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【あつ森】クリーム島青春与太話(ラムネルート1)

前回(最後の目次で『猫宮ラムネを思い浮かべた』を選ぶ)↓↓


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人生、ドラマみたいな出来事なんて簡単に起きるわけない。褒められたルックスでも成績でもない帰宅部の俺にとっては何もないと思うのが常だ。そう思っていたはずなのに…ある日突然ドラマのようなとんでもなく面倒くさい場面に出くわしてしまった。

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「ねぇ君、ここの高校の子?俺この辺分からないんだよねー。」

「ちょっと道案内してよー。」

校門のすぐ先。他校の制服を着た男2人が1人の女子高生を取り囲んでいる。とても道案内をお願いする雰囲気と態度ではなく、女子高生も困り果てているのに周りは皆見て見ぬふりをせずにその場から離れていこうとする。

女子高生はあの、えっとと困ったように口をパクパクさせている。そして助けを求めるかのように視線を彷徨わせた結果…俺と目を合わせてきたのだ。

マジか…なんで俺なんだ。もっと強そうなやつを探せよ…。俺もその場から離れようかと考えたが、件の女子高生の目線が刺さって仕方ない。

「まぁいいや。とにかく、俺たちと遊びに行こうぜ!」

痺れをきらした男の1人が女子高生の腕を掴もうと手を伸ばした。

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「……………………。」

あー…なんでこうなるんだか。結局俺は男と女子高生の間に割って入っていた。当然獲物を取り損ねた男どもは表情を歪ませ全く違う態度で迫ってくる。

「あん?なんだテメェよお。」「横取りすんなら容赦しねぇぞ!」

こんな反応されるのは当然だ。あー、殴り合いの喧嘩なら間違いなく勝てないな。この状況をどう切り抜けるか考える時間もない。ええい、こうなりゃヤケだ!なりふり構わず俺は男達に言い放つ。

「お、俺の女だ!!悪いか!!!!」

あたりの空気がシーンとする。周りの人達の視線が痛すぎる。頼む、これ以上見ないでくれ。

「んだよ男いたのかよ。」「つまんねー。」

意外や意外。興醒めした男達は悪態をつきながら女子高生から離れていった。

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こうしてこの場に俺と女子高生だけが取り残された。無言の間が続く中、先に沈黙を破ったのは女子高生の方だった。

???「ご…ごめんなさい!!怪我とかしてませんか??」

「え、あ…別に。俺の方こそ気持ち悪いこと言っちゃってすみません。勿論今言ったことは本気じゃないですから。」

…あれ?この子、どこかで見たことあるような。まぁいっか。今は一刻も早くこの場から離れたい。

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「じゃあ、俺帰りますんで。」

???「ま、待って!あの…助けてくれてありがとうございます!何かお礼を…」

「いや、そういうのいいんで。」

???「せめてお名前だけでも!私、猫宮(ねこみや)ラムネっていいます!」

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猫宮…ラムネ!?もしかして俺の学年で人気ナンバー1の女子高生のあの猫宮ラムネ??あー、そういえば前にハムカツ達と学食へ行った時に一度だけ顔を見たことがあったな。…おっと、あっちが名乗ってしまったんだ。こちらも自己紹介しないと割に合わないな。

「加納柊二。高2です。」

ラムネ「わあ!同い年なのね。加納くん、改めて助けてくれてありがとう。」

そう言って女子高生…猫宮ラムネは顔を輝かせる。この取り繕う様子のない清楚な雰囲気と笑顔…なるほど。色んな生徒達、特に男子生徒に好かれるのも分かる気がする。

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ラムネ「加納くん。私、どうしても今日のお礼がしたいの。そうだ!良かったらこれから私の家へ遊びに来てくれないかしら。」

「え!?これから!?いや何言うんだよ、いきなり悪いって。」

ラムネ「遠慮しないで。私、あなたのことをきちんとおもてなししたいの。」

「は、はぁ……。」

こうして俺は流されるまま、下校途中で助けた人気ナンバー1女子高生のお宅に上がることになったわけだ。

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これは…俺のイメージする女子高生の自宅ではない!!猫宮ラムネに連れられてやってきたのは周囲から明らかに浮いている巨大邸宅。いわゆる豪邸だった。インターホンを鳴らすと俺の身長よりも高い鉄の門が開かれる。門から邸宅の入り口の間には手入れの行き届いた庭が広がっていてまるで別の国にでも入ったかのような気分にさせられる。

猫宮さんと広大な庭を横切り、いよいよ玄関ホールへ足を踏み入れる。

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???「お帰りなさいませ、お嬢様。」

マジか!?メイドさんってマジで存在するんだ!!?しかも猫宮ラムネのことをお嬢様と呼んでる!!?何このシチュエーション!漫画やメイド喫茶でしかないものだと思ってた!

ラムネ「ただいまチェルシー。早速だけどこの方にお茶をお願いね。」

チェルシー「畏まりました。お嬢様、奥様が…」

???「まあラムネ!!」

玄関ホールまで出迎えに来た人がもう1人。今度はメイドさんではなくそれなりのご年齢の人だ。厚めのメイクにドレスとアクセサリー…これが漫画や小説の世界なら〇〇夫人みたいな名前をつけられてるに違いない。

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???「待ってたわよおかえりなさい!今ね、トビーさんも来ているのよ。あなたも早くリビングにいらっしゃい。」

ラムネ「え………あの、お母さま。トビーさんは今日はいらっしゃらない予定では??」

???「うふふ。あなたの顔を見たくて仕事を早く切り上げたんですって。あら、そちらの方は?」

ラムネ「お母さま、紹介します。この方は加納柊二さん。私の学校の同級生なの。」

「あ、よろしくお願いします。」

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ふーんとその夫人は俺を舐めるように見た後、小さくフンと鼻を鳴らした。え、もしかして今笑われた??

???「ここまでよく足を運びに来てくれました。はじめまして、私ラムネの母親で猫宮ショコラといいます。どうぞ、ごゆっくりお過ごしくださいましね。」

ショコラ「さ、ラムネ。トビーさんのところに行くわよ。お茶の間、彼にはゲストルームで寛いで頂きましょ。」

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ラムネ「待って。せっかく呼んだのに放っておくのはあんまりだわ。」

「いや、構いませんよ。お邪魔ならもう帰りますから。」

猫宮さんは悪くない。悪いわけじゃないが…こうも邪険にされると居心地が悪い。

ラムネ「そんな!せっかく招待したのに。ねえお母さま、せめて加納くんも一緒にお茶に誘えない?」

ショコラ「ラムネ。急に何を言うの。トビーさんを困らせるようなことはしないの。」

???「いいや、構わないとも。こういう場は色んな価値観を持つ人が多いほど有意義に過ごせるからね。」

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何処かの部屋からまた見知らぬ人物が1人。タキシードを着た男がやってきた。

???「やあ、待ってたよ僕のフィアンセ。君も是非おいで。このトビー・バーミンガムが一般家庭では味わえない刺激的な話を聞かせてあげよう。」

フィアンセ!?フィアンセって『婚約者』のことだよな??このキザっぽいのが!!?まさか猫宮さんの???

ショコラ「まぁトビーさん!あなたって心の広い方なのね。」

「は…はぁ。」

こうして俺は追い出されるでもなくゲストルームで軟禁されるでもなく、先行きの不安なお茶会に招かれることになった。

(次回↓↓)


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