J2第16節 ヴァンフォーレ甲府vsザスパクサツ群馬

前節栃木に完敗を喫してから3日。
早くも次の試合を迎える。
ホームでザスパクサツ群馬との1戦。

群馬は21位と下位に沈んでいるがここ3試合は2勝1分。
調子を上げてきた中での試合となる。
過去の対戦成績でも大きく勝ち越しており前節の栃木と似たような状況。
一方で順位が示すように失点数はリーグ最多、得点数は下から3番目と油断する余地が多いにある相手。
しかし、J2に降格して3年目見る側は油断や相手を見下すことをやめなくてはいけない。
J2に簡単に勝てる相手はいない。
中2日での1戦。
メンバーは大きく入れ替わることが予想される。
北九州、長崎と続く連戦に目を向けがちだが、まずは目の前の群馬を叩かないことには先に繋がらない。
1戦必勝でこの試合に臨みたい。

1.可変の狙い

スタメンはこちら。

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甲府の注目はハーフナー・マイク。
9年ぶりの帰還を果たした今シーズンだがいまだに得点は無い。
苦境のチームを救うことはできるか。

一方の群馬の注目は林陵平。
林を起点に群馬は攻め込んで来ることが予想される。
この選手に自由にやられると、大前や加藤、田中といった前を向くとこわい選手たちにも自由にやられてしまう。

最初のシュートは開始20秒。
相手のスローインを奪いマイクのポストプレーから松田が絡む形。
マイク、松田共に特徴を出した場面。

59秒頃より。

続いては1分15秒のシーン。
自陣深くからのスローインをマイクに当て松田から逆サイドに展開。
荒木、武田と繋ぎマイクへの長いボールからCKを獲得。
またもマイク、松田を起点とした攻め。

群馬のCKの守りはゾーン。
甲府のキッカーは藤田。
1本目の狙いは中山が相手GKを抑え、中村、武田、松田がニアに走り込んだスペースにマイクが入る。
そして今津をファーサイドでフリーにする形。
ゾーンでの守りでは必然的に空くエリアだがより今津を空けるためのデザインされた形。
当然狙いは今津。
キックが若干長くなったことから折り返しを狙うが相手がクリアし再度CKを獲得。
2本目も狙いは同じ。

今度は今津が足で合わせいきなり先制に成功する。
空いているエリアだが本来今津がいたエリアをケアすべき高瀬をマイクが引きつけることに成功。
舩津が反応するも届かず。
難しいボレーだが見事なボレー。

先制したこともあり落ち着いてポゼッションできる。

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3バックの中央の選手がアンカーに上がる形には変化はないが上がるタイミング、下がるタイミング、他のポジションの立ち位置には変化があった。
前節まではボールを保持しながら可変するためこの形の本来の目的である前線に人数をかけるために時間がかかってしまっていた。
そのためカウンターに出るにも単独で仕掛ける形が多く、前線の選手に入れて時間を作ろうにも孤立してしまい、厚みのある攻撃を仕掛けるには後ろでゆっくり回すしかなかった。
時間をかければ相手は帰陣し、ブロックを構えるため崩すのは容易ではなく、クロスをあげるにしても待ち構えている相手に対しては効果的ではなかった。

今節はマイボールになった瞬間に上記の形へ素早く可変。
プレッシャーが薄くなる武田や2トップの背後で捕まえにくいポジションを取る山本を起点に攻撃を組み立てることに成功する。

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狙いは相手SBの裏。
これを意識させることによりインサイドの中山、中村にもいい形でボールが入る。
特に中山は積極的にボールに関わり起点になった。
この形を続けていくなら中山はキーマンとなる可能性はある。
彼の成長がより魅力的なサッカーをする上で必要となるだろう。

押し込むことに成功した後は藤田がより高い位置を取る形にも変化する。

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どちらの形にしてもサイドで幅を取る選手を置き、サイドにボールがある状況でも逆サイドには常に張っている選手がおりピッチの横幅を使い相手の守備を広げる狙いを持った形。

唯一の誤算は最前線のハーフナー・マイク。
マイクにボールが収まればより厚みのある攻撃ができ、押し込むことができた。
以前のマイクであればラフなボールを入れる形が活きる形であったが、現在のマイクは足元にズレなく入れてあげないと収めることは厳しい。
攻撃面の可変には効果が見られただけによりパスの質を上げていくことで攻撃面ではまだまだ成長の余地があるだろう。

立ち位置にこだわり、可変により押し込む形やサイドを活性化させた今節の攻撃は伊藤監督がやりたいサッカーの片鱗が見えたのではないか?
前節キャプテンの言っていたボールを動かす勇気とチャレンジができた前半だった。

2.アグレッシブな守備

一方の守備面でも変化は見られた。

失った瞬間にリトリートし541に構えていた前節まで。
今節は攻撃時の可変を維持したままプレッシャーに移行。
前節の栃木にやられた形を逆に自分たちがやった今節。
前線からのプレスのスイッチ役は松田。
相手CB、GKへ2度追い、3度追いを仕掛け、連動して相手を捕まえにいく守備でボールを奪い取っていく。

試合後の伊藤監督のコメントより。
『ゲームの入りのところで、シュートを打てたことはアグレッシブに出来たかなと思います。守備のところを前から行こうということで、ウィングバックもしくはセンターバックのところへ入ってきたボールに対して厳しく行くこと、相手が下げたボールに対して松田などがすごくプレッシャーをかけて、勢いの出たゲームになったと思います。』

試合後の荒木選手のコメントより。
『試合前からウイングバックがSBにプレッシャーを掛けようと考えていた。SBに対してアグレッシブに行けたことでチームとしてもラインを高くしてうまくやれた。』

前半10分のシーン。

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この場面は失った直後のプレーではなく相手のポゼッションに対し1度ブロックを組んだ後だが連動してプレスをかけ奪い取った場面。
松田の2度追いを起点に連動し、武田も2度追いしたことにより連動し奪いとることに成功。

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群馬としてはグラウンダーのパスを起点に前線に差し込みたかったのだが甲府の連動した守備に前進できない。
回避し、前線に楔を入れても山本に読まれる場面も多く効果的な攻撃には繋げられず。
入れ込むことができれば大前中心に田中も加藤も仕掛けられだけに怖さがあった。

試合後の伊藤監督のコメントより。
『今回連敗している中でも受けて立つのではなくて、自分たちからアクションを起こそうという狙いがあったので、守備の部分はアグレッシブに行けました。』

CKの守備にも変化は見られた。
前節と前々節徹底的に狙われたショートコーナー。
マンツーマンとゾーンの併用で守っていたが今節はゾーンを採用。
群馬対策としてなのかは次節以降も見ていかないとわからないが課題となっていたCKの守備をテコ入れしてきた。

自陣から見た右サイドのCK。

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配置はこのような形。
高さのある選手をゴールエリアに配置し、ショートコーナーやゾーンの特性上空いてしまうスペースのケアのために動ける選手を少し前に置くのが狙いだろうか?

狙いを持って入り実行できた前半の守備であった。

3.反撃のグンマー

後半は一転して群馬の時間が増える。
前線に積極的に選手が飛び出してくる。

52分のシーンはセカンドボールを回収し中山がプレスに来た中村をかわすところから左サイドへ大きく展開。
最後は高瀬のクロスに岩上が合わせる。
大きく展開しサイドで時間を作りSBからSBでフィニッシュ。

2分59秒頃より。

後半積極的にいく姿勢を見せる。

後半の入り群馬にいい形が出た場面はGKに対してマイクに岡村が競り勝ったところから始まっている。
立正大学出身で中塩の先輩であるが中塩とはタイプが異なっていて対人に特徴がある選手。
後半の入りの群馬の流れは岡村大八が作っていた。

勢いを掴めた群馬は徐々にボールを動かし始める。
その中心は後半最初から投入された宮坂。
積極的にボールに関与し動かしていく。

61分に伊藤監督は山田と泉澤を投入。
セカンド回収と1人での局面打開に期待をかける。

一方で群馬は62分に青木を投入しプレスの強度と動き出しを強化してくる。

そのプレスを逆手に取り背後をつくことに成功する。
前半から狙っている形であり逆に前半群馬に決定機を作られた形でチャンスを作る。

3分52秒頃より。

後ろで回すことや意図的にバックパスするのは相手を食いつかせ背後を空けさせるためである。
それが形になったシーン。

この直後群馬の奥野監督はより攻勢をかける。
68分平尾と進を投入。
アタッカーの加藤をボランチに下げ、前線に厚みをもたらす。

群馬の狙いはあくまで繋いで崩すこと。
甲府としたらパワープレー気味に放り込まれた方が楽だったかもしれないが群馬はブレなかった。
しかし、結果として上手くいかず。
自分たちの狙う形から追いつける力がついてくれば群馬も21位にいるようなチームではない。
特に今シーズンは降格も無いだけにこのやり方を貫いて欲しい。
得られるものは大きいはずだ。

4.あとがき

アグレッシブにプレスをかけ続けることは90分持たなかった。
しかし、状況に合わせブロックを組んで守ることを選択し守り切ることに成功した。

試合後の伊藤監督のコメントより。
『90分間持たなかった状況でも、しっかりとオーガナイズを組んで自分たちのゴール前で体を張って守ることも出来ました。アグレッシブに守備に行けたところを継続して行きたいと思います。』

1勝が、クリーンシートがこんなにも大変なのか思い知らされた1戦。
一方で新たな形を試し成果も得られた。
また、守り抜くこともできた。
追加点を取れなかったことは課題だが連敗中のチーム。
全てが上手くいくはずがない。
できたことの中で最高の結果を得られた中でできなかったことを次できるように。
2位北九州、首位長崎と続く連戦。
甲府がJ2リーグを面白くしようじゃないか!

MOM 山本英臣
さすがの存在感。
困ったときの山本英臣。
この人がいるから大崩しない。
それを改めて思い知らされた一戦となった。
前半はボールを散らすことで攻撃を活性化させ、後半は守備で相手を潰し存在感を示した。
DAZN週間ベストプレイヤーにも今津と共に選出された。

これでJリーグ通算499試合目の出場。
500試合達成まで後1試合。
甲府のレジェンドの活躍をまだまだ見たい。



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