ふざけてるつもりはない〜ただやっているだけ〜

▪️お妃
昔、娘がお座りができるようになって、部屋の真ん中でご機嫌で座っていた時のこと。
その目の前に立ちはだかって、両手をカマキリのように高くあげてみた。無表情で。

娘は恐らく意味がわからず（意味などない）、ニコニコしつつも、私を見上げて、

『…あれ?』と一瞬ポカンとした顔をした。

それからしばらくして、娘は1歳、10語くらいの言葉を話せるようになっていた。

母の膝に乗って、絵本を読んでもらっていた。
ディズニーの名作童話シリーズである。
白雪姫だ。

白雪姫に呪いをかける場面、両手を高く上げた魔女（継母であるお妃）の姿を、ページがめくられた瞬間に見た娘は、魔女を指差して、はっきりと言った。

「ママ　!!」

母があんなに笑ったのは、他に見たことがない。
お母さん、それは同意ですね?


▪️真似したい
1999年公開の『初恋のきた道』、チャン・ツィイー主演。
公開されてからしばらく経って、地上波で放送された。炬燵でのんびりおやつを食べながら観る。

チャン・ツィイーが、初恋相手の男性に惹かれ、機会がある毎に、覗き見しては、嬉しくて嬉しくて恥じらっている。
相手はそれに気づくことはない。
気づかれなくても見ているだけで嬉しい。嬉しくて嬉しくて一人ではしゃぐ姿が可愛い。とにかく可愛らしい。

あんな風にただひたすら相手を想い続け、一挙手一投足を目で追う。相手を想うだけで嬉しい。

過去にそんなひたむきな自分はいただろうか、いやいない。
良いなぁ、若いって、良いなぁ、あんなに可愛いくて。いろいろ考えながら画面に夢中になっていた。

しばらくすると部屋の入り口で娘が叫ぶ。
絵本のお妃を指差した娘。あれから16年。

「……ママ!!」

呆然、茫然、仰天, 動転,  驚嘆、いろいろ複雑な思いが混ざった声だ。
中でも失笑が一番強め。

娘が見たものは、三つ編みをした私の後ろ姿。
画面に映る、三つ編みのチャン・ツィイーの姿と重なったそうだ。

重なっただけで、別に似ていたわけではない。

▪️孫の目には
昨年のこと、娘から動画が届いた。
家族で夕食後にバラエティー番組を観ている動画で、
孫が楽しそうにしている様子が映っている。

テレビに映っていたのは藤原紀香様で、もう一人のゲストやその他大勢の方々と共に、カラオケボックスではしゃいでおられる。
このところ、梨園の妻としての艶やかな着物の姿しか知らない。

あのスタイルだと、着物の帯から下の部分が、小柄な人よりも一頭身分長く柄を出せる。素晴らしい。
着物の製作の依頼をされた人も、作り甲斐があるというものだ。

この日は完全なイメージチェンジ、リラックスした姿だ。バラエティーだしね。
シンプルな黒のV字ネックのトップスに、黒のパンツ。
珍しく髪をストレートにして下ろしている。

その時、孫がやおら椅子の上で立ち上がって、紀香様を指差しこう言った。

「あ!! ばぁば!!」
娘と旦那さんのゲラゲラ笑う声。
「この人、ばぁばなの?」確認する娘
「うん、ばぁば!」答える孫

＊３歳の子どもの発言につき、何ら責任はおえません。
また紀香様を見たら、こう発言せよとの教育もしておりません。

その動画でしばらく笑った後、娘たちとビデオ通話をすることになった。

ヘアアイロンで髪をストレートに整え、手持ちの黒のＶネック（愛用のUNIQLO）のトップスに着替えたのは言うまでもない。

「ばぁば!!!」
画面に映る私を、孫が指差しながら叫ぶ。
本物です。

【模倣は最大の賛辞である】

▪️大河ドラマが好き
①ゴミを出しに行こうとしたら、夫が、
「重い?出しに行こうか?」と言ってくれた。
力持ちなので勿論大丈夫。断りの返事をする。

「大丈夫、私、検非違使の別当だから。」
「……うん。」

納得するんだ。

②ご飯を出して、温かいうちに先に食べて、と声をかける。
「悪いね、お先に。」と夫。

「大丈夫、私、従五位の下だから」
「……うん。いただきます。」

私の方が官職が下だったようだ。

③夫に何か頼まれると、
「とんでもないことにございます」で返す。

何の返事にもなってないけど、別に白黒つけなくていいらしく黙っている。
会話終了。

④「呪詛したい!」（対象は特にいない）と騒ぐと、
「やめといた方がいいよ」と即答。

一応、どこの誰を呪詛したいか、聞いてからにして。

▪️朝ドラが好き
主人公　寅子の事実婚の相手、航一の義理の母、百合さんは後妻で実の子供がいない。
だから航一の息子と娘に加え、寅子の娘も一緒に暮らすようになり、とても嬉しいと告げる場面がある。
百合さんを演じるのは余貴美子。名演でした。

朝ドラは朝食の時観るが、名作なので勿体無くて夜も観る。

放送終了後、お茶を飲みながら感想を言ったり、つい来週の展開のネタバレを口にする。
google様に教えていただいているので私は知っている。

「それ、どうしてそうなるの?」と質問された。
この日の朝ドラ終了後は、どんな質問が来ようと、脈絡なく返す答えは一つ。

「ほら、私、後妻で実の子がいないじゃん?」

「……そうなんだ。」

ちなみに、我々は共に初婚の上、実子が二人いるけれど、
その返事でいいのだな?  
聞かないけど。

夫は目を逸らして答えてから、ソファの方に行った。
犬に癒しを求めに。