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綿反とつる屋さん

「綿反で単の女長着を縫う」

和裁教室、最初の課題が決まったのはいいけど、綿反が何かわからない。単もわからない。そう告げると、佐古先生は縫物の手を止めることなく質問に答えてくれた。

綿反は、木綿で織られた反物(生地)で、単は裏地のない着物なのだと言う。じゃあ、単は浴衣なのかと聞くと、それは違うという。更に混乱した。あれ、浴衣って木綿の生地で作られた、裏地のない着物じゃないの?と思ったから。

単の着物は裏地のないもの、その中で平織り、つまり凹凸のない生地で、かつ狭義では2~3色で染められた特定の繰り返し文様を持つ着物、そして風呂上りに着ることを前提に仕立てられた着物を「浴衣」と言ったそうだ。それが広義になると色の数は幾つでもよく、平織りでないある程度凹凸のある生地でもよく、ただし襦袢と呼ばれる下着を使用しないで着る着物を指すようになる。

生地の織りが「絽」と呼ばれる特殊なものは、木綿で単の着物であっても浴衣とは呼ばない。綿絽の着物と言われる。木綿生地の平織りに近いものであっても、生地の文様によってはやはり「浴衣」とは呼ばない。綿の着物と言い、襦袢と一緒に着ることになる。

こういった細かい仕様や決まり事、織りの種類、素材の違い、文様と格式の関わり、仕立ての違いを少しづつ知っていった。

でもこの時の私には、全てが謎。佐古先生に、とにかく綿反という物を買って来ればいいんですねと言質を取った後、そのままつる屋さんに向かった。言葉そのまま「すみません、和裁の練習に必要なので、綿反という生地をひとつ下さい」と旦那さんに伝えると、旦那さんは手頃な値段の、紺色の反物を出してきてくれた。それを手に入れ、お正月の繁忙期が終わった頃に、私は佐古先生のところで本格的に和裁教室を始めることになった。

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