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わたしは死にたくない②

入院10日目、朝から雨が降っている。わたし(とんかつ)のいる病室ではわたしが一番古株になってしまった。新しく入院してくる人たちはみな一様に不安そうだが、退院するときは誰もがちょっとさみしそう。わたしも明日で退院する。これからは減塩、低糖質、低脂肪、低デカ盛りyoutuber(ぞうさんパクパク、他)、低ラーメンブログ(東京ラーメンタル)でもう健康になるぞ!でもちょっとさみしい。

さあ今日は長すぎて1話にまとめられなかった物語の完結編だよ!物語っていってもマジでノンフィクションなのが逆につらい とほほ~なんでいつもこんな目に~

☆前回のあらすじ☆

1997年 プレステのバイオハザードを極めてファミ通のやりこみコーナーに応募しようとしたわたし(ヤングとんかつ)は、明日の仕事の事など考えず夜更かししてクリアまでの最短ルートを模索していた。ガバス(ファミ通のポイント)をいくら集めてもミュージシャンにはなれないというのに… すると深夜3時、ゾンビより恐ろしい何者かがドアチェーンを切断した。 あらすじ完

ギイ…


開かれたドアから、男が入ってきた。推定40代、身長180cm以上細身の筋肉質。長い黒髪を後ろで束ね、肌寒い季節(3月)だというのに白いタンクトップに紺のスラックス、肌が露出している部分は全て般若や龍などの和彫りに覆われていた。知り合いにこんな人はいない。


「殺すぞ」



残念ながらこのセリフはわたしが言ったのではない。男が、革靴のまま家に上がり込み、わたしにサバイバルナイフを突き付けながら言った台詞だ。殺される心当たりはないがこいつは本気だと理解できる凄みがあった。(ていうかこいつはもう何人か殺しているのが落ち着きぶりでわかる。)殺される!逃げようとしたら顔面を殴られた。

知らない人には申し訳ないがジョジョ第3部のウィルソン・フィリップス上院議員のように「ギニャー 助け」とDIOから逃げようとしたところ「デ!?」のタイミングでTHE WORLDのようなパンチを顔面に食らった。

「 あ~ おごっ」鼻血を出しながら悶絶するわたし。

すると、部屋の中に「ドカコッ ドカコッ」という靴音を響かせ赤いコートの女が入ってきた。赤いコートは特徴的なシルエットをしているので間違いなくわたしが買って元彼女にあげたもの。しかし女は…

全然知らない奴だ!!

全然知らない奴はタバコを吸いながら土足(ブーツ)のまま家に上がりこんで来た。20代に見えるが、こんな状況なのに全くの無表情。流し台にあったわたしのマグカップを灰皿代わりにして、手にしたPHS(4和音の着メロすらめずらしかった時代の16和音モデル)の画面を眺めている。

「サユリどこだ」

わたしの胸ぐらを凄い力で締めあげながら、男は言った。

「知りまヒッ!」

「知りません」と言いおわる前に、壁に押し付けられたわたしの顔の横ギリギリにナイフが突き立てられた。

ていうかサユリっていう名前の知り合いがいないんですけど…

「ワタナベと一緒か」

余計わからないんですけど…

するとわたしのPHSの着メロ(単音)が鳴り出した。画面を見ると元彼女からの着信。男は「サユリか?出ろ」と言う。わたしは震える指で応答ボタンを押した。

とんかつ「…もしもし」

元彼女「!!もしもし?急いで逃げて!!もうすぐ部屋に」男「サユリか!?」

ガチャツー、ツー、ツー・・

いったい何が起こっているんだ?!元彼女はわたしの家にコイツらがくると知っていたのか?わたしを逃がそうと電話してきたのか。


だとしたら、ちょっと遅かったですよ~(;ω;)


とにかくこのままでは殺されてしまうだろうから、わたしはただひたすら謝るという「謝男(シャーマン)」というスタイルに活路を見いだそうとした。

・すみませんがサユリという名前の女性は知りません

・すみませんがワタナベという人も知りません

・すみませんが警察には通報しません

・本当にすみません

という事を泣きながら必死に謝った。途中男が、無表情な女に「バッグから拳銃出せ」と言って、(そして女はあっさり出す)わたしを脅迫する得物がナイフから拳銃にグレードアップしたが、深夜4時から朝の8時まで謝り倒したらなんとか解放された。

(^ω^)おそらく(^ω^)

・わたしの元彼女は「サユリ」という源氏名で夜の店で働いていた。

・「ワタナベ」(組員?従業員?)は「サユリ」と逃げた。(「最近できた彼氏」というのが多分ワタナベ)

・「サユリ」は履歴書か何かにわたしの家の住所を書いていた。

・「赤いコート」は店のロッカーに放置されてたのを「無表情な女」がネコババした。いいセンスだ。

ちなみに当然その日の仕事はサボった。おわり。  完

つづく

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