見出し画像

*【偉大さのないわが国】「韓国と北朝鮮を〈悪魔化〉する安倍官邸の戦略」

… 大阪に続いて東京朝鮮学校の〝無償化〟裁判も敗訴となった。

2018年10月30日に仕事を終えると駆け足で地下鉄に飛び乗り、東京高等裁判所のある霞が関に向かった。すでに多くの支援者や報道人が集まり、東京や千葉の朝鮮学校の生徒たちも裁判所の出口で待っていた。

しかし、今度こそ日本の司法の良心が示されると思ったが、その希望は虚しく裏切られた。弁護士も女生徒たちも涙に暮れていた。

◆ 朝鮮学校を目の敵にする下村博文議員

2012年12月28日、当時の下村博文文科相は、記者会見でこう述べた。

「無償化に関する朝鮮学校の扱いについて報告をいたします。本日の閣僚懇談会で、私から、朝鮮学校については拉致問題の進展がないこと、朝鮮総連と密接な関係にあり、教育内容、人事、財政にその影響が及んでいること等から、現時点での指定には国民の理解が得られず、不指定の方向で手続を進めたい旨を提案したところ、総理からもその方向でしっかり進めていただきたい旨の御指示がございました」

高校の〝無償化〟の対象は、日本の学校の他に、(イ)大使館を通じて日本の高等学校の課程に相当する課程であることが確認できるもの(民族系外国人学校)、(ロ)国際的に実績のある学校評価団体の認証を受けていることが確認できるもの(インターナショナル・スクール)、(ハ)イ、ロのほか、文部科学大臣が定めるところにより、高等学校の課程に類する課程を置くものと認められるものとして、文部科学大臣が指定したものという3つのカテゴリーに分けられ、韓国学校、中華学校やブラジル学校などは問題なく〝無償化〟の対象になったが、下村文科相は数ある外国人学校の中で、朝鮮学校だけを排除するために、わざわざ(ハ)を省令で削除したのである。

少し考えてみれば誰でもわかるが、たとえ北朝鮮や朝鮮総聯に問題があり、もちろん拉致事件が良くないことは当然だが、未成年である朝鮮学校の生徒たちは、その政策決定に何ら関与しておらず、横田めぐみさんが犠牲者であるのと同じように、日朝の政治的対立のとばっちりを受けた犠牲者なのである。

しかし、安倍政権は、「朝鮮」と名のつくものならどんなひどいことをしてもいいかのように世間を扇動し、朝鮮学校の法的にも社会的にも非力な子供たちを追いつめ、修学旅行のお土産まで採り上げて恥じないのである。

子供たちの旅の思い出に過ぎない絵葉書やらポーチやらが日本の安全保障上の脅威になるか否かは常識ある者なら誰でもわかるだろう。

◆ 韓国を〈悪魔化〉する安倍官邸の戦略

この10月30日には、また一つ驚くべき事件を聯合ニュースが伝えた。

韓国の最高裁が新日鉄住金に元徴用工への賠償命令を出した。

「日韓基本条約で終わったことをまた蒸し返すのか」と日本の世論は激昂した。

しかし、これは安倍官邸が韓国を陥れるために仕掛けた謀略なのである。

新日鉄住金は、実は2012年に被害者である元徴用工と和解し賠償金を支払うつもりだったのですが、安倍政権はわざと和解をさせず、韓国の最高裁から日本に対する強い反応を引き出し、「韓国は国際法を守らない卑劣な国」として〈悪魔化〉し、卑劣な近隣諸国と「毅然と戦う」ヒーローとして自分を演出するためのワナだったである。

安倍首相はまた、いわゆる〝日韓合意〟に関する「不可逆的」という言葉をめぐりトリックを用いている。

韓国政府は、これまで日本政府が何度も反省や謝罪を口にしながら、その都度閣僚たちがそれを反古にして来た経緯を踏まえ、「もうそういう後戻りは困りますよ」と念を押すために「不可逆的」(irreversible)という言葉を使ったのに、安倍首相は、「交渉はこれで終わりだ。10億円やったのだから、後ででゴチャゴチャ言うな」という悪意ある意味づけを付与し、しかも犠牲者が存命なのに、対応を韓国政府に押しつけ、外相も駐韓大使も「ナヌムの家」に送らなかった。

この2つのトリックは、「国際法を守らない卑劣な韓国」と「毅然として不正に立ち向かう日本」という虚構を捏造するという共通の文法を持っており、おそらく安倍官邸で知恵を付けているのは同じ人物だろう。

こうして、安倍官邸は韓国と北朝鮮を〈悪魔化〉し、わざわざ相手の嫌がることをやっては強い反応を引き出すマッチポンプによって政権浮揚を図って来たのである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?