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パリ、フィルハーモニー 2022〜2023年シーズンを発表 その2

前回に引き続き、今回は来シーズンの内容を詳しく見てみよう。

記者会見で配られた、来年度を数字で示した資料によると、コンサートの数は全部で483、展覧会は3つ、フェスティバルも3つ。フィルハーモニーで突出しているのは、教育プログラムで、その数はなんと12085件。内訳は、楽器実技、展覧会に関するプログラム、「子供のフィルハーモニー」(子供を対象にした多様な音楽カリキュラム)、大人用の音楽講義(ジャンルはポップやロックも含め多彩)。こう書くと学校の授業のようだが実際はもっとリラックスしたもので、とくに子供向けのカリキュラムでは遊びの要素が強い。

今年の特徴はオペラ(コンサート形式、または衣装や装置がほとんどなく、舞台上を移動したりジェスチュアを交えて歌うセミ演出形式)とダンスがさらに充実している。11月には池田亮司のパフォーマンスもある。

映画を生演奏で観るシネコンサートは6つで、そのうち2つは、旧版『ウエストサイドストーリー』(1月)とフリッツ・ラングの『メトロポリス』(5月)をパリ管が演奏。『メトロポリス』はマーチン・マタロンの新作のフランス初演も兼ねており、大野和士指揮。

フィルハーモニーでは、音楽博物館所蔵の楽器をはじめ、ペリオド楽器を使ったコンサートが充実している。これは、バロックや古楽という枠組みから一歩出た、「その時代の」楽器による演奏というテーマ。日本でも知られているのは、レジデンスアンサンブルであるレ・ザール・フロリサン、ラファエル・ピションのアンサンブル・ピグマリオン(10月と『バッハの道』3回シリーズ、12月、2月、4月)、ジョルディ・サヴァールのル・コンセール・デ・ナシオン(10月)とへスペリオンXXI(11月)、ジュスタン・テロール(またはテイラー)のル・コンソールフランソワ=グザヴィエ・ロトのレ・シエクル(12月)、マルク・ミンコフスキのレ・ミュジシアン・デュ・ルーヴル(2月)、エルヴェ・ニケのル・コンセール・スピリテュエル(2月)、クリストフ・ルセのレ・タラン・リリック(4月)など。秋にヨーロッパツアーを行うバッハ・コレギウム・ジャパンは『ロ短調ミサ』で11月7日に登場する。

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そのほかにも、アンサンブル・ラ・レヴーズ(フロランス・ボルトン&バンジャマン・ペロー)、レ・リュネジアン、レ・ミュジシアン・デュ・プランス・モナコ(チェチリア・バルトリ)、コンチェルト・コペンハーゲン、オルケストル・デ・シャンゼリゼ、オペラ・フオコなど、日本人にはあまり馴染みのない(が欧州では有名な)団体も数多い。

当初、11月に、ゲルギエフ指揮マリインスキー管弦楽団によるショルタコーヴィッチの交響曲全曲演奏が予定されており、目玉シリーズになるはずだったが、ロシアのウクライナ侵攻で全て中止になった。シリーズは中止せずに他のオケや指揮者を招聘するのか、それとも全く異なったプログラムにするのかは、現時点では未定。同様に、テオドール・クレンツィス&ムジカエテルナがバッハのロ短調ミサとラフマニノフで3月にやってくる予定だったが、これもどうなるかは現時点では不明だ。

1月末にはフランス6人組をテーマに「屋根の上の牛」と銘打って、3日間、お祭り気分に浸れる。

生誕100年のリゲティを記念して、3月3日から5日の週末に5つの演奏会が開催される。

展覧会では、4月から7月まで、『バスキア サウンドトラック』展に注目。モントリオール美術館とのコラボレーションで、ジャン=ミシェル・バスキアのアートと、ジャズやヒップホップなどの音楽を関連づける。バスキアはベートーヴェンの交響曲に執拗なこだわりを持っていたということで、クラシック音楽との関連も探る。4月14日から23日まで12の関連コンサートが催される。

春にはブーレーズ・ビエンナーレ。今回で3回目で、4月に5日間、5月に2日間をさいて、ブーレーズが影響を受けた作曲家の作品もふんだんに交えた多彩なコンサートを聴くことができる。


次回は個人的に外せないと思うコンサートをみてみます。

写真 © Philharmonie de Paris, © Philippe Jacob

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