J2第12節 ヴァンフォーレ甲府vs徳島ヴォルティス

今節の相手は昨年J1昇格の夢を絶たれた相手。
徳島で流した涙から約8ヶ月。
リベンジの時が来た。

前節琉球に2-1で勝ち6戦負けなしとした甲府。
昨年の8/17山口に負けて以降ホームでは1年負けなしが続いている。

一方の徳島は3連勝中で暫定で3位。
リカルド・ロドリゲス監督4年目のシーズン。
完成度の高いチームである。

対戦成績はアウェイでは2009年以来負けてはいないがホームで甲府は3連敗中。
いずれも0-1で敗れている。
先制されると苦しい展開が予想される。

1.いざリベンジの時

スタメンはこちら。

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甲府は前節から9人変更。
藤田が復帰となった。
注目は新井と内田を挙げたい。
徳島の地で悔し涙を流した2人の活躍を期待したい。

一方の徳島は前節から6人変更。
注目はジエゴ。
今シーズン初出場となる。

また、注目は平均身長。
フィールドプレイヤーの平均身長は甲府が179.7㎝徳島が174.2㎝となった。
180㎝オーバーは甲府が6人、徳島が2人。
得意のセットプレーは注目となる。

2.参考にすべきチーム

配置で勝負するチーム同士。
参考にすべきチームである。

多彩な攻撃時の立ち位置を持つ徳島。

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オーソドックスな形あり。

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ジエゴをハーフスペースに侵入させる形あり。

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両WGがハーフスペースに位置する形あり。

飲水タイム明けこの形が増える。

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両SBをハーフスペースに配置する形。

低い位置でボールを足元で受けた場合や斜めのランニングをしてインサイドに入った時に大外レーンにSBが位置するケースが見られたが、基本は幅を取るのは杉森と西谷。
彼らは独力で剥がす力を持ったタレントであり、彼らの存在が相手DFを外に引っ張る。
また、深さを取るのは大外レーンとハーフスペースに入った選手たち。
最前線の河田は最前線に留まることによりDFを釘付けにする。

一方で甲府に置き換えるとどうだろうか?

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右は藤田が大外、松田がハーフスペース。
左は泉澤が大外、武田がハーフスペースの形が多かった。

あるいはこの形。

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この形に近い配置から甲府が先制点を挙げる。

徳島での悔しさを知る男のゴール。
まさかのヘディングでのゴール。
スローインから泉澤に預け時間を作る。
最初に泉澤にボールが入った時点でエリア内には甲府の選手が3人、徳島の選手が6人もいるが泉澤と藤田の誰もカバーにはいかない。

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杉森がもう少しこのエリアをカバーする意識があってもよかったのだろう。
カバーがいれば藤田も飛び込むことができたかもしれない。

一方で甲府は泉澤が時間を作っている間に今津がエリア内に飛び出し武田が裏を回ったことで藤田の意識もそちらに向いただろう。
また、ファーサイドにいたマイクの存在も大きかった。

相手を見て配置を変えられる徳島と自分たちのストロングを活かすために配置を変えている甲府。
また、ボールを持てる徳島と相手に持たれる展開が多い甲府と配置で勝負という点は共通も細部は異なっている。
一番大きな違いはオフザボール時の首振りとバックステップ、ボールの受け方ではないか。
徳島は前述のようにボールを持ち相手を見ながら配置を変えていくため、ボールと正対し、首を振りながらバックステップを踏み止まって受けるシーンが多いためミスが少ない。
一方で甲府はあくまで自分たちのストロングを活かすために配置を変えることとボールを保持する時間が少ないことからまずはゴールへの最短ルートを探すためスペースへのボールが多い。
唯一泉澤のところだけは時間が作れるため足元へのボールも多いが、右サイドはダイレクト志向であり、内田や武田もフリーランニングを活かすボールが多い。
当然止まって受けるより走って受ける方がミスも増える一方で迫力は増す。
お互いの志向するスタイルと抱えてるアタッカーの種類によって違いはあるがボールを持てる時間が増えればより徳島に近い形も見せられるのではないか?

3.8番キャプテン

両チームの中心は8番。

甲府新井、徳島岩尾。
お互いに攻撃時にはアンカーとして構え、お互いに守備時には消しに来た。

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徳島は攻撃時立ち位置を変えアンカーに入る新井を河田、梶川で消す。
河田がDFラインに新井へのコースを消しながらプレスに行き梶川が新井をマーク、反対に梶川がプレスに行けば河田がマークする。

伊藤監督の試合後コメントより。
『前半の入りで、徳島さんが用意してきたと思いますが、我々の(新井)涼平が1つポジションを上げて4-3-3でボールを動かすところでアンカーの部分を消しにきていて、それが20分くらいまで続いたのですが、その形を継続しながら行けるかなと思いながらやっていました。そこがボールを握られる時間が長くなった要因なのかなと思っています。その後、我々は3-2の3バック&2ボランチの形に変えて、相手の梶川選手の脇で起点を作ろうという形にして残り20分はボールが落ち着いて攻撃できたのかなと思います。 』

伊藤監督のコメントにあるように消されて思うようにボールが持てない展開を見せると立ち位置を新井の立ち位置を変えずビルドアップする形に変える。
伊藤監督は残り20分と仰っているが30分過ぎに伊藤監督の声が中継用のハーフナーじゃない方のマイクに新井への指示を拾っていたためこの時間から変更したと思われる。

一方の甲府は岩尾を消しきれない。

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甲府はそもそも1人で消す形ではあるが横に動かされるだけで簡単に通されてしまう。
マイクも運動量が多いタイプではなくスピードもあるわけでないため1人で任せるには重すぎるタスク。
しかし、マイクの守備が悪いわけではなく徳島が上手だったと言える。

そこで武田がボールホルダーにプレスに行くことによりマイクはボールホルダーは放置し岩尾のコースを消しながら次のパスの行く先に絞って守り野澤が連動し、岩尾にマークに行く形も見られた。

しかし、徳島は一歩も二歩も上手で岩尾消されれば上福元へ下げる形やDFラインの背後へ長いボールを入れてきて対抗。

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マイクの負傷交代によりドゥドゥを投入し流れが変わる。
岩尾にボールが入る回数が減る。
常に背後の岩尾を意識し、限定させながら守備ができた。
それにより徳島も効果的にボールを握れず甲府がボールを持つ時間が増えた。

しかし、もう1人危険な選手が登場する。
岩尾は消せても小西からの配球が出始める。

4.ガラスのエース

そして飲水明けの69分前々節負傷で途中交代した影響からかベンチスタートだったバホスを松田に代わって投入。
1点を守るのではなく2点目を奪いに行く采配。

しかし、直後に追いつかれる。

2分36秒より。


判定については思うこともある。

試合後の伊藤監督のコメントより。
『失点シーンに関しては、PKという判定は致し方ないと思いますが、我々から見ると先に中塩がジャンプした時に腕を掴まれてバランスを崩してというところがゲーム中でも見えていたので、それがファールではなく、その後に中塩が引っ張って倒したという判定は残念に思いますが、レフェリーの方々がしっかり見てくださった結果の判定ということであれば致し方ないのかなと思います。』

伊藤監督も納得が出来てはいない様子。
判定は人がすることであり他人の見方を変えることは残念ながら出来ない。
自分たちにフォーカスした時に隙があったことは事実。
飲水タイム明け岡西のゴールキックからスタートしたが距離も短く、甲府の選手誰もいないエリアに蹴っている。
その跳ね返しに対し中塩も準備が出来ていたとは言えず対応を誤り入れ替わられてしまった。
飲水タイム明け集中して試合に入れていただろうか?

前節の今津に続き中塩にはいい勉強になったのではないか?
決して手を抜く選手ではない。
プロの世界では一瞬の隙で失点に繋がってしまう。

直前にバホスを投入しており2点目を奪いに行くことは失点してもしなくても変わらない。

しかしドゥドゥで規制が掛けられていた守備もバホスがトップに入り掛からなくなる。
そこで中盤を厚くするため82分には中村と小柳を投入し、ドゥドゥとバホスの2トップへ変更。

1分後1人少なくなる。
バホスが相手DFラインの背後へランニング。
その際相手の内田の足を踏んでしまい足首を捻り負傷。
交代回数を使い切っていたため残り時間を10人で戦うことになる。

練習生として甲府にやってきて契約を勝ち取り、負傷で登録抹消されながら翌年再度契約。
圧倒的なスピードと決定力でエースとして君臨するも再度負傷。
昨年はメンタル面で安定せず岐阜へレンタルされるも岐阜でも活躍できず今シーズン復帰。
転んでも転んでも立ち上がる。
厳しい言い方だが聞こえはいいがそのほとんどが自分の問題である。
メンタル面、フィジカル面における自己管理能力がプロフェッショナルとは言い難い。
大きな才能がありながらキャリアを自ら傷つけている。
バホスの今後のキャリアにおいても今シーズンの甲府が昇格を争うチームになるためにも変わらなくてはいけない時が来ている。

1人減ってからはボールを持たれる時間が続く。
甲府はドゥドゥの1人での打開以外は選択肢がない苦しい展開。
最終的にはなんとか守りきることができた。

5.あとがき

悔しい引き分けも正しい方向へ進めていることを示したゲームとなった。
また、徳島から学んだことはたくさんあっただろう。
勝ちきれない試合が多くモヤモヤ感は残る人もいるかもしれない。
しかし、J2リーグで最も負けてないチームである。
勝ち点1を3に変えていくにはどうするか?
まだまだ伸びる余地はあり、チームの成長、若手の成長を楽しめるシーズンではないだろうか。

MOM上福元直人
決定機阻止2度も当然だが流れの中でプレスの逃げ道であり続けた。
逃げ道だけでなくそこから正確なフィードで甲府のプレスを裏返す。

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