見出し画像

いきなり!心不全

誰かに伝えなければ永遠に失われてしまうストーリーがある。例えば2011年

 
北海道から東京に出稼ぎに来た土工のKさん(42才)が同じく土工のHさん(45才)のアパートにお世話になる。Hさんは週刊マンガを闇雲に買うのが趣味であり、その週に出る週刊マンガ(ジャンプ、ヤングジャンプ、マガジン、ヤングマガジン、サンデー、ビッグコミック、スピリッツ、モーニング、チャンピオン)の購入にデヅラ(日当)を惜しげもなく遣い、それらが山のように積んであるので部屋が狭い。なおも増え続ける週刊マンガにたまりかねたKさんがキレて部屋を出た次の日 3月11日金曜日、日本を未曾有の大地震が襲った。

「平山さん!!」

おそらくマンガの山の下敷きになってしまったであろうHさんの名を叫び、Kさんは駆けつけたアパートの前にガックリと膝をおとすと「あれ工藤ちゃんどうしたの?」とHさんがコンビニ袋を手にアパートに戻ってきた。その袋の中には週刊漫画ゴラク(毎週金曜日発売)があった。


 
昨日(2021年10月31日日曜日)、

なんか最近すぐ息切れするな、というか呼吸しても肺に入っていかねえなと思ったわたしは高円寺にある日曜日もやっている病院を軽い気持ちで受診したところレントゲンを見た先生の顔がサブカル顔からシリアス顔に。
「ここでは何も出来ないが紹介状書いたから急いでこの病院(偶然!なのだが昨年妻が出産の際お世話になった大きくてすばらしい病院)行って!」
おれそんなにやばいのか というかその頃にはおれも10ぽ歩いただけで呼吸ができなくなり気絶しそうだった。ザメハ(気つけのじゅもん)!MPが足りない!ほうほうの体で病院につくとまずPCR検査で鼻に棒を突っ込まれその物理的ダメージでサンズの川が見えた。

PCR検査は陰性だった。コロナじゃなかった!よかった~しかしそれにより、お医者さんたちの畳み掛けるような攻撃(治療)のラッシュが始まった!

「残念だ・・・残念だ・・・」
 

よくわからない巨大な機械でぐるぐる回されたり、太い注射を胴体にぶっ刺されたりしながら、わたしは何度もその言葉をつぶやいた。


私はたぶんもう長くない。妻とむすこにひどい苦労をさせてしまう。人生は終わるときはあっさりしているな。もっと体を大事にすればよかった。残念だ。私の頭が記憶している物語も、もう永遠に失われてしまう。

「検査の結果、心不全です。」

なんだ心不全かよ!よかった~おれが好きないろんなミュージシャン(Billy(ベースウルフ)、kagami、アベフトシ)たちの命を奪ったあの心不全か。よくねえ!
「ずいぶん長いこと心臓に負担がかかっていた跡があります。水もたまっているのでそれを抜いていきましょう。時間はかかりますが」
「はい、よろしくお願いいたします。」
  
ほんとは、薬もらってラーメン食って1000円カット行って帰るぐらいの気持ちで家を出たら、いきなり入院になったのでちょっとびつくりしました。

人間いつ死ぬかわからないけどいつか死ぬ。

あの時残念だ、と感じた気持ちはとても孤独でやりきれないものだったので、生きてる間は妻とむすこと自分にも周りにも愛とやさしさを与え、私が知る 

日の目を見る事のなさそうなストーリーをここに記すことにします。

 つづく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?