イワイの食のレガーレ

僕と食の出会いは19歳のとき
子供の頃は共働きの両親のもと愛情はそこそこに食事は外食と買ってきた弁当とときどき母の手料理とともに過ごした、母の味は薄味だった
高校に上がってからはマクドナルドでアルバイトしてたのでマック食べながららーめんを主食にしてぶくぶくと育ち、進路は小さい頃から決めていた父親の作った味の濃いにんにくとチーズが入ったトマトソースに感激した幼少の記憶と自営業でバリバリ働いてる両親を見て自分のお店が欲しかったことを考えイタリア料理の道へそのまま専門学校。卒業後都内の名門イタリアンへお情けで入店。
そのお店で初めて食べたモッツァレラチーズの美味しさが僕と食との出会いだった。

そして食と出会った僕と食を“繋げてくれた”出来事が起きたのはそのお店に入って一年目のお話。

軟弱者を絵に描いたような自分は心が折れていた
毎日の長く辛い労働、他人から自分へ降り注ぐ怒り、ひしひしと感じる失望、あとはここにかけないこともいろいろ。だけど見栄っ張りだった僕はスゴスゴ実家に出戻りはしたくないという気持ちだけで続けていたがもう辞めるのも時間の問題かなと自分で思っていた。

僕は先輩に休みの日は美味しい食事を必ず食べろと言われ多くない給料をなんとかして毎週食事に行っていた、最初は休み明けに毎回先輩にどこに食べに行ったか聞かれ行ってないと本気で怒られるのが嫌でイヤイヤ行ってたけどこれに関しては結果としてこの経験がとても役立ったので感謝してます。
んで、ある郷土料理が強いイタリアンに行ったときのことなんですが

お盆のランチから少し外れた昼過ぎ、僕は後輩と二人で当日お店を予約して食事へ行きました。電話したときは予約がいっぱいで席が空いたら連絡いただけるとのことで近所のコンビニで待ってると折り返し、テラスなら通せると言われましたがこの酷暑のなかテラスへ通すのはどうなんだとお店の采配に疑問は持ちつつお腹も空いたので了承、お店に向かうと入り口で若い男性にお店の入り口の横のテラスへ通された。
今は移転して地下に入ってしまったのでなくなってしまったけど当時のテラスは木陰とパラソルで暑いけど不愉快じゃないギリギリのラインで僕はなるほど、お店のことしっかり理解してるんだなと勝手に解釈。
そのままその男性がオーダーを取りに来たので食事は食前酒付きのシェフのおまかせコースを注文、料理を待つとサービスの男性が食前酒をテーブルで開け注ぎながらお酒はたくさん飲むか、と聞かれ飲めると話すとそのサービスのスパークリングワインの残りをすべてをクーラーごと机においてそのまま去っていきました。
一杯目を飲むと暑いテラスでキンキンに冷えたスパークリングワインの美味しさに思わず唸る、そのままさらっと飲み干すと最初のお皿が出てくる、二杯目のドリンクを聞かれるがシンプルにお金がなかったのでお水でいいと伝えると何故かもう一度お酒をどれぐらい飲むかと今日のこのあと用事があるかを聞かれました。僕は正直に何もないから帰って寝ると伝えると彼は少し嬉しそうに今日は暑い中テラスに通してしまったので僕たちからおもてなしをさせてほしいとのこと、よくわからないまま頷くとそのあとは彼の独壇場で前菜、温菜、パスタ、パスタ、メイン、ドルチェ全てにそのテーブルに残していったスパークリングワインを使いその場でカクテルを用意してくれました。それは当時の僕には理解が及ばない様々な技や知識を駆使してそのお料理お料理にあうカクテルを作ってくれた、まるで料理みたいだなと思ったのを覚えている。
食後に作ってくれたオレンジリキュールとフレッシュのオレンジで作ってくれたオレンジスパークリングワインは今でも忘れられない。

まぁ今思えばそのスパークリングワインは一本原価800円以下の安物だし、ランチの終わるギリギリに入ったからスタッフ達の手は空き始めるころで、明らかに飲食やってる若い子が暑い中テラスになっちゃったから周りにお客さんもいないしせっかく食べに来たから、からかい半分で良くしてくれたんだと思います、だけど働き始めのペーペーだった僕にはそのすべてが衝撃で、その時間の中のすべてが華やかでかっこよくて、僕もこんなことがしたいと強く強く頭の中がいっぱいになった。

ここで僕と食が繋がった。強制された仕事じゃなく、お金をもらうから発生する義務でもなく、自分の意思でもっとかっこよく素敵なことがしたいと思った、それをするために初めて僕は自分の意思で食とレストランとお客さんに向き合った。

これが私と食のレガーレ。

特別扱いされてるしちょっと特殊な事例だから他の方たちとニュアンスが大分違うとおもうけど“僕と食のレガーレ”で考えたとき一番最初に出たのがこれだったので書いてみました。
拙い文章ですが読んでいただいたかたには最大の感謝を、ありがとうございました。

イタリアワインのアライさんでした。

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