J2第15節 ヴァンフォーレ甲府vs栃木SC

前節の不甲斐ない試合から1週間。
立ち直った姿を見せられるか注目となる。

今節の相手は栃木。
ハードワークをベースにリーグ最小失点の堅守を誇るチーム。
一方で得点はリーグ最小と得点力は課題となっている。
直接対戦の成績では大きくリードしており、ホームでは負け無しの相手。
相性は良い相手となる。

上記のように栃木はダントツでボール支配率が低いチーム。
甲府がボールを持つ展開が予想されるが栃木の前線からのハードワークをいなしボールを運べるか注目となる。

14節終了時点でリーグ3位の得点力を誇る甲府の矛が勝るか、リーグ最小失点の栃木の盾が勝るか?

1.アグレッシブ

スタメンはこちら。

画像1

甲府は前節から6人メンバーを変更。
注目は小林岩魚。
内田、藤田ではなかなか推進力を出せなかったが小林はサイドを活性化させられるか?

一方の栃木は3人変更。
注目はエスクデロ競飛王。
第8節群馬戦以来の先発。
ボールが収まる選手であり1人で打開できる選手。
時間とスペースを与えては危険だ。
ベンチには矢野貴章が復帰。
敵陣空中戦勝率1位の選手であり、終盤に投入され放り込まれると厄介な選手となる。

立ち上がりからシンプルにゴール前にボールを入れ込みセカンドボールの回収を狙う栃木。
一方の甲府は栃木のハイプレスに怖がり蹴り返すだけの甲府。
入りは栃木ペース。

4分に栃木がCKを獲得。
キッカーは注目にあげたエスクデロ。
栃木は前節の山形同様ショートコーナーを選択。
そこからリターンをファーサイドという形。
試合を通してこのパターンで来ていた。
甲府の対応は前節と同様。
ショートコーナーへの対応は一番ニアにいる選手(太田)が対応し遅れてストーン役の選手(中村)がスライドしてくる形。
ニアポストにいるストーン役の選手(ラファエル)はそのままクロスへ備える。

6分左サイドのスローイングから太田を経由し逆サイドのオープンスペースに小林を走らせるボールを出す。
最終的にはクロスが相手に当たり防がれてしまうが相手がハイプレスに来る前にオープンスペースに逃げ前進できた。
この形がどれだけ出せるか。

ハイプレスが機能しだし、明本の推進力やエスクデロのキープ力を活かし徐々に押し込み始める栃木。
一方の甲府はボールの落ち着けどころがなく行ったり来たりの展開に付き合う形に。

栃木の選手の矢印は常に前へゴールへ向いておりその勢いに飲み込まれていく。
ポゼッションすることがアグレッシブでは無いということではない。
しかし、甲府の選手には栃木のようななりふり構わず点を取るんだ、ボールを奪うんだという姿勢は出せているのか?
アグレッシブとは何か栃木から学べたのではないか。

後半に入り実を結ぶ。

大島からエスクデロへと繋ぎタメを作り、溝渕のサポートからクロスに西谷という形。
全ての局面で後手に回り最後はボールウォッチャーとなり失点。
毎試合失点しているのも納得する失点。
これだけ自由にやらせたら当然失点してしまう。

2.相手の土俵

試合後の伊藤監督のコメントより。
『このゲームにおいては、セカンドボールだけを意識させていれば良かったと思います。ただ我々はそれだけじゃなくて、ボールを回収した後にゲームをコントロールしたりとか、サイド攻撃やくさびを入れて我々が押し出したりとか、そういうことをやりたかったのですが、逆を言えばセカンドボールの勝負のところで、バトルをする状況で、ゲームを進めていれば良かったのかなと。ここは私の分析のところでもう少しゲームをコントロールして、ボールを動かしながら押し込める時間がもう少し長く出来るかなと思いました。現状で60%ほどボールを保持していましたけど、セカンドボールをもっと拾って、クロスを入れて、また拾ってミドルを打つとかそういうところをもっとやりたかったなと思います。それもセカンドボールを拾えなかったら出来ないと思いますので、もっと積極的にボールを動かしながら押し込んでゲームを出来ればよかったかなと思います。』

セカンドボール回収にこだわりをもって望んだ試合だったのだろう。
ただ栃木はハードワークしてのセカンドボール回収がウリのチーム。
ハードワークしてセカンドボール回収を武器に勝ち点を積もうとしているチームである。
その相手の土俵で戦っても自分たちの強みではないので勝ち目は薄いのではないか?
コメントの最後にあるように自分たちで怖がらずボールを持ち相手を崩していきたかった。

試合後の新井選手のコメントより。
『前半の中盤、相手陣内でボールを動かそうと強くいっていて、やりたいことがまったくできなかったという感覚はない。相手がシンプルに蹴り込んで、セカンドボールを拾う戦いをしてくることは準備していたとおり。ボールを動かすところをもう少しチャレンジするべきだと思います。』

新井のコメントにもあるようにボールを動かすチャレンジが足りなかった。
今節は1週間の休養のおかげか岡西のキックが以前のように安定していただけに岡西を使いながら相手のプレスをいなしていくことにチャレンジしたかった。
ドゥドゥやバホスがいればロングカウンターも仕掛けられただろうがいない現状、後ろから繋いで相手を剥がし前進していくことにチャレンジしなくてはいけない。

3.機能しない右サイド

山梨県出身選手が揃った右サイド。
注目していた方も多かっただろう。
しかし、結果として機能しなかった。
積極的に太田と小林がローテーションはして立ち位置を変えてはいたがタイミングやパスが少しずつズレる。
同じようにローテーションする左サイドはスムーズにいくが右サイドは組むのは初めてのトリオ。
また、今津は中塩ほどビルドアップの上手い選手ではないためスタートから微妙なズレが生じる。
小林のミスが目立っていたがパスの乱れや動き出しのタイミングが合わなかったことは見逃してはいけない。
愛媛戦では今津ではなく小柳と組んでいたが随所にいい形は見えていた。
小柳の方が器用な選手であるためビルドアップは安定していた。
また、小柳を右SB化するような形でインナーラップを行い機能していた。
この形を今津でも行なえれば右サイドから良い形も増えるのではないか?
今津も得意ではビルドアップをこなすよりか今津の良さも活きる。
せっかく地元出身の選手が同サイドに揃ったわけなので甲府の武器と呼べるような活躍を期待したい。

4.見えないスタイル

ターンオーバーしてきた難しさを露呈した試合でもあった。
先週までの週末組、週中組をミックスさせたメンバー。
週末組は前線のタレントを活かし個の力への依存度が高いチーム。
週中組は後ろからポゼッションして前進し、コンビネーションで崩す狙いを持ったチームであった。
ドゥドゥ、バホスの離脱も影響したのかもしれないが今節からの5連戦はミックスさせて望むようだ。
しかし、結果としてうまくはいかなかった。
単騎で攻められるわけでもなく、1試合通して安定してポゼッションできるわけでもなく。
前半の中盤から終わりにかけてはいい時間もあったが中途半端な形で時計の針だけが進んでいく試合となってしまった。

一方の栃木はメンバーを変更してもこの形は崩さないだろう。
愚直なまでに走り、走り、走り続ける。
これは誰が出ても変わらないだろう。

この姿勢は甲府も見習わなくてはならない。
同じように走り続けろというのは無理がある。
信じた形を追求する。
今シーズンはそういうシーズンではなかったのか?
昇格できれば中途半端でも構わないかもしれない。
出来なかった時に今の歩みで良かったと言えるのか疑問はある。
配置にこだわりポゼッションし前進していくやり方をもっと追求しても良いのではないか。
方向性が間違っているとは思わない。
特にドゥドゥ、バホスがいない今単独で仕留められる選手はいないだけにチームとしてどう前進し、どう崩し、どう仕留めるか。

試合後の新井選手のコメントより。
『栃木もやるべきことをやってきたのでウチも明確にして、そこでチャレンジしてボールを持つことができれば……ボールを持てる感覚はあったが、勇気やチャレンジすることが足りなかった。』

新井のコメントのように今必要なのはボールを持つ勇気とチャレンジ。

5.あとがき

完敗。
この一言に尽きる。
何度戦っても同じ結果だったのではないかと思わされた。
非常に学ぶことが多かった試合である。
次の試合は中2日でやってくる。
今節出ていなかった選手が中心となるだろう。
この試合から彼らが何を学んだかが問われる試合となる。
また、1週間後の試合は今節のメンバーが中心となるだろう。
相手は今節終了時点で9連勝中の2位北九州。
今節の悔しさを晴らすには申し分ない相手である。
積極的にチャレンジする姿勢が見たい。

MOM 明本考浩
ファーストDFとして栃木のハードワークの先陣を切って引っ張った。
アディショナルタイムに交代したが試合開始から走り続けた。
攻撃面でもタメを作り、セットプレーのキッカーも務めた。
J1からのオファーを蹴り育ったクラブに戻って廣瀬浩二から8番を受け継いだ選手。
今シーズンの栃木を象徴するような選手である。

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