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ヨーグルトポムポム

 例えばチェーンソーが目の前にあったとして、わたしは2秒でエンジンをかけることができます。フルスロットルのけたたましいエンジン音で恐怖を煽りまくり、10秒以内にあいつの体から首を離

ダメだ~心が荒んできている!

 この文章は「地獄遭遇~ヘル・メット~」というタイトルだったんですが、あまりにも暗く凄惨な内容(詐欺、搾取、拷問、絶望、虐待、残業など)だったので消して、タイトルをヨーグルトポムポムに変えちゃいました♪内容も明るくてS-cawaii内容にしちゃえ!じゃあ~レッツ・ポムポム☆ SUFFER(苦しみ)☆


2016年 冬 新宿 黒縄現場 絶望

 (仏教における八大地獄のひとつ、黒縄地獄になぞらえ、黒縄現場と呼ばれている。黒縄地獄では巨大な墨縄で鞭打たれ、体についた縄目に沿って真っ赤に焼け爛れた鉄の斧で鬼に体を切り刻まれる。その苦痛は「等活地獄」の10倍であるという。)

 深夜に塩酸を使い床タイルのクリーニングをしていた。2重にしたポム手袋、ゴーグル、防毒マスクを身につけていても、塩酸を扱う際は気が抜けない。うっかり塩酸壺をひっくり返そうものなら「ロボコップ」(1987年 米 ポール・バーホーベン監督)の終盤で廃工場の有毒廃液に突っ込んでしまったクラレンス一味のワゴンの運転手、エーミールのように、グチャグチャに醜く焼け爛れてしまうだポム。

「オイジジイやるならちゃんと両手でやれよじじいオイ!」
若い監督がガードマンのおじいさんに怒鳴っていた。おじいさんは片手で竹ぼうきを持ち、道路の掃除をしていた。するとおじいさんは右の手を監督に掲げて見せた。

手首から先がない。

「ああ…悪かった 立ってるだけでいいからね。」監督はバツが悪そうにどこかに行った。

寒風吹きすさぶ25時。ガードマンのおじいさんは70歳より上の年齢に見える。こんな夜中に自分の年齢の半分にも満たないであろう監督の若造に怒鳴り散らされながらも働いていかないと生活できない世の中になってしまったのか?「おじいさんとおばあさんを大切にしよう。」今の学校じゃそんなことは教わらないのか?「なんの生産性もない税金を食い潰すだけの害虫を早めに殺そう」と人気youtuberが言っていた。正論なの?貴様をチェーンソーでポムっていいのか?

おじいさんは未来のわたしである。いや、むしろ年金がもらえないであろう未来のわたしの暮らしは、さらに酷いものになっているだろう。老いた労働者は経済成長にとってマイナスでしかない存在、安楽死政策なんてものが出てきてもおかしくない。のんびり縁側で孫が遊ぶのを眺めて微笑む──建築不況の時代、その縁側さえ手に入れることができず、孫の顔を拝む前に強制安楽死。道路工事の夜勤のガードマンの仕事ができるのはまだ恵まれているといえる世界になりつつあるのだ。暗い気分になった。

休憩時間、喫煙所のストーブに当たりに行くと、ガードマンおじいさんがいた。
わたしは、わざと明るいひょうきんな声で、
「いや~さむさむ。もうだめだアー 早く帰りたいっすねえ。おれなんて根性ないからもうダメですヨーグルト 寒いのにいつも本当お元気っすよねエヘヘ」と工事をレペゼンしてリスペクト気味におじいさんに接触した。すると──


「ベトナム戦争に行きました。」


ガードマンおじいさんの第一声はそれだった。

わたしとのはじめての会話は、全くと言っていいほど成立していなかった。

「わたしは韓国人です。わたしは1965年、大韓民国国軍の猛虎隊として、ベトナム戦争に行きました。」

「…はい。」

「わたしはM16ライフルをベトコンに向けて撃って何人も殺しました。でもベトコンは殺しても殺しても向かってきました。M16は弾がまっすぐきれいに飛ぶから、当たっても痛くないんです。」

「そうなんですか。」

「ベトコンはAK47ライフルを私たちに撃ってきました。AK47は雑な作りで弾が大きくて、(口径:M16=5.56mm、AK47=7.42mm)変なふうに曲がって飛んで来るから当たるとものすごく痛い。わたしの手首にちょっとかすったと思ったら、手首から先が全部無くなっていました。」

「…。」

「だから私、右手が無くなって日本に来ました。日本で焼き肉屋やってたけど潰れました。」

「…大変だったんですね。」

おじいさんは左手でガッシリと握手してきた。

「日本人みんなやさしいです。わたし右手なくても2秒で殺せます!」

……最後の言葉の意図はよくわからないが、おじいさんは笑顔で、右手を振って去っていった。

おわり 完
─────
 NHK
 


ポムポム~☆

おれの人生にかわいい話、なし!

おわり 完

つづく

(妻と子はかわいいです)













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