方です。参加ありがとうございます。
 二人の若い俳優さんのBLでした。
 僕はBLをあまり嗜まないので、見当違いなことを言ってしまったらすみません。
 背の高い彩音くんは、かなり距離が近い男で背が低くて綺麗な光輝くんはそんな彩音くんに片想いをしていて……と思いきや、実は両片想いだった! という甘酸っぱい感じのお話でした。
 二人はおそらく二十代前半だと思うのですが「同性愛は異常だ」と強く思うには令和の世だとそれなりの背景が合った方が説得力が出る気がします。同性愛に葛藤する場合は何か強いトラウマ的なことが光輝くんにあるか、時代を昭和くらいにするとキャラクターに更なる奥行きが生まれるような気がします。
 キャラクター立ちや、感情の繊細な動き、甘い感じなどBLが好きな人が読むと多分キュンするのだろうなという点はかなり多かったので、BL好きな人向けにはこれでいいのかもしれない……。
 どこまでをターゲットにするかによってキャラクターの感情や価値観の動機づけや時代背景などを考えていくと更に最強の萌えるBL小説になると思います。
 既にたくさんカクヨムでも作品を書いている作者さんのようなので今後も楽しく創作を続けて欲しいなと思いました。

謎の果実猫:
 素直になれない男と素直な男の恋慕の話。
 濃厚なBLでしたね。読んでて顔が真っ赤になるくらい濃厚なBLでしたねこれは…!!! 
 キャラクター名にルビが複数回振ってくれてるのが親切で良かったです。地味な部分ですがとても助かります。
 何度も甘い香りについて書いていらっしゃいますが、魅力的なフェロモン的な解釈でいいんでしょうか。それから光輝には素直になれない深い理由があったのかな? そのあたりの説明が欲しかったです。
 自分の気持ちに素直になれない光輝と、距離感近めのノンケの彩音…と思いきや彩音は自分の気持ちを認めていて自覚のある両片思いの二人だったわけですね。いいですね~。
 とても甘酸っぱい気持ちになれるいいお話でした。これからも好きなものを書いて楽しく創作をしていってください。

謎の女子高生:
 うーん、えっち。舞台俳優二人の身長差BL。男性愛に自認的でない小柄男子と、同性であることを強かに利用して近い距離にいたがる長身男子がお互いの存在の大切さや恋心を認め合うストーリー。俳優としての憧れや嫉妬を孕みつつ、舞台上のプロとしてではなく男性として彼に向き合いたいと願う様は、恋愛小説の帰結として純粋であり、美しいと感じました。男性二人のキャラクターも良く、なんとなく大型犬・小型犬を連想して可愛らしかったです。
 光輝が言う「甘い香り」「彩音の光」の表現については少し食い合わせが悪いでしょうか。彩音へ向き合う際のエッセンスでしたが、視覚と嗅覚で別々の感覚器ですので、比喩であったとしても対比的な揃え方(例えば、柔らかい光/目が眩む光、などのような揃え方)をするとより感覚が伝わりやすくなるかも知れません。
 ですが総じて、全体のテンポもプロットのまとまりも良い、読んでいて甘くなる良いBL小説でした。ありがとうございます。

89:やがて光になる者/灰崎千尋

謎の有袋類:
 感光を書いてくれた灰崎さんの二作目です。
 ダークファンタジー、本当にダークだった! 何重もの意味でダークなのはとても良いですね。
 まだ希望を抱いていた鉱夫が徐々に色々なことに疑惑を覚え、そして消えてしまうお話でした。
 トーバが黒幕なことはもう少し仄めかしても良いかも? とは思うのですが、十分面白かったし意外性のあるラストでめちゃくちゃによかったです。
 あと灰崎さんといえばご飯エッセイ! と勝手に思っているのですが、作中の料理もすごく美味しそうでよかったです。架空の食べ物だとは思うのですが袋兎も、尾巻鴨も美味しそう……。灰崎さんのファンタジーを読むのは毎回楽しみなのですがこういう異国情緒も感じさせつつ美味しさのわかる飯テロが読めるからというのも大きいです。
 話の規模はすっきり1万字サイズに収まっていて読後感も「そうだったのかー」となる良い終わり方でした。ロッソも良い味を出している……。
 これからも色々な作品を楽しみにしています。

謎の果実猫:
 鉱夫ニフの話。
 灰崎さんの書く食事シーンは美味しそうですね~!!! おなかがすいてきました~~~!!! 宿での食事シーンよかったです!!!
 ダークファンタジー!!! こういうのも書けるんですね~!!! 作品の幅があってすごい!!! こういうの大好き!!! 坑道で鉱石をツルハシで割るシーン、とてもよかったです。映像が目に浮かぶようでした。
 希望を抱いて働いていたニフが街の人間たちと関わって疑念を抱いて希望を失い最後には自分が消えてしまう側に…。
 疑念を抱いたニフを消すために不定形の化け物を間接的に操っていたのは坑道の持ち主であるトーバだったのでしょうか? トーバが黒幕なら前半にもう少しほのめかしなどあったほうがよかったかもしれません。
 失明しかかっているニフの前に、不定形の化け物が出てきてニフを吐瀉物で絡めて極光石にしてしまった時、最高に盛り上がりました!!! 
 9000文字以内でまとめられていて読みやすく、とてもおもしろかったです!

謎の女子高生:
 割ると眩しく輝く鉱石と、その炭鉱で働く青年の話。割の良い条件で鉱父として働ける採掘場で、理想的な生活を手に入れたと思っていたが、どうやら炭鉱には不穏な秘密があって……という、ファンタジーサスペンス。話が進むに連れて緊張感の増していく構成がとても良い。街の生活のリアリティや設定など、息づいた世界が描かれているのも非常に好きでした。また料理エッセイを書かれている灰崎さんらしく、料理の描写がとても美味しそうで素晴らしかったです。袋兎の丸太焼き、食べてみたすぎ。
 様々なことが多角的に想像でき、書きすぎないところがこの小説の良さなのですが、トーバのキャラクターや過去はもう少し仄めかしても良かったかな?という気はしました。しっかり書いても野暮になるので塩梅の難しいところですが、何か台詞を一つ足すだけでも色々と想像できるようになりそうです。
 鉱石の正体や、その秘密に触れてしまった末路などの描き方も良く、大変楽しめました。ファンタジーとしての手触りも良く、とても好きな作品です

90:あなたは私の光そのものでした。/れー。

謎の有袋類:
 第五回振りの参加です。参加ありがとうございます。
 勇者とその従者のお話。
 不遇なんらか×超強い勇者、めちゃいいですね! 光の勇者がなんかめっちゃいいやつなのがすごくよかったです。
 めっちゃよかったのですが、最後が僕は読み取れなかったです。
 黒の従者は女性だと思っていたのですが、そこまでは合っていて融合?してしまったときに姿を失ってしまったのでしょうか?
 どんでん返しや驚かせるような展開は情報量の調整が難しいですよね。
 作者の方がどうしても情報を持っているから、ついつい最低限の描写だけにしてしまうと思うのですが、多分「答えでーす」って全部書くつもりでちょうど良かったりするので試してみて欲しいなと思います。
 文字数が増えないことにも悩んでいたれー。さんなのですが、お話のアイディアや魅力的なキャラクター作りは出来ているのであとは「なるべくリアルタイム描写してみる」をしてみると字数は増えていくんじゃないかなと思います。
 まだまだ色々書けると思うれー。さん、全裸になって好きなことをガンガン書いて行きましょう!!!!

謎の果実猫:
 終わった話を淡々と。
 すごくおもしろかったです~~~!!! 淡々とした語り口で進んでいくお話ですが描写が素晴らしいです。
 どういった視点なのかな?と不思議に思っていたのですが「君とひとつになりたい」のくだりでなるほど!となりました。これは淡々としていても仕方ない! 臨場感や人間らしさが薄く感じても不思議ではないですね~~~!
 「私の漆黒の髪と瞳が周囲の魔力を無差別に吸い上げ続ける性質の現れであるとのちに判明した時」この設定とても好きです!
 2話目の最後のシーンがどうしてそうなったのかがよくわからなかったです。作者と読者では情報量に差があるので、読者に説明はし過ぎなくらいがちょうどいいと思います。
 とてもおもしろかったです。発想がとてもよかったです。キャラクターたちも魅力的で、素敵なお話でした。ぜひこれからも好きなものを書いて楽しく創作をしていってください。応援しています。

謎の女子高生:
 勇者の従者だった者が、勇者との旅路を振り返る独白小説。勇者がいかに素晴らしい人物であったかを語る従者の正体が最後、二人の気持ちが通じ合ったと思った時に詳らかになる……という構成のファンタジー作品。従者の勇者に対する熱烈な気持ちが伝わるのも、結末のための布石を積むような組み立てで、読んでいてじわじわと嫌な感じがまとわりついてくるような読み味が魅力的だったと思います。
 そういった読み味なので、少し読者を選ぶ作品ではあるかも知れませんが、いっそ振り切ってもっとダークな方向に描写を寄せていくのもありかも、と思いました。
 ダークな雰囲気のファンタジー作品としてとても良く楽しめました。勇者側の視点で書いても面白そうな、定点観測的な作風も好きな方向性でした。

91:ほのぐらい街灯の下で/虚数クマー

謎の有袋類:
 はじめましての方です。参加ありがとうございます。
 学生時代の光の中の様な日々。すごくおもしろくて、他の人は道を照らすような光なんですけどこの作品の光は眩くて他の道が見えない、他の選択肢が見えないのがよかったです。
 特に何か起こることも無く、楽しいかもわからないけれど茶番を行っている相手と日々を過ごして終わる作品だからこそ「光る日々」が際立つのかなとは思ったので作者さんの狙い通りだとは思うのですが、この状態の二人が欲を言うのなら何か二人が経験をして少し変化をしてくれたら嬉しいなと思いました。
 宮島の乱暴な口調は破天荒な行動と、ちょっと陰キャ気味な「僕」の組み合わせが新鮮で面白く、多分そのうちに終わってしまう刹那的な光というお題の回収がとても良い作品でした。
 カクヨムにはまだ作品が少ない作者さんなのですが、これからも色々な作品を楽しく描いてくれたらいいなと思います。

謎の果実猫:
 無愛想で口の悪い宮島という女の子と僕の、不良友達の話。。
 「そっちの世界は輝いてて楽しいんだろう。でも、案外こっちも負けてない。」というところ、とても好きです! 目の前に光がある見えているではなくここが光なんだという感じがしてとてもよかったです。
 特に何もなく楽しく終わるのですが、欲を言えばなにかトラブルや盛り上がりのようなものがあったらもっとよかったと思います。
 何気ない日常それそのものが光なんだというメッセージ性のある作品ですね。
「この光る日々が、ずっと続きますように。」この二人の楽しさが欠けることなく続きますようにと願わずにはいられません。
 とてもよかったです。楽しいお話をありがとうございました。

謎の女子高生:
 クラスのはみ出し者と口の悪い転校生の交流の話。クラスに居場所のない二人が、お互いに深入りしない関係を続けることを手探りで確認し合うような会話劇。先行きの見えない若さ故の逃避を描く作品だと感じました。主人公がいまの関係を大事にしたい、このままでいたいという思いがひしひしと伝わってくる、良い青春小説でした。
 タイトルの「街灯」が作中で現れていないことは意図したものだったのか、この点はよく分かりませんでした。ほのぐらいイメージとしてモチーフだとしても、作中の比喩に使えばぐっと引き締まるのではないかと思います。
 大人でも子供でもない時期を過ごす少年たちの生きづらさと、それを照らす光についてがよく描かれた、良い作品だったと思います。

92:人類滅亡アンケートと、祈られ女の存在ショウメイ/葉月氷菓

謎の有袋類:
 はじめましての方です。参加ありがとうございます。
 人類滅亡アンケートから始まる何をしてもダメな主人公の少し前を向けるお話でした。
 なんでも出来ると思っていた友達が実は悩んでいたというのもよかったですし、人類滅亡アンケートで選ばれたのは自分では無くて友達だったというのも好きです。
 主人公がとにかくダメでヤバくて嫌なやつなので、うわー! ヤバい! と思いながら楽しく読みました。自分でキレたけどちゃんと正論を自分に返しているところが可愛い。
 作品を読んだ人にどう思われたいのかによるのですが、主人公を嫌って欲しい場合はもっと尖らせてもいいのかなと思いましたし、主人公に共感して欲しい場合はもう少し性格を丸くしてもいいのかも?
 ユニークなアイディアとどんでん返し、どんでん返しの後のうまくいかない絵をちょっと再開して、友達からいいねがついてうれしかったという素朴なところに着地する読み口はすごく好きでした。あと、UFOのデザインはやばそうなのに宇宙人のデザインは少し親しみやすいのも好きです。
 アイディアも構成もすごくよかったです。カクヨムに置いてある作品数は少ないのですが、これからもたくさん創作を楽しんで欲しいなと思います。

謎の果実猫:
 就活に失敗し続けている女と宇宙人の話。
 主人公ヒカリについてですが、嫌な女として見せたいのか読者に共感させたいのかによってはどちらかに振り切ってしまったほうがいいかもしれません。
 何をしても裏目に出てダメな女であるヒカリと人類滅亡アンケートの組み合わせで人類滅亡の危機!のハラハラ感、よかったです。選ばれたと思ったら実は選ばれたのは旭姫の方でヒカリは宇宙人からも不採用通知をもらうというところが突き抜けていてよかったですね。
 「落とされる時に真東にスカイツリー見えたから、たぶん高尾山な気がする。コース外れてるけど登山口もすぐだと思う」「えっ。方向感覚すごいね」意外な特技ですね!これはなにげにすごいなと思いました。ここ好きです。
 とてもおもしろかったです。楽しく読ませてもらいました。

謎の女子高生:
 百合だ!!!!ありがとうございます。大変素敵でした。人類滅亡アンケートに答えた就活生の主人公が、宇宙人に連れ去られそうになった幼馴染みを助ける話。宇宙人からのアンケートに答えた自分を迎えに来ていたと思っていた宇宙人は、実は隣の幼馴染みを迎えにきていて…というストーリー。宇宙人の設定や二人の関係がとても良かったです。何をやってもダメであることに自覚的で腐っているヒカリと、自分にはないものを持っている旭姫への小さい嫉妬と羨望。「人類を滅ぼすのは私だ!」の台詞が好きでした。
 主人公のキャラクターはおそらく好き嫌い分かれるだろうな、という所でしたが、この主人公でなければ逆に旭姫の隣に立てていないし、助けられてもいなかっただろうということを思うと、やはり良いキャラクターだなと感じます。
 二人の帰り道のシーンがとても好きで、終わり方も希望の持てる感じで良かったと思います。ありがとうございました。

93:星の砂漠で狼と/鍋島小骨

謎の有袋類:
 さいこーーーーーーーーーーーー!!!!!!!魂のシスター、鍋島さんです。
 えーーーーー? 最高ーーーー!鍋島さんのいつもの定食!染み渡る……不遇少女の不遇っぷりが最高だし、誰かに支配をされている男の良さよ……拷問されてるところでブチ切れてその後娘を労るのも良いし、娘を庇って死ぬ覚悟だったのも良いーーーーー! 文字数が足りませんでしたね? ふふ……。これはじっくり二万とか三万字で読みたかった気持ちもあります!
 月の女神がいい感じに何かをして呪いが解けたシルファとヨンが旅をしているのもとても良い……。ヨンは不老的な感じなのですかね?など気になるところもあるのでこむら川が終わったら加筆などしてくれたり、後語りをして欲しいです。
 うわーーーーよかったーーーー!シルファ好き……。
 いつもの定食でゴリラを暴れて五億点ではないのですが、魂のシスターのバトンを受け取りました。ありがとうございます。最高。うわーーーーー!

謎の果実猫:
 月の巫女と狼男の話。
 めちゃめちゃよかった~~~~!!!! ヨンが死ななくてよかったし、シルファの呪いや支配が解けてヨンと幸せになれてよかった~~~!!!! もうずっとハラハラしっぱなしでした!!! ヨンの幸せな人生はこれから始まるんですね~!という終わり方ですごくよかったです! 
 ヨンが拷問の末でも生きていた理由はなんだったのでしょう? そのあたりが読みたかった気持ちもあります。
 でもそんなことは些細なこと! 不遇な少女ヨンと呪われた狼男シルファの魅力に完全にやられてしまいました。長編化や中編化したりなんてしないかしら…チラッチラッ…! 後書きや設定語りなども聞けたらいいなと思います…!!! 俄然希望!
 確かな筆致と豊かな表現力で彩られた素敵なお話でした。大好きです!!!
 とてもおもしろかったです! 最高のお話をありがとうございました!

謎の女子高生:
 月の巫女と、彼女を攫おうとする狼男の物語。国政を左右する神託を受ける巫女にも関わらず奴隷のように扱われていたヨンが、森の中で焚き火の席をくれた狼男に一縷の救いを見出し、また狼男もそれを救いたいと願い行動する、ハードなファンタジー作品。非常に読み応えがあり、素晴らしい作品でした。巫女と狼男の逆境が、しかし一夜の焚き火を辿るように運命的に行き会うという構図が美しく、見入ってしまいました。エピソード「夢の月」の幻想的な感じも大好きです。
 月の巫女の処遇が奴隷的であるという点は、月の巫女の重要さや貴重さを国の中枢が理解できないとは思えなかったので、少し展開ありきの設定だったのかな?と思うところでした。
 一万字足らずで見事な世界観を描き出す、重厚な世界観と緻密なプロットワークが光る作品でした。美しいラストシーンもとても好きでした。

94:私はあなたが好き、あなたも私が好き/クニシマ

謎の有袋類:
 前回は待つ痛みと海のない生活を書いてくれたクニシマさんです。参加ありがとうございます。
 作中の「あなた」が「ひーちゃん」という人についての思い出を話しているお話でした。それだけ好きな相手はどうなってしまったんでしょう。
 ひーちゃんとの思い出をぽつぽつと話すのと、おそらく「あなた」
と親しい間柄の「私」がどういう気持ちで聞いていたのか想像の余地がたくさんある作品でした。
 僕は純文学的な素養がないのでずっと「ここで家に帰ったらひーちゃんの死体があったりしないかな」とハラハラしながら読んでいましたが、そういうことがなくてよかったです。
 あなたとわたしの関係性に色々な想像の余地が出来る不思議な作品でした。これはどういう感じの関係性で、どんな気持ちで主人公がいたのか僕には想像が出来ないので解説などがあったら是非読みたいなと思いました。
 参加ありがとうございます! これからも好きな作品をたくさん書いていってください。

謎の果実猫:
 ひいちゃんと「あなた」の話を、「私」が聞いている話。
 優しく話しかける語り口のお話。新生活の合間に「あなた」が話すひいちゃんの話を「私」が聞いている不思議な雰囲気のお話です。
 ひいちゃんはどうしてしまったのでしょうか? どうして「あなた」は泣いていたのでしょうか? そのあたりがもう少し読みたかったです。
 「あなた」はどんな人で「私」との新生活を始めたのでしょうか。
 「あなた」の一人称がわたしなので「私」と混乱してしまい、しっかり読み込めていないかもしれません。すみません。私達は二人共女性だったのでしょうか…?
 天井に貼ったシールが剥がれて落ちてきた時、流れ星だねと言ったひいちゃんのシーンがとてもよかったです。とても素敵な表現です。
 不思議な味わいのお話でした。解説などがあったらぜひ読みたいと思いました。

謎の女子高生:
 同棲を始めた日の私と「あなた」の話。「あなた」が幼い頃の恋を思い出し、私がそれを聞く、少し苦みを伴う恋の終わりの物語。こちら百合作品ですね。誠にありがとうございます。
「ややこしいことをあしらう」のが得意な親友に、伝わってしまった想いを蔑ろにされたことを感じり終わった恋の話。それを今の恋人に話すも、恋人はあしらうでもなぐさめるでもなく、ただそういうものだと告げる。
「あなた」が涙を流した理由を少し探していたのですが、あるいは「私」の「そういうものですよ」という言葉は、「私」の経験にもあったことと、諦めてしまった何かの帰結から出たものなのかな、と思いました。それを思い出させてしまったことを「あなた」が過敏に感じ取り、柔らかな傷を付け合ったことが涙になったのだろうと。
 ちょっと想像が過ぎますね。すみません。考えれば考えるほど考えたいことがたくさんでてくるお話でした。
 いまの「私」と「あなた」の関係を明示していないところが好みではありましたが、ここは説明しないと分からない方もいるかな、と少し思うところではありました。
 タイトルは今の二人にも過去の回想にもかかっているが、その意味が少しだけ違う、けれどそれをあえて言葉で残しているような関係の脆さを感じ、とても美しかったです。
 すごく好きな作品でした。

95:今でも姉は私の光(物理)/志波 煌汰

謎の有袋類:
 はじめましての方です。ご参加ありがとうございます。
 姉が光になったお話でした。人間が光になる話は参加作品中に幾つかあるのですが光が人の形になって留まっているのはまだ一つ!
 これは完全にこういう企画と相性が悪かったのですが光になった人間やぺかぺか光る人間の出てくる作品などを山盛り読んだあとだと前半のくだりが少しだけ長いかな? となってしまうかもしれません。もう少しロケットスタートで読んでいる人の脳を殴るパワープレイでも短編はいいかも! でもこれは連続で作品を読んでいる感想なので一作だけ読むと、この状態がちょうどいい可能性もあるのであまり気にしなくてもいいかもしれません。
 姉を閉じ込めるエンドはめちゃくちゃによかったですーーー!姉へのクソデカ感情……最高。僕は百合を嗜まないのですが、姉妹間の大きな感情はとても素敵なものですね。なんでもできて人のために動いて自己保身も考えない姉がずっと目の中にいる……すごく良い。姉がいるのなら、世界なんていらないという対比が美しいですね。
 設定もおもしろく、文章も軽快で読みやすいですし、妹の姉への執着の描き方も非常に巧みでした。
 なんとなく短編が多い作者さんなのかなと思うのですが、こういうじっとりとして執着が強い系の感情の話を中長編で書いてもめちゃくちゃに強そうなのでそういうチャレンジもして欲しいなと思います。

謎の果実猫:
 光になった姉と偏執的な妹の話。
 前半と後半の対比がすごくよかったです。前半では光になった姉が活躍して人々を助けて回る光輝くようなお話が展開され、後半では偏執的な妹の愛情が光になった姉へと注がれるお話でした。特に後半のじっとりとした湿度の高い大きく重い愛情がたまらなかったです。姉妹間での感情のやり取り、とってもいいですね~~~!!!
 前半と後半のバランス的に後半のボリュームが少し足りないように思いました。前半部分にほのめかしや伏線を散りばめておいても読後感がスッキリするかもしれません。
 7000文字台で読みやすくよくまとまっていて、ところどころユニークでおもしろく、楽しいお話でした。今後も好きなものを詰め込んだ創作をしていってください。とてもおもしろかったです!

謎の女子高生:
 姉妹百合小説だ! こちら大好物です。誠に感謝しております。光(物理)になってしまった姉と、妹の話。物理的に光になってしまった姉は、自分が生物的に意思を持った光であることを人々のために役立てようとするが、時が経つにつれて拡散し小さくなっていく姉をどうにか消えないようにと奮闘する妹のハートフルストーリー。
 最後の急展開はドキドキしながら読んでいました。これだから百合はやめられませんね。クソデカ感情最高。またタイトルが完全にラスト以降の状況を表しているというのも、なかなかヒリヒリするところで良かったです。
 従って、最後の急転直下が苦手な人は苦手かも知れません。結構前向きな話で進行していたと思うので、思わず「うわー!」と言ってしまいそうなところではあります。
 とはいえ話の展開も最後の展開も百合としての展開も設定も非常に好みで、大変楽しませていただきました・ありがとうございます。

96:ねぇ、遊ぼっか。/沈丁花

謎の有袋類:
 弟を看取るを書いてくれた沈丁花さんの二作目です。
 ひかる姉ちゃんとの思い出の話。
 最初から妖しさMAXのひかる姉ちゃん、実物が化けた系か、それとも怪異か? とドキドキしながら読み進めました。
 伝染する系の怪異の方かー! 最初手紙だったのも、多分手紙で感染する系の怪異だからですね。
 オチを最初に戻したいのはめちゃくちゃにわかるのですが、明仁がひかる姉ちゃんとの思い出を作れないのは可哀想なのでいっそのことひかる姉ちゃんとの思い出が混線してきてひかる姉ちゃんから声をかけられるラスト→別ページで手紙が届いたと他の人がいうみたいな終わり方でも怖いのかも?
 ホラーは本当に塩梅が難しいので、色々な人の反応を見て好きな塩梅を決めていきましょう!
 講評だからあえてこうかも? と言っただけで、このままでも構造としては怖くて気持ち悪いので大好きです。
 ひかる姉ちゃんが本当の姉ちゃんなのか、怪異なのかわからないけど良くないものだという気配がずっとしているのがめちゃくちゃに良くて綺麗な女なのにずっと不気味なのもよかったです。
 もう既にお話作りが上手なので、これからもガンガン好きなものを書いていってどんどん体力を付けていきましょう!体力を付けて中長編を書ければもっともっと付く良くなれると思うので!

謎の果実猫:
 ひかる姉ちゃんの話。
 ゾワゾワと鳥肌が立ちました! 最後まで読んだらすごく怖かった! 始めは親戚のお姉さんの話かな~?と思って読んでいたのですが、見事に裏切られました。これは良い裏切りですね! 
 終わりから冒頭に繋げたい気持ちはわかるのですが明仁が手紙を受け取ってから手紙を書くまで駆け足すぎるかもしれません。
 前半の文章は子供が書いているような砕けた口調でミスリードを誘っていてとてもよかったです。
 発想やアイディアはとてもよくお話作りもうまいので、これからも好きなものを詰め込んで楽しく創作をしていってください。とてもよいホラーでした。こわかったです!

謎の女子高生:
 遊んでくれる姉の話。友人から手紙が届いたところから始まる、読むほどに怖さの増す、背筋のぞっとするホラー作品。失踪した友人から届いた友人からの手紙には姉との思い出が綴られているが、その姉というのは……。という組み立ての物語。読めば読むだけ恐ろしく、もしかして手紙によって怪異が伝播しているのか、なにか別のことが発生しているのか、色々と考えられる謎も多く、大変楽しませていただきました。
 光のテーマについては、拾い方が姉の名前だけになっているのが少し惜しい気はします。もうひと設定くらい噛ませてもよかったかも知れませんが、シンプルで怖い読み味が魅力的な作品ですので、ごちゃごちゃさせるのは痛し痒しというところ。
 ホラーとしておもしろく、怖く、大変素晴らしい作品でした。

97:光刃剣 邪獣斬り/木船田ヒロマル

謎の有袋類:
 時代小説かと思ったら違った!というわけでヒロマルさんも参加してくれました。ありがとうございます。
 よかったけど! よかったんだけど! ここ数回毎回同じことを言っている気がする! 半分くらいまで読んでて「字数足りるかな」と思ったら足りなかった!
 後半がめちゃくちゃに駆け足だったので、字数とあった舞台設定と展開の配分をきっちり考えて書くと良いと思います!
 決着はどうなったんだ――俺たちの冒険はこれからだエンドではなく、きっちり盛り上がってエピローグまで書ける作者さんだと思っているので、賑やかし要員としての認識では無くテッペンを取ってやるぞ! の気持ちで来てくれると僕は嬉しいです!
 せっかく良いキャラと良い設定なのに中途半端に終わったり、駆け足になって「!?」となるのは切ないので! 戈門さんのキャラも謎の女であるクルナとダグのコンビもよかったです。
 ヒロマルさんは元々の力が高いですし、書き上げる力は十分だと思っているので、次回こそはカッチリとかっこよく着地をしてくれるといいなと思います!

謎の果実猫:
 時代小説かと思いきや、化け物を異星人と協力して倒す話。
 すごくおもしろかった~~~!!! それからルビがマジでありがたかったです! 本当に助かります!
 前半の時代小説の部分のボリュームに比べて後半がちょっと駆け足気味かな?と思いました。もっと早く事件を起こしてもよかったかもしれません。と思ったのですが最後がいくらなんでも駆け足すぎる~!!! 最後のシーン、文字数足りなかったでしょ!!!
 化け物の体液が酸だったり卵を寄生させたり人間を大量に殺戮するところはこれこれ~!!!という感じで大好きです!!! もっと欲しかったですね。ここらへんのお話! 決着に関してもしっかりと終わらせて欲しかったです。欲しかったと言ってばかりで申し訳ありませんが、ヒロマルさんにならできる実力や技術は備わっているはずです。もったいないです。
 これからも好きなものをたくさん書いて楽しく創作をしていってください。応援しています。

謎の女子高生:
 藩の問題事を解決する役職を持つ主人公が、ある村の失踪事件を追う剣客ファンタジーSF時代劇。領内の村で住民からの連絡が途絶え、調査に向かうと「異国」の女と出会い、協力して化け物退治をすることになる物語。時代劇としても小説としても完成度が高く、読んでいてぐいぐい と引き込まれました。キャラクターや設定なども素晴らしく、ストレートに面白いエンタメ小説に仕上がっています。
 なので言わせていただきますが、ここで終わらすのはさすがに罪深すぎですよヒロマルさん…! 続きを所望します。こっそり教えてくれるとかでも大丈夫です。オチのブツ切り感が規定文字数によるものであれば、続きが存在するのでは…?という希望的観測です。
 光のテーマに対する回答も良かったので、素直に最後まで読みたいと思える良い作品でした。よろしくお願いします。

98:星の後先/柏望

謎の有袋類:
 前回はエブリナイト・ノッキングハンマーで参加してくれた柏望さんです。参加ありがとうございます。
 バレエには詳しくないので完全に雰囲気で読んでいるのですが、多分一番すごい人がエトワールなんだなというのだけわかりました。
 先輩エトワールの影を追い続ける主人公が、先輩の説得に成功したお話。めっちゃよかったです。
 最後、断るんだろうなと思ったらまさかの復帰を決定していてびっくりしました。ハッピーエンドだー! めちゃよかったです。
 多分、字数を削ったり、ちょっと苦労したのではないでしょうか? 後半が駆け足気味になっていた印象なのですが、多分後半の説得シーンが一番読んでいる人に何かを伝えたいところだと思うので字数をもっと割けるように調整するともっとわかりやすいかもしれません。
 バレエを全然知らなくても、なんとなく何をしているのかわかったり、群舞の描写は綺麗ですごくおもしろかったです。海外遠征が多い様子なども描かれていてバレエがわからない人にもどういうことをしていて、何故、主人公が先輩のことを特別に思うのか説明されていて親切だなと思いました。
 描写力はばっちりですし、キャラクターの魅力もばっちりです。字数との戦いに勝って最強の短編を目指していきましょう!

謎の果実猫:
 あるバレリーナたちの話。
 バレエ用語がわからないものが多かったです。ググりながら読みましたが詳しくないので読み込めていなかったらすみません。
 最高位のダンサーであるエトワールの影を追い駆け続けるバレリーナが、引退するというエトワールを説得するのですがダンスによって説得するところがよかったです。
 説得のくだりは少し駆け足だったかもしれません。
 先輩は引退をとりやめてハッピーエンドなのもよかったです。途中、産休を思い返すくだりで主人公が不穏になるところは少し怖かったですね。
 描写が緻密で美しく、魅力的なキャラクターたちが素敵でとてもよかったです。
 文字数とうまく付き合って創作に励んでください。応援しています。

謎の女子高生:
 おや、こんなところにも百合小説が……ありがとうございます。バレエ団の今のエトワールである主人公と、かつてエトワールだった女性の再会を描く物語。出産を経た元エトワールに、主人公と演出家がバレエ団に戻ってくるように説得を試みる物語。元エトワールからバレエを通じて受け取ったもの、それに対する現エトワールとしてのアンサー、バレエを通しての苦悩などが伝わってくる、美しさと力強さのある作品でした。
 心を通わせることやバレエ団の苦しさがよく表現されている一方、少し描写の密度感が高い印象を受けました。読みにくいわけではないのですが、物語の全体に対して受け取る情報が多いと感じますので、もう少し軽い読み味を意識してみても良いかも知れません。
 主人公の元エトワールへの崇拝とも呼べるほどの憧れがありありと表現されていて、クソデカ感情の百合作品としても非常に楽しめました。ありがとうございます。

99:溶けゆく光/雪屋 梛木(ゆきやなぎ)

謎の有袋類:
 第五回振りの参加!参加ありがとうございます。
 なんで岩場で楽しく遊んでるんだろう? と思ったらそういうことかー! 人魚的な人たちが観光に来ていたんですね。すごい!
 海に削られていく島に住む主人公と、海水浴監視員の女性であるスグリのお話。
 人魚ならライフセーバーもいらないと思うので、人間用の監視員なんでしょうか?  せっかくなのでその辺の説明も入れてくれるとより世界観に奥行きが出て更に作品を楽しめるのかなと思いました。
 島守である主人公は、スグリの誘いも断って最後まで島に残るつもりなのがすごくよかったです。最後の灯台からイギリスに向けて光を届けるのもめちゃ良いーーー! ドライな文体なんですけど、ロマンティックな展開の時にはカチッとキマっていてめちゃくちゃよかったです。
 いつもよりもなんとなく作風がちがっていて、新たな可能性を見た気分です!
 これからもたくさん作品を書いていって欲しいなと思います。

謎の果実猫:
 人魚の島に一人住む人間の島守と人魚のスグリの話。
 おもしろかったです! 見事な裏切りでした~~~!!! 海水浴場は人でごった返しているのにロッカールームには誰もいない違和感! 砂浜代わりの岩場! 崖に囲まれた島! 素晴らしいです! 前半に散りばめられた違和感と後半の裏切りで読後感はスッキリ! 気持ちの良い裏切りににっこりです。人魚の島に一人住む人間の島守のお話でした。 
 文字数に余裕があるので欲を言えば、島守としてのエピソードやスグリや他の人魚とのエピソードをもう少し読みたかったです。
 人魚も浮き輪を使うのですね。可愛いエピソードです。監視員がいるくらいですから羽目を外して危険行為をする人魚もいるのでしょうか? だったらおもしろいですね。そんな想像の余地があっておもしろいです。
 最後のシーンで灯台を照らして「遠い海の向こう、はるかイギリスの海底にまでこの光が届くように、と願って。」というところがとてもよかったです。とてもおもしろかったです!

謎の女子高生:
 海面上昇が続く地球で、削れてなくなっていく島の最後の海水浴場で過ごす男女の話。美しい情景の浮かぶ、ゆったりとした終末へ向かう世界を描く物語。世界の絶望的な状況をなんとか生き延びている人類の姿が二人の会話から想像できる。島がなくなることを分かっている二人、女はイギリスへ帰るが、男は島に残るという、少し悲しい別れが切ないお話でした。
 掌編としてはこれ以上にないくらいまとまっていますので、何か足し引きする必要はないかと思いますが、二人が最後にどう別れたのだろうと、読者として少しだけ気になりました。
 遅くくる絶望と、それでもと希望を探すように灯台の灯りをともす最後のシーンがとても好きな作品でした。

100:不運な熱帯夜のともしび/キトリ

謎の有袋類: 
 はじめましての方です。参加ありがとうございます。
 冷房は壊れ、網戸には穴の空いた不運な夜のお話でした。
 不運の重ね方がうまくてすごくよかったです。これはどうしようもない……。蚊に刺されなければ窓を開けて寝るという選択肢や一樹くんの誘い方からして千明は男性かなーと思ったのですが、どうだろう? どちらにしても知り合って三ヶ月の距離感ってとても良いものですね。この時期にしか得られない栄養素がある……。
 物語の冒頭という印象なので、一回泊まって何か進展があった方が短編小説としてはすっきり読めるのかなと思いました。
 物語の運び方、しっとりとした文体、キャラクターの魅力とかなり高い小説力を持っているのですが、カクヨムには一作しかない……! どこか別の場所で色々描いているとかですかね? 
 これからも創作をたくさんして欲しいなと思いました。

謎の果実猫:
 運の悪いことが続くお話。
 キャプションに性別はご想像にお任せしますとありますが、確定させたほうが読者に親切なように思います。想像がしやすいですからね。私は男性かなと思って読みました。
 真夏にエアコンが壊れた主人公、そのうえ網戸がカラスによって突き破られてしまい…というお話。蚊取り線香が唯一の救い、希望の光!という平和なラストでよかったです。
 カクヨムで書くのは初めてとのことですが、文章はしっかりしていますし描写もわかりやすいです。普段は別の場所で書いていらっしゃる方なのでしょうか?
 これからも好きなものをたくさん書いて楽しく創作をしていってください。

謎の女子高生:
 エアコンと網戸が壊れ、真夏の熱帯夜をやりすごさなくてはならなくなった人の一夜。あまりにも暑すぎる夜の世界で、蚊取り線香や明るい後輩からの連絡に光を見て…というお話。じっとりと暑い、まさに今年の夏の夜を感じさせるような作品でした。暑くどうしようもない夜の苦しさが緻密に描かれており、読んでるだけで背中にじっとりとした汗をかきそうな描写が良かったです。
 事件のあるタイプの話ではないことから、暑い長い夜を体験するような作品だったように思います。もう少しだけ話の展開を作っても面白くなりそうです。
 後輩のキャラクターや、主人公が私物に名前を付けているところなど、人物の描き方も良いポイントでした。夏に相応しい作品だったと思います。

101:君と過ごせば/糸式 瑞希

謎の有袋類:
 はじめましての方です。参加ありがとうございます。
 謎の幼馴染みと十年ぶりに再会して、三人で旅行に行くお話でした。
 何気なく過ごしている日々の描写や、古川と再会してからの水族館の様子など日常の細やかな事柄が描かれていて微笑ましいなと思いました。
 多分、何かをほのめかしてくれているのですが、ちょっと拾いきれなかった気がします。すみません。
 作者と読者では情報量に圧倒的な差があるので、仄めかしたいことや気付いて欲しい部分は「もうこれ全部言っちゃってるかも? 大丈夫かな?」くらい説明してしまってもいいと思います。
 幼い頃の記憶や、古い友人との再会、ちょっと怖い思い出などなど日常を大切にする素敵な作品でした。
 まだカクヨムに三作しかない作者さん。書けば書くほどぐんぐん伸びる時期だと思うので、たくさん書いてたくさん強くなりましょう! 

謎の果実猫:
 不思議な女性・古川と雨宮と僕の話。
 詩的な表現ですね~~~! 雰囲気はバッチリです。
 作者と読者では情報量に差があるので、説明はし過ぎなくらいがちょうどいいかもしれません。
 古川がどういった女性だったのか、なにか霊的な存在のように私は感じました。記憶の隙間に入り込んで幼馴染だったかのように振る舞う不思議な存在なのかな? そのあたりの説明が欲しかったです。
 旅館に泊まって不思議な体験をした過去の思い出と、同じような体験を今回もしたのでしょうか? 最後のシーン「私、ずっとここにいる」とは、古川はここを動けないなんらかの理由があるということでしょうか? 作中で明かされることは少なく想像の余地が大きい作品でした。
 これからもたくさん好きなものを書いて力をつけていってください。応援しています!

謎の女子高生:
 十年ぶりに再会した友人とたちと、昔三家族で連れだって行った旅館まで旅行にいく話。旅館に行ってからは心霊現象のようにものを体験していたが、その正体は結局分からず…という内容。「古川」という女性がその正体で、主人公と雨宮は本来いないはずの古川という存在と再会した、という物語なのかなと読みました。間違ってたらすみません!
 夏の空気感をよく作り出せている、みずみずしい読み味の作品だったと思います。
 一方、全体を通して情報の提示不足は否めず、台詞につけ地の文につけ、雰囲気を重視することが読者への不親切を招いているように思います。もう少し読者のための説明を足すと、より作者の表現したい世界を伝えることに繋がるでしょう。
 主人公たち三人の関係性の描き方や、思い出の振り返りなどの雰囲気を出しつつ、どこか不穏な空気感を出す演出など、光るものがある作品でした。

102:【新番組】仮面バトラーフォワード/秋乃晃

謎の有袋類:
 悪役令嬢とツギハギの魔王を書いてくれた晃さんの二作目です。
 僕は仮面ライダーを履修していないので拾いきれていないことがあったらすみません。
 特撮ものっぽい作品で、お嬢様と、それを狙う悪の組織の対立のお話。第一話のAパートBパートということでタイトルの通り新番組の一話! という感じのお話でした。執事でサッカー? 要素があるのはおもしろい組み合わせだなと思いました。何故サッカー? これは特撮の文脈なのかな? 謎のエネルギーやベルトは「おー! 特撮っぽい」と思いながら楽しく読めました。
 特撮の一話という感じで、導入と説明で終わってしまったのですがパロの範囲だと思うのですが短編小説としてはバトルシーンはあるけど「導入と説明で終わったな……」とちょっとだけ消化不良気味かもしれない。
 短編小説としてはそうなのですが、連載一話としてはおもしろいと思うので、このまま連載を続けてみるのが良いと思います。
 色々なコンテストなどにも精力的に応募している晃さん! これからもたくさんがんばって結果を手に入れて欲しいなと思います。

謎の果実猫:
 怪人から世界を守る第一歩目のお話。
 これを7777文字でまとめたのはすごいですね! とても楽しく読めました。
 仮面バトラーでなぜサッカーだったのでしょう? 組み合わせがおもしろいですね? なにか文脈があるのでしょうか。ゴートさんは可愛いですね。執事なのにヒツジじゃなくてヤギなんだって思いました。 
 バトルは第1話ということでチュートリアルの側面が強かったのかな?という感じでハラハラドキドキ感は薄めでしたね。それがちょっと物足りなかったです。
 物語の第1話目としたらこれで成功しているとは思うのですが、短編としてみるとやはり物足りなさがあるので難しいですね。
 これからも好きなものを詰め込んで楽しく創作をしてください。

謎の女子高生:
 仮面バトラーとなって悪の組織が探している「お嬢様」を守る、いわゆる日朝の特撮番組風の作品。高校卒業後に就職の決まっていた地元企業は仮面バトラーの秘密基地で、主人公はなぜか仮面バトラーとして戦うことを決められており……というお話。4クール作品の1話目を想定した内容なので、なるほどここから始まるんだなと居う組み立てになっている。お嬢様を守るという設定が好きでした。なんでサッカー何だろう?と思いましたが、これ既に仮面バトラー作品が何作もあって、ああ、今回の仮面バトラーがサッカーモチーフなんだと無い記憶をねつ造しました。長い作品の1話目という体なので謎や設定が多いですね。その辺りは少し読んでいて気疲れするところではありましたが、特撮作品特有のワクワク感もありました。一個だけツッコミなんですが、家族にバレちゃいけない決まりなのにベルトを家に送りつけるのはさすがに不用意すぎるのでは…!(でもそういうガバさも日朝っぽい)
 全体を通して作者の書きたいことを書くぞという気概ある作品で、設定など読んでいて非常に楽しかったです。

103:ひかりのうた/志村麦穂

謎の有袋類:
 前回は天使墜落で参加してくれた志村麦穂さんです。参加ありがとうございます。
 ひかりというカリスマアイドルともいえる存在が人工太陽になり、14年間ずっとみんなを照らしている世界のお話をインタビューから読み取っていくような感じの作品でした。
 レイちゃんのお母さんの双子、レイちゃんの伯母さんがインタビュアーなのよかったです。
 一回で登場人物の名前を追い切れないので、レイの伯母であることを少しだけ露骨に描いちゃっても親切かなと思いました。
 それぞれのアイドル達がそれぞれの感情で光を発したり熱を発していてすごくよかったです。インタビュー形式じゃなくて、それぞれの少女達の物語で中編は書けそうなボリュームになりそうなのもゴージャスな登場人物の使い方と言う感じでよかったです。
 アイドルが光る、どこかのオタクの村では熱いネタらしいですね。多くの人が脳を焼かれているコンテンツをネタに出来るフットワークの軽さもすごい。
 これからもたくさん作品を書いて欲しいです!

謎の果実猫:
 世界を光で照らすアイドルの話。
 太陽を失った世界、人工太陽を失い世界は暗闇に閉ざされていた。絶望する人々を救うべく突如現れた発光するアイドルたち…!というお話。世界観がおもしろいですね。物理的に発光するアイドルたちを人工太陽の代わりにする発想はパワーがあります。
 アイドルにインタビューする形でお話が進むため、世界観の説明を出すタイミングが難しかったでしょうがうまく出せていると思いました。欲を言えば冒頭から出せていると想像がしやすいですね。物語がゴールに到達せずに終わってしまうのが若干物足りなさがありますが、想像の余地があるとも言えます。
 個人的にレイちゃんが好きです。様々な思惑をもちセンターを目指して頑張るアイドルたち。ラストはかつてひかりのメンバーだったアオイによってしっとりと締めくくられてとてもよかったです。とても楽しく読ませてもらいました!

謎の女子高生:
 アイドルが人工太陽になる話。アイドルが文字通り太陽になるという世界で、その太陽になるアイドルへのインタビューから、世界観や物語を紐解く構成がおもしろい。アイドルという言葉の起源が「偶像」であることは広く知られるところですが、アイドルという存在が光り輝き太陽になるということがいわゆる「太陽信仰」的な世界観とリンクしているようで、勝手ではありますが、一種の精神世界的なSFの広がりも感じて良かったです。
 インタビューという体であったため、少し読み解くのに力がいる作品だったかなというのは惜しい点でしょうか。インタビュアーに質問させて読者の疑問に答えるような進行も、一種の手法としてありだったかも知れません。
 あまりやりすぎるとギャグにもなりかねない世界観で、しかしアイドルの苦悩や本気の熱量、それを囲う世界の雰囲気などを感じさせてくれる素晴らしいSF作品でした。

104:サウナ救世譚/柑橘

謎の有袋類:
 はじめましての方です。参加ありがとうございます。
 地下に籠もった地球人の中にいた一人の全裸中年男性がきっかけで地球人の滅亡を防いだ話……だと思っています。間違っていたらすみません。

 前半のSFっぽい部分なのですが、全裸中年男性の自殺とも言える行為によって感化された男が、全裸中年男性を神格化し、どうしても地上の光景を見たくて考えだした陽光サウナという異常なものを生み出し、それがきっかけで地球の異常気象を巻き起こしていた宇宙人を撤退させたというアイディアはすごく好きです。
 最後のオチは、多分全裸中年男性が警察に捕まって、過去の全裸中年男性への感謝や歴史を言い訳にしたのかな? と思うのですが、ちょっと唐突にオチが来るので突き放されたような気持ちになりました。もう少しクッション的なものがあると上手く飲み込めるのかもしれないです。
 まだカクヨムにある作品は少ない作者さんなのですが、これからもたくさん作品を書いて強く育って欲しいです。

謎の果実猫:
 公転軌道が変わってしまった地球で男が奮闘する話。
 結果的に全裸中年男性たちが宇宙人をも退け大活躍するお話でしたね~! というわけなんだよと全裸中年男性も言っています! 続きは留置場でね! 
 オチがちょっと駆け足だったかもしれませんね。でもそれがやりたいことだったなら仕方ないです!
 青年が最初に亡くなった全裸中年男性に感銘を受けてサウナを作り出したところ、行動力がすごいですね~! 結果的に大成功をもたらすのだから先見の明があるのですね~! 登場人物のほとんどが全裸中年男性というパワーと勢いがある作品です。舞台装置であるサウナもうまく働いていてすごいと思います。
 これからも好きなものを詰め込んで楽しく小説を書いていってください。

謎の女子高生:
 公転軌道が狂って地表がクッソ暑い地球の表面に地下から出てきた全裸中年男性が太陽に焼かれて死んだが、その死に際に「気持ちよかった」と語ったことからある青年実業家がなぜか発狂し、サウナを完成させる話。なんて? めちゃくちゃ面白かったです。地球の軌道を狂わせた宇宙人たちがサウナで整うおっさんたちを見て怖じ気づくところが最高でした。
 地表が熱すぎる設定なので最初に死んだ男性だけは「さすがに気持ちよくはなかったんじゃね…?」と思わなくはないですが、でも彼がいたからサウナが生まれたんですよね。ならOKです。
タイトルもいいですね。救世したのは狂った実業家と全裸中年男性たちなんですが、あくまで主役がサウナなのがとてもいい。勢いもよく、大変好きな作品でした。

105:光源の人/垣内玲

謎の有袋類:
 前回は坂道を書いてくれた垣内玲さんです。参加ありがとうございます。
 これは僕がほぼ日本史をしていないのと枕草子も光源氏も記憶の彼方にあることなので本当に申し訳ないのですが、ちゃんと知識があればおもしろい部分も多いのだと思います。
 すみません、知識不足で色々とわかりませんでした。一話は恐らく清少納言が宮中に勤めていた時代の皇后の視点で自分の失脚が語られていて、三話では一話の主観の人が亡くなった後のもう一人の皇后の主観できらびやかで有能な皇后に憧れている様子が描かれているのがわかりました。
 二話は、定子さんが死んだ時の詩なんですね。調べてみてわかりました。
 拾えないことが多くてすみません。多分、三話の人に色々言っていたのが紫式部ということなのでしょうか?
 この時代の二人が後の世にまで語られる物語を書くというのはすごいことなんだなと思いました。ちょっと知識がなさすぎて、的外れなことを言っていたらすみません。
 一人の女性が徐々に失脚していく中、それでも愛していたと思われる帝の深い愛は伝わってくる作品でした。
 色々な作品を読めるようにもっと勉強をしようと思いました。

謎の果実猫:
 帝と皇后の話。
 すみません。私に日本史の知識がなくてほとんどわかりませんでした。
 2話目の和歌をググってみたら藤原定子の辞世の句と出てきましたが、それでもその方がどなたかわからない始末です。
 以降は推測の話になるのですが、1話目では枕草子に描かれる定子の半生についての辛く悲しい影の部分で、3話目は枕草子に憧れる次代以降の皇后のお話だったのでしょうか。
 知識がある方なら楽しめるんじゃないかと思います。

謎の女子高生
 一条天皇の皇后である藤原定子の半生を描く平安宮廷もの。天皇に愛されながらも皇子を生むことができず、やがて後ろ盾であった父の死をきっかけに一族は政治の諍いに巻き込まれ、二人目の子として皇子を生むことができた時にはすでにどうにもならない状況であったことに絶望する様、しかしそれでもなお天皇を愛する定子自身の熱情を描く作品。
 非常に濃密で、読み応えのある作品でした。あんまり歴史に詳しくないので、読み解きが甘かったらすみません。ある種の枕草子へのカウンター的な意味も込められた感じも良いですね。
 その濃密さから、読むのが少し大変ではありました。今回は規定文字数がありましたので一定の説明も省いたものかと思いますが、全体の人物相関などは調べながら読みましたので、もう少し作中でも説明があると分かりやすかったかも知れません。ただ歴史物なので、ちょっと書くと全部書く羽目になる、というのは理解しているつもりです。難しいところですね。
 5000字足らずで描かれた作品とは思えない密度感の歴史物で、非常に楽しく読ませていただきました。ありがとうございます。

106:糾正の燐寸/祐里(猫部)

謎の有袋類:
 はじめましての方です。参加ありがとうございます。
 多分戦時中やその辺の頃の仲睦まじい兄妹のお話でした。切ない……。
 優しくてマジメだった兄が、徐々に中核派と呼ばれる人たちに取り込まれて、帰らなくなったのが切なかったです。
 時代もなんとなく言葉遣いや、女性の在り方でわかるのがすごく親切でわかりやすかったです。
 これは僕の知識が無いのが悪いのですが燐寸などの馴染みがない言葉にはルビが振ってあるととても助かるかなと思いました。
 思い詰めて火炎瓶を作って大学まで行ったところで、ぎんなんの匂いが漂ってきて結局火炎瓶を投げずに済んだところもすごく好きです。
 しっとりとした文章で語られる少し昔のお話、切なかったけれどとてもよかったです。

謎の果実猫:
 学生運動が激しかった時代の兄と妹の話。
 泣きました。悲しい結末のお話でしたね。
 少し難しいお話なので、中核派や学生運動についての注釈があってもよかったかもしれません。
 不器用で真面目で妹に優しい兄と献身的な妹の日々の暮らしの中で、兄が大学で中核派に取り込まれてから家に帰らなくなりバイトにも顔を出さなくなり…妹は兄を助け出すためにお手製の火炎瓶を片手に大学へ向かうのですが思い出の銀杏の香りがそれを押し留めてくれて…後日兄は殺されていたと知りました。
 兄と妹の日々の暮らしを描いたシーン、ちくわ天や銀杏の素揚げや灯油ストーブにマッチで火を点すところやハンドクリームなどなどがとても好きです。
 確かな筆致と豊かな表現力で彩られた切ないお話でした。悲しい結末ではありますが、兄と妹の日々を綴った素敵なお話でもありました。とてもよかったです。

謎の女子高生:
 大学紛争の時代、親元を離れて二人暮らしをする兄妹の兄が、セクトに入り浸るようになる話。倹約家の兄と、それに従うように生活する妹の「当たり前」の窮屈さ、取って付けたように「女も社会へ」と言い始める優しくも思慮が浅薄な兄の身勝手さ、しかしそれでも二人で生活をしていた兄妹の変わらない関係が描かれる。
 現代と変わらない「根」を描くような、良い純文学作品でした。まだ社会も整わないのに、変われ変われと無闇な変化を促される居心地の悪さ、浅慮な人間達、小さな火炎瓶に込められた彼女自身の抵抗に無力さを感じる。
 物語に不足はありませんが、少し展開の間延び感はあるでしょうか。描写を積み重ねることの重厚さも魅力的な作品ですが、序盤〜中盤はもう少し詰めて緩急をつけても良いかもしれません。
 燃えることのなかった燐寸のように終わる虚脱感のあるラストも、胃の腑にずしりとくるような重さで、大変良かったです。 

107:夏に眩んだ水の世界で、だからわたしは人魚を殺す/ラーさん

謎の有袋類:
 第四回こむら川小説大賞の覇者、ラーさんです。参加ありがとうございます。
 人魚のお話! めちゃくちゃに綺麗で美しい人魚と都市伝説の組み合わせ! 人魚になって永遠を生きられるけれど……と思ったら多分暗闇に閉じ込められてしまった主人公。最後にまた女子高生が現れて……という内容でした。 最初の出会いと、最後の出会いの対比が美しいですね。
 主人公と入れ替わった人魚がめちゃくちゃに可哀想だなと思ったのと、無の永遠に続く空間よりも劣悪な家庭環境の相手に当たる可能性があるのはキツそう……と思ったので、暗闇が実家よりもヤバくていやでどんな環境でも良いからここから抜け出したいみたいな気持ちが書くと説得力があがるかも? と思いました。
 人魚の幻想的で美しい描写もなのですが、水中の中にいて街を見ている様子が本当に綺麗で涼しげに感じですごくよかったです。
 ラーさんは作風が広いと思っているのですが、こういう幻想的な描写が本当に得意で綺麗だなと思っています。
 これからもどんどん色々なチャレンジをして創作を続けて欲しいなと思います。

謎の果実猫:
 人魚になった女の話。
 鳥肌が立ちました。これはいいホラーですね。
 人生にいいことがなかった主人公がすべてを捨てて人魚になりたいと願い、いざなれたと思ったら人魚に体を奪われて真っ暗闇の中に閉じ込められてしまいます。掴み取ったぞヤッター!と思ったらどん底に突き落とされる!というの大好きです。オチが冒頭と同じ流れにつながっていく気持ちよさがありました。
 主人公が暗闇の世界を嫌がった理由がよくわからなかったのでそのあたりの理由がもっと深堀りできていればよかったかもしれません。
 人魚の姿のや街の描写は緻密で美しく、映像が目に浮かぶようでとてもよかったです。最後に現れた誰かが「希望の光」というシーンがありますが、同時に人魚もそう思っていたでしょう。
 とても美しく怖いお話でした。おもしろかったです。

謎の女子高生:
 ネットで「人魚になれる」都市伝説を実行し、人魚になった少女の話。実行した都市伝説により異界に通じた少女はそこで人魚と行き会い、その人魚を取り込むことで無事に人魚になったが、しかしそれは自分しか存在しない異界に閉じ込められるもので、元の人魚は少女の身体を奪い、現世に消えていったという物語。
 美しくも恐ろしい世界を描く、息苦しさを覚えるようなホラー作品でした。人魚を食べると不老不死になるという伝承の解釈をこのように持ってくるのか、という驚きもあり、どこか新鮮さも感じる素晴らしい作品だったと思います。
 主人公にあまり救いがないところが読んでいて苦しかったでしたが、最終的にオチがループ的な構図を取るところも好きなところでした。
 幻想的な作品で、人魚を題に取ったホラーの中でも新しい世界を見せてくれる、良い物語だったと思います。

108:柔らかい光/@ kajiwara

謎の有袋類:
 佐藤君は優しすぎるからで前回参加してくれました。参加ありがとうございます。
 デカいけど気弱な男子と、家庭環境がちょっと悪い強気な女の子がタッグを組むホラーでした。
 冒頭に話されていた怖い話は、まちが心霊スポットで見た光と関係あるのでしょうか? あったら更に怖くておもしろいかも? と思いました。
 そうじゃなくても光の使い方がうまい……! 懐中電灯の光もそうですが、最後の陽の光の安心感がすごい。それにずっと名字呼びだった二人が名前呼びに戻るのもすごくいいですね。小さい頃は名前で呼び合っていた幼馴染みが大きくなって名字で呼び合うも、なにかをきっかけにして名前で呼び合い出すようになるのがすごく好きなのでそこでキュン! としました。
 まちの家庭環境は多分しばらくあのままなのでしょうが、きっとタケルが将来なんとかしてくれるのでは? ホラー部分も怖かったのですが、キュンもあるのがすごくよかったです。
 歌が聞こえてきてからスルッと思考が乗っ取られるの好きすぎるし、めちゃくちゃに怖いですね。超よかったです。
 新しい試みありがとうございます。めちゃくちゃに楽しめました。色々な作風チャレンジでも、男達が血みどろで戦う作品でもまた作品を書いてくれるとうれしいです。

謎の果実猫:
 友達と肝試しへ行く話。
 安定感のある文章で一度読んだだけで何が書いてあるかすっと飲み込めて楽しく読めました。冒頭の怪談も肝試しで見たものと同じ光の話だったりするのでしょうか? 
 肝試しで鼻歌が聞こえてきてからまちの思考が乗っ取られるまでがなめらかでとてもこわかったです。
 最後のシーンの太陽の日差しは安心感のある光でよかったですね。
 光とそれに類するものを様々な場面で効果的に使っているのがすごいなと思いました。大抵の場合一種類になりがちですが、この作者さんは何種類も使っていたのですごいなと!
 まちとタケルがトラブルを乗り越えてお互いを名前で呼び合うようになったのはなんだか胸があったかくなりました。幼い頃は名前で呼び合っていたというのもかなりいいですね。
 とっても素敵なお話でした。とってもおもしろかったです!!! 

謎の女子高生:
 素行の悪い連中のパシりにさせられている幼馴染みの少年が心霊スポットの肝試しに行かされそうになっているのを助けることになった少女の話。心霊スポットの怪異から逃げられないところを気合いで逃げ切り、素行の悪い連中に少年が一発御見舞いして締めるという青春ホラーで、とても爽やかで気持ちの良い作品でした。主人公の星野のキャラクターが好きです。
 ホラー部分については怖さもありつつ、青春ものに寄せていたため少し描写は大人しめな印象だったように思います。もっとぐっと怖くしても良いかもしれません。
 幼馴染み二人の関係の変化などもよく表現され、最初から最後まで読みやすく、楽しめる作品でした。

109:深海の姫、光に焦がれて/こくまろ

謎の有袋類:
 前回は金賞を獲得したこくまろさんです。参加ありがとうございます。
 今回は深海の姫が人間の言葉しか話せなくなる薬を飲んで憧れている光を見に行くお話でした。
 あっと驚かせる意外なオチ! でめちゃくちゃによかった部分もあるのですが、読者と作者の情報量が圧倒的に違う中であっと驚く意外なオチが本当に意外だと「後出しじゃん」って思われる場合もあります。より満足感の高い読書体験をして欲しいとか、面白く読んで欲しい! と思っている場合はオチに対して「ちょっとこれはバレバレかな?」 くらいのヒントや伏線を散りばめておくといいのかもしれないなと思いました。
 発想自体は本当にめちゃくちゃに良いのと、ミスリードのさせ方も人魚姫をモチーフにしているであろう薬の下りなんかも本当に上手でしたし、「案外ね、人間も私達とそんなに変わらないんじゃないかと思ってるの。姿も、考え方も」という下りもすごく上手で見事に人魚を想像していました。
 デカい深海魚が人の言葉を話したら怖いのはそう……。イカ釣りの船に惹かれて夜につられたという切なさもめちゃくちゃによかったです。
 気持ちよいダマしかたを覚えれば大賞受賞も圏内のはず……!
 センスも進捗力も文章力もばっちりなのでたくさん書いてどんどん力を付けましょう! 今後の成長をとても楽しみにしています。
 ロマンティックな文体もかなり合っているので、中編当たりも書いて見て欲しいなと思いました。チャレンジどうでしょう????

謎の果実猫:
 光に焦がれた人魚の話。
 セレーネが不憫!!! 前半と後半の落差がすごい!!! セレーネが深海の姫と聞いたときから薄々わかってたオチではありましたが、それでもイカ釣り漁船の光に寄せられて水揚げされて食べられて沖に雑に捨てられて終わるとはセレーネもルチェも思いもしなかったでしょう。
 等身大の深海魚が人の言葉を喋ったら怖い!
 セレーネが捨てられるまでがあまりにもあっさりしすぎているのでもうちょっと時間をかけたり、捨てられたあとのことを掘り下げてもよかったかもしれません。
 やるとなったらとことんやったほうがいいので突き抜けていてよかったと思います! さすがです!!! 海の中の王国と陸の上の世界観が必ずしも同じとは限りませんものね。冒頭の村の話も陸の上の世界観の伏線だったのですね~。
 とてもおもしろかったです!!!

謎の女子高生:
 真っ暗な深海で生きる「姫」が、人間の言葉を話せるようになる薬を飲み、光を求めて海の外「光の世界」へ行こうとする話。一種の叙述トリックもので、人のように描かれていた姫が実は…という内容。悲しい別れと、悲劇的な結末が印象的な作品でした。ルチェとセレーネの別れがとても切なく良かったです。
 最後の残酷さがとても胸を打つ作品で、セレーネにもう少し救いがあれば…と思うところではありましたが、この振り切った残酷さがこの作品の心に残る点でもありました。
 深海の王国の描写と、現実の漁村との描写のギャップ感も非常に印象的で好きなところでした。良い作品だったと思います。

110:光を目指して/竹氏

謎の有袋類:
 光で照らすを書いてくれた竹氏さんの二作目です。
 うんこですね! ファーストうんこ賞おめでとうございます! うんこは光っていませんが、ケツ穴の内側から見える光を目指して出てくるうんこでした。
 うんこでした! は多分気付かれるのでいっそのこともう「俺はうんこです」とアピールした方がインパクトは残せるのかも知れません。
 僕の知っている中で最高のうんやんという、うんこ小説があるのですが、これが解の一つになるかもしれないので是非呼んで見てください。
 うんこ自信の悲壮さやうんこの感じる怖さという組み合わせはおもしろかったです。でもうんこなんだよなこいつって読んだ後に思ってじわじわボディーブローのような笑いが出てきました。
 なんにせよ、ファーストうんこ賞おめでとうございます。初のうんこが出ない大賞になるかと思いましたが、うんこは逃してくれなかった。

謎の果実猫:
 うんこが体の中から出てくる話。
 うんこ!!! これはうんこですね!!! 第七回初めてのうんこです!!! うんこの魔の手からは逃げ切れなかったか~~~!!! 
 実はうんこでした!と言ってもバレバレでオチが弱いので早めにうんこです!と言ってしまってもよかったかもしれません。
 主人公の感じる恐怖感や体の内部の仕組みを捉えた描写はおもしろかったです。
 私が体の仕組みについて詳しかったらもっと楽しめたのかもしれませんが、私はあいにくと疎いのでよくわかっていない部分もあったと思います。分かる人が読んだらもっと楽しめると思います。
 第七回初めてのうんこ! おめでとうございます! 

謎の女子高生:
 光を目指して、得たいの知れないどこかを突き進む「私たち」の話。うーん、この。途中からそうかなと思ってたらそうだったので安心しました。私たちに襲いかかる様々な状況は真に迫る描写であり、迫力がありとても良かったです。スリラーのような味わいも魅力でした。
 最後の落とし方は、少し作者の恥じらいが見えるところでしょうか。もっと振り切ってクソ真面目に締めて「え、これ真面目に読んだ方がよかったやつ?」と読者も渦に巻き込むように混乱させるのも面白いかも知れません。
 彼らが目指していた光は「あー、なるほど」と思わされる、非常に読み応えのある体内脱出譚でした。

111:いとへんとさんずい/キングスマン

謎の有袋類:
 はじめましての方です。参加ありがとうございます。
 リトゥンフィリアの少女とタナトフィリアの少女の出会いと惨劇というようなお話でした。
 百合は嗜んでいないのですが、官能的なシーンもある良い百合でした。最後に二人の名前は明かされるのですが、どちらがどちらの子なのかちょっとわからないので名前では無く性的嗜好で呼ぶのですが、タナトフィリアの少女のことを好きなのだと思っていたら、その子の書いた文字が好きでした! というミスリードがおもしろかったです。ちゃんと伏線というか仄めかしと違和感を仕込んであるので「そういうことね!」となれて気持ちよかったです。
 せっかくの一人称小説なのでもっともっと主人公の内面を書いちゃってもいいような気はします。このくらいにしないかな? なんて遠慮はしないでギリギリを攻めるつもりでカッ飛んでいっちゃいましょう!
 おそらく好きをモリモリと詰め込んでくれた作品なのだと思います。これからも好きをたくさん詰め込んで思いっきり創作を楽しんで欲しいなと思いました。

謎の果実猫:
 性的嗜好を持つ者同士の出会いと惨劇の話。
 いい百合でした!!!
 最後に二人の名前が明かされましたが、どちらがどちらの名前なのかちょっとわかりにくかったです。どちらがどちらの名前かわからないので以降は性愛の名で呼び分けます。
 文字性愛の子が文字性愛という言葉を知って自分だけじゃないんだということに気づいて心の中に光が射したシーンとても好きです。文字性愛の子が自死性愛の子を好きなのかと思いきや好きなのはその子の文字だったというのもおもしろかったです。
 自死性愛の子が文字性愛の子に自分を殺させるためにわざと挑発したのがやるせないですね。自死性愛の子が最後に満足そうだったのが救いですが、文字性愛の子にとっては絶望的でしょう。
 これからも好きなものをたくさん書いて楽しく創作をしていってください。
 とてもおもしろかったです。

謎の女子高生:
 あら、百合作品。こちらありがとうございます。特殊性癖百合もの。クラスのテスト答案を盗んだ「リトゥンフィリア」の少女と、それをつまびらかにするクラスメイトの少女が電車で出会う話。自身の性癖を受け入れられたように感じた少女はやがて心を開いていくが、クラスメイトの少女は実はタナトフィリアで、自らを殺させるように仕向けていた…というお話。全編通して「閉じた世界」を表現していたような描写がとても好きでした。誰もいない電車の車両という、リミナルスペースのような空気感に、ただ二人の少女。良い映像だったと思います。
 テーマ「光」への回答としては、少し弱かったでしょうか。しかし作者の表現したい百合の空気感がよく出ており、大変良かったと思います。
 最後、クラスメイトの少女の死を迎えて一気に現実に引き戻されるところもとても良かったです。

112:時間遡行/若草八雲

謎の有袋類:
 海月は虚を舞うを描いてくれた若草八雲さんの二作目です。
 とあるゲームメーカーに出された時間犯罪者からの犯行予告が来て、ゲームメーカーは解散するというお話でした。真相解明のシーンがカッコいいのですが、ちょっと難しくて一回で理解するのは僕には難しかったです。
 最初はCMかと思っていたけれど、じわじわとそうではないことがわかる描写や、未来にしか行けないタイムマシンについて話す時くらいしかまともにならない暮端老人など魅力的な人物も多く面白く読むことができました。
 謎鉱石! ハッキング! タイムマシン! とワクワクする要素がたくさんあるとても良いSF作品でした。
 これからも好きをたくさん詰め込んだ作品を作ってくれるとうれしいです。

謎の果実猫:
 一方通行のタイムマシンとゲームメーカーの話。
 すみません。お話が難しくて私にはよくわかりませんでした。
 タイムマシンと光の説明はちょっと目が滑る感じがあって難しかったです。もっとわかりやすく噛み砕いてしまってもよかったかもしれません。
 時間犯罪者を名乗る何者かからの犯行予告にweb広告が占領されて、広告かと思っていたらそうではなく本当に犯行予告だったのはおもしろいですね。
 時間犯罪者、タイムマシン、ハッキング、光を吸収する謎の石などアイデアはおもしかったです。
 これからも好きなものをたくさん書いて楽しく創作をしていってください。

謎の女子高生:
 VRゲーム開発の企業が、広告乗っ取りで不正の告発をすると脅迫される話。時間遡行を題に取ったSFクライム小説。脅されていたM'sD社は早々に社の解散を決めたが、実はこの告発騒ぎは社長自身が企てていたことだった…という組み立ての作品。       
 非常に複雑な設定のSFで、豪勢な作品だったと思います。
 時系列や回想が複雑に入れ替わる点は、少しプロットや種明かしの分かりづらさに繋がっていたように思います。もう少し主題を絞っても物語の面白さは損なわれないのではないか、と感じました。
世界や技術などの凝った設定は、大長編でも通じそうなポテンシャルを感じる作品だったと思います。

113:光と共に、誰も彼もが/秋坂ゆえ

謎の有袋類:
 はじめましての方です。参加ありがとうございます。
 音楽を通して世界と繋がったり、グローバルな価値観で昭和の価値観をスカッとさせるような痛快な作品でした。
 少し気が重い行事から助け出してくれる配偶者は確かに光ですね。幸せ夫妻めちゃくちゃに良いーーー!
 多分テンポを大切にしたのだと思いますが、ベイビーの下りがサラッと流されているので、そこをもう少し前半から伏線を入れたりすると事情が飲み込みやすいのかなと思いました。
 全体を通してテンポが良く話が進んでいく作品でした。令和の価値観でいきやすい人が増えるといいですね。
 参加ありがとうございました。

謎の果実猫:
 形を変えていつも光はそばにある話。
「とある危惧」という言葉を何度か出していますが、だったらいっそそれについて説明してもいいかもしれません。作者と読者では情報量に差があるのでわかりやすさ一番でやっていきましょう! 子供についてもサラッと触れられているだけなのでもう少し深掘りがあってもよかったのかな?と思います。
 かつて追いかけていた音楽にきっかけをもらったり、配偶者に救われたりと自分にとって誰かにとっての光は形を変えてもいつもそばにあるんだなというお話のように感じました。 
 素敵なお話でとてもよかったです。

謎の女子高生:
 かつて音楽が好きだった男が、お盆に妻の親戚の家に出かける話。男の無精子症で子の望めない夫婦に対する親戚の遠慮の無い様子に辟易していたら、あるアーティスト送った応援メッセージに返信が返ってきていて…という組み立て。自分がかつて光を貰っていた「音楽」という世界に、再び光を貰う話だと感じました。
 音楽の話と夫婦の話とで、少し主題が併行していたように思います。両方のエピソードを繋ぐブリッジ的な設定が一つあると、一見なんでもないエピソードの噛み合いが生まれるかも知れません。
 優しい世界のお話で、良い読み味の作品だったと思います。Barns Courtneyさんは実在のアーティストということで、少し聞いてみたくなりました。

114:地球一周光速パンチ/コサジ少将

謎の有袋類:
 め、めちゃくちゃによかった……。
 はじめましての方です。参加ありがとうございます。
 ―で語られる速度の例えがいちいちかっこいいよのですが「貴方が誰かに話す言葉の速さ。音速。マッハ」もうーーー!めちゃくちゃにかっこいい!
 徐々にここから刻んでいくのもすごくかっこいいですね。
 AAっぽいのだけ僕の想像力が拙くてわからなかったのですが、多分殴り飛ばしたときに粉々になった化物だと思っています。
 走馬燈の幼馴染みもめちゃくちゃに最高なのと「────秒速0メートル。停止した世界。」からが良すぎる……。
 最後、何もかも遅すぎたかもしれないけれど全てを賭けて化物を倒した男が見る最期の夢は甘くあって欲しい……最高。
 めっちゃよかったーーーーーーー! カクヨムにはまだ三作しかない作者さんなのですが、もっとガンガン作品を書いて欲しいーーーー!マジでおもしろかったです。参加ありがとうございました。

謎の果実猫:
 走れば走るほど加速する男の話。
 泣きました~~~~!!!!! メチャメチャによかった~~~!!!! 
 主人公が幼馴染くんのことバカにしているようで本当は大好きだったんですねというのがわかって、もう…!!! 涙腺が刺激されまくりでした…!!! 最高によかったです。
 いつの間にか現れた化け物と対抗するために人間たちが異能だらけになった世界という発想もとてもいいですし、速度を表す例えもかっこよかったです。プリンを固めにする異能、地味に欲しいです。
 最後のシーンで幼馴染くんと会話しているところよかったです。
 最高に素敵なお話でした。ありがとうございました!

謎の女子高生:
「加速」の異能に目覚めた男が、地球を滅ぼそうとする化け物に光速パンチを御見舞いする話。化け物を倒すために地球一周分の加速をするうちに、死んでしまった幼馴染みとのことを思い返す——という組み立ての物語。最高です。めちゃくちゃ良かったですね。加速というエスカレーションの表現に、「走馬灯」の表現、気づくのが遅すぎた自分の感情、あらゆる要素の噛み合いが見事な作品だったと思います。泣いた。
 化け物を殴った後の「・」の描写が何を表しているのだろうというのは少し気になるところでしたが、ここも想像をかき立てる要素だとも感じます。
 最初から最後まで本当に素晴らしい作品だったと思います。良い作品でした。ありがとうございます。

115:なにか、キラキラ/ヤナセ

謎の有袋類:
 前回は「いつだってピンチ」を書いてくれたヤナセさんです。参加ありがとうございます。
 これはそういうことでしょうか! 推しが見ているトップ以外というのは……!
 という良いキュンなお話でした。
 勝手にしるしをつけていく「なこ。」さんめちゃくちゃに好き。
 多分なのですが、もう少しわかりやすくしてもいいのかなとは思いました。書いている側は全部わかっているから、書きすぎたらくどくなるかな? と思うのですが、読んでいる人は登場人物のひととなりをわからないので、ちょっと過剰かなくらいに情報を盛ってあげるとちょうどいいと思います。
 特に素直じゃない系の語り手だと、好き好き感をもう少し増してもこのじれったくて素直じゃない感は薄れない気がします。
 友達だけれど、そうじゃないかもしれない。頭では友達だと思っているし、推しには戻さないぞ! と思っているけれど……。そんな相反する気持ちが描かれているようなとてもキュンな作品でした。
 コンスタントにどんどん作品を書いて、どんどん強くなりましょう!

謎の果実猫:
 推し活と友達の話。
 作者と読者では情報量に差があるのでわかりやすさを一番にしていきましょう! 説明しすぎなくらいがちょうどいいかもしれません。
 友達と推しについて語り合っているお話ですが、本当は…?
 可愛らしい雰囲気がある文章ですね。
 友達だけど本当は友達以上に思っていて、だけど推しではないんだと揺れ動く心がよかったですね。
 これからも好きなものを詰め込んで楽しく創作をしていってください。応援しています! 

謎の女子高生:
 うーん百合。勝手に百合だと読ませていただきました。申し訳ありません、ありがとうございます。アイドル好きの女性と、その友人の会話劇。実はその『友人』はかつての『推し』で…というお話。いわゆる「推し活」を通じて二人の関係性を掘り下げるような会話は面白く、非常に良い空気感の作品でした。
 ちょっとこの二人、どうなんですか。こちらが思ってるよりただならぬ関係なんじゃないですか。ちょっと。すみません、勝手に興奮してしまいました。
 二人のキャラクターもよく、もう少しこの空気感に触れていたいと思わされる良い作品だったと思います。ありがとうございます。

116:高野咲良は亡くなりましたか?/南雲 皋

謎の有袋類:
 海の底、愛はなくを書いてくれた南雲さんの二作目です。
 うわーーーーー! 最悪!(褒め言葉) めちゃくちゃに最悪な結末のホラーでしたね! お父さんがいい人だというのがめちゃくちゃに良い! そのままお母さんも犠牲になるのでしょうか! うわーーーー! 読んだ後に目に入るキャッチコピーや話タイトルが本当にめちゃくちゃに嫌でした。うわーーー!
 めちゃくちゃによかったです。やっぱり犠牲になるのが良い人だと胸が痛んで良いですね。帰省しなかったらやはり店長が犠牲になっていたのでしょうか?
 これは講評なのでどうしても、更に良くなるためのポイントは? と考えた部分であまり気にしなくていい部分なのですが、瀬川文彦さんの良いところがもう少し盛られていたらさらに心が痛かったかもしれないなと思いました。
 でも今の方がテンポ感は良いので、他の人の講評も参考にしてくれたら良いなと思います。
 めちゃくちゃに怖くて嫌な話ですっっっっっっっごくよかったです。

謎の果実猫:
 遺体を見つけてしまった話。
 うわーーーーーー!!!!! めちゃめちゃによかったです!!!!! すごくおもしろかったーーーー!!!!! 体が魚みたいに跳ねるところが場違いで怖かったです。それから亡くなりましたか?の電話も怖いし、光の玉が入ってきてしばらくはなんともなかったのも怖かったです。
 神社に入れないのには理由があったんでしょうか? 神社のパワーと相反するなにかがあったのかな? 宮司さんが有能だった可能性がありますね。すれ違っているのが悲しいですが…。そのあたり読めたら読みたかったです。
 絶望の結末を迎えたホラーでしたね。とても最悪でよかったです!!! 最後まで読んでからわかるタイトルの意味!!! これからかかってくるのでしょうね。電話が…。
 最高におもしろかったです!!! 最高に最悪なホラーでした!!! 

謎の女子高生:
 宅食の配達員が配達先の老人の孤独死を発見する話。発見した家で電話が掛かってきて、『瀬川文彦は亡くなりましたか?』と訊ねられる。亡くなったことを告げると「そちらへ向かいます」という言葉を残して電話は切れ、しかしそれは次の悲劇の合図だった…というホラー作品。めちゃくちゃ怖い! どんどんどんどん嫌な方向へ流れていく物語は目を背けたくなりつつも目が離せず、非常に良かったです。
 とにかく怖く、読者のわがままとしては何か救いが欲しかったです…。宮司さんももう少しなんかしてやれんかったんかな…ダメやったんやな…口惜しい。あそこで「亡くなっている」と答えなかったら何か違う結末だったのでしょうか。
 ホラー作品として、タイトルもよく効いていたと思います。非常に面白かったです。

117:ウィンタースポーツの日焼け止め/まらはる

謎の有袋類:
 眼球考察を書いてくれたまらはるさんの二作目です。
 死体埋めシチュエーションでした。てんどんがうまくて好き。わははと笑える死体埋めシチュエーション!
 ずーーーっと合いの手みたいに言われていたら慣れていきそうですし、実際に友人は慣れているっぽいのですが、死体を掘り返してみようと考えたのはナイスアイディアだなと思っていました。
 次は海に捨てるから海の人から怒られるのかなと思ったのですが、山の人が気難しくて「掘り返すな」と怒られるのが理不尽。ウィンタースポーツに日焼け止めが必要だという印象的なキャッチフレーズも上手く使われていてめちゃくちゃおもしろかったです。
 小気味の良い短編を書く力は十分だと思うので、中編や長編にもチャレンジしてみてもいいかもしれないなと思いました。
 まらはるさんは、伏線の入れ方や小話の活かし方が非常にうまいと思っているのでこれからも強みを活かして頑張って欲しいです。

謎の果実猫:
 山に死体を埋めたら謎の声がする話。
 山に死体を埋めたら謎の声が耳から離れなくなり、じゃあその死体を掘り返してみたら声は消えるんじゃないか?とトンチを利かせてみる話。
 お話ではもう埋めたところから始まっていましたが、文字数が短いのでせっかくですから殺して埋めるところから書いてみてもよかったかもしれません。それから「山に死体を埋めるな」の声の持ち主について深堀りしてもよかったかもしれません。
 「山に死体を埋めるな」の声の持ち主は山に関する怪異でしょうか? タイトルで説明するのではなくお話の中で説明するほうがより臨場感が出ていいと思います。正体の知れない怖さがありますね。想像の余地があっていいですね。
 「山で死体を掘り返すな」となったのは理不尽で笑ってしまいました。
 もう一度埋めたら声は合唱になるのでしょうか? 気になりますね。
 とてもおもしろかったです! 

謎の女子高生:
 山に死体を埋めたら呪われたっぽい話。「山に死体を埋めたらどうなるか分からない」ということを「経験がなければ知らない知識=ウインタースポーツの日やけ止め」の話をフックにして展開する物語。山に死体を捨てた結果、『山に死体を捨てるな』という声が聞こえ続けるようになってしまった男達の会話劇で、非日常的なシチュエーションがさも当たり前のように繰り広げられていく様が面白い。
 怪異の正体については特に言及がないので、その辺りは少しほのめかしがあってもホラー的なパンチが効いて良かったかも知れません。
 しかしながらホラーに寄りすぎることもなく、全体的な空気感も読みやすく、発想も面白い作品でとても良かったです。

118:光の庭で手をつないで/折り鶴

謎の有袋類:
 前回はピンポンダッシュ千本ノックと奈落を刻むを書いてくれた折り鶴さんです。参加ありがとうございます。
 絵本のような優しいお話でした。
 めちゃくちゃに言いお話だった。とき……。
 口減らしのために村を追われた少年が、光の子供達の仲間になる前半と、ときの弟のお話の二部構成になっているのですが、構成が上手!
 ほぼ気にならなかったのですが、弟との笛のエピソードも前半に入れられたら笛の音のエピソードがもっと思い入れが強くなったかも知れません。
 ときは、いつ川を渡ったのだろうと思っていたのが後半で「弟が渡してきた食べ物に毒が入っていた」と種明かしされるのも親切だしすっきりしました。
 優しくて少し悲しいとても良いお話でした。絵本で読みたい……。
 構成の良さもすごいし、伏線を張ることはばっちりな折り鶴さん、これからもたくさん創作をして強くなって欲しいです。

謎の果実猫:
 光の庭と優しい子供たちの話。
 すごくよかったです。ときがいつ川を渡ってしまったのかが2話目で明かされていてとても切なく悲しかったですが、でもときはもう悲しくはないのが救いです。
 優しい子供たちの存在がときをやさしくあたたかく救ってくれて、それぞれが川を渡った切ない悲しい出自を持つかもしれない存在なのに…ということがすごく感動的でした。
 笛のエピソードが少し唐突のように思えたので前半にもう少し伏線があってもよかったのかな?と思います。
 やわらかく落ち着いた文章で絵本のような語り口がとてもよかったです。
 ときと弟がお互いをわからなくても最後に会えたシーンがとても好きです。
 これからも好きなものをたくさん書いて楽しく創作をしていってください。応援しています! とても素敵なお話でした!

謎の女子高生:
 口減らしのために捨てられた子供達が集まる「光の庭」での日々、そこに現れた「川を渡っていない」子供の話。心を締め付けられる、非常に良い作品でした。前編の子供の視点で進むところは本当に読んでいて悲しくなり、何度も目が止まってしまいました。前編を経てからの後編の構成もとても良かったと思います。
 この作品はこれ以上何かしない方が良いと感じますので、あまりアドバイス的なことは言えません。大変素晴らしい作品だったと思います。ありがとうございました。

119:抱きしめたい/志々見 九愛(ここあ)

謎の有袋類:
 前回の吸血鬼マジ良かった! 小池百合子から吸血鬼ブロマンスまで幅広い作風の志々見 九愛(ここあ)さんです。参加ありがとうございます。
 キャッチコピーなんなんだよ!w めちゃくちゃに警戒して「いつ放尿が来るんだ……」と読んでいたけど放尿はなかったです。怖かった。
 作品の内容は花束を渡したい人の良い紳士のもの。なんとなく星新一の作品っぽさの漂うシチュエーション。
 ネクタイを直してあげるためにどんどん後ろに行っちゃってバスに乗れなくなったのもお人好しすぎるーーー! 頼む! 振られないでくれ! でもここから放尿があるのか? と変にドキドキしていたのでキャッチコピーがマジで最悪な効果を生んでいる……。
 キャッチコピーテロという新たな境地すぎるでしょ。
 お話は人の良すぎる主人公がストゼロおばさんの娘が運転する車に乗せて貰って、約束の時間に間に合いそうなハッピーエンドでよかった!
 面白いお話でした。♡とキャッチコピーテロで警戒しなくてよかったんや……。
 分かりやすい話を書いてくれてありがとうございます! 大分チューニングをしてくれるようになったのでは? ほっこりした良い話でした。これからもお祭りなどに参加してくれるとうれしいです!

謎の果実猫:
 渋滞につかまりバスが来ない話。
 キャッチコピーはなんだったんですか? 放尿犯待ってたんですけど??? 放尿犯一生出てこなかった…!!! どういうことなんだ…!? 
 花束を持ってデートに向かう主人公がバスを待っていますが、バスは渋滞にハマりなかなかやって来ません。バスを待っている間にゴミを拾ったりネクタイを直してやったりしていると肝心のバスを逃してしまいました。しかし最初にゴミを拾った車のお嬢さんの意向で車に乗せてもらえることに!というハッピーエンドでした。
 最後のシーンの「僕がふられたらさ、きみのママにこの花束を渡しても?」「いいわよ。私にならね」のところとても好きです。
 おもしろかったです! キャッチコピーで惑わせてくるという斬新な手もあるんだなと思いました

謎の女子高生:
 デートのためにバスを待っていた主人公が、その人の良さからバスにも乗れず、デートに遅れそうになる話。しかし主人公の善行を見ていた小さな淑女が助けてくれて…という物語。めちゃくちゃオシャレ! すごく好きな雰囲気の小説でした。ストロング缶を飲んでる人がいるので現代日本ではあるんですかね? それでも海外の石畳の情景が浮かぶような作品だったと思います。
 アホな放尿犯、何か聞き覚えがあると思っていたのですが、ビートルズの「抱きしめたい」の空耳(I want hold your hand のとこ)ですね。一瞬放尿の話だと思って身構えていたので、そのミスリードいる!?と思って笑いました。「君の手を握る」という、抱きしめたいの歌詞のワードが作中に盛り込まれていたのも好きなポイントでした。

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