*【#歴史】「最近流行のユダヤ難民は『ナチスからではなくソ連から逃れた』論はまったくのお笑い草である」
① ヨーロッパのユダヤ人がナチスの手から逃れるのは、ピレネー山脈を越えてスペイン・ポルトガルやアフリカ植民地からの航路か、シベリア鉄道を横断して日本から米国や上海に逃れるしかなかった。
② 東欧のユダヤ人にとっては、ナチスとソ連は「前門の虎、後門の狼」であり、歴史の時期時期によって、「ナチスから」とも「ソ連から」逃れたとも言えるが、それは年表を見れば子供でもわかることである。
③ さて、捕まれば生命の危険のあるナチスとは違い、ソ連当局が迫害の対象としたのは、ブンドなど非ボルシェヴィキ的左翼やソ連邦解体に繋がるシオニストなど特定のカテゴリーである。
④ 時期的にも対応でも異なる「ナチスから」と「ソ連から」を等価のものとして語るナラティヴは人を欺くものである。
⑤ 最近、ポーランドやリトアニアは、国会決議までして、杉原千畝を顕彰したり、「ホロコーストに加担していなかった」云々の議論が沸騰している。
⑥ もちろん、ポーランドやリトアニアには、ナチスの生物学的レイシズムではなく、中世に遡る宗教的反ユダヤ主義が存在したのである。それを知っているからこそ、ナチスはポーランドに多くの強制・絶滅収容所を作り、リトアニアの「ショーリアイ」と呼ばれる極右のならず者たちは、ナチスの移動殺戮部隊といっしょにユダヤ人を虐殺したのである。
⑦ つまり、近年のユダヤ難民を「ソ連から」救ったという議論は、20世紀末のソ連邦の崩壊に伴う東欧諸国の独立の正統性を担保し、併せて一部ホロコーストに加担したという後ろ暗い歴史を隠すために都合がよいのである。
この程度の歴史的=政治的文脈がわからない者を、学者とか研究者と呼ぶのは憚られるだろう。
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