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【あつ森】クリーム島青春与太話(ラムネルート2)

(前回↓)


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広々としたリビングに案内され、メイドさんが用意してくれたお茶と菓子を囲む。猫宮家にとっては普通に菓子をつまみながら雑談する時間なんだろう。まさかとは思うが何か礼儀作法とかあるんじゃないだろうな。例えばティーカップの紅茶は啜って飲むなとか。

話を聞くことに徹していく内に猫宮さんの家のことを少し知ることが出来た。

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なんでも猫宮さんの父親は勢いに乗っている大手IT企業の社長なんだとか。で、その妻のマダムショコラの要望でこの豪邸を買い取ったんだそう。

一方、トビーという男は高級ホテルを経営している社長の息子で自身も父親のホテルで働きつつ経営学を学んでいるという。プライベートでは金を使って相当派手なことをしているようだが…。

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トビー「僕の世界一周旅行も単なるバカンスではない。将来、支店を経営する為の土台になるかを確かめ研究する為でもあったのさ。」

ショコラ「トビーさんの行動力には驚かされるわねぇ。ラムネ、あなたもそう思わない?」

ラムネ「え、えぇ…。」

猫宮さんの反応は…微妙そうだ。むしろ若干引いてるようにさえ見える。

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トビー「そうそう、まだ君の話を聞いてなかったね。君は今までどんな生活を送ってきたんだい。」

げ。聞き役に徹してた俺にいきなり話題を振ってきた。正直あまり喋りたくなかったんだがなぁ、仕方ない。

「俺は皆さんのようなすごいことは何もしてないです。朝起きて、学校行って、帰って、宿題して、ダラダラして。それの繰り返しですかね。」

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ショコラ「あらまぁ、随分とありきたりで個性のない1日ですこと。」

まぁそう言われるよな、分かってたさ。分かり過ぎてたから悔しくはない。ちょっと癪なだけだ。そう思ってた時に思わぬ助け船が来た。

ラムネ「そうかしら。毎日行く学校で授業を受けて友達と色んなことを話して…とても充実してると思うわ。」

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ラムネ「それにね、加納くんは勇敢な人よ。今日、私が男の人に絡まれて困ってたところを助けてくれたの。」

「俺は助けたというか放っとけなくて。それにあの時は緊張で足が震えてみょうちくりんなことを言っただけで…」

ラムネ「ううん。それでも加納くん、とってもかっこよかったわ。」

そこで猫宮さんはお茶会の場で初めて笑顔を見せた。…これは本人がその気で無くても相手がその気になりかねない笑顔だ。

トビー「そうだったのか。ならば僕からも感謝しなくてはね。僕の代わりにフィアンセを不埒な男達から守ってくれてありがとう、と。」

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こんな感じでお茶会の時間は過ぎていき、日が落ちそうなところでお開きになった。出された紅茶と菓子の味は全く覚えてない。ただただ解放感だけが押し寄せてくる。俺が帰ろうとすると猫宮さんが車を出させて俺の家まで送ると言い出したが丁重にお断りした。

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ラムネ「本当にいいの?」

「今日は1人で帰るよ。ありがとう、猫宮さん。」

とにかく早く帰ろうと思い踵を返そうとした時だった。誰かがおーい!と呼ぶ声がする。声の主はトビーか??

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トビー「ああ、君!加納くんだったかな。ちょっといいかい?」

トビーが手招きして俺を呼んだ。俺が行くなり耳を貸してと言われその通りにすると、耳元に顔を寄せて他の人に聴こえないくらいの声量で囁いてきた。

トビー「くれぐれもラムネに手を出さないでくれよ。彼女は将来僕の妻になるべくひとだからね。」

「…………………………。」

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猫宮ラムネと顔見知りになり、現実じゃないような時間を過ごしてから数日。俺の学校生活にすこーしだけ変化が現れた。授業や昼休みの合間に猫宮ラムネとすれ違うと彼女に笑顔で手を振られたり挨拶されたりするようになったのだ。それはそれで悪い気分にならない。しかしそれと同時に同学年の男子生徒らの距離が開いてるような気も感じた。ハムカツとシベリアは変わらずに接してくれてるが、それ以外の連中は俺の顔を見るなりわざとヒソヒソと何か話すようなそぶりを見せたり鬼のような形相で睨んだりする。

そしてある日のことだった。俺は靴箱に入っていた一通の手紙を教室でこっそり読み返していた。ハートのシールの封を解けば無地の便箋にワープロで打ったような文字が一行だけ。

『今日の放課後、屋上で待ってます。 猫宮ラムネ』

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正直何か臭うものを感じてたが…もし本当に猫宮さんが送ったものだとしたらという気持ちもあったので手紙の通り屋上までやってきた。しかし屋上で待っていたのは猫宮さんじゃなかった。いたのは…

「おい、マジで来やがったぜ。」

顔も名前も知らない男子生徒達が顔をギラギラさせて俺に詰め寄る。

「加納柊二ってのはテメェか。おめえ、俺たちのラムネちゃんと2人きりで下校したんだってなぁ??」

「いや…まずアンタ達なんなんだよ。」

「オレ達はなあ!『猫宮ラムネファンクラブ』幹部なんだよ、知らねえのか!」

全く知らない。そもそもそんなクラブが学校にあることも知らない。絶対本人非公認だろそれ。

「オレ達の断りなしでラムネちゃんに気安く話すとかふざけるなよ!」

「そうだ!ラムネちゃんを助けたぐらいで抜け駆けは許さねーぞ!!」

えぇ…なんだそりゃ。ていうか、助けただけで抜け駆け言うくらいならお前らが助けに行けば良かっただろう。猫宮さんの熱烈なファンを名乗っときながら情けない連中だ。と心の中で吐いたつもりだったがどうやら顔に出てしまったようだ。

「なんだその顔は…てめー!一度体にわからせないといけねーか?ああん!!」

制服の襟を勢いよく掴まれる。あーあ、俺このまま殴られるのかな。と思った時だった。

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キャビア「ふーん、そういうこと。」

思いもよらない救いの声が降りかかってきた。皆が一斉に声のした方を振り返ると男達の顔から血の気がさーっと引いていく。そこに立っていたのは俺のクラスメートで隣の席の女の子だ。

「「「お姉さま!!!??」」」

キャビア「ラムネのことをチヤホヤするのはあなた達の勝手。でもあなた達の勝手なルールで人を傷つけるなんて論外。」

いまいちよく分からない。いや彼女の言うことはご最もなんだけど、何が何だか分からない展開だ。

キャビア「あなた達は暴力でなんでも解決しようとする人…なんてラムネが知ったらどう思う?」

「お、俺たち今日はここらで止めるので、どうかラムネちゃんにはこのことはご内密に。」

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俺に詰めよってた猫宮さんファンクラブの男達が慌てて屋上から出て行く。その情けない後ろ姿を俺と女の子は黙って見送るのだった。

「マジで助かったよ、ありがとう。」

キャビア「別に。ちょっと嫌な予感がしただけ。」

女の子の方はクール、というよりさぞ興味がないといった雰囲気だ。

「アイツらの言ったお姉さま、てどういう意味だ??」

キャビア「言葉の通り。私は猫宮キャビア。猫宮ラムネは私の双子の妹。」

「双子!!?」

マジか。隣の席にいつもいるこの子もお金持ちのお嬢様だったのか!お茶会の時に猫宮キャビアの話題は何一つ上がらなかったから気付かなかった。でも言われてみれば彼女の苗字も猫宮だ。うーん、でも…正直似てな…

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キャビア「二卵性だから似てないだけ。」

え?この子エスパー?心を読まれた?

キャビア「それよりあなた、あの子に気に入られてる。だからあなたは今、敵が多い。」

「それってどういう…」

キャビア「忠告はした。それでもラムネと関りたいなら…気をつけて。」

具体的でないけど意味深な忠告だ。それだけ言って猫宮キャビアはさっさと屋上を後にするのだった。

(次回↓↓)


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