【あつ森】クリーム島青春与太話(チョコルート3)
前回↓↓
そういうことで、中学時代からの同級生4人でプール施設『ニューホライズン・ラクーン』へ遊びに行くことになったということだ。オンシーズンと呼ぶ時期にはまだ早いが、それでも土日となればそれなりに人はいる。
水着に着替えた俺と峯山は女性用更衣室に入っていった甘露と星野を待つ。
ペーター「あぁ……甘露さんと一緒に遊ぶだなんて、夢みたいだ。」
峯山はまだプールに入ったばかりなのにもう夢見心地気分のようだ。
ペーター「加納くん、僕には君が幸運の女神に見えて仕方ない。本当に感謝するよ。」
「よせよ。女神なんて例え、俺はあんまり嬉しくない。」
チョコ「よ!2人もお待たせー。」
少し待ったところで水着に着替えた甘露と星野が来た。モデル並みとまではいかないが、健康的な肌に水着がフィットしている。
ペーター「わ〜、2人もよく似合ってるよ〜。」
エトワール「あ、ありがとうございます。」
峯山に水着を褒められた星野は少し照れ気味だ。甘露はというと何故かジッと俺の方を見ている。俺がその意図を理解出来ないでいると小声でボソッと聞いてきた。
チョコ「……………………アンタからはなんかないの?綺麗だよとか、似合ってるよとか??」
「え????…あ、あぁ、いいんじゃないか?」
俺のコメントに満足してないのか甘露の視線が痛いほど突き刺さる。峯山も星野も助けてくれそうにないし、仕方ない。ここは俺の方から何か話題を振るか。あー…こうやって仕切るのは性に合わないのにな。
「なぁ、水着になってまでずっと立ち話ってのもなんだろ。何かしようぜ。泳いだりとかするか??」
チョコ「え?こんなに人がいるんだからやっぱりアレでしょ!」
アレ???甘露の言うことがいまいち分からない俺と峯山は揃って首を傾げるのだった。
エトワール「チョコちゃん、来ました!トス!」
チョコ「来たーーー!喰らえーっ必殺スパイク!!」
「うお!?またかよ!!!」
甘露が提案してきたのはビーチバレーだった。男子チームと女子チームという安直なチーム分けになったが決して侮ってはいけない。特に甘露はチアリーディング部というバリバリの運動部だけあって運動神経がかなりいい。甘露の放ったスパイクがネットを越える。ていうか、アイツ俺に向けていつもボール返してくるな!?
チョコ「ほらほら〜!こんなのも返せないなんて。だらしないぞー男共!!」
豪快なスパイクを決めた甘露は星野と一緒にケラケラ笑っている。
「お前こそ帰宅部相手にマジでスパイクとか大人気無いぞ!?」
チョコ「何言ってんの!相手が格下だからって手を抜く方が失礼でしょ?」
「か、格下!?おまえ言ったな!」
つい挑発に乗ってしまった俺は峯山と奮戦するも、結局女子チームを圧倒することは無かった。
ビーチバレーでひとしきり身体を動かした俺達は水分補給も兼ねて休憩しようとドリンクスタンドの近くまで移動した。だが…
峯山「並んでるね。」
ドリンクを買いに来た人達が集まっていてそこそこ列が出来ている。そして買ったドリンクを片手に寛ごうとプールサイドベッドやベンチが徐々に埋まっていく。
チョコ「ここは分かれて動こうか。アタイ、皆の分買いに行くから場所取り頼むよ。」
俺は甘露に見えないよう峯山をそっと肘で小突き、声に出さず唇だけ動かした。
『チャンスだぞ。』
峯山は俺の言いたいことを察したのか、片唾を飲むと一大決心したかのような表情で頷き甘露にアプローチをかけ始めた。
ペーター「あの、甘露さん。僕もその…一緒に行くよ。」
チョコ「ええ??いや、悪いよ峯山くん。アタシはただ…」
ただ甘露の反応は微妙そうだ。一緒にドリンクを買いに行くだけなのにそこまで躊躇することないだろう。いつまでもあーだこーだと言って渋ろうとするもんだから…
「おーい、早く行って来いよ。」
わざと口を出しに行った。
チョコ「言われなくたってそうするわよ!行こ、峯山くん!」
甘露はムッとした表情で俺を睨みつけると、峯山と一緒にドリンクスタンドまで歩いて行った。
あー、やっと行ったか。こうして峯山が甘露と2人きりで接触する機会をなんとか作ったが…甘露のやつ、すごい睨んでたな。確かに甘露にも思うところがあったかもしれないが、そこまで睨むことだっただろうか。
エトワール「険しい顔をしていますけど、どうしましたか?」
横から星野に声をかけられて俺は我に返った。考え込んでしまってたようだ。
「あ………悪ぃ。何でもないよ。どこか座れる場所を探すか。」
どうにか4人で寛げそうなベンチを見つけ、そのまま星野と一緒に2人が戻って来るのを待つことにした。互いに沈黙が続いたがそれは星野の方から破ってきた。
エトワール「私、チョコちゃんのことであなたに言いたいことがあるんです。」
そう言われて俺はドキっとした。甘露に対して何か俺がやらかしてしまったのか…俺は記憶をたぐり寄せようとしたが特に思い当たることが見つからない。いや、前に間接キスをしたくらいか。しかし星野が口にした内容は意外なものだった。
エトワール「チョコちゃんのこと、誤解しないで欲しいんです。あんな態度をとってますが、チョコちゃんはあなたのことが嫌いじゃないんですよ。」
もしかして俺は、甘露につっけんどんな態度を取られることにモヤモヤしてると思われてるのか?そう考える間にも星野は話を続ける。
エトワール「中学の時からチョコちゃんはよく加納さんの話をするんですよ。その時のチョコちゃん、すごく生き生きしてるんです。ここだけの話、昨日だって加納さんはどんな水着が好きかなんて言ってすごくソワソワしてました。」
あの甘露が?とても想像出来ない。そんなことあるものか、と喉から出そうになった。でも星野が嘘を言っているようにも見えない。
エトワール「チョコちゃんは恥ずかしがり屋さんだから自分が加納さんを意識してることを隠そうとするんです。うふふ、とっても可愛いですよね。」
エトワール「あの、話しは変わるのですが…他に聞きたいことがあるんです。」
星野は周囲を見渡してからモジモジするように小声で尋ねてきた。
エトワール「峯山くんの好きな女の子のタイプって、どんなタイプですか?」
「悪いけど知らないよ。峯山とはそこまで仲が良いわけじゃないんだ。」
アイツ、好きな女の子はタイプどころか完全に指名しているけどな。けどそれは敢えて言わないでおくことにする。
エトワール「そうですか………いえ、こちらこそ変なこと聞いてすみません。」
チョコ「どうしたのエト?」
そこへ4人分のドリンクを携えた甘露と峯山が戻ってきた。星野は何もなかったような表情で甘露からドリンクを受け取った。
エトワール「いいえ、世間話をしてただけですよ。2人ともおかえりなさい。」
それにしても何故、星野は俺にあんなことを言ってきたんだろう。甘露は俺のことが嫌いじゃない…?星野の言うことが本当なら、ヒトは嫌いな人物のことを話す時に生き生きするだろうか。確かにアイツは俺への当たりが強いけど、甘露がそんなやつだとは思えない。
ここまで考えた時、更に自分の中で疑問が浮かんだ。俺は何故何かを考える度に甘露のことが頭に浮かぶのだろう。アイツだったらこうするだろう、ああ言うだろう…みたいに。
俺はそんなモヤモヤを頭にまとわりつかせたまま、水着から着替えた甘露達と合流してプール施設を後にした。
(To be continued)
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