J2第13節 ヴァンフォーレ甲府vs愛媛FC

前節悔しい引き分けに終わった甲府。
7試合負けなしではあるが、なかなか勝ちきれない状況。

一方の愛媛は9戦勝ち無しで順位は21位と苦しい状況。

直接対決は甲府が優勢も得てしてこういう試合で落とすのが甲府とも言える。
気を引き締めて望みたい一戦はミッドウィーク開催であり若手中心のメンバーが予想される。

1.新たな形

スタメンはこちら。

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注目は小林岩魚と中山陸。
小林はJリーグ初出場。
中山はJリーグ初先発となる。

小林はアカデミー出身の選手で専修大学から加入して2年目のシーズン。
先輩の太田がブレイク一歩手前まで来ているが小林も続けるか。
そのスタートとなる一戦。

中山は東海大相模高校から加入して2年目。
加入前特別指定選手として出場した2018年ルヴァンカップ準々決勝第1戦柏レイソル戦のプレーを覚えているサポーターも多いだろう。
その輝きはプロ入り後まだ見せることは出来ていない。
「甲府の7番」として輝きを見せられるか注目。

愛媛の注目は長沼洋一。
山梨県出身の選手であり、シーズン前には甲府がオファーを出したと報じられた選手である。
来年に延期されたオリンピック世代の選手であり今後も成長を続けオリンピックでの活躍も期待したい選手である。

甲府のボール保持時と愛媛の守備時の基本形はこちら。

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WBで幅を取りシャドーがハーフスペースに起点となる形。
右サイドでは太田と小林の入れ替わりも見られた。
そして後方はいつもの3バックの真ん中の選手がアンカーに入る形というよりかは山本と山田のボランチに中村が少し高い位置に入る形。

一方の愛媛のボール保持時と甲府の守備時の基本形はこちら。

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愛媛の形も前線は甲府と同じような配置である。
一方で後方は人数こそ同じだが形は異なる。
基本布陣は崩さす左右のCBが開き甲府のシャドーとボランチの間にギャップを作ることが狙い。

序盤は静かな入りだが甲府がボールを持つ流れ。
配球の上手い山本、中塩の存在と幅と深さを取る動きが合わさり狙いを持って守備にいけない愛媛。

19分。

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小柳をSB化させ、ボランチを縦関係に変える形でのビルドアップが見られた。
山本、中塩でボールを繋ぎ太田、小林が下がって来る動きに合わせ小柳が相手DFラインの背後に飛び出す形を見せた。
この形はあまり見られなかった形だがこのメンバーの特性には合っている。
山本、中塩は技術もあり長いボールを蹴れる。
小柳はハードワークできる選手であり長い距離走る馬力もある。
太田はスペースを見つけ引き出すのを得意とする選手。
小林は右WBで出場しているが左利きの選手でありダイレクトで前節へ角度をつけてのパスを供給できる。

一度山本に返した後このようなシーンが出る。

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先ほどと同じような形から相手の背後をつく。
戻った前野に対応されたが続けて相手を動かしスペースを自ら作り出す。

2.若手の底上げ

あまり動きそうに無い展開だったがカウンターから先制に成功する。

中村のJリーグ初ゴール。
直前にもクロスからシュートを放つが相手に防がれる。
しかし、その流れから荒木のクロスに中村が合わせた形。

試合後の伊藤監督のコメントより中村と山田のボランチについて
『今日が引き締まったゲームになったのは2人のおかげですし、彼らはゲームの中で成長しているのは感じています。「自分たちがイニシアチブを取る」ことや「もっと優位に進めるメンタリティ」は成長してさらに出てくると思います。』

山田は展開に潰しにと存在感を見せていた。
伊藤監督のコメントにもあるように2人の存在はこの試合では大きかった。
最初に組んだヴェルディ戦では相手に面白いように遊ばれていたがそこから水戸、琉球と経て大きく成長を見せてきている。
武田、野澤を脅かす存在になっている。
昨シーズンのレギュラークラスを全員いなくなった中で不安視されていたボランチが今では強みと言えるポジションとなった。

荒木は走力を活かしサイドでのアップダウンを繰り返し行い続けた。
また、先制点をアシストし結果も残した。
松本戦、ヴェルディ戦と悔しい試合が続いていたが試合を重ねる毎に成長を続けている。
内田の壁は高いが競争できるとこまでは来ている。

小林はJリーグ初出場を果たした。
負傷離脱からの復帰だが練習試合を経ないぶっつけ本番では十分なプレーぶりだろう。
これまでミッドウィークの試合は関口が推進力を見せチームを引っ張っていたが小林も積極的に相手DFラインの背後を狙っていた。
アタッキングサードでのプレー数、パス数、敵陣30m以内でのプレー数で両チームトップ。
目立った結果は残さなかったがチームに勢いをもたらした。
徐々にコンディションも上げってくればより活躍が見られるだろう。

中山は想像とは違った印象を持った人も多かったのではないだろうか?
フィジカル面では身体も明らかに大きくなっておりフィジカル面で負けるシーンはほとんど無かった。
プロで戦えるフィジカルは手入れたと言える。
一生懸命守備を頑張る姿勢も見えた。
チームの一員としては良いプレーをしていたと言えるだろう。
一方で相手の急所を突くようなスルーパスは見られなかった。
プロで戦う上で正しい成長の方向ではあるが中山の魔法をかけるようなプレーが見られなかったのは残念であった。
明らかに他の人とは違う才能を持っているだけにその才能を全面的に発揮する姿が見たい。

伊藤監督のコメントより
『今日は若手の中山陸などがスタメンで出ましたけど、ゲームにしっかりと入ってくれましたし、評価はすごく良いです。これだけできればもっとチャンスはあるなと思いますし、交代したことに関して、ネガティブに捉えないでポジティブに捉えてほしいし、こういう日程の中なので、選手交代はすごく大事になってくると思います。交代したからと言って下を向かずに次のチャンスに向けて、コンディションやクオリティをあげてく作業をしてもらいたいと思います。僕自身も、中山陸に関しては次回も勝負したいなと思いますし、メンタルやモチベーションを落とさずにいてほしいと思います。 』

必ずチャンスはやって来る。
次は攻撃面の才能を発揮し、躍動する中山陸を見せてくれるだろう。

3.難しい展開へ

後半頭から愛媛は3枚を代え布陣も変更する。

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2トップ3センターの形となる。
昨年甲府に在籍した横谷は凱旋試合となった。

選手交代を経て圧力を強めてきた愛媛だがいなしながら進める甲府。

60分にはドゥドゥを投入し2点目を奪いに行く。
しかし、その1分後に1つのミスから試合は一変する。

2分25秒頃より。

横谷のパスミスを山本が奪い繋ごうとするが後ろから来た有田に奪われゴールを決められてしまう。
若手が躍動する試合の中でベテランのミスから試合を難しくしてしまう。

小林のシュートが岡本に阻まれたシーンもあったがドゥドゥを入れて2点目をという勢いはあまり出てこない展開の中逆転されてしまう。

3分6秒頃より。

ボールを失った後切り替えが遅くなり中盤とDFラインの間に大きなスペースを許す。
また、前向きにゴールへ向かう愛媛に対して甲府のDF陣は山本を除き全員ゴール方向を向き戻りながらの守備となっている。
最終的には正対した状況を作れてはいるがその直前には愛媛は何でもできる状態であった。
ゴールの直接の要因は中盤の帰陣の遅さではあるが失った後の守り方は大きな問題であり必然の失点であった。

4.役者復活

逆転を許した4分後、金園と野澤を投入する。
これにより金園が最前線に野澤がドゥドゥと並びシャドー。
太田が右WBへ。

1分後同点に追いつく。

さすがの得点力。
この一言に尽きるゴール。

愛媛もプレスが連動して来なかったところで中塩から山本へ縦パスが入る。
それに対して愛媛は誰もチェックに来ないのを見て山本がタメを作りながら運び金園とドゥドゥが動き出す時間作る。
愛媛のDFラインは茂木が釣り出されておりそこのスペースを活用した。

2分後今度はドゥドゥで逆転。

右サイドへ守備の方向づけをし、相手を誘導する。
連動してタッチライン際で囲い込みボールを奪うと一気にカウンター。
ドゥドゥの動き出しに合わせ山田がスルーパスを出し中村が連動して絡む。
左サイドには大きなスペースがあり荒木がスプリントして来る。
中村はドゥドゥも荒木もどっちも使える状況。
最後はドゥドゥが決めきった。
速いカウンターだが連動して奪った見事なゴール。

甲府で最もゴールに飢えている男と甲府の太陽の復活を告げるゴール。

5.あとがき

今まで幾度となく甲府を救ってきた山本だが今節は逆に助けられる形となった。
Jリーグ500試合出場が近づいて来た選手でもミスは起こる。
大事なのはその後どう切り替えるか。
山本は同点ゴールをアシストした。
この姿勢は若手選手も見習いたい。
内容面では改善点はまだあるだろう。
しかし、選手層は厚くなりチームとして勝ち点を計算できるようになってきた。
この勝利で4位浮上。
上2つが抜けている現状だが逆転された試合を再逆転できたこの1戦はきっかけとなる試合となるかもしれない。

MOM 金園英学
1ゴール1アシストの中村とも悩んだが金園のゴールがこの試合を動かしたと言える。
昨シーズン終盤金園の活躍でプレーオフに進出できた。
今年もこの男の復活から勝ち点1を3に変える戦いを期待したい。

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