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ドラマ版『VRおじさんの初恋』~そして『VRおばさんの暴力』へ

お疲れ様です。暴力です。
ヘッダーはNHKさんから頂いたドラマ版巨大ポスターで、最近は廊下を通過するたびに野間口さんに見守られながら生活しています。

巷では「ホナミの正体がわかるところがラストなんだろうなあ」
「そろそろクライマックスか?」などともっぱらささやかれているドラマですが、2024年4月11日時点でまだ全32話中の8話であるという事実を皆様には共有したく。

ということで原作読者さんにとっては「ああ~そこまで原作の通りにやるんだ!」というのがある程度見えたタイミングで、その原作者としてドラマ版にも触れていきたいなと。あと、ゼロサムで始まった新連載『VRおばさんの暴力』についてもアピールしていきたいなと!

※このnoteは新連載『VRおばさんの暴力』のPR要素があるため、数百文字に一度『VRおばさんの暴力』のアピールバナーがカットインします。ぜひドラマ版VRおじさんの初恋の次回放送を待つ間に、ケーキの合間につまむ塩キャラメルの感覚でリンク先の漫画を楽しんでいただければと思います。


原作世界観の延長線上にあるドラマ版

ドラマ版は原作の二部要素を手厚くすることで物語を拡張させている…という気配は現時点で感じ取れるのではないかと思います。
ページ単位で出来事が括られ、読者がページをめくるペースで行間解像度をチューニングできる漫画。一方でドラマは不可逆の時間で物語が展開される都合上、漫画をそのまま再現しても漫画と同じ熱量の物語にはならないというのは前提です。特にこの原作1エピソードが12Pなので…

そんな『VRおじさんの初恋』という物語を映像としてどう再現するのか…ドラマ制作スタッフの方がやってくれたのは「暴力とも子への細かなヒアリング」です。多くの漫画作品がそうであるように『VRおじさんの初恋』もまた、作中では描写しなかったが設定としては存在していた要素が数多くあります。ドラマスタッフさんはその要素の隅から隅までを丁寧に質問してくださいました。

澤田龍之介と佐々木瞳(の元となった絵)

分かりやすいところでは直樹の同僚キャラである佐々木瞳(cast 堀内 敬子さん)と澤田龍之介(cast 細田 善彦さん)。この2人は原作にも絵としては存在しますが名前も出てこないキャラクターです。「上司は遅刻をする直樹のことを嫌っているんでしょうか?」「同僚の人は独身の直樹をどう思っているんでしょうか?」というような制作スタッフさんからの細かな質問に対して暴力が出した回答に沿って肉付けされたものがあの2人の設定のベースになっています。

加藤真美(cast 瀬⼾ 芭⽉さん)は完全にドラマオリジナルのキャラですが、「直樹の職場には過剰に直樹を嫌っているような人はたぶんいない。いたとしてもそれをあらわにするような職場ではない。ただ『やる気のない人がいるな』ぐらいに思っている人はいる。」という暴力がうっすら設定していた世界観に沿った形の性格付けがなされている…と感じています。その上で加藤は脚本である森野マッシュさんの持ち味が非常によく出ているキャラだと思ってまして、3週目以降も繊細で重要な役どころを担っています。お楽しみに!

原作とドラマ版 表現の違い


原作1ページ目のナオキとホナミ

原作ではホナミをはっきりと「痴女のような」衣装を着ているアバターとして表現しています。これはVRSNSを始めとしたオンライン文化では「このぐらいは普通にあるライン」としてユーザーに認知されている…そのはずなのにそれに嫌悪感情を示すナオキというキャラの個性を同時に描写しているのですが、ここが

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ドラマ版では「ナオキがパフェを食べているのをつまみ食いする」というシチュエーションに改変されています。
ここを私はすごく鮮やかな改変だと思っていまして。

このシーンは「ナオキがホナミと出会った時の感情が『呆れ』『怯え』であること」と、さらに「その感情にシンクロしてもらうことで、物語の主人公がナオキの側であることを直感的に理解してもらう」という二つの役割があります。
ドラマ版はホナミの衣装がアレンジされている都合上「痴女」というヒキが使えない。ですがその代替行為描写として、いま食べているものを至近距離でつまみ食いされるのってめちゃくちゃ「なんだこいつ~」感ないですか?それでいて演技としてはチャーミングで、かつVRSNSのコミニュケーション文化に不慣れな人であることも同時に示せている。これはまごうことなき「ホナミ」というキャラクターの体現です。
この「甘味を味わう」というギミックは、ドラマ版全体に生っぽい温かみとほのかな艶を加える要素として頻繁に登場していますね。

原作の『夕暮れ昭和の町』感は、『淡い青空の、どこか記憶の中のふるさとのような街』にアレンジされ、水着イベントは夏祭りに。ビートセイバー(っぽい何か)はFPSに…と、いずれのアレンジも「描写自体は変わっているが、シーンの役割としては同じ機能を持っている」という範囲にとどまりつつ映像として華がある改変で、その点においては

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ほとんどの原作読者さんも違和感を感じなかったのではないかな?と思っています。これはすべて「そのシーンの持っている意味」を森野マッシュさんと制作スタッフさんがしっかり咀嚼してくれているからだと暴力は思っています。

作品世界を構築するキャストの力


情報解禁後あちこちでポストされた「なんで実写?!」の声…
この世界観を再現するならアニメでは?とか、VRが題材なんだからVRSNSで撮影すべきじゃないの?という声。それぞれ意見としてはわかるところもあります。
(というか言ってしまえば一迅社さんに企画もってきていただければ原作者としては全然前向きに検討します!アニメ会社さん、映像制作会社さんお待ちしてます)
ただ暴力自身はですね、最初に実写化のお話が来た時「わりとアリでは?」と思ったんですよね。
キャラの細かい機微が重要な話というか…むしろそこを重視しない場合はちょっとシュールな設定の短編でしかない…とすら言えるかも。
だからこそこの作品の映像化は「行間をどう表現するか」が一番の課題になるだろうとは思っていて、それを埋めるピースとして役者さんの生の演技、掛け合いのリズム…これらはVRおじさん映像化の中でかなり強いピースになり得るのでは?とは思ったんです。そして現状かなり高いレベルで作者の予想を超えてくれている…!と感じています。

幾人かのキャストさんにはご挨拶させていただいたのですが、野間口徹さんの物語の解釈精度には本当に驚きました。これは全幅の信頼を置ける…!と思いましたし、実際に本編でも直樹はまったくもって引っ込み思案で主張のないキャラのはずなのに、物語全体を「直樹の視点」で再現する強い演技の力に毎放送ごとに驚いています。
またVRのナオキを演じる倉沢杏菜さんの感受性の高さ!ホナミを前にぎこちなくなってしまう演技表現力もさることながら「ホナミの好意にどう反応していいのかわからないが、自分に向けてのものであることだけは敏感に感じ取っている」という直樹の性格をこれほど細やかに再現できる役者さんに恵まれたことは、この原作にとってとても大きな幸運ではないかと感じています。直樹もナオキも主張はほとんどしない。でも感じ取っているし、考えている。小さな小さな出力で人生をやりきろうとしている人の物語なので。その感性の解像度の強さ、そして砂粒ほどのニュアンスの差にこそ重要なものがあると信じて頂けている演技には原作者として非常にこそばゆく、そしてとても嬉しく思っています。

一方で、まるで青春恋愛漫画のヒロインのように(ある意味では実際にそうですが)ストレート超速球の好意をナオキにぶつけてくるホナミを演じる井桁弘恵さんの天真爛漫、天衣無縫な存在感!文字通り「立っているだけでもホナミとして成立する」好意的なオーラがにじみ出る立ち振る舞い。言葉に裏の意味がない、まっすぐな言霊として響いてくるセリフの数々。ホナミの現実での姿をイメージした上でも違和感のない全身全霊で優しい肯定感を振りまくその演技は、ドラマで初めてこの作品に触れた人を軒並み虜にしたのではないかと思います…!
(そのちょっと浮世離れしたチャーミングな演技のせいか『ホナミの正体はAI人格では?』という読み説きがあって、それちょっと面白いなと思ってしまいました。ホナミはヒューマギアだったかもしれねぇ…?)

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細田善彦さん、瀬⼾芭⽉さん、堀内敬子さん、⻘⽊柚さんが現実パートをコメディエンスに、時にシリアスに染める群像劇としての役者さんのかみ合わせもかなり見ごたえがあり、まるで「原作が元からそうであったかのように」世界観に馴染んでいる…と私は思いました。脚本の強さ、キャスティングの素晴らしさ、現場の皆さんの熱意がかみ合ってのことなのだと感じています。回を重ねるごとにかけあいの熱量が高まるのも楽しく、そのうち堀内敬子さんが白衣着て出てくるんじゃないかとヒヤヒヤするぜ。

キービジュアル、音楽、主題歌

えぐちりか さんによるドラマ版のキービジュアル…
VRという世界観から連想させるサイバーな印象と、雲の上の夢想のような幻想的な雰囲気を併せ持ちつつ、主要キャラたちの不思議な関係性をほのかに感じさせるどこか日本画、仏画のような神秘的で素敵なアート。

個人でkindle配信してたときの表紙

kindle配信時に暴力が作ってた表紙との共通項にちょっと心が躍る…
現実の直樹メインビジュアルに乗せるのえぐいかもしれん…と思ってコミックス時にはやらなかったので、その挑戦がより素晴らしい形で昇華されたようで勝手に嬉しく思っていました。

そして主題歌、C&Kによる「ハートビート」

中性的で無垢な印象の歌声、ネオンサインやエコー信号を感じさせるリズムに、サビでぐっと男性っぽさに寄る展開からのコーラスの重ね…直樹の物語であり、直樹に気持ちを重ねる「みんなの」物語でもあることを感じさせる構成。そしてラストに残る「でも、、、」のフレーズの残滓に人それぞれ各々が思う「それでも」を託すことができる余韻。美しさ。

渡邊崇さんによる劇伴も素晴らしく、文字通り作品に寄り添うような、登場人物たちの側に佇み、時に先導し、時に後姿を見送るような…すべての場面を丁寧な温度感で彩ってくれています。時期的にVRおじさんの初恋は実質ブレイバーンの後番組では…?

そしてここからのドラマ版の展開


冒頭でも触れたとおり

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ドラマ版VRおじさんの初恋はボリューム的にはここまでが序盤です。
3週目からはいよいよ予告にも登場した芦原⾶⿃(田中 麗奈さん)と葵君(柊⽊ 陽太さん)がドラマに参加し、「芦原家」の登場人物として物語に厚みを加えていくことになります。

葵の母

ここでひとつ「実は…」の話をしますと、暴力とも子はVRおじさんの初恋第二部構想時に「芦原飛鳥」にあたる人物をメインに据えたプロットを考えていました。

発掘した旧プロットのキャラ表。(葵君が女子だった案もあったんです…)

結果として原作は「葵を傍観者として据え、直樹たちをより一段深く解釈する」展開を採択したわけですが、設定的には飛鳥をそこに含めていくことは不可能ではなかったのです。ドラマ版ではその旧プロットのアイデアをヒントに森野マッシュさんに全体を仕立て直していただいたストーリーになっています。

「その熱量が『VRおじさんの初恋』という物語世界に少しだけ変化を与えた」
原作では設定だけだったものがドラマ内で具現化することによる違いは生じます。それは漫画ファン、ドラマファンそれぞれに向けた異なるチューニングでもありまして、その幅は中盤~後半に従って次第に大きなうねりとなってドラマ版を盛り上げていきます。
なるべく先の展開のノイズを増やさぬよう…それでも一言だけ。
「ドラマ版と原作には確かに差異は存在するが、テーマは通底している(と暴力とも子は思っている!)」
とだけ!お伝えしておきたく!

この言葉にはあまり裏を読み取っていただきたくないというか、文字通りそのままの意味で受けとって頂ければ…!

ってドラマ版のナオキも言ってた。

またドラマの展開が進めばお伝えできることもありますが、ひとまずはここまで!引き続きドラマ版VRおじさんの初恋をよろしくお願いします!

「VRおばさんの暴力」をよろしくな!

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そして暴力とも子の新連載、ゼロサムオンライン「VRおばさんの暴力」もよろしくな!
人が心に秘めた「暴力性」とは何なのか、それにどう向き合っていけばいいのか…正しい生き方を求め心迷う令和の時代を生き抜く一人の女性、その繊細で優しい生き方に共感してくれると嬉しいぜ!

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みんなで桜沢ツカサちゃんを応援してくれよな!
以上、暴力でした。

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