J2第39節 ジェフユナイテッド市原・千葉vsヴァンフォーレ甲府

前節レノファ山口に勝ち、9戦負け無しとした甲府。
今節はアウェイ千葉での一戦となる。

千葉は前節、新型コロナウイルスの陽性者が2人出た中で行われたアウェイでのヴェルディ戦は引き分けとなった。
アウェイでは5戦負けなしとなったが、ホームでは3連敗中。
4勝4分11敗とホームで大きく成績を落としてしまっている。
試合前には新たに新型コロナウイルス感染者が出たことから試合の開催が危ぶまれたが、無事に試合開催となった。

前回対戦は甲府ホームで2対1と甲府が勝利を収めている。
通算成績は4勝3分8敗と苦手としているが、リーグ戦ではフクダ電子アリーナでの成績は3勝1分2敗と相性のいいスタジアムとなっている。
J1で初めて勝ち点を挙げた地で、J1への可能性を繋ぐ一戦としたい。

1.空中戦

スタメンはこちら。

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甲府は前節から6人、前回対戦からは6人の変更となった。
注目は金園英学。
18節長崎戦以来、今シーズン2度目の先発出場となる。
ここまで1得点とゴールがなかなか奪えないシーズンとなっている。
出場すれば得点以外での貢献度は高いため、あとはゴールが欲しいところ。
昇格の可能性を次に残すため、金園のゴールに期待したい。

千葉は前節から1人、前回対戦からは7人の変更となった。
注目は堀米勇輝。
甲府のアカデミーで育ち、甲府でJリーグデビューしたが今節でJ2通算200試合目の出場となる。
「甲府の至宝」と呼ばれ、期待されたが甲府では大きな活躍はできなかった。
千葉に移籍して2年目のシーズンとなるが、20試合に出場し2得点と輝ききれてはいない。
古巣甲府相手に成長した姿を見せたい。

立ち上がり甲府は千葉の右SB増嶋の裏に宮崎を走らせる形を見せる。
普段とは違い右のボランチに入った武田からの対角線のボールやメンデスからのシンプルに縦へのロングパスで宮崎を使う。

最初に決定機を迎えたのは千葉。

メンデスから宮崎へのパスが合わず、GKの新井からのロングパスを船山、クレーべと繋ぎ、クレーべのクロスにアランピニェイロが合わせるも枠の外。

前線からプレッシャーをかけ、千葉のビルドアップを阻害し、マイボールの時間を多くしたい甲府。
だが、前線へのロングボールで逃げられてしまう。
跳ね返しセカンドボールを拾えれば、甲府ボールの時間を増やすことができるがクレーべを中心に空中戦で強さを発揮する。

試合後の増嶋選手のコメントより。

『前がしっかりキープしてくれたり、わかりやすいポジショニングを取ってくれていたので。上がるタイミングははかりやすかったです。』

前線でクレーべが空中戦で勝ち、起点となることで後方の選手はサポートに入りやすくなる。

この場面は象徴的な場面である。
アランピニェイロが競り勝ち、クレーべが収めることで抜け出したアランピニェイロのフィニッシュ。
難しいことはしていないが、フィジカルも強さを活かし決定機を作った。

一方で433に可変しボールを保持する甲府は千葉がプレッシャーに来ないため、後方でボールを持つことができる。
だが待ち構える千葉に対し、最終的にロングボールを入れていくしかなく金園のところで起点が作れない。

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試合後の船山選手のコメントより。

『連戦の5戦目なので、それほど前から激しくという形ではなく、ある程度構えようという話をしていました。前半はうまくハマってくれて良かったです。甲府はボールを回してくるけれど“FWの前”で回される分には怖くないので。それを意識していました。』

前線で起点が作れないため、後方で回すしかなく千葉の狙いにハマってしまう。

甲府は飲水タイムを経て、ボール保持時の立ち位置を変える。

試合後の伊藤監督のコメントより。

『4-3-3で入りながら途中でオーガナイズを変えてSBの裏を狙った』

左サイドは宮崎がサイドに張る形であったが、宮崎をインサイドに入れ、内田をより高い位置に入れる形に変更する。
立ち位置を変えたことで千葉の守備のウィークポイントが見えてくる。

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クレーべのスライドが遅く、フィジカルに長けた選手が多い千葉の中でフィジカル面で劣る堀米の周辺は最も千葉の守備が緩いエリアとなる。
メンデスには時間もスペースもある状況が多くあった。
だが、効果的なパスは出せず。

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後方で数的優位を得ながら、効果的に前進できないため武田が下がってこないといけなくなる。
それにより、中村と松田も下がってボールを引き出す。
引いて構える相手に対してはいかに相手を引き出すかが重要となるが、ビルドアップが上手くいかないことから自分たちが正しいポジションを取れないことに繋がる。
後方からビルドアップする理由は前線に時間とスペースを与えるためである。
このエリアで相手を引きつけたり、相手の逆を突くようなパスを出すことができればより前線で余裕が生まれる状況を作り出せる。
だが、甲府は相手が待ち構えるところへ孤立する前線の選手に強引に縦パスを入れ込み、インターセプトを許していた。

試合後の尹晶煥監督のコメントより。

『相手に対して簡単に飛び込まなかったことです。2列目から進入してくる選手に対してうまく対応できましたし、引いてブロックを作った時にはスペースを消す守備をうまくやってくれたと思います。クレーベとタカ(船山)の2トップから始まって、後ろにいるトリ(鳥海)や(新井)一耀までコンパクトさを維持してくれました。』

前半最大の決定機は40分に訪れる。

構える千葉の守備網の中に縦パスを付けるも潰されてしまいカウンターを受ける。
堀米がドリブルからクロスを上げ、アランピニェイロがオーバーヘッド。
岡西のビッグセーブで難を逃れた。
甲府時代の堀米の右足はここまで精度は高くは無かったが、素晴らしいクロスを上げた。

直後にアクシデントが発生する。
金園が負傷してしまう。
FWに怪我人が相次いでいる中、無理をして先発出場したのだろう。
代わりに4試合ぶりの出場となる太田が投入された。

試合後の尹晶煥監督のコメントより。

『選手たちには「忍耐強く我々のできることをやろう」という話をしたのですが、前半から本当にいい姿を見せてくれました。いい守備からいい攻撃につながるシーンがたくさんありましたし、それが得点につながれば一番良かったと思います。それができなかったことが惜しいところで、「後半も引き続きやっていこう」という話をしました。』

千葉の空中戦の強さ、出足の鋭さとフィジカル面で圧倒され、時間だけが過ぎていく印象の前半となった。

2.苦境

後半の開始から甲府は小林に代えて荒木を投入する。

後半に入り、またビルドアップの形を変える。

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ボランチの並びが左右変わり、武田がクレーべ、堀米の千葉の守備が緩いエリアに下がりビルドアップしていく。

前半は見せ場の無かった甲府が後半最初のチャンスを作る。

内田からの低くて速いクロスを松田が合わせるも、新井が防ぐ。
甲府の前線は高さが無いだけに早いタイミングで、低く速いクロスは有効的である。

後半に入り、甲府が安定してボールを持てるようになるも千葉がCKから先制する。

これまで堀米がキッカーを務めていたが、船山にキッカーを変更する。
船山の蹴ったボールは直接ゴールを揺らした。

試合後の船山選手のコメントより。

『シンプルに、速いボールをニアサイドにという狙いでした。』
『チャンスがかなりあったので決め切れなかったというイヤな雰囲気はありましたけれど、今日に限ってはどこかで点を取れるんじゃないかと思っていました。ああいう形でしたけど決められてよかったです。』

試合後の尹晶煥監督のコメントより。

『CKからの得点は今シーズン初だと思います。』

先制を許した試合で、逆転勝ちは1度も無い今シーズンの甲府は勝つしか無い試合で厳しい展開となってしまう。

3.FWメンデス

66分には内田を代えて山本を投入する。
これによりメンデスを最前線に上げる。
金沢戦、栃木戦、山形戦に続いてのFWメンデスだが、ここまで結果は出ていない。
怪我人が相次いでいる中、最善策を探した上での起用だがメンデスをFWで使わなくてはいけない状況では苦しい。
一方で千葉のベンチには川又や山下といった実績もあり、得点も取っている選手を置いていた。

だが、メンデスを前線に上げてから甲府は押し込む展開が増えていく。
前線に基準点ができたことで千葉の守備の意識がメンデスに向いたことも大きいが、山本英臣の凄さが光る展開に。
配給源が武田の他に山本が加わったことで甲府が押し込んでいく。

72分には山本を起点とした甲府のチャンス。

山本から左サイドの荒木へのパスからクロス。
メンデスを囮に松田が飛び込んだ。

サイドからのクロスだけでなく、スルーパスからDFラインを破られた場面も作られたことから千葉は3枚代えで5バックにして対応する。

試合後の尹晶煥監督のコメントより。

『トリが足をつりかけていたのですが、相手が続けてロングボールを蹴ってくる状況で、相手の2列目の選手へのプレッシャーがあまりかけられない状態になっていました。中央から崩される心配はあまりないと思っていたので、それならば5枚に変更したほうがいいと考えました。中央を厚くして跳ね返すことを得意とする選手を揃えるべきと考えました。』

試合後の伊藤監督のコメントより。

『相手が5バックになって重心が後ろになったこともあると思う。我々は落ち着いてボールを持てた。』

中央を固めることを選択した千葉に対し、意識が後ろに向いたことでより甲府が押し込む流れとなる。

75分には中村に代えて新井を投入し、山本を1列上げる。
80分のメンデスへの浮き球のパスは、後方の選手に欠けている相手を引きつけるパスであった。
左サイドの荒木へのパスを匂わせ、相手を動かしディフェンスの視野の外で動き出したメンデスへ空間を使ったパス。
待ち構える相手を引きつけて動かすヒントがそこには詰まっていた。

終盤になり甲府はセットプレーからゴールに迫る。

太田のシュートはディフェンスにブロックされ、試合終了となった。

試合後の太田選手のコメントより。

『自分が勝たせるつもりでピッチに入りましたが、不完全燃焼に終わってしまいました。(最後のシュートは)決めたかったですし、シュートを上に打っていたら入っていたかもしれません。ただ、僕の中では可能性を残すためにも下に打つことを意識していましたが、それでブロックされてしまいました。紙一重だったとは思いますが、大きなところだった思います。』

試合後の尹晶煥監督のコメントより。

『得点してからは引かざるを得ない状況でしたが、それでも無失点で終えられたことは選手たちの努力が大きかったと思います。』

終盤は相手を押し込み、ゴールに迫ったものの得点を奪うことができず。
今シーズン持ち続けた課題であったが、最後までクリアすることができなかった。

試合後の伊藤監督のコメントより。

『チームとしてベースが上がってきたが引き分けが多く、勝ち切るゲームが少なかった。引き分け16で、このうち6試合を勝ちに繋げていたら違っていた。追い付かれたゲームもあった。追い付かれない、突き放すためのチームのクオリティ、パワーが足りなかった。』
『今年1年を無駄にしないために残り4試合素晴らしいゲームをしないといけない。アグレッシブなゲームをする義務がある。ファン・サポーターのために集中して結果を出すことが大事。中2日で愛媛戦があるのでモチベーションを持って勝ちに繋げる作業をしたい。』

試合後の太田選手のコメントより。

『当然悔しいし、やるせない気持ちです。やっぱり、彰さん(伊藤 彰監督)のサッカーで、ある程度ベースを築き上げることができていると思います。ただ、その中での勝負どころ、試合中の絶対に守らなければいけないところ、絶対に得点しなければいけないところ、そういった勝負どころでどれだけできるかだと思いました。』

伊藤監督や太田のコメントにあるようにチームとしてのベースを作ることはできたシーズンとなった。
一方でゲームを支配しながら得点を決めきれず、勝ちきれなかった試合は多かった。
また、今節の千葉のように442で構え、フィジカルを前面に押し出していく相手にも勝ち点を落としてきた。
フィジカルで潰されないためにパススピードをより上げていかなくてはいけない。
得点を決めきるためにシュートの精度やクロス、ラストパスの質を上げていかなくてはいけない。
メンデスをFWで起用しなくてはいけない状況ではゴール前での質が劣ることは致し方ないように思う。
残り試合で太田や宮崎、中山といった若手の突き上げを期待したい。

4.あとがき

今節の敗戦で来シーズン戦うステージが決まってしまった。
悔しい。
この言葉以外思いつかない。
選手、スタッフは本当に良く頑張ってくれた。
だからこそ終盤戦まで昇格の可能性を残すことができた。
リーグ戦はまだ残り4試合残っている。
来シーズンに繋がる戦いを期待し、来シーズンこそは昇格を勝ち取りたい。
来シーズンの戦いは昇格が無くなった瞬間から始まっている。
落ち込んでいる暇はありません!
来年こそ昇格しましょう!!

MOM 鳥海晃司
空中戦では金園を完封し、地上戦ではインターセプトを繰り返した。
甲府が縦に付けるボールを鳥海が封じることで甲府はチャンスを作れなかった。
足をつりかけて交代したとのことだが、交代してから甲府にチャンスが増えたことは偶然では無いだろう。

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