見出し画像

「虚構推理」---九郎は琴子を愛しているのか?

アニメで「虚構推理」というのを見て続きが気になったのでマンガを読んだら、これがなかなか面白い。

主人公は岩永琴子という義眼で義足の子と、恋人である桜川九郎。
琴子は11歳の時にもののけに誘拐されてもののけと人の世の通訳のような巫女のような神の領域になることの代わりに片目と片足を捧げたと。
で、九郎は幼い頃に人魚とクダンの肉を食べたために不死になった男子。

この二人が様々な怪異による事件を科学的、心理学的現象だと説明することによって、怪異やもののけ、魔、化け物などを守り、人間社会も守るというのが大きなストーリー。

私はすっかりこの物語が気に入ってしまった。
やはり琴子と九郎のコンビがとてもいい!!私にとっては琴子が本当に可愛い。彼女のルックスと辛辣さのギャップ、九郎のクールなところ、二人のコンビが私にはかわいいとすら思える。

アニメや漫画を通して、一体二人の関係はどうなっているのか?という疑問を持った人も多いかと思うのだけど、きちんとマンガを読むとやはり九郎は琴子を大切にはしているんです。

しかし愛しているのかというと、まだはっきりと明確にはなっていないと思う。

九郎と琴子

九郎はヤギのようだから
琴子の九郎に対する第一印象はヤギのようだということ。いい意味で、ヤギは人畜無害でのほほんとしているように思うけど、岩や絶壁のような厳しい環境でもたくましく生きているという意味の印象だ。

そして実際に彼は感情の起伏が少なく、のほほんとしているのでわかりにくいとは思う。琴子が憧れるようなカップルになれていないのは、もちろん琴子の憧れが少女チックあるいは濃厚な恋愛であることも原因だけれども、九郎が琴子の誕生日も憶えていない、甘い言葉で囁くこともなく、時には激しい突っ込みや蹴りなどもあることから、九郎は本当に琴子が好きなのかが視聴者あるいは読者でも不安になるところだ。

しかし、〔鋼人七瀬の最後〕でも、また〔岩永琴子の逆襲と敗北〕の途中でもちょっとした合間に見せる九郎の発言や表情に注目したい。

イワナガヒメという告白
鋼人七瀬の最後のパートで公園を歩きながら、イワナガヒメの話を出す場面がある。これは岩永琴子の逆襲と敗北の一番最後のパートでも繰り返される話だ。

イワナガヒメは古事記に出てくる姫で、永遠の命を持つ姫のことである。父親はイワナガヒメとコノハナサクヤヒメの二人の娘をニニギノミコトに嫁がせたのだが、ニニギノミコトは美しいコノハナサクヤヒメだけを娶り、姉のイワナガヒメを送り返してしまった。
それでニニギノミコトの子孫は永遠の命を得ることなく人間と同じように短命になったという神話だ。

九郎はこの話を例えて、不死身の九郎は、やはり永遠であるイワナガヒメ、つまり岩永琴子と一緒でないといけないと言ったのだ。これについては2回も出てくるセリフで、告白でもあるし、プロポーズっぽくも聞こえる重要な部分だ。

ここだけでも九郎はきちんと琴子を好きであることを証明しているのだが、今度は逆に琴子がクールに返してしまったりして、明らかにできないのだ。

九郎の心配
最初に九郎が琴子を心配していたということが明らかになったのは、鋼人七瀬事件において元カノのサキさんとの会話で「(琴子を)もちろん大切にしてますよ」だし、「あいつは危険を顧みない無茶なところがある」というセリフだ。

実際に九郎が琴子に告げずにこの事件を一人で解決しようとしたのも、琴子が危険な目に合わないようにしたかったからだ。

さらに岩永琴子の逆襲と敗北の中で、キリンの怨霊と対峙した時に、琴子とは九郎に助けてもらうのでなく自ら戦って手に傷を作る場面がある。

その傷を九郎が見つめるシーンで彼は何を思ったのか?
それは彼女はもののけたちの神であるけれども生身の人間であるということで、傷を負うことも、死ぬこともあるということだ。それを実感したといってもいい。

また九郎は「彼女はしあわせになるべきだ」とも言っており、それは琴子が片目と片足を犠牲にして秩序を守るために戦っているということに敬意も払い、またいい意味で同情もしており、好意を持って見つめているということに他ならない。

いくつもの矛盾と苦悩
しかしそれにしても二人の関係と今後を考える時、どうしても矛盾が生じる。

神話のようにイワナガヒメと九郎ならば何の問題もないが、実際は岩永琴子は神であるが人間であるので命に限りがあるという点。

また秩序を守るのが琴子の役割であるが、不死身である九郎がそもそも秩序に反する存在であるということ。

さらに琴子が九郎を愛することそのものが実は秩序に反しているかもしれないということだ。

つまり秩序を守ろうとすることは九郎を最後には殺すということになる。

ここに琴子と九郎の苦悩がある。
九郎は気が付いていないふりをしているだけで、きちんとわかっているはずだし、もし琴子が九郎と六花さんを普通の人間に戻すことができたとすれば、つまり秩序を戻すとしたら、琴子とは一緒にいられなくなってしまうのだ。なぜなら琴子だけが規格外だからである。

また琴子が六花さんを排除するなら、もちろん九郎も排除せざるを得ないことになり、琴子は一人になってしまう。

これが琴子が譲歩した大きな理由で、当初思ったよりも九郎の存在が大きくなっており、彼を殺すようなことはできないと思ってしまったことだ。
これは一つ間違えば、琴子が死ぬことになるということも示唆している。神だから間違えられないってこと。

でも私は思うのだ。もしかすると九郎は琴子になら殺されてもいいとすら思っているのではないかと。飄々として琴子への気持ちを明確にしないところは逆にいつか死別する運命を予期してのことではないかと思ってしまう。

が、しかし私は最後に犠牲になるのは琴子なのではないかとも思うのだ。
常に正しい道を行く琴子が最後に選ぶのは神としての正しさなのか、愛としての正しさなのか? 
本当に目が離せない作品だ。

あとがき
ちなみに私は琴子と九郎はやってない、つまり琴子は処女だと思っている。彼女は巫女のような神のような人なので恐らく処女ではなかろうかと。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?