読書ノート ヘーゲル哲学に学ぶ 考え抜く力

川瀬和也
光文社新書

哲学で磨けるビジネススキル

 イノベーションを引き起こすためには、「アナロジー思考」が重要だとしばしば言われる。アナロジー思考とは、一見すると無関係に思えるものの間に構造的な類比関係(アナロジー)を見出す思考法のことである。この思考法によって全く新たな発想がもたらされ、イノベーションやブレイクスルーが引き起こされる。

 哲学を学ぶことは、このアナロジー思考を磨くために役立つ。

 考え抜くために最も重要なことは何だろうか。ーー
ーーそれは、「結論が出ない苦しみに辛抱強く耐える」能力である。

 考え抜くことは、想像以上に苦しい。多くの人は、早く結論を出したいあまりに、少しでも正しそうに見える「結論モドキ」にすぐ飛びついてしまう。しかし、そこからは真に新しいアイデアは生まれてこない。互いに対立する様々な考え方を精査し、安易に結論に飛びつかない態度こそが、「考え抜く」ために人が身につけるべき態度である。

考え抜くための方法論としての弁証法

 弁証法はまさに「考え抜く」ための方法論である。ヘーゲルは弁証法という言葉を使って、二者択一に思えるような場面において、安易にいずれかの選択肢に飛びついてはならないということを我々に教えている。この意味で、どっちつかずの状態に耐える力を与えてくれるのが、ヘーゲル哲学である。

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