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「ヨスガノソラ」---辻褄が合わねぇ、もったいないよね

何の知識もなく「ヨスガノソラ」というアニメを見た。何度見ても意味がわからずにwikiで調べたら、なんとこれはゲームが原作で、しかもエロゲーなんだとか。
そのエロゲーでさえよく知らなかったし、ゲームで何をどうするのかわからなかったが、つまり色んな女子と付き合うとか肉体関係を持ったらゴールってことなのでしょうかね?

ま、そのゲームはいいとしても、アニメを作るならもっと辻褄が合うようにしないと理解不能ですよ。

光源氏的な感じなの?
はるちゃんはとてもモテる都会から来た高校1年生で、双子の妹のソラちゃんがいる。
とにかく田舎町に引っ越してきてモテモテなんだよ。

アニメでは同じ学校の女の子3人と関係を持つのだけど、えっ別れたの?、えっもう次?、という感じなのですよ。
別れた経緯もよくわからずに進行するので、結局ちょっと盛り上がってヤッたみたいな話になっていて、それがとても残念。

常に背景にはハルとソラの繊細な関係、特にソラの表情や行動から読み取れる兄以上の想いを持っていることが感じられるので、源氏物語でいうところの紫の上っちゅー感じかなと思ってもみました。

光源氏は幼い紫の上を義妹として迎え入れたのに、大人になったら婚姻関係を結ぶわけで、そういうところでモチーフが使われてるのかな?とか思ったりしたわけです。まぁ、これは私の大きな勘違いだったのですが。

文芸作品にもなりえたのに
アニメは辻褄が合わないために、ハルが次々と女性を変えていくことでちょっとしたゲス野郎になっちゃってて、せっかく後半のソラとの関係に水を差しているように思えてしまう。

色んな女性と肉体関係を持ったのはソラに対する想いをごまかすという複雑な心理を描いたのだとしても、もうちょっと上手く描けなかったのか?

例えば、色んな女性にアプローチをされて、キスしたり関係を持とうとしたときにフラッシュバックのようにソラが出てきてそれ以上関係が構築できないとかね。普通にヤッちゃうと結局性欲処理的な扱いになってしまい、ソラとの純愛が鈍ってしまうのだ。

描き方ひとつで文芸的な作品にもなりえたし、ハルとソラの関係が単なるエロい近親相姦でなく、非常に純粋なものに昇華させらたはずだ。

奈緒の魅力がわからない
アニメの中盤から後半に出てくる奈緒がまったく理解不能な人で、この気持ち悪さはなんだろうかと考え、可愛くないからかな?とかも思ってみたし、過去に関係を迫られたというところが気持ち悪いのかな?とかも考えてみた。

で、わからないので結局Googleしちゃったんですよ。
どなかたかの考察を読んで、あー、そういうことかと。
つまり、アニメでは奈緒というのはとてもいい人で、過去の肉体的関係もハルは「嫌じゃなかった」と言わしめてるのだけど、原作では奈緒がほぼハルをレイプした感じの事件であり、ハルと奈緒は特に関係を持たないのだそうだ。しかもソラは徹底的に嫌っているのだとか。

あー、それでハルと奈緒の関係が不自然というか、不穏なものを感じたのね。こういう気持ち悪い感触をおぼえた視聴者って多いのではないかな?

圧倒的なソラの魅力
その奈緒の魅力が不明瞭という気持ち悪さと対照的に、ソラは圧倒的な魅力の持ち主であると思う。
そのルックスから衣装、行動や言動に至るまで魅力的なのだ。

で、ここがとても重要で、重いテーマである近親相姦をどう上手く美しく描くべきかというと、ソラは圧倒的に魅力的でなければならない。
単なる美少女ではダメなんですよ、きっと。
恐らく触れられない感じがするくらい神がかり的、神聖な雰囲気でないとダメなのです。

それで言うと、キャラクターデザインとしてのソラは上手くいっており、また彼女が診察室の椅子でくるくる回りながら過去を回想しているシーンや、ベッドで寝ているシーン、風で髪が舞っているシーンなども人間離れした雰囲気を醸し出していてグッド。

その神がかり的な魅力があることで、ソラは他の女の子とは別次元になるし、他の男では扱えない、ハルしか触れられない女神みたいに感じられ、重いテーマも「これは仕方ないでしょ」と視聴者は納得する。

子供のころに初めてキスするこの場面も、退院してきたソラにドキドキしたハルのシーンも、ソラが神がかり的な魅力があるからこそ成立するのだと思う。
ソラが他の男子と関わるシーンがなかったので学校での男子全体の評価がいまひとつわからないが(同級生の仲良しの男子は別として)、そういう他の男子との関りも物語に入ってくると、ハルの心理的変化や葛藤が描けたのではないかと思う。

残念なことにアニメではハルと他の女の関係の方がクローズアップされ、ソラが嫉妬するということに終始しているため(ハルと女たちの肉体関係が主のゲーム原作だから仕方ないのか?)、どうしてもハルに肩入れし辛くなってしまう傾向にある。

ただ、最後の2話で彼が子供のころから感じてきたソラへの気持ちと葛藤がようやく聞けて納得はするのだけど。

湖で生まれ変わった?
日本神話に出てくるイザナギとイザナミは神様から生まれた男神と女神で、兄妹のようでもあり夫婦のようでもある。日本神話だと性別のない神様と、対(カップル)で産まれた男神と女神がいるのだけど、最後に湖に二人で沈んでいくことで対の神となったような感じもするし、生まれ変わったとも取れる。

というのも、最後に同級生たちがハルとソラの家をぐるっと一周すると、ソラのうさぎのぬいぐるみがビリビリにやぶかれているのに、電車の中にはうさぎがいるではありませんか。
これはちょっとした間違いなのか、あるいは電車の中のハルとソラは生まれ変わったからなのか、それともあの世なのか、今一つ釈然としないですね。

ま、でも二人がそれでも純愛を貫き、遠くの国へ二人で旅立つという結末は私は正解だと思う。

きちんと描けばエロアニメでなく文芸作品になり得るはずなのだから、次回からはちゃんとやってくれ。
アニメの脚本の出来は別として、ストーリーとしては非常に面白いと思う。

私は一気にソラちゃんのファンになった。

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