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大玉爆吐坊(おおだまばくはきぼう)との邂逅


大玉爆吐坊:山口貴由先生作、怨身忍者と覇府徳川家との戦いをケレン味たっぷりに描く傑作漫画「衛府の七忍」(秋田書店 チャンピオンREDコミックス 全10巻)の登場人物。口から大玉を大砲のような威力で吐きだす。


退院してから1ヶ月が経ちました。世の中がなにかおかしい。(2021年12月15日現在。)みなさんお気づきでしょうか…?セブンイレブンのホットスナックのケースを見てもナナチキがない。ファミリーマートのホットスナックのケースを見てもファミチキがない。ローソンの(以下略)。
何かがおかしい…心臓病で揚げ物が食べられないのにホットスナックを確認するためだけに各コンビニを巡回するわたしも何かがおかしい…という話ですが、趣味です。いいじゃあありませんか…ホットスナックやカップラーメンを見ると気持ちが安らぐんですよ…ああああーホットスナックが見てえよ~ホットスナックー(24時間常に空腹、体重84kg→67kg/1ヵ月)ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!
 


      ~さんさんテラス~


さあ、気をとりなおして、今日も始まります!記して、誰かに知ってもらなわければ永遠に失なわれてしまうストーリーですよ。知ってるつもり!?(意味不明)


ーー2012年 多摩地区某市 ある現場

わたし「カネないよ~。」
この市で最も多くの税金を納めている世界的企業の旗艦的役割を担うとある建物の新築工事。特殊な意匠を凝らしたそれはまさに職人泣かせで、それら全ての「負」の部分を受け入れる地下一階のさらに床下ーー免震装置と地下設備配管・配線スペース、湧水・雨水・雑排水・汚水槽、地獄ーーの責任者としてわたしは昼夜40名の作業員を率いていた。
「カネないよ~。」
未だに3000万円の借金を返済し続けている最中。この頃には残り1000万円ほどに減っていたが、稼いだカネがほぼ全て返済に消える生活に変わりはなかった。
「カネないよ~。」
「カネだったらMさんが持ってますよ。」
Kくんが言った。KくんはA学院大学出身、ニュージーランドにラグビーでの留学経験もある新入社員で抜群の人当たりのよさがある。
「Mさん貯金2兆円あるって言ってましたよ。」

2,000,000,000,000えんーー

こち亀でしか見たことがない金額だ。
「なんでも、家にあるスーパーコンピューターのボタンをワンクリックすると1億円入ってくるらしいですよ。」

家にあるスーパーコンピューター

  (理研のスーパーコンピューター「富岳」)

どんな家だ。
「家は下北沢にあるプール付きの白亜の豪邸(と自分で言っている)らしいですよ。」
「スーパーモデルと同居しているらしいですよ。」
「仕事終わると白いスーパーカーで銀座に行って飲むらしいですよ。」

白亜の豪邸の扉を開けると中にスーパーコンピューターがドーーン!放熱もすごいだろうから年中クーラーかけっぱなしで、同居しているスーパーモデルもさぞ寒かろう、プールどころではない。あとスーパーカーで銀座行って飲んで帰りはまさか飲酒運転はないだろうから運転代行頼むのかしら。まずとにかくスーパーが多い。SUPER STREET FIGHTER II X'turbo alpha RAINBOW… 

そして、何よりもMさん(62歳)は某人材派遣サービスから呼んだ雑工(雑工事という片付け、清掃などをやる職種の作業員)なのだ。

「…Kくんは本当だと思う?」
「いえ、嘘だと思います。」
「聞いててどう?」
「さすがに疲れました。」
「特殊漫画家の根本敬先生の本にこういう人にはどう接するのが良いか書いてある。Mさんに野暮なツッコミを入れないで、相槌うちながらどんどん気持ちよく話させて。話の矛盾点をついたりすると凄まじい負のパワーで攻撃してくるかもしれない。でまた後でおれに教えて。手当ては出す」
「はい、わかりました!」

Kくんは人当たりがいい。ゆえに、たまに厄介な人間との接触もある。(わたし含めて)


~数日後~


真・M伝説

・祖父がイギリス市議会議員(イギリス市とは)
・元宮大工で、伊勢神宮の屋根を1人で建てた
・貯金200億円(数日で1兆9800億円減っている。  小さい国なら消滅レベル)
・番犬としてドーベルマン10頭(軍事基地並み)
・今働いている現場のスーパーゼネコン◯◯建設の筆頭株主(なぜ作業員をしている)
・今所属している人材派遣会社◯◯ーの設立にあたり全額カネを出した(なぜ作業)
・ビートたけしは飲み友達
・姪もスーパーモデル
・飼っている錦鯉は1匹150万円x100匹
・錦鯉の餌は高級イクラ
・スーパーカー5台所有(車種は?と訊くと不機嫌になる)
・ロレックスは多すぎて数えたことがない
・エリザベス女王から「騎士(ナイト)」の称号を賜った

わたし「…よくぞこんなにいい話してもらえたね!Kくんはよっぽど気に入られてるんだなあ~うらやましい。」

Mさんはわたしの見た目が特殊↓なせいか、わたしの前では何もしゃべらない。

                (特殊)

Kくん「なんかMさんに仕事たのまれましたよ。」
わたし「どんな?」
Kくん「なんか最近ヒットマンに命狙われてるって言ってて、1日10,000円でボディーガードやらないかって。」
…命を狙われてボディーガードを雇うほどの人が、いきなり鉄骨が降ってくる可能性がゼロとは言えない建設現場で働いているのはおかしい。

あとMさんの所属会社の日当は9,500円だ。ボディーガードを雇うには500円足りない。

わたし「…それはいくらなんでも少しやばい。教えてくれてありがとう。いなり寿司たべる?」

ーー被害妄想、誇大妄想…これに思考障害、幻覚まで加われば間違いなく統合失調症の陽性症状だ。Mさんは職歴30年のベテランだけあって、ちゃんと指示すればその通りに働いてくれる。現場は常に人手不足。猫の手も借りたい現状だが、もしMさんの健康に異常があるのならば、わたしは責任者として、現場でのケガ、事故を防ぐために、何よりもMさん本人のために、病院に行く事を勧めてしばらく休んでもらう他ないーー要は現場をクビにするという事だ。

どんな人に対してでも、クビを告げるのは胸が痛む。かつてわたしがどこの現場に行ってもクビにされ、常に不安な気持ちで暮らしていたあの頃の気持ち(拙note「あの頃、シェイディー・レインで」参照)を覚えているからだ。

これは一度、わたしがMさんと直接話をしてみる必要がある。わたしは一計を案じた。


~翌日、朝のKY活動~

KY活動は、現場全体の朝礼後、各業者ごとにやる朝礼のようなものです

わたし「はいオザース!(オザース)今日の現場の状況は、まず1Fでーー」 

まじめに見えるようにスピーチしている時ほど頭の中は変態音楽とラーメンのことでいっぱいだ。この町には隠れた名ラーメン店が多い。

「ーーですので注意してください。あと最近、他現場で私病(持病のこと)により現場で倒れるというケースが頻発していますので、今週は各作業員1人1人個別で健康チェックを行います!時間は休憩時間中、わたしに呼ばれた方は打ち合わせ室に来てください。簡単な質問をするだけで、1人2、3分で終わります。その際普段言いづらい事などもあればわたしに言っていただいて結構ですのでよろしくお願いいたします!では今日は安全帯よいかで行きます。アゼタヨイカ!(アゼデヨシ!)」

~10時の休憩~

「朝言った健康チェックします。今日は株式会社◯◯ーのみなさん打ち合わせ室前に集まって下さい。」

わたしは医者ではないので診察などもってのほか、毎日の睡眠時間や食生活などをきいてアドバイスしようにも自分がめちゃくちゃな睡眠時間と食生活を送っている(当時睡眠時間3時間、食べ物は1日1食でかいラーメンのみ)のでまず説得力がない。本当の目的は、まず作業の方針や作業のパートナーに不満がないか聞き出し、みんなが円満に作業できるよう改善していく事。そして作業員1人1人の健康に異常がないか話してみて直接感じとる事。違和感があれば何かひっかかるはずだ。特に、1度もまともに話した事がない、Mさんーー思考障害(会話が支離滅裂になってしまう)や幻覚(統合失調症の友人は1mのトンボが部屋に飛び込んで来たので、窓とドアを閉めきったから見に来てくれと言っていた)などなければいいが。

わたし「ではまずYくんどうぞ~」

Yくん(26)は165センチながら120キロを超える巨漢で、寝ている時のいびきがすごい。

わたし「ごめんね休憩中。Yくんは昨日何時ごろ寝ました?」

Yくん「グ…グボロロ……

ゴッハ!!!!」

ポンッ!

Yくんの口から黒くて丸い塊が勢いよく飛び出した!!

海苔を巻いたでかい握り飯だ。ごろんごろん。

「ゴゲエエエエエ!ガッハ!ガッハ!バタン」

ピーポーピーポーピーポーピーポーピーポーピーポーピーポーピーポーピーポーピーポーピ


こういう場合業者の責任者とゼネコンの担当者は必ず病院に付き添います

わたし「…大丈夫?気分はどう?」
気がついたYくんに話かけた。
Yくん「すみませんでした。」

Yくんは家庭の事情(幼い兄弟たちを1人で養っている)で、とある持病を隠して現場で働いていた。
わたしは彼の所属会社の担当者に事情を話し、彼を治療に専念させてほしいと言った。

「…ところで口から握り飯が出てきたけど、あれはなんで丸ごとでてきたの?」
「…朝、急いでいたのでおにぎりをでかく作りすぎました。」

…質問の答えになっていない気がするがまあいいか。

今の彼が健康で、兄弟みな仲良く暮らしていることをお祈りします。

というわけで1人目からいきなり「グボロロ…ゴッハ!」で終わってしまった「健康チェック」だが、その後仕事が忙しくなりすぎて、また

Mさんが東松原(下北沢の二駅隣)のアパートから出てくるところを偶然わたしに見られた後現場をバックれた

(当時たまに新代田ー東松原間の羽根木公園で演歌の弾き語りをしていた)のでうやむやになった。現場で倒れた人がその後出なかったのは幸運でしかない。

余談だが、この現場も残業をやり過ぎてエンディングがバグってしまい(拙note「残業神(時を司る神)・クロノスとは」参照)、竣工したのに何度も何度も長い是正・改修工事を繰り返し、真夏なのに局地的にいきなり雪が降って40センチも積もったり(本当に本当)、そのせいでめちゃくちゃ雨漏りしたり、それらの是正工事もようやく終わった後、

キムタクが前の道路で事故ったり

(季語なし)

という謎のエンディング(BAD END)だった。おわり 完


つづく



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