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病院が好き〜各科別の楽しみ②〜整形外科

さて、整形外科である。

▪️最初に
①にも書いた通り、私は深刻なレベルの大病も大怪我もした経験はない。経験したことがあるのは、慢性的な持病はあれど、早期に回復する病気や怪我ばかりである。

その為、この内容(タイトルも)を不快に感じられる方もおありかと思う。ご容赦願いたい。

▪️怪我をしやすい
「整形外科は特に好きなんだよね」
と電話で話していたら、姉が、
「整形外科と形成外科と何が違うの?」
と。
行った経験がなければ、そんな感じなのだと知った。

姉は、しばらく前に転んで手を骨折したのだが、それまで整形外科に一度も行ったことがなかったのだそうだ(´⊙ω⊙`)
そういえば、小さい頃から怪我(病院に行く必要のあるレベルの)をしない人だった。

⚫︎体格が痩せ型で敏捷である
⚫︎無茶や無理をしない
⚫︎基本のんびりしている

姉妹とは思えないほど、私とは違って、怪我をする要因が少な目のタイプである。
それに病院は怖いそうで、近くを通る時、わざわざ遠回りをして建物に近づかないそうだから、年はいっていても、筋が通った怖がりの可愛い女子なのだ。

私といえば、最近まで通っていた整形外科で、
「あなたほど怪我する人見たことないなぁ」
と医師から笑って言われたことがある。
ちなみにそこは2年しか通っていないのだけれど。

▪️アキレス腱断裂
[体育館で運動中、新しい靴を履いていたら、靴の底が制御が効きすぎて、キュッとその場に足が張り付いたように止まってしまい、アキレス腱断裂が起きた]という話をしていた人がいた。
それも右足。利き足の怪我は大変だと思いながら聞いていた。
なのに、その人はギプス装着をした右足で運転しているという。
むむむ。どうぞお気をつけてとだけ言葉をかけた。

その翌年、土曜の午前中、家にいた時だった。
座っていたのだが、娘から話しかけられ、返事をする為に立ち上がって、娘の部屋に行こうとした時だった。
立ち上がった時に気が付かなかったのだが、そばにあったファンヒーターのコードが左足に絡もうとしていたのだった。

右足で歩き出し、次に左足を前に出そうとした瞬間、コードが私の足に絡み、その場に固定されたような状態になった。
ファンヒーターには灯油がたっぷり入っていて重く、私が前に進むのを阻んだのだった。
もしファンヒーターではなく、何か軽いものだったなら、歩く勢いで吹っ飛ばして終わりだっただろう。

身体は前に進もうとしている状態、足は固定されて床に付いたまま。
身体と足、向きと力のバランスが崩れると、アキレス腱に力がかかるのだ。

その瞬間、左足の踵の上あたりに、熱い熱い湿布を貼り付けられたような感覚があり、バスケットボールを壁に叩きつけたような音がした。
(アキレス腱が切れる時に、ボン!!!という音が聞こえるという噂は本当だった😱)

絶対何かやっちゃった💦という事はわかったものの、その後も歩いたら歩けるのだ。
『おや? 痛くない。歩けるし。』
しかしあの熱さと音。何か起きたのは間違いない。
まだ午前中の診察時間に間に合う、とすぐに支度をして、階段を下りて、車を運転して出かけた。

実際、過去に捻挫をした時の方が痛かったので、これは案外大したことはないのかも、と思う程度だった。

一番近くの個人医に向かい、診察室に入って、医師に経緯を伝えると、触診をするまでもなく、一目で、
「アキレス腱、完全断裂です。紹介状書きますね。」
速っっっ💦
腱が切れると、そこがペコペコになっているので、見ればわかるのだそうだ。

私「先生、アキレス腱って切っても歩けるんですね?」
医師「水平運動はできますよ。ただつま先を上下に動かすのはできなくなってます。」
私「あ、本当だ!」
なるほどなるほど。

歩ける分、捻挫の時より通院に関しては楽だった。
捻挫の時は、痛みで全く足を地面に付けられなくて、ケンケンして病院の中を進んでいたものだ。
ちなみに過去の捻挫は、車から降りた時、そのままドブに落ちた際の怪我。σ^_^;

「どちらがいいですか?」と近くの総合病院を二つ勧められた。
どちらもさほど遠くないが、夫の職場に近く、小児科医に通ったこともあったので、N病院に決めた。
これがラッキーな選択であったのは後でわかる。

▪️N病院
アキレス腱は切った直後に手術しなければいけない、というような慌てる必要はないらしい。
それでもまぁ早めに、と翌日N病院を受診する。
この病院の整形外科は初めての受診であった。
診察室に入ると、温厚な感じの同年代の男性医師が座っている。

怪我の経緯の説明をしながら、診察室の中を見渡すと、ベットの横の壁に新聞記事が貼ってあった。
その医師が地域の子どもたちのヴァイオリン🎻のコンサートに携わったという内容だ。
私の視力は当時2.0。医師の前の椅子に座っていても全部読めた。

医師は音楽に造詣が深く、幼い頃からヴァイオリンを習っていたのだろうと想像できた。医師にはなったけれど、今も音楽が好き。そもそもお坊ちゃまの顔をされている。

そんな事を考えていると、
「手術とギプスだけはめるのとどちらがいいですか?」と。
ギプスで何ヶ月か固定すれば、アキレス腱は自然にニョキニョキ伸びて繋がるのだそうだ。ほぉ。
どちらが早く治るのか質問すると、手術である、と。
早速入院の相談をする。

「手術をして、それから1ヶ月入院になります。」
普通はここで、皆さん絶望するらしい。

しかし聞いた瞬間、私から発せられた言葉は、
「1ヶ月も寝ていられるんですか?!🍀やったぁ☺️」
であった。
医師「あ? 嫌じゃないんですか?!💦」
私「上げ膳据え膳、読書し放題、夢のようです(^O^)」
医師「…そうですか。それは何よりです。」

私は当時仕事が激務であったし、家事も子育て(次女が中学生)も何かと忙しく、疲れていたのだ。
怪我を抱えて出社しろと言われれば、ただ辛いだけだが、入院ではどうしようもない。人に頼るしかない。
普段あれだけ働いているんだから、たまにはいいや!
飛行機に乗る前にスマホの電源を切る瞬間のような開放感を味わう。


入院は二日後。手術はその翌日となる。
足は固定され、松葉杖を与えられた。
「足を高くして休んでくださいね。」とのことであった。

病院を後にして、入院に必要な物を揃えた。勿論自分で松葉杖で歩き回って好きな物を買い揃える。
翌日は、長女の成人式の着物を選ぶ約束をしていたので、車で呉服店に出かける。
私は座ったまま、口を出すだけなので全然平気。
良い着物を見つけられて、私も娘も大満足でその日の買い物を終えた。

翌日、入院手続きをして、手術前の診察をする。
医師は足を見るなり、
医師「あなた! もしかして、あれから歩き回りましたか?!」
私「はい、必要な物を買い揃えて、昨日も出かけましたけど、寝る時は足を高くして寝ましたよ。」
医師「僕は、足を高くして、安静にして寝ていてください、と言いましたよね?!」
医師は泣きそうな表情だった。

足が腫れていると、手術をした時に、傷が大きくなってしまうという。
医師「僕、傷が大きくなると困るんです!」
私「先生、私の足の傷が多少大きくなろうが、私、平気
  ですよ。」
医師「女の人が何言ってるんですか?! 駄目です!
   僕が嫌なんですっっっ」

これは医師としてのプライドだな、と思い、はい、わかりました、と答える。
足は翌日までキンキンに冷やされた。

翌日、手術。
冷やした結果、私の足首は腫れが引いたそうで、医師はご機嫌であった。
部分麻酔がかけられ、ジワリと効き目が出た頃、

医師「大丈夫ですか? 気持ち悪くないですか?」
私「はい、エステみたいで気持ち良いです〜🎶」
医師「……あ、そうなんだ。」

大抵手術の時は、皆さん緊張して怖がる人も多いそうだ。
何しろ、アキレス腱の手術であるから、うつ伏せである。手術用の布がかけられ、ふんわりと暖かく、麻酔も効いて、ぼんやりと心地良い。
そう、まさしくエステのように心地良かったのだ。

自分は何もせず寝ているだけで、看護婦さんに優しくされ、先生は私の為に頑張ってお仕事をしている。
良いじゃないか🍀たまには人に世話をやかれたい。
私は結構疲れていたのだと思う。

医師が声をかけてきた。
医師「終わりました〜(^-^)。すごく綺麗にできましたよ。傷も小さいし♪」
私「そうですか。ありがとうございます。
  良かったですね〜先生。綺麗に縫えて。」

患者が言うことか。

▪️入院生活
手術後はひたすら部屋でのんびりする。読者三昧の日々を楽しむ。
たまたま開いていた個室は、産科用の赤ちゃんと過ごしたい人の為のお部屋だったそうで、他の部屋にはない木製の家具と、ソファ付きであった。

ベット脇の棚には本をずらりと並べ、ソファには家から持参したムートンとクッションを置く。
医薬品会社のカレンダーは入院中、自分の薔薇の絵のカレンダーと交代させてもらった。
洗面台の棚には家から持ってきた小物や置物を並べる。
持参したお茶碗は、一番好きなロイヤルクラウンダービーの、ロイヤルアントワネットシリーズのカップ&ソーサーだ。
入院中、食事の折に、看護婦さんが、やかんで麦茶を持ってきてくださるので、美味しくいただいた。

回診に来られた医師は、部屋をぐるりと見回し、
「うーん、個室を私物化していらっしゃいますね〜」
と、言いながら、本の背表紙を眺め、
「こういう本がお好きですか〜」
伏せてあるカップの裏を覗きこみ、
「良い趣味だ〜♪」
と、ひとしきり遊んで退出されるのだった。

▪️リハビリ
何日か経つと、寝たきりだと足の筋肉が落ちるために、リハビリが開始された。
手術後は車椅子で移動なので楽チンだ。夜、人がいない廊下を結構な速度で走ってみたりもした。

リハビリに行く為には、髪が邪魔にならないようにした方がいいので、毎日まとめ髪をした。
ある日は、肺を病んで高原病院にいる患者風の三つ編み
ある日は、アスリートが怪我により悔しい入院をしている風のきっちり編み込み(レスリングを想定)

寒い季節で、一階までの移動中は少し冷んやりするので、気分に合わせて持ってきた各種ストールを羽織ってリハビリ室に行く。
ある日はパシュミナ、ある日はカシミア、ある日はニット🧶

リハビリの後は疲れるので売店でおやつを買う。朝は毎朝新聞2紙と飲み物を買っていたので、売店の人とは顔馴染みになっていた。
「リハビリの人が言ってた珍しい患者さんって、あなたの事ね〜」と。
「珍しいですか?」
「珍しいわよ〜あはははは」
笑われた。


リハビリで歩く練習を始めると驚いた。
何日か歩いていなかっただけであるのに、歩き方を忘れているのだ。
何度足を出そうとしても、どうやって歩けばいいのかわからない。
療法士さんから、
「前の足を追い越すことだけ考えてみてください。」と教わると、歩くという感覚が蘇った。

これは感動だった✨
当たり前のように歩いていたのに歩けなくなり、また歩き出すことができる。
怪我は痛みを伴うが、新しい経験であり、それが私をワクワクさせる。

▪️退院後
一ヶ月後、松葉杖で退院する。怪我は左足なので、問題なく車の運転はできる。
久しぶりにコンビニに寄ってみる。

そのコンビニは駐車場はとても広く、停めやすい。
昼時は、店の車止めのところに、カップラーメンなどを鳶職の人たちが座って食べている。

この店舗の入り口は自動ドアではない。
ドアの前に立って手で押してみる。びくともしない。
『おや?』
何度試しても動かない。
なるほど、あのドアは手で押すだけではなく、足で踏ん張っている上に、手で押すから開くのだと知る。
『おお✨そういうことか』と感動する。人間の身体はよくできている。
様々な動きは、全身でバランスを取り、調整がされているのだ。

私がなるほどと思いながらボーッとしているところに、先程の鳶の人たちがラーメンを置き、そばにやってきた。
そういえば、私が車を降りた時から、私の様子を眺めていたようだった。
二人でドアを両開きにしてくれた(^-^) ありがたい✨
心からの感謝の言葉をかける。

その後も度々リハビリの帰りにそこに寄ったが、ドアを開けてくれたのは、近くで工事中の作業着の人や、年配の女性、中学生の子たちだった。
なおスーツ姿の男性は誰もこちらを見ようともせず、さっさと入って行った。なんなら、私が全身で倒れけかるように押したドアの後から入ってくる。
それもまあ日本ではよくある事だと。

ヨーロッパとは違うなぁ、くらいにしか思わなかったが、手を貸してくれる人々への感謝は今も忘れない。
もしそういう場面に出会ったら、私も必ず手を貸そうと思う。

またコンビニではアキレス腱断裂仲間に何回か会った。彼らは私が選ばなかった総合病院に入院して、手術後1週間で退院だったという。

N病院は1ヶ月だったと話すと、
「今は1週間が当たり前なんですって。でもそれじゃ短すぎて、家に帰っても大変なだけだって、みんな言ってましたよ。1ヶ月置いてくれるのは患者の為よねぇ。良い病院だと思う。」

2週間を超える入院は、病院側にとって負担になる。であるのに、患者の身体の負担を考慮して長く置いてくれたN病院に感謝のみである。

▪️完治とは
仕事にそろそろ復帰しなければ、と思ったのは、退院後4ヶ月ほど経った頃だ。
もっと早く復帰できるのではと思っていたが、『完治』の診断が出ないと、会社から出社が認められない。

その後、医師に相談すると、
「完治とは、走れるようになった段階で判断しますね。」
まだ無理だが、流石にこれ以上休むのも無理だ。

医師に頼んでみる。
「先生、完治の診断を出してください。お願いします。
私、もし早く復帰して足を痛めても、絶対先生を訴えたりしませんし、またアキレス腱切れたらもう一度入院しますから。大丈夫です!」

医師は、
「…本当にあなたという人は💦」とのたまい、嫌々完治の診断書を書くことに同意してくれたのであった。
先生、いろいろお世話になりました、なんかすみません。


松葉杖を使わなくなった頃、テレビにバレエダンサー熊川哲也氏が記者会見をしていた。
足の怪我で予定していた舞台に立てないという。
怪我はダンサーには付きものであるが、驚いたのは歩き方。
片側だけ松葉杖をついて登場されたのだが、怪我をした足の側に松葉杖をついている😱💦

怪我したことのない人あるあるだが、正解は、
[松葉杖は片側だけで使用する場合、健康な足の側の脇に挟んで持つ]
そうやって、松葉杖と健康な側の足に重心をかけ、力を分散し、怪我をした足を庇うのだ。
ドラマなどでもよく間違っている。演出の人も俳優さんも経験がないから知らないのだとわかる。

①松葉杖と怪我した足を同時に前に出す→健康な足を同じ位置まで持っていく
或いは、
②松葉杖と怪我した足を同時に前に出す→健康な足を松葉杖の位置より更に一歩前に出す

私は①の歩き方でまず始め、慣れて安定して歩けるようになったところで②をやってみた。
②だと先へ先へと進むが、慣れるまでは注意が必要だ。

このように歩みを進めるのだが、間違って怪我した側で持ってしまうと、健康な側の足にも重心がかけられず、また松葉杖でも怪我した足は支えられず、とにかく痛くて歩けず、グシャグシャになる。
というか痛くて進めない。
私はリハビリ室で教わった時に、この事を初めて知った。

私自身も、怪我をする前は、片側の場合は何となく怪我をした側に持つように勘違いしていたので、
「へえ、知りませんでした〜♪」と言ったついでにそちらも試した。
一歩も進めなかった(^◇^;)

「なぜ試す?!」と療法士さんに叱られた。


熊川氏は、登場から数歩の移動だけであったが、グシャグシャだった(T ^ T)
相当な痛みだったはず。
バックヤードからの会見のテーブルまで、あの状態でよく辿り着いたと思う。

松葉杖は、[各家庭に1組必ず常備しておきましょう♪]という類の物ではないから、勿論病院で渡されたはずである。

何故その病院で使い方を教えてくれなかったのか。謎。

私はテレビに向かって叫ぶ、
「誰か教えてあげて💦」

病院で指導すべき事であるけれども、もし皆さんがそんな現場に居合わせたら、
『健康な足の側に持つんだよ☝️』と優しく教えてあげてくださいm(_ _)m
間違った使い方は危険です。

怪我は新しい経験を生み、知識を増やす。
面白い。ただし、重篤な症状でなければ、である。


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