【あつ森】クリーム島青春与太話(チョコルート6終)
前回↓↓(最後の目次で『告白を応援しない』を選ぶ)
俺は甘露の腕を引っ張りながら廊下を進んだ。その間に戸惑うような声が聞こえたが俺は腕を離さない。そして屋上まで上がった時、俺はようやく甘露の腕を離した。
チョコ「あ、あのさ加納。もしかして怒ってる??」
「…そうだな、怒ってるよ。思ってることを話さない上に避けてばかりだからな。甘露はそんなに俺のこと、嫌いか?」
チョコ「違う!そんなんじゃない!ただアタイは…アタイは……。」
言いかけたところで甘露が言葉を詰まらせた。
チョコ「加納…アタイ怖いよ。アンタに本音を言うのが。言ったらアタイより先にアンタが離れていくかもしれないじゃん。」
「大丈夫、俺は絶対離れていかないから。それでも怖いなら今このままの状態で話してもいい。」
今なら俺が背を向けている隙に逃げ出すことが出来るが、甘露が逃げ出そうとする気配はない。背の向こうで深呼吸する音が聞こえた。
チョコ「…あのね加納。正直、アンタがアタイと同じ高校に入ってたなんて思ってなかった。だからあの時体育館で会った時は嬉しいというよりビックリしたんだよ。」
俺は逆にビックリしなかったけどな。高校生になっても変わらない甘露の姿を見て安心さえしてた。
チョコ「だって前からずっとアンタがいるとドキドキして、いつもみたいに振る舞えなくなるのが嫌で突き放そうとしてたのに。それでも気付いたらアンタのことが頭から離れなくてずっと追いかけてた。」
「………………………。」
チョコ「そうだよ…アタイ、中学の時からずっとアンタが好きだったの。伝える度胸が無い癖に、アンタに構っていたくてつい…あの時、ううんもっと前から本気でアンタを傷つけたかったわけじゃないの。だから……ごめん。ごめんね、加納。」
「甘露が俺のこと好いてくれてるのになんとなく気付いてた。でもそれが本当なのか俺の勘違いなのか分からなかった。それに俺がゲーセンの時にすごく困ったのは甘露の態度だけじゃない。俺自身も甘露のことが好きだからなんだ。」
最もプールの時に星野に言われてから自覚し出したわけだが…。もしかしてと思うことは薄々あった。でもつっけんどんな態度を取られてるのにそう考えるのは自意識過剰ではないかと思ってきたが、今はもうどうでもいい。
俺は振り返り、立ちすくむ甘露の前に紙袋を差し出した。恐る恐る受け取った甘露が紙袋の中を覗くと目を見開いて中に入っているクマのぬいぐるみを取り出した。
チョコ「これ、この間のクマ?」
「あの時はお前が欲しそうだったからと言ったけど今は違う。俺があげたいんだ。好きだよ甘露。俺からの気持ち、受け取って欲しい。」
チョコ「………………………。」
チョコ「…………ありが…とう。」
甘露は呟くように言うと愛おしそうにぬいぐるみを抱きしめた。
チョコ「ありがとう、加納…すごく嬉しい。」
「甘露、俺も嬉しいよ。やっとお前の本音を聞けた。」
その時、慌ただしく屋上に向かって駆け上がる音が聞こえてきた。見ると息をきらした峯山がその場で立ち尽くしている。
チョコ「峯山くん!?」
峯山「ああ……。一足遅かったかぁ。僕が加納くんを脅す為に考えたデマが、ホントのことになっちゃうなんて。」
俺たちを見るなり峯山は自嘲するように笑う。それでも諦めきれないのか、峯山は甘露の前に一歩踏み出した。
峯山「甘露さん、実は僕も君のことが好きなんだ。でもやっぱり君は加納くんを選ぶんだね。」
チョコ「うん、ごめんね峯山くん。アタイは加納の…加納柊二の彼女になりたい。」
甘露も峯山の本気の気持ちを察したのだろう。だからこそ、いつもの口調と共に強い意志を込めてハッキリ返したように聴こえた。
???「チョコちゃん、加納くん!」
そんな時、更に1人が屋上にいる俺たちの前に姿を現した。エトワール・星野だ。
エトワール「話を聞いてました。2人とも、本当にごめんなさい…!私が加納さんにチョコちゃんのことを話しちゃったせいでこんなことになって…」
チョコ「エト……それってどういうこと?」
エトワール「私が中学の頃からずっと峯山くんのことが好きなのを相談したら、チョコちゃんは私を峯山くんと引き合わせてくれたのに…。私、峯山くんがチョコちゃんばかり見てるのに気がついちゃってそれで…」
なるほど、これで今までのなり行きがなんとなく理解出来た。高校で甘露と初めて食堂で昼飯を食べた時、何故星野が一緒に来たのか。俺が峯山を連れると言ったから、甘露が星野と峯山を引き合わせようとしたのか。
エトワール「チョコちゃんが加納さんの事が好きなのを引き合いに出して、加納さんにチョコちゃんの気を引かせようとしたんです。そしたら峯山くんは諦めて私を見てくれるかもしれないと思って…。私、2人に酷いことをしました…。」
言い終わるや否や星野は肩を震わせえて目に涙を浮かべている。
峯山「そっか…。ちゃんといたんだ。僕のことを見てくれてた人。」
星野の告白をきいた峯山は面食らったような顔をしていたが、やがて安堵したように胸を撫で下ろすと、星野にふんわりと笑みを浮かべた。
峯山「え、と…星野さん。僕のこと好きって言ってくれてありがとう。僕、よければ君のこと、もっと知りたいんだ。今日これから一緒に帰ってもいいかな?」
エトワール「峯山くん……。ええ!一緒に帰りましょう!私も峯山くんのこともっと知りたいの。」
峯山と星野はお互い照れ臭そうに見つめ合うとそのまま一緒に屋上を後にした。そしてこの場には甘露と俺しか残らない。
チョコ「あの2人、いいカップルになるかな。」
「さぁな。それは2人次第だろうさ。」
チョコ「あのさ………。」
「なんだ?」
チョコ「せっかくこ…恋人として成立したんだからさ。アタイのこと、甘露じゃなくて、その…名前で呼んでよ。」
「お。早速ストレートなお願いが来たな。普段からそれでいいのに。」
チョコ「あのねー、なんでも直球で言えない乙女のプライドってのがあるの。で、呼んでくれるの?」
「勿論だよ、チョコ。」
俺はチョコの肩優しく掴み、そっと顔を近付けた。チョコがゆっくり目を閉じた時、互いの唇が優しくぶつかる感触があった。
「これならもう、間接キスしても全然恥ずかしくないな。」
チョコ「…………………バカ。」
そうだ。互いの気持ちを確かめ合った今からなら…俺たちはもう、すれ違ったりしない。チョコと隣で笑い合っていられるなら、俺には何も怖いものなんてないのだから。
…………………
*・゜゚・*:.。..。.:*・GOOD END・*:.。. .。.:*・゜゚・*
※後書き※
こんにちは、びゅーんです。
まず始めに青春与太話のチョコルート、更新が大幅に空いてしまい大変申し訳ございませんでした。4月いっぱいに完成と言ったはずが結局6月下旬になってようやく筆をとることになってしまい…。前回まで読んでくださった方々に重ね重ねお詫び申し上げます。遅れて本当にすみませんでした!
チョコルートを最後まで読んでくださりありがとうございます、そして完走おめでとうございます!
チョコちゃんをヒロインにする際、主人公に対して素直になれないツンツンした同級生というイメージで書きました。ツンデレじゃないの!?と思ったかもしれませんが。後で自分でも読み返したらあまりデレの描写が無かったので(笑)いや最後の最後でようやくデレたのかな!?
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